夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『君が君で君だ』

2018年07月14日 | 映画(か行)
『君が君で君だ』
監督:松居大悟
出演:池松壮亮,キム・コッピ,満島真之介,大倉孝二,高杉真宙,
   中村映里子,山田真歩,光石研,向井理,YOU他

1本目に『天命の城』、2本目に『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』を観て、
ハシゴの3本目を何にするか悩んでいました。そんなとき、目に止まったのが本作。
ただ、某映画レビューサイトでは5点満点評価の1点台。
これはなかなか見ることのない数字で、超駄作が予想される点数。
でも、監督は松居大悟『バイプレイヤーズ』で担当した回などもあり、気になります。
ものは試し、いつも言うとおり、観なきゃ文句も言えませんから。

若い男2人、カラオケボックスからの帰り道、
不良っぽい奴らに絡まれている女性を見かけ、助けようとする。
ところが逆にボコボコにされ、死ぬかもという状況に。
そこを通りかかったのがカラオケボックスのバイト嬢で韓国人のソン(キム・コッピ)。
彼女は近くに転がっていたビール瓶を割り、不良に突きつける。
凶器を手にしたアブナイ女を見て、不良たちはさっさと退散。

それから10年後、あのときの男2人プラス1人の計3人は、
ソンが暮らすマンションの真向かいのボロアパートに部屋を借り、
ソンを姫と崇めて見守ることを自分たちに課す毎日を送っていた。
彼女を監視し盗聴し、これはまぎれもないストーカー
彼女のために自らの名前すら捨て、彼女が好きな3人になりきっている。
尾崎豊(池松壮亮)、ブラピ(満島真之介)、坂本龍馬(大倉孝二)。

ソンには、サラ金で多額の借金をつくったろくでなしの恋人(高杉真宙)がいる。
ある日、その借金を取り立てに星野(YOU)と子分の友枝(向井理)がやってきて、
ふとした拍子に向かいから覗く3人のことがバレてしまう。
星野と友枝に乗り込まれ、ストーキングの実態まで知られてしまうのだが……。

超駄作だと思っていたせいでなくても、私は面白かったです。

つい先日、『アンダー・ユア・ベッド』という本を読了したところです。
それもこれも変態ストーカーの話。
ストーカーは駄目ですよ、絶対駄目。
でも両作のストーカーが、愛憎による傷害殺人事件まで起こしてしまうストーカーと異なるのは、
彼女とどうにかなろうなんて露ほども思っていないということ。
基本的には彼女の生活に干渉しないのがルール。
ただひたすら彼女に幸せでいてほしいと思っている。
彼女が男とつきあいはじめたからと言って嫉妬もしないし、邪魔もしない。
彼女の一挙手一投足に歓喜し、見守り続ける男たち。

ストーカーとそのターゲットが結ばれることはないから、妄想は抱かせません。
妄想の部分は妄想として描かれています。
生理的に受け付けられないシーンが3つぐらいはありましたが、
それを除けば、私は4点ぐらい付けてもいい。

尾崎豊がいっぱいかかります。
彼女が好きだと言った曲で、彼女を元気づけられたなら。
怪我をして入院中の龍馬が(ベッドから転げ落ちた状態で)、
看護師さんから「具合どうですか」と聞かれて、
「……少し、切ないです」「そうですか。ならば大丈夫です」
という会話がたまらなく好きでした。

あ、書き忘れるところだった。
眉を薄くしてチンピラ役に徹した向井くん、絶品です。
YOUに向かって「ババアが酔ってんじゃねぇよ。気色悪い」と言うところは笑いました。
こんなことを言わせる松居監督、三池崇史監督みたいでんな。

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