夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『スティング』

2020年05月26日 | 映画(さ行)
『スティング』(原題:The Sting)
監督:ジョージ・ロイ・ヒル
出演:ポール・ニューマン,ロバート・レッドフォード,ロバート・ショウ,チャールズ・ダーニング,
   アイリーン・ブレナン,レイ・ウォルストン,ディミトラ・アーリス,ダナ・エルカー他
 
待ち望んでいた関西の劇場の営業再開。
やっぱり再開後最初に行くのはミニシアターかなと思ったけれど、
観た作品がほとんどで、観たい作品もなんだか少ない。
ちょっと気を削がれた感があり、悩む。
 
そんな折、大阪ステーションシティシネマで
“午前十時の映画祭”がおこなわれていることに気づきました。
10年続いた“午前十時の映画祭”はこの3月で終わったはずが、
惜しむ声が多く、来年4月に復活が決まったそうな。
で、今は“午前十時の映画祭10+”をやっているらしい。
 
ラインナップを眺めると、一度は観たことがあるけれど、
劇場では観たことのない作品がいっぱい。
この機会に観ておくことにしました。
 
まずは本作。1973年のアメリカ作品です。
 
私が小学生だった頃、12月24日には必ず本作がテレビで放映されていました。
近所に住む友だちと、「今日また『スティング』やるね」と話した記憶が。
だから私にとってクリスマスイブに観る映画といえばこれなのですが、
改めて観てみると、クリスマスのシーンなんてひとつもありませんよね(笑)。
『素晴らしき哉、人生!』(1946)だったらわかるけど、なんでこれ?
でも楽しいなぁ、やっぱり好きだなぁ。
 
舞台は1936年のアメリカ。
シカゴの街で、詐欺師のフッカーと相棒ルーサーは、通りがかりの男から金を騙し取る。
盗んでみてびっくり、小銭だと思ったのにまさかの大金。
 
大喜びのフッカーはすぐさま賭け事に突っ込み、すってんてんに。
長年コンビを組んできたルーサーは、これを最後に詐欺をやめると言う。
今後のことを考えて真っ当な商売を始めるつもりらしく、
この程度の詐欺でいい気になるなとフッカーにも釘をさす。
 
翌日になり、フッカーとルーサーが騙し取った金は、
ニューヨークの裏社会を仕切るロネガンのもとへ届けられるものだったと判明。
フッカーはなんとか逃げたものの、ルーサーが殺されてしまう。
 
復讐を誓うフッカーは、伝説の詐欺師ゴンドルフを訪ねる。
今も昔も復讐に興味はないと言うゴンドルフだったが、
ロネガンの名前を聞くと気持ちを変える。
 
ロネガンの鼻を明かすため、大掛かりな詐欺を計画する彼らだったが……。
 
いまやシワシワのお爺さんになりましたが、カッコイイです、ロバート・レッドフォード
それより私が惹かれたのはポール・ニューマン
映画の公開当時は50ちょっと手前、シブイなぁ。
主な出演陣にレッドフォードを除いて存命中の人はほとんどいません。寂しい。
フッカー役を最初に打診されていたのはジャック・ニコルソンだそうですが、
これはもうイケメンのレッドフォードしか考えられない(笑)。
 
念入りに計画された壮大な詐欺に関わるおじさんたちの楽しそうなこと。
悪い奴がいっぱい喰わされる話は面白くてたまらない。
今の時代のようにケータイやネットがあったらこうは行かないっしょ。
だいたい、ロネガンがフッカーの顔を知らないこと自体、今ならありえない。(^^;
 
クリスマスイブにはまた観たいと思う。
こうして大きなスクリーンで観られたことに感謝。

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『ハント・フォー・ザ・ワイルダーピープル』

2020年05月25日 | 映画(は行)
『ハント・フォー・ザ・ワイルダーピープル』(原題:Hunt for the Wilderpeople)
監督:タイカ・ワイティティ
出演:サム・ニール,ジュリアン・デニソン,リス・ダービー,
   リマ・テ・ウィアタ,レイチェル・ハウス他
 
Amazonプライムビデオ見放題作品の中で探すのもいいかげん飽きてきて、
有料作品を眺めていたら気になったのが本作。
199円払って観ることにしました。
 
2016年のニュージーランド作品。
めっちゃよかったです。
 
ツバ吐きや落書きなんて可愛いほう、
窃盗、放火、悪いことなら何でもやる問題児、13歳のリッキー。
孤児の彼は、児童福祉局の女性ポーラに付き添われ、
ニュージーランドの田舎で暮らすヘクターとベラ夫妻のもとへ。
夫妻が里親となり、この家に預けられることになったのだ。
 
最初は口もきこうとしないリッキーだったが、
大自然に囲まれ、おおらかで優しいベラに少しずつ心を開くように。
一方のヘクターはといえばいつも仏頂面で冷ややかな態度ながら、
誕生祝いに犬をプレゼントしてくれる。
生まれて初めて貰う誕生日プレゼントにリッキーは大喜び。
トゥパックと名づけて可愛がる。
 
そんなある日、ベラが突然倒れて亡くなる。
児童福祉局からの手紙によれば、ヘクターひとりでリッキーを育てることは不可能、
数日後にリッキーを施設へ戻すと言う。
 
この家に居たいとリッキーはヘクターに言い募るが、
仮にお互いがそう思っていたとしても規定で許されないらしい。
リッキーはベラの遺灰を携えてトゥパックと共に脱走を計画。
慣れないブッシュの中に足を踏み入れて道に迷う。
渋々探しに来たヘクターと脱走の旅を続けるのだが……。
 
リッキー役のジュリアン・デニソンは、お世辞にも可愛い子とは言えません。
何より相当のおデブなのに、生意気で悪態つくからますます可愛くない。
でも、ベラが用意した湯たんぽを大事そうに抱きしめるところや、
誕生日プレゼントに目をまん丸くして喜ぶ姿を見ると、なんだか憎めない。
サム・ニール演じるヘクターも、そんなリッキーだから放っておけない。
 
やがてヘクターとリッキーの何カ月もに渡る逃走劇が国中の評判となる。
ヘクターを変質者だとか誘拐犯だとして敵視する人もいるけれど、
見ればそうじゃないとわかるから、逃走に手を貸す人も出てきます。
 
ぎすぎすとした心が溶けて行きそうな佳作です。
なんだかんだで有料作品の中にこういういいやつが多いんだなぁ。
やっぱりお金払って観ることにするか。

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『湿地』

2020年05月24日 | 映画(さ行)
『湿地』(原題:Myrin)
監督:バルタザール・コルマウクル
出演:イングヴァール・E・シーグルソン,オーグスタ・エヴァ・アーレンドスドーティル,
   ビョルン・フリーヌル・ハラルドソン,アトゥリ・ラフン・シーグルスソン他
 
劇場の営業が再開されて嬉し涙ではあるのですが、
まだあるんです、劇場休業中に書き溜めた「Amazonプライムビデオで観られる映画」
せっかく書いたのにもったいないからUPしてしまおう。
 
2006年のアイスランド/デンマーク/ドイツ作品。
アイスランド出身のバルタザール・コルマウクル監督、やけに気になる人です。
アイスランド映画といえば変な映画という私のイメージを変えた人。
2006年にこんな作品を撮っていたのですねぇ。
初監督作だけあって、洗練された感じはありませんが、
このどんより暗くて重たい感じが私はやはり好みです。
 
先にひとこと言っておきたい。アイスランド人のこの名前の長さって何!?
ハリウッドへ進出する場合はみんな芸名を考えてくださいね。
絶対おぼえられんから。(^^;
 
原作は2013年の『このミス』で海外編のランキング第4位だったそうな。
映画化はそれより前だったわけで、日本未公開も当然。
2015年1月に“トーキョーノーザンライツフェスティバル 2015”にて上映されたとのこと。
 
ある日、身寄りのない独身男ホルベルクが殴殺されているのが見つかる。
刑事のエーレンデュルは、引き出しの裏側に隠し貼り付けられていた写真に注目。
それはウイドルという女性の名前が刻まれた墓碑の写真だった。
 
ウイドルの母親は故人のコルブルンという女性だが、
エーレンデュルはコルブルンの姉エリンが生存することを突き止め、訪ねる。
ところがエリンはホルベルクの名を聞くと激怒、警察を毛嫌いしている様子。
なぜそこまで警察を信用しないのかは地元警察の刑事ルーナルに聞けと言う。
 
すでに退職していたルーナルに事情を聴きに行ったエーレンデュル。
かつてホルベルクがコルブルンを強姦、しかしルーナルは事件にはせず、
逆にコルブルンを売春婦だと言いふらして貶めようとしたらしい。
 
ウイドルの父親こそがホルベルクではないのか。
そう考えたエーレンデュルは、ウイドルの墓を掘り起こして調べようとするが、
埋められていたウイドルの遺体には脳が欠けていて……。
 
とても悲しい物語です。
この殺人事件と並行して描かれるのは、幼い娘コーラを亡くした研究者オルンのこと。
神経線維腫症という難病で死んでしまったコーラ。
この病は遺伝性で、保因していても発症しないことが多々あるそうです。
保因していることを知らずに性行為をした結果、妊娠したらどうなるのか。
 
エーレンデュルが捜査する殺人事件と、
オルンの娘が亡くなった事件がどう結びつくのか。深い深い悲しみと無念。
 
話も時系列もプツプツと飛ぶので、わかりにくいことこのうえない。
この辺りがまだ監督若かったんだなぁと思わずにはいられません。
でも、将来面白い作品を撮りそうだと感じられることは確か。
 
もうひとつ、それはアイスランド人の名前に馴染みのないこちらの問題ですが、
登場人物の名前がややこしすぎる。主人公がエーレンデュル。
娘の名前はエヴァだからいいとして(奥さんかと思うほど見た目老けすぎ)、
同僚の名前はシグルデュルとエリンボルク。
悪党の名前がエットリデって、「エ」で始まる名前多すぎ。
おぼえられへんっちゅうねん。なんでこうして書けるかって?
そりゃ全部メモしたからに決まってる。劇場で観ていたらこうは行きませんでしたね(笑)。
 
めちゃくちゃ暗いから、人にはお薦めしません。
でもアイスランドのこの感じ、私はハマる。

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『オーバーボード』

2020年05月23日 | 映画(あ行)
『オーバーボード』(原題:Overboard)
監督:ロブ・グリーンバーグ
出演:エウヘニオ・デルベス,アンナ・ファリス,エヴァ・ロンゴリア,メル・ロドリゲス,
   ハンナ・ノードバーグ,アリヴィア・アリン・リンド,ジョン・ハナー他
 
関西の劇場の休業は解除されましたが、
公開延期になっている作品が多すぎて上映スケジュールが組めないのか、
緊急事態宣言発令前に私が観た作品ばっかり。
もう1回観たいほど好きな作品がそうそうあるわけじゃなし、
しばらくは劇場通いと自宅で鑑賞の併用になりそうです。
 
2018年のアメリカ作品。
日本では未公開、DVD化もされていませんが、
Amazonプライムビデオで配信されています。タダで〜す。
 
ゴールディ・ホーンカート・ラッセルが共演した『潮風のいたずら』(1987)の
「リイマジネーション版」なのですって。なんすか、それ(笑)。
リブート版とかリイマジネーション版とか。リメイク版でよろしいやん。
なお、『潮風のいたずら』とは恥ずかしくなるような邦題ですが、
そちらも原題は本作と同じく“Overboard”でした。
 
ケイトは3人の娘を育てるシングルマザー
看護師の資格取得を目指して勉強しながら、仕事を掛け持ち。
友人夫婦の経営する飲食店の配達員と、派遣の清掃員
 
ある日、清掃を担当することになったのは超豪華なヨット。
所有者は世界で第3位の金持ち企業の長男レオナルド。
毎日何人もの女性を連れ込んではドンチャン騒ぎしているらしく、
その後片付けをするために呼ばれたのだ。
 
レオナルドの横柄で嫌みな態度にキレたケイトが言い返すと、
怒ったレオナルドは、ケイトを掃除用具もろともヨットから突き落とす。
給料をもらえなかったばかりか、掃除用具の弁償もしなければならない。
おまけに、まだ幼い下の娘ふたりの子守を頼むつもりだった母親は、
70歳を過ぎて舞台女優デビューするとはりきって出て行ってしまい、
もうケイトはどうしてよいかわからない。
 
そんな折、ふと目にしたニュース。
あのレオナルドがどういうわけか記憶喪失で入院しているという。
心当たりのある人は連絡をほしいという内容。
 
なんとしてでも先日の給料はもらわねば気が済まない。
そこでケイトの親友テレサが思いついた案は、
レオナルドの妻のふりをして病院に引き取りに行き、
ケイトが勉強に集中できるように彼を働かせるというもので……。
 
ウィキペディアを見て大笑いしてしまったのですが、
本作は批評家に酷評されているそうです。
「必ずしも名作とは言えない映画をリメイクしている。
オリジナルの低い水準にすら達しないリメイクを観客に提供した」と、
『潮風のいたずら』からして酷いことを言われていてワラける。
 
でもこれはとても楽しい作品です。
 
エウヘニオ・デルベス演じるレオナルドは、最初は本当にイケすかない奴。
アンナ・ファリス演じるケイトが病院へ引き取りに行ったあとも、
すべての記憶は失っていても、金持ちの習慣は体に染みついている。
なんとなく自分が貧乏だったわけはないと思っているんですね。
 
ケイトの家に連れて行かれて、「僕は貧乏だったのか」と愕然。
愕然とするのはどうかと思うほど、可愛いおうちですけどね(笑)。
仕事なんてしたこともないのに、いきなり肉体労働。
現場の男たちから「なんだ、その女みたいな(美しい)手は」と笑われる。
まったく使い物にならなかったけれど、次第に働くのも楽しくなります。
 
ケイトから料理もするように言われても、自分で鍋を火にかけたことすらない。
それでも、もともと良いものを食べているから、
一旦料理の仕方を覚えると、ケイトより美味しいものを作るようになる。
ケイトが使っていた市販のトマトソースが不味すぎるからと、
スパイスを加えて変身させ、子どもたちがその美味しさにびっくり。
 
外での仕事と家事は任せられても、子どものことだけは任せられない。
だって本当は夫でもなんでもない、他人だから。
そう思っていたケイトですが、子どもたちも懐くんですねぇ。
 
ちょっぴり泣いて、大いに笑いました。
スーパーハッピーエンド。
 
批評家の言うことなど気にせずに観てほしい。
きっと明るい気持ちになれます。

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『フローズン・グラウンド』

2020年05月22日 | 映画(は行)
『フローズン・グラウンド』(原題:The Frozen Ground)
監督:スコット・ウォーカー
出演:ニコラス・ケイジ,ジョン・キューザック,ヴァネッサ・アン・ハジェンズ,
   ディーン・ノリス,ジーア・マンテーニャ,ラダ・ミッチェル他
 
 
2013年のアメリカ作品。
ニコラス・ケイジって、相変わらず映画に出まくっている様子。
高く評価される作品は最近まったくないけれど、別に最近に限らんか。
言われたって気にしない、その姿勢は潔いのかもしれません(笑)。
 
私はどうやらタイトルに「フローズン」と付くとスルーできないみたいで。
『フローズン・リバー』(2008)のような佳作もたまにありますが、
抱腹絶倒のB級シチュエーションスリラーが多い。
これもたぶんその手のやつなんだろうと思ったら、なんと実話が基。
1980年代に全米を震撼させた実在の連続猟奇殺人犯の逮捕劇を題材にしています。
 
1983年、アラスカ州アンカレッジ。
手錠をされて傷だらけの少女シンディが警察に保護される。
23歳と偽っていたが、シンディは17歳の娼婦
客であるロバート・ハンセンという男に監禁レイプされ、
命からがら逃げてきたというが、ロバートは地元の名士。
警察は所詮娼婦の言うことだとシンディの話に取り合わない。
 
一方、州警察では相次ぐ身元不明女性の変死事件を調査中。
数週間後に刑事を辞めて平穏な生活を送るつもりのジャック・ハルコムは、
またしても発見された変死体について調べるうち、
地元警察が事件化を見送ったシンディの調書に目を留める。
 
変死体は同一犯による連続殺人なのではないか。
ロバートこそが殺人犯だと確信したジャックは、
警察にないがしろにされたおかげで不信感あらわなシンディを守ると誓い、
なんとかロバートの尻尾を掴もうとするのだが……。
 
ジャック役にニコラス・ケイジ、ロバート役にジョン・キューザック
この共演といえば思い出す、『コン・エアー』(1997)。
あのときは連邦捜査官役で格好よかったジョン・キューザックが
本作では変態殺人鬼役ですもんねぇ。
彼にはいつまでも善人役の俳優でいてほしかったけど、仕方ないか。
 
殺人犯といってもウィキペディア等でたいしたページを割かれていない、
特に日本語版ではあまり知り得る情報はないことも多々ありますが、
ロバート・ハンセンについてはウィキペディアに長い長い説明が。
モチーフにした程度の作品かと思っていたら、かなり忠実なようです。
ニコラス・ケイジ主演なのに(笑)。
 
ロバートのやり口は、女性をだいたい1週間程度監禁した後、
林に連れて行って放ち、狩りをするかのごとく猟銃で撃ちます。
遺体は熊などに齧られて凄惨な状態に。
妻子もある身で、妻は敬虔なクリスチャン。
夫のしでかしていることなど露とも知らなかったのがまた悲惨です。
 
決定的な証拠がなかなか出ないなか、
のらりくらりとかわそうとするロバートから
なんとか自白を引き出そうとするジャック。
この掛け合いがなかなかスリリング。
当時「偽りの年齢」のほうに近かったヴァネッサ・アン・ハジェンズ
17歳の役というのはちょっとキツイかなぁ。上手かったけど。
 
実話ベースなのに、ニコラス主演というだけで
普通のスリラーに思われてしまうジレンマ(笑)。
そこも含めて面白かった。

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