雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

ぼつぼつ行きましょう

2019-05-07 18:58:45 | 日々これ好日
        『 ぼつぼつ行きましょう 』

     日常生活が始まった
     肉体も精神も 元に戻るのに
     時間がかかるのは 当然のことだ
     造幣局などは 今も「平成31年」の硬貨を
     鋳造しているそうな
     ゆっくりペースを戻すことが大切らしいので
     「ぼつぼつ行きましょう」

                 ☆☆☆  
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満ちくる潮の

2019-05-07 08:23:44 | 新古今和歌集を楽しむ
    蘆べより 満ちくる潮の いやましに
                思ふか君が 忘れかねつる 


                 作者  山口女王

No.1378  巻第十五 恋歌五 )
     あしべより みちくるしおの いやましに
                   おもふかきみが わすれかねつる



* 作者は万葉時代末期の女性。生没年とも不詳。

* 歌意は、「 蘆の生えている岸辺から 満ちてくる潮のように ますます思いが増してきて あなたを忘れることが出来ないのです。」

* 作者 山口女王(ヤマグチノオオキミ)は、万葉集に六首の歌が載っているが、いずれも大伴家持に対する相聞歌である。
新古今和歌集には本歌の次に
「 塩竃(シホガマノ・宮城県)の 前に浮きたる 浮島の 浮きて思ひの ある世なりけり 」があり、両歌の詞書に「中納言家持に遣はしける」とある。
いずれも、家持に対する切ない恋歌であるが、万葉集に伝えられている他の歌も同様である。

* 大伴氏は古代屈指の豪族であるが、家持の時代には、蘇我氏、藤原氏に押されて没落途上にある悲劇の一族になりつつあった。ただ、万葉集の編纂に関しては、大伴家持が果たした役割は大きい。
山口女王は、この家持と恋愛関係にあったと推察されるが、その伝承はほとんどない。
当時の身分重視の社会を考えると、家持と対等に歌を交わし合うとなれば、山口女王も相応の身分の持ち主と考えられる。
この時代、一般的に「女王」を名乗ることが出来るのは、三世ないし五世の皇族と推定できるが、確証はない。それに、いかに皇族といえど、五世の孫となれば、中枢から遠く離れていれば、後世に記録が残るほどの立場からは離れていたとも考えられる。

* 本歌の次にある『塩竃の・・・』の和歌にある浮島は、陸奥の多賀城跡近くのことで神社があり、山口女王はこの辺りで亡くなったという伝承があるらしい。
もしこの伝承が事実だとすれば、皇族の血を引く身であり、家持との激しい恋のひと時を送った女性が、都から遥かに遠い多賀城跡辺りまで来て没したとなれば、何か切ないようなものを想像してしまうのである。

     ☆   ☆   ☆   
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