我が家の小さな庭の一画は、今、酔芙蓉がたくさんの花を付けています。朝は真っ白の花が、昼頃からはピンクになり、翌日には花を閉じて赤くなっています。そうなれば、ほとんどが一、二日で落ちてしまいます。花を開かせているのは一日だけで、これでもかと伸びる割には、何とも儚い花といえます。
春先から次々と咲いてくれた球根類も、今はタマスダレが最後の頑張りを見せてくれているだけです。ニチニチソウなどの一年草も、一部は枯れ始め、季節の移り変わりを感じます。
あれほど元気いっぱいだった雑草たちも、やはり成長に衰えが見えてきているようです。
菊の花はまだ蕾も小さく、鉢数ばかり増やしたミニバラが思い思いに花を付けてくれていますが、春から夏にかけた頃の勢いにはとても及びません。
今年は、当地も厳しい夏でした。台風や豪雨、あるいは全国的には台風ほどの報道はされないながら、激しい風雨をもたらす低気圧の被害を受けた地域も少なくなかったようです。特に、九州や北海道の一部などは、今も災害の後始末に追われているそうですから、心からお見舞い申し上げます。
しかし、いくら厳しい夏だからといっても、季節はやはり移っており、夏は去り秋がやってくるのは当然といえばその通りなのですが、なんだか不思議な気もするのです。
表題としました、『秋に秋添う』という言葉は、私のメモ帳にあった言葉を書き出してみたものです。
それほど前のことではないはずなのですが、何からメモしたものか、どうしても思い出せないのです。辞書などでも調べてみたのですが、この言葉がそのまま掲載しているものは見つけ出せませんでした。
少しばかり似ているものとしては、「 秋に添うて 行かば末は 小松川 」という芭蕉の俳句が目につきました。「秋に添うて」という言葉も、実に美しい言葉だと思うのですが、やはり、『秋に秋添う』という言葉とは、まったく別のものだと思うのです。ただ、俳句か和歌にあった言葉のような気がしています。
この美しい、『秋に秋添う』という言葉の正体を見つけ出せていないのは何とも残念なのですが、「秋という自然の移り変わりそのままを静かに味わう」といった意味だろうと勝手に決めつけて、今年の秋はその心境になれるよう心がけようと思っています。
世界的に見ても、わが国ほど四季の移り変わりに変化と情緒がある地域は少ないようです。そして、その変化を敏感に感じ取る感覚も、極めて敏感なようです。
これは秋に限ったことではありませんが、体感的に快適な期間はごく短いものです。しかし、これから寒さに向かう中で、やはりこの季節ならではの「秋」があるはずです。その秋に寄り添って季節の変化を頂戴して、『秋に秋添う』という心境に近付きたいと考えています。
( 2016.10.15 )