麗しの枕草子物語
哀しき別れ
御乳母の大輔の命婦が、定子皇后のもとを離れて、日向に下ることになりました。
皇后さまは、身重の御身体でもあられ、そのためもあって帝の御成りも絶えがちな折から、気丈に振舞ってはおられますが、親しいお方が離れて行くことは、やはり哀しいことでございます。
下賜される品々の中に、一面には、日がうらうらと差している田舎の風景、もう一面には、都の然るべき御屋敷に雨が激しく降っている絵が描かれている扇がございました。
そして、
『茜さす日に向かひても思ひ出でよ 都は晴れぬながめすらむと』
と、御自らの御手でお書きになられているのが、まことにいたわしい限りでございます。
(第二百二十三段・御乳母の・・、より)
哀しき別れ
御乳母の大輔の命婦が、定子皇后のもとを離れて、日向に下ることになりました。
皇后さまは、身重の御身体でもあられ、そのためもあって帝の御成りも絶えがちな折から、気丈に振舞ってはおられますが、親しいお方が離れて行くことは、やはり哀しいことでございます。
下賜される品々の中に、一面には、日がうらうらと差している田舎の風景、もう一面には、都の然るべき御屋敷に雨が激しく降っている絵が描かれている扇がございました。
そして、
『茜さす日に向かひても思ひ出でよ 都は晴れぬながめすらむと』
と、御自らの御手でお書きになられているのが、まことにいたわしい限りでございます。
(第二百二十三段・御乳母の・・、より)