『 新古今和歌集を楽しむ 』 ご案内
「新古今和歌集を楽しみたい」というのが、本稿の目的です。
わが国の古典文学において、歌集ということになりますと、『万葉集』・『古今和歌集』・『新古今和歌集』の三つの歌集が代表的なものとする分には、まず、異論はないと思われます。
これらのいずれの歌集についても、様々な形で紹介されており、多くの研究書や解説書も発行されています。
本稿は、そのような研究の書ではなく、『新古今和歌集』に掲載されている和歌の幾つかを、純粋に楽しみ、少しばかりその和歌の背景らしいものを探ってみようというのが目的です。
第八番目の勅撰和歌集
『新古今和歌集』は、第八番目の勅撰和歌集です。
勅撰和歌集とは、天皇あるいは上皇の命により編纂された和歌集をいいます。勅撰和歌集は、『古今和歌集』を最初に、全部で二十一作られていますが、これらを総称して「二十一代集」と呼ばれています。因みに、一番目から三番目まで、具体的には古今和歌集・後撰和歌集・拾遺和歌集を「三代集」といい、一番目から八番目の新古今和歌集までを「八代集」といい、九番目の新勅撰和歌集から最後の新続古今和歌集までを「十三代集」といいます。
成立の経緯
後鳥羽院は、建仁元年(1201)に和歌所を設置し、源通具・藤原有家・藤原定家・藤原家隆・藤原雅経・寂蓮の六名に、「上古以来の和歌を撰進せよ」という院宣を下しました。ただ、寂蓮は翌年に死去しているので実質的には選者は五人ということになります。また、最終決定には、後鳥羽院が相当関与したらしいので、選定には後鳥羽院の意向が強く働いている可能性があります。
さらに、新古今和歌集という名前からも分かるように、古今和歌集を相当意識したうえで選定が進められたようです。そして、「上古以来の和歌を撰進せよ」という命と共に、これまでの勅撰集に選ばれているものは除外するようにされていたようですが、万葉集については勅撰集ではないことから除外の対象にはなっていません。
その規模は、20巻、1978首となっており、古今和歌集の20巻・1100首を上回っています。
歌風ならびに代表歌人
「新古今調」といわれるのは、妖艶な情調、幻想的、韻律的といった評価がされており、題詠・本歌取り・体言止めといった技巧が重視されている面があり、これらの特徴が、新古今和歌集の評価を高めたり、一部の人には酷評される原因になっているようです。
因みに、「万葉調」は、「ますらおぶり」といわれるように、雄健さがその特徴とされ、「古今調」は、万葉調に対比される形で、「たをやめぶり」といわれ、優美、繊細、理知的さが特徴とされています。
新古今和歌集に代表される歌人として、選歌数の多い順に挙げてみますと、
①西行 94首 ②慈円 92首 ③藤原良経 79首 ④藤原俊成 72首
⑤式子内親王 49首 ⑥藤原定家 46首 ⑦藤原家隆 43首
⑧寂蓮 35首 ⑨後鳥羽院 34首 ⑩俊成女 29首 ・・・
以上とは別に、古い時代の歌人をあげてみますと、
①紀貫之 33首 ②和泉式部 25首 ③柿本人麻呂 23首 ・・・
となります。
本稿での選定基準
本稿では、新古今和歌集に掲載されている1978首の中から100首余りを取り上げてみたいと考えています。
その選定基準は、文学的な優劣、これまでの評価といった面はまったく考慮しておりません。
選考基準はただ一つ、筆者の好みだけですので、その点はご承知おきください。とはいえ、若干配慮しましたことは、一部の作者に偏らないこと、作者や時代背景の魅力等については加味しております。
また、新古今和歌集そのものは、春の歌・夏の歌・・・というように、テーマごとに分類されていますが、本稿はあえてランダムに掲載しています。
はたして、新古今和歌集の魅力をどの程度ご紹介できますかと不安な面もありますが、ぜひ、ご愛読いただきますようお願い申し上げます。
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