『 科学とは、それほど乱暴な結論を唱えるものではないと思う 』
人が亡くなるとお星様になる。
幼い頃、こんな話を聞いたことがあります。大人になってから、同じことを幼い子どもに話したことがあります。
こんな他愛もないお話、なぜか淋しく、哀しいものを含んでいます。
( 中略 )
亡くなった人の魂が星になるなんて、科学的に見れば全くナンセンスと言った人がいます。はるか遠い星でさえ、構成されている物質が分る時代だというのです。
しかし、科学とは、それほど万能なものなのでしょうか。
月や星の構成物質が解明されたことが、そんな星たちが今生を旅立った魂たちの安らぎの場であるということを、明快に否定することだとでもいうのでしょうか。
科学とは、それほど乱暴な結論を唱えるものではないと思うのです。
( 「小さな小さな物語」第一部 NO.24 より )
2009.02.15 投稿分
『 相当難しい文字でも多くの人が読めるようになり、かなり易しい文字でも殆どの人が書けない時代 』
「ばら」って、どう書きますか?
バラ、ばら、薔薇、このうちのどの文字を主に使うかということですが・・・。
「『薔薇』という字が書けますか」とか、「『薔薇』という字はこのように覚えます」などといった話を、テレビなどで聴くことがあります。いかに難しいかということだと思います。
私は漢字で書くことができませんので、手書きの時は「ばら」とひらがなで書きます。
最近目にする文章は、パソコンや携帯電話で打ち出されるものが多いためか、やたら難しい漢字が目立ちます。相当難しい文字でも多くの人が読めるようになり、かなり易しい文字でも殆どの人が書けない時代が来つつあるように思われます。
( 「小さな小さな物語」第一部 NO.4 より )
( 2008.12.14 投稿分 )
『 「雪」も重要な舞台装置になっている 』
遙か昔、古代文明が生れたとされる所は暖かい地方のようで、古代人にとって、厳しい寒さや雪深い土地はやはり生活がしにくかったのでしょうね。
( 中略 )
多くの日本人の郷愁が北国を向いているのは何故なのでしょうか。
それは、歌謡曲に歌われるのが、北に向かうものが、南に向かうものに比べて圧倒的に多いことから分るのですが、その魅力は何なのでしょうか。
人の心をつかむ重要な要素である、淋しさや、切なさや、哀愁などが、北国に似合うからかもしれませんが、「雪」も重要な舞台装置になっているように思うのです。
( 「小さな小さな物語」第一部 NO.18 より )
( 2009.01.25 投稿分 )
『 小さな小さな物語は、大きな大きなダリアの物語でスタートしました。』
ダリア(皇帝ダリア)の花が咲きました。
淡い赤紫の八重の花が、たった一輪。
いつの話かって、ですか?
もちろん今朝のことです。2008 年 12 月 5 日のことです。
( 中略 )
小さな小さな物語は、大きな大きなダリアの物語でスタートしました。
荒れ気味の天候ですが、健気な一輪が咲いてくれた朝、小さな小さな幸せを感じながら、第一回を書くことができました。
☆ ☆ ☆
( 「小さな小さな物語」第一部 NO1 2008 . 12 . 05 作成分より )
『 故郷・故里・古里・ふる里・ふるさと・・、どの書き方をしても、郷愁を誘うような独特の雰囲気を持っています。 』
今年もはや年の瀬となりました。
多くの人がふるさとに向かって移動しています。
それにしても、「ふるさと」というのは良い響きですね。
故郷・故里・古里・ふる里・ふるさと・・、どの書き方をしても、郷愁を誘うような独特の雰囲気を持っています。
ふるさとで、年の瀬や正月を迎える方々は、その幸せをかみしめて欲しいものです。
残念ながら、ふるさとと呼べる所のない人や、今回帰郷が叶わなかった人は、せめて、十分でも二十分でも、父や母のことを考えてみる時間を作って欲しいものです。両親ともに健在の人はもちろんのこと、すでに他界されている人であればなおさらのことです。
☆ ☆ ☆
( 「小さな小さな物語」第一部 NO9 2008 . 12 . 29 作成分より抜粋 )
『 これが私の夢の値段です。高いですか? 安いですか? 』
宝くじを買いました。
( 中略 )
しかし、人生には思い通りにならないことが多く、物事には万が一ということがあります。
多分、あり得ないことですが、私の宝くじが1等に当たらないことも起こりうることかもしれません。
そこで、寛大な性格の私は、投下資金の回収方法を考えました。
その結果、1枚あたり300円の回収方法が見つかりました。
宝くじを買った時、お姉さんがにこやかに応対してくれましたので、それが10円として、残りの290円が夢を描く値段です。20日あるとして、1日あたり、14円50銭分夢を描くことができれば、まあ、元は取れるわけです。
これが私の夢の値段です。高いですか? 安いですか?
☆ ☆ ☆
( 「小さな小さな物語」第一部NO2 2008.12.8 作成分より )
『 平安王朝の絶頂期の大輪の花・馬内侍の生涯を伝えられることが、余りに少ないのが、重ね重ねも残念である。 』
平安王朝における女性ナンバーワンは誰なのか。
( 中略 )
梨壺の五歌仙とは、赤染衛門・和泉式部・紫式部・伊勢大輔、そして、馬内侍なのである。
いずれも当時一流の歌人であり、教養豊かな女房として宮廷内に知れ渡った人物であり、馬内侍もその中に加わって何の遜色も女房だったはずであるが、なぜか、現代の私たちには、正当な評価がなされていないように思われる。
今回は、この大輪の花といえる女房の生涯の一端を覗いてみる。
( 中略 )
当時の貴族層の姫の結婚適齢期は、十五歳前後と推定されるので、三十五歳というのは全盛を過ぎつつある頃と考えられるが、時代を背負って立つことになる若き藤原道長を惹き付けてやまない容色を保っていたことが窺えると思うのである。
真偽のほどはともかく、馬内侍との恋の噂が伝えられている人物は多く、しかも、その身分の高さに驚く。
名前と最高位を列記してみよう。
藤原朝光 大納言
同 伊尹 摂政・太政大臣
同 道隆 摂政・関白・内大臣
同 道兼 関白・右大臣
同 実方 左近中将・陸奧守
同 道長 摂政・太政大臣
同 公任 和歌の大家。大納言
といった具合である。
( 中略 )
馬内侍は、ほどなく宮中を去っている。
「この世をば我が世とぞ思ふ・・・」とまで歌われた道長の絶頂期の頃である。
その後は出家して、宇治院に住んだと伝えられている。
没年は不詳であるが、寛弘八年( 1011 )の頃とも伝えられている。享年は六十余歳と思われる。
平安王朝の絶頂期の大輪の花・馬内侍の生涯を伝えられることが余りに少ないのが、重ね重ねも残念である。
最後に、馬内侍歌集から一首挙げておきたい。
『 飛ぶ蛍まことの恋にあらねども 光りゆゆしき夕闇の空 』
☆ ☆ ☆
( 「運命紀行」大輪の花 より )
『 詰めかけていた大勢の人たちは、沈みきった雰囲気に堪えかねて、要領の良い人から順番に、一人去り、二人去り、家の中はさらに静かになっていきます。 』
いよいよ受領が決定される日ともなりますと、集まってくる人の数はさらに増えて、出されるご馳走を食い散らかし、酒を飲みまくり、まるでお祭りのような騒ぎです。
やがて夜も更けて、騒ぎ疲れた頃になっても、任官を伝える使者が訪れる気配がありません。さすがに、飲み食いに励んでいた人たちも様子のただならぬのを感じてか、「どうもおかしいな」などと、ささやき合い始めます。
外の様子などを耳を澄ませて窺っていますと、先払いの声などが聞こえてきて、上達部(カンダチメ・上級貴族)たちが次々と内裏から退出なさっています。
情報を掴む為に内裏近くに行かせていた下男の姿を見つけても、事の結果を訊ねることも出来ません。
( 中略 )
やがて、詰めかけていた大勢の人たちは、沈みきった雰囲気に堪えかねて、要領の良い人から順番に、一人去り、二人去り、家の中はさらに静かになっていきます。
しかし、永年の恩顧のある人や郎等たちは逃げ出すことも出来ず、「来年国守の交替があるのは、あそこと、あそこと・・」などと指を折っているのです。
「すまじきものは宮仕え」とか申すそうですが、なんとも、はい・・・。
( 「麗しの枕草子物語」 より )
『 実に優雅で、感動的なお話ではございますが、事と次第ではお里の名誉にも関わることであり、やんごとなき方々の学問は、まさに命がけでございますねぇ。』
村上帝の御時でございます。
宣耀殿(センヨウデン)の女御というお方は、小一条の左大臣の御姫でございます。
そのお方が、まだ姫君であられた頃、父君がお教えになられたことは、
「第一に、お習字の稽古をしなさい。次には、琴を上手に弾けるように心がけなさい。その上で、古今集二十巻を全部暗誦することを学問としなさい」
というものでした。
( 中略 )
この女御の教養の高さは、宮中で誰一人知らない者が
いないほどになり、ついに、帝が古今集二十巻すべてを
暗誦しているか試してみようということになる。
この様子を、女御に仕えている女房が、お里の大臣家にお伝えしたものですから、大臣殿はじめ皆さま大変心配なされ、経を唱えさせ、宮中の方角に向かってお祈りし続けたそうなのです。
実に優雅で、感動的なお話ではございますが、事と次第ではお里の名誉にも関わることであり、やんごとなき方々の学問は、まさに命がけでございますねぇ。
☆ ☆ ☆
( 「麗しの枕草子物語」より )
『 とうとう、あなたが翁丸贔屓であることが露見してしまいましたね 』
わたしは、御鏡を投げ出すようにして、翁丸に声をかけました。
翁丸は身を伏せて、応えるように激しく啼くのです。
中宮さまも、安心したかのように微笑んでいます。
帝も姿を見せられて、「犬でも、そのような神妙な気持ちを持っているのだなあ」と感心されていました。
わたしは、「はやく傷の手当てをさせなくては」などと翁丸の世話を始めますと、
「とうとう、あなたが翁丸贔屓であることが露見してしまいましたね」
と、女房たちが笑うのです。
☆ ☆ ☆
( 「麗しの枕草子物語」より )