雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

トランプ米前大統領に有罪評決

2024-05-31 18:31:57 | 日々これ好日

   『 トランプ前大統領に有罪評決 』

  トランプ前大統領をめぐる ニューヨーク州の裁判で
  陪審員12人は 起訴されている34件すべてに対して
  全員一致で 有罪評決を下した
  この後は 判事が量刑を決める審理に入る
  米国の裁判制度は わが国と大分違うようだが
  大統領経験者が 刑事事件で
  有罪評決を受けるのは 史上初だとか
  さて 接戦が噂されている
  秋の大統領選挙への 影響や如何に

               ☆☆☆ 

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若宮の誕生 ・ 望月の宴 ( 111 )

2024-05-31 07:59:43 | 望月の宴 ③

     『 若宮の誕生 ・ 望月の宴 ( 111 ) 』


さて、たいそうな大騒ぎのすえ、無事にお産をなさった。
とても広大な御邸の内に詰めている僧も俗も、上の者も下の者も、もう一つの御事がまだ終っていないので、額を地に打ちつけて祈っている様子などは、想像いただきたい。
その後産も無事にお済みになり、中宮をお寝かせなさった後は、殿(道長)をはじめとして、その辺りの多くの僧俗たちはしみじみと嬉しく、めでたいことである上に、お生まれになったのが男子でいらっしゃったので、その喜びは並大抵のものであるはずもなく、素晴らしいなどではとても及ばない。

今はすっかり安心なさって、殿も上(倫子)もご自分の御部屋にお渡りになり、御祈りに奉仕なさった人々、陰陽師や僧侶たちすべてに録をお与えになられたが、その間も、中宮の御前には年配のお産などに経験のある女房たちが伺候し、まだ若い女房たちは離れた所々で休息して横になっている。
御湯殿の儀など、その儀式はたいそう立派に行われる。そして、御臍の緒を切る儀は、殿の上(倫子)が、こうした事は仏罰を受けることになるとかねてお思いであったが(そういう俗説があったらしい。)、ただ今の嬉しさに、何もかもお忘れになってお勤めになった。
御乳付け(チツケ・初めて乳を含ませる役。乳母とは限らない。)には、有国の宰相(藤原有国。従二位参議。)の妻で、帝の御乳母である橘三位(キノサンミ・橘徳子)がお勤めになった。
御湯殿の儀なども、長年親しくお仕えになっている人をお役にお当てになった。御湯殿の儀式については、言葉にすることが出来ないほどすばらしい。

そうそう、帝(一条天皇)からは、御剣(ミハカシ・守り刀)が即刻届けられた。御使者は、頼定の中将(源頼定。正四位下、蔵人頭、左近衛中将兼美作守。)であった。その際の禄は格別の物であっただろう。実は、伊勢の御幣使(ミテグラヅカイ)もまだ帰参していなかったので、帝の使いもみだりに長居することは出来ない。(伊勢神宮に遣わされた御弊使が帰参するまでは潔斎する必要がある、ということらしい。)
女房たちはみな白装束と見受けられたが、包、袋、唐櫃など運んできて、これからの儀式に備えて衣装の準備を急いでいる。

御湯殿の儀式は酉の時(トリノトキ・午後六時前後。)に行われるとのことである。
その儀式の有様は、とても言葉で尽くせるものではない。
火をともして、中宮職の下役共が、緑の衣(六位の衣の色。)の上に白い当色(トウジキ・儀式により決められている色。出産の場合は白。)を着用して、お湯をお運び申し上げる。すべての物に白い覆いがされている。中宮(彰子)の警護の侍の長である仲信(六人部仲信)が担いで、その桶を御簾のもとに差し上げる。
中宮の御厨子所の女官二人が正装して、その桶を取入れては湯加減良くうめて、それを御瓫(ホトギ・水を入れる土器。)に入れる。十六個の御瓫である。

女房たちはみな白い装束を着用している。御湯殿で着用する湯巻(イマキ・腰に巻く白い正絹の布。)も同様である。御湯をおかけする御役は、讃岐の宰相の君(藤原豊子。道綱の娘で、讃岐守大江清通の妻。)、御迎え湯の御役(補佐役)は、大納言の君(倫子の兄弟の娘で、道長の寵愛を受けた女性、らしい。)である。
若宮は殿(道長)がお抱き申し上げている。御剣は小宰相の君(小少将の君が正しいらしい。源扶義の娘。)、虎の頭(作り物で、魔除け。)は宮内侍(ミヤノナイシ・橘良芸子、元東三条院詮子の女房。)が持って先頭に立って参上する。御弦打(オンツルウチ・鳴弦の儀。魔除けのために弓の弦を鳴らす。)は五位の者十人と六位の者十人が勤める。御文博士(オンフミハカセ・漢籍のめでたい一節を読む儀式がある。)には蔵人弁広業(ヒロナリ・藤原有国の子。文章博士。)が高欄のもとに立って、史記の第一巻を朗読する。護身の加持の役には浄土寺僧都(前権少僧都明救。延暦寺の僧。)が伺候されている。雅通の少将(源氏。従四位下右近衛少将。倫子の甥。)が撒米(ウチマキ)をして大声を挙げていて、僧都に振りかけているが、僧都が知らぬ顔をしているのが可笑しい。

女房たちの白装束がさまざまなのも、まるで墨絵のような風情であるのも奥ゆかしい。日ごろ我も我もと大騒ぎして用意していた白装束を見ると、禁色を許された者も、織物の裳にせよ唐衣にせよ、同じ白色なので、何とも見分けがつかない。禁色を許されていない者も、少し年長の者は、五重の袿に無紋の織物などの白い唐衣を着ているのも、それはそれなりに見える。
扇なども、わざとらしく華やかにはしていないが、いかにも上品ぶった様子の気配りされた古歌などが書かれていて、それがいかにも似合っている。
年若い女房たちは、刺繍や螺鈿(貝細工)を施したり、袖口に縁飾りをし、裳の縫い合わせを左右から太い銀糸でかぶせ縫いをしたり、あれこれと浮き立っている。
雪深き山を、明るい月の光りのもとで見渡したかのような様子である。とても、この様子を正しく伝えられるものではない。

     ☆   ☆   ☆

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神戸須磨シーワールド

2024-05-30 18:52:39 | 日々これ好日

     『 神戸須磨シーワールド 』

  「神戸須磨シーワールド」が 6月1日に開業する
  須磨海浜水族館を 建て替えリニューアルしたもので
  スケールも 入場料金も 大幅アップ
  シャチの 豪快で愛らしい姿が 人気を呼びそうで
  ホテルも併設され かなりの集客力が 期待できそうだ
  家族全員で一泊となると かなりの出費になるが
  周辺の景勝地も合わせ 人気を呼びそうだ

                  ☆☆☆

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ハラスメントを考える ・ 小さな小さな物語 ( 1772 )

2024-05-30 08:00:37 | 小さな小さな物語 第三十部

つい最近、続けさまに「カスハラ」に関するニュースをテレビで見ました。
カスハラ、つまり、カスタマーハラスメントのことですが、交通機関での例、ある販売店での例、自治体での例などが紹介されていました。
いずれも、顧客であることや利用者であることがまるで正義でもあるかのように、職場の一員である弱みにつけ込むかのように、過剰な暴言、要求などを突きつけ、土下座までさせたと報道されていました。
自治体に対するある調査では、回答のあった自治体のうちカスハラ被害を受けたと言う自治体が八割にも及んだそうです。

多くの企業において、クレーム対策は避けて通れない分野です。
ある経営者は、「クレームこそが商品開発や接遇向上のための教科書だ」と語られていました。実際に、クレームデーターを経営に生かしている企業があるようです。
私自身も、若い頃には勤務先で「苦情処理」の矢面に立ったことがありました。かつては、「苦情処理」という言葉は結構使われていましたが、今日では、こんな言葉を使えば、それだけで「カスハラ」の絶好のターゲットになるのでしょうねぇ。
それにしても、放送されている内容を見ますと、企業がもっとしっかりと社員を守る体制と、それが可能な法体制が必要だと思いました。
今回見た番組ではありませんが、同様の番組で、顧客が「『お客様は神さま』だろう」と悪態をつく場面がありました。
『お客様は神さまです』という、ある大歌手の名文句はいまだに健在のようですが、顧客は顧客であり、利用者は利用者に過ぎません。神さまでも何でもないのです。
「お客様は神さま」という考え方は、あくまでサービスなどを提供する側が心がけ、自らを戒める言葉のはずです。顧客や利用者が「お客様は神さまだ」と考えるのは、無知であり傲慢であると思うのです。

それにしても、世の中はハラスメントに溢れているようです。
「セクハラ(セクシャルハラスメント)」「パワハラ(パワーハラスメント)」あたりは問題視されはじめてから時間も経ち、対処方法や法的措置もかなり進んでいますが、立場の弱い人を苦しめるハラスメントは、数多く存在しています。
「モラルハラスメント」「マタニティーハラスメント」「アルコールハラスメント」「カラオケハラスメント」「リモートハラスメント」「ためいきハラスメント」等々、五十以上あるそうです。
「セカンドハラスメント」は、ハラスメントを受けた人が誰かに相談した場合に、それを広げられたり、誰でも経験していることだ、などと言われたりして、さらに辛い立場になる被害を言います。
「ハラスメント・ハラスメント」は、部下などからパワハラだと過剰反応されたり、それを恐れて注意も出来ないことを言うようです。

上記したハラスメントの中には、最近発生したものもありますが、多くは、昔からあるもので、近代になって闇の部分に日が当たり始めたからで、歓迎すべき現象ということはできます。
ただ、この種の犯罪で、亡くなった人や、深刻で回復困難な被害を受けた人も少なくありません。法的整備も含めて、社会の抑止力が追いついていないことは明らかです。
また、明らかな犯罪に当たるような事象は別ですが、例えば、「セクハラと恋愛感情」「パワハラと指導」と言ったように、正常な行為と紙一重の事象もあるのは事実です。
最近、とみに「何々ハラスメント」が増えている原因の一つは、様々な人間関係に温もりのようなものが薄れているような気がするのです。同時に、「なまじ温もりのある関係がハラスメント問題を深刻化させている」という声もあるそうですから、頭を抱えてしまいます。
せいぜい、加害者にだけはならないように心がけることにします。

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王貞治さんの元気な姿

2024-05-29 18:52:23 | 日々これ好日

    『 王貞治さんの元気な姿 』

    プロ野球の セパ交流戦が始まった
    昨夜の ソフトバンク-巨人戦は
    巨人の球団創設90周年を 記念して
    『王貞治デー』のイベントが行われた
    王貞治さんは ソフトバンクの球団会長を務めているが
    福岡に来て30年になる と話されていた
    感慨深い イベントだった

                ☆☆☆ 
    

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鬼の寝屋島 ・ 今昔物語 ( 31 - 21 )

2024-05-29 08:00:44 | 今昔物語拾い読み ・ その8

      『 鬼の寝屋島 ・ 今昔物語 ( 31 - 21 ) 』


今は昔、
能登国の沖に寝屋(ネヤ・幾つかの島があるが不詳。)という島がある。
その島では、河原に石があるように、鮑がたくさんあるというので、その国の光りの島という浦に住む海人(漁師)共は、その鬼の寝屋島(こう呼ばれていたらしい。)に渡って、鮑を捕り、国司に租税として納入した。その光りの浦より鬼の寝屋島までは、船で一日一夜走って行ける距離である。

また、そこからさらに先に猫の島(舳倉島らしい?)という島がある。鬼の寝屋島からその猫の島へは、追い風を受けて一日一夜走って渡れる距離である。
されば、その距離を思い計ると、高麗に渡るほどの遠さはあるのではないか。しかし、その猫の島へは[ 欠字。「難しい」といった言葉らしい。]にて、人は行かないようだ。

さて、光りの浦の海人は、その鬼の寝屋島に渡って帰ってくると、一人で一万もの鮑を国司に納めた。それも、一度に四、五十人も渡るので、その鮑の数の多さは大変なものである。
そうした時、藤原通宗朝臣( 1084 年没)という能登守が任期が終わる年、その光りの浦の海人共が鬼の寝屋島に渡って漁をして返り、国司に鮑を納めたが、国司はさらに出すように命じたので、海人共は困ってしまい、越後国に渡っていってしまったので、その光りの浦には一人の海人もいなくなり、鬼の寝屋島に渡って鮑を捕ることが絶えてしまった。

されば、人がむやみに欲心を起こすことは愚かな事である。一度に多くの物を取ろうとしたために、後には一つさえ取れなくなったのである。
今でもその国の国司は、鮑を手にすることが出来ないので、実につまらないことをしたものだと、その国の者共もあの通宗朝臣を非難している、
となむ語り伝へたるとや。

     ☆   ☆   ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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大雨の一日

2024-05-28 19:12:24 | 日々これ好日

     『 大雨の一日 』

    当地は ほぼ一日中 雨
    大雨警報も出され かなり激しい時間帯もあった
    幸い 被害などはないが 
    交通機関では 運休も出ている
    当地は 峠は過ぎたようだが 
    関東などでは さらに激しくなるようだ
    くれぐれも ご無理をなさらないように

               ☆☆☆

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奈良の都も

2024-05-28 07:59:35 | 古今和歌集の歌人たち

     『 奈良の都も 』


 人ふるす 里をいとひて 来しかども
        奈良の都も 憂き名なりけり 

          作者  二条 

( 巻第十八 雑歌下  NO.986 )
        ひとふるす さとをいとひて こしかども
               ならのみやこも うきななりけり


* 歌意は、「 ある人から古い女だと見捨てられて 里(京都を指している)が嫌になって ここまで来ましたが 奈良の都も 古都と呼ばれていて 辛い名前でありました 」といったもので、失恋を匂わせる歌のようです。
この歌の前書き(詞書)には、「 初瀬にまうづる道に、奈良の京に宿れりける時よめる 」とありますので、旅の途上で、少々感傷的になっていたのかもしれません。

* 作者の二条は、平安時代前期の宮廷女房と推定されますが、その情報はほとんど伝えられていないようです。
そうした中で、貴重な情報である「源至の娘らしい」というものを信じることにして、源至の足跡を追うことにしました。

* 源至(ミナモトノイタル)は、平安時代前期の貴族です。嵯峨天皇の孫という血筋ですが、正確な生没年は伝えられていません。
至の父の源定(ミナモトノサダム・815 - 863 )は、嵯峨天皇の皇子で、生母は女御の百済王教俊の娘です。嵯峨天皇には、皇后や妃、女御、更衣、あるいは多くの宮人がおり、その正確な数はとても確認できませんが、数十人といっても大げさではないようです。皇子・皇女となるとその何倍かにもなりそうです。従って、定には誕生の段階で皇位継承の可能性はなく、828 年、源朝臣の姓を賜与されて臣籍降下しました。
嵯峨天皇の皇子・皇女たちのうち、17人の皇子、15人の皇女が源朝臣姓を賜っており、嵯峨源氏と呼ばれる一族は多くが高位に昇り、宮廷政治において藤原北家と並び立つ勢力を有し、二世源氏の頃まで続いたようです。
定も、正三位大納言まで昇っています。

* 作者である二条の父の至は、851 年に無位から従五位下に直叙されています。おそらく、十五歳から遅くとも二十歳までの頃だったのではないでしょうか。二世源氏として厚遇されての叙爵でした。
その後は、武官を中心とした地位にあったようですが、858 年に就いた右兵衞佐(次官)は、以後20年ほども務めています。途中で相模守を兼務したりしていますが、これは、実務面よりも収入面で配慮されたものではないでしょうか。
885 年に右京大夫、886 年に従四位上に叙されているのが消息の最後です。この右京大夫というのは、京の司法・行政・警察などを担った京職(左京職と右京職の二つがあった。)の長官で、公卿に昇ることは出来なかったものの重職を務め続けていたようです。

* さて、本稿の主人公である作者の二条ですが、すべて推定となってしまいます。
父の年齢も不明ですが、おそらく 860 年を挟んだ前後十年ぐらいの間に誕生したのではないでしょうか。そして、880 年前後には成年に達していたのではないでしょうか。
その推定をもとにすれば、まだまだ二世源氏の娘として、あるいは嵯峨天皇の曽孫として認知されていて、恵まれた環境に育ったのではないでしょうか。
もし、女房として出仕していたとすれば、宮中あるいは相当高官の邸と考えられ、掲題の歌から受けるような、鬱々とした生涯では決してなかったと推定したいと思うのです。

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都知事選挙に蓮舫氏出馬表明

2024-05-27 18:59:45 | 日々これ好日

     『 都知事選挙に蓮舫氏出馬表明 』

   7月に行われる 東京都知事選挙に
   蓮舫参議院議員が 立候補すると表明した
   小池現都知事も 三選に向けて出馬の意向と伝えられている
   他にも相当数の人が 立候補の意向を表明しているようだが
   このお二人の戦いは 大いに興味がある
   自分に選挙権はないが
   首都の首長を決めるのに ふさわしい
   堂々とした 選挙戦を期待したい

                  ☆☆☆

 

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鬼の目にも涙 ・ 小さな小さな物語 ( 1771 )

2024-05-27 07:59:23 | 小さな小さな物語 第三十部

図書館で数頁だけ読んだ本の中に、「鬼の目にも涙」という言葉を見つけました。その時には、特に気に掛かるほどのこともなく、その本も借りなかったのですが、後になって、「鬼の目にも涙」という言葉だけが何故か気になりました。
そこで、ごくありふれた言葉ですが、少々調べてみることにしました。

まず手始めに、広辞苑で「鬼」を調べてみました。
『おに[鬼]』・・(「隠 ( おに ) で、姿が見えない意という )
「 ①天つ神に対して、地上などの悪神。邪神。 ②伝説上の山男、巨人や異種族の者。 ③死者の怨霊。亡霊。 ④恐ろしい形をして人にたたりをする怪物。もののけ。 ⑤想像上の怪物。仏教の影響で、餓鬼、地獄の青鬼・赤鬼があり、美男・美女に化け、音楽・双六・詩歌などにすぐれたものとして人間世界に現れる。後に陰陽道の影響で、人身に、牛の角や虎の牙を持ち、裸で虎の皮のふんどしをしめた形をとる。怪力で性質は荒い。 ⑥鬼のような人。(ア) 非常に勇猛な人。(イ) 無慈悲な人。借金取り。債鬼。(ウ) ある事に精魂を傾ける人。(エ) 鬼ごっこなどで、人をつかまえる役。 ⑦貴人の飲食物の毒味役。おにやく。 ⑧紋所の名。鬼の形をかたどる。めんおに。かたおに。 ⑨名詞に冠して、勇猛・無慈悲・異形・巨大の意をあらわす語。 」とありました。

実は、辞書で調べようと思いましたのは、「鬼」そのものの説明ではなく、慣用語のようなものを調べようと思ったのですが、例えば、掲題の「鬼の目にも涙」もその一つですが、「鬼」の説明の後にずらりと並んでいて、それを全部引用させていただくとなれば、とても、このコラムでは収まらなくなってしまいます。
つまり、「鬼」は私たちと実に密着した関係にある証拠のような気がしました。
辞書の⑤で説明されている鬼の姿は、わが国独特のもので、多くの妖怪の本家のような気がします。
「鬼」の概念は、中国から伝来したともされますが、中国の鬼(キ)は死霊を表していたようで、おそらく、その文字や概念が渡来したときには、すでにわが国の人々の中には、単に死霊や怨霊という概念を超えて、超能力的な存在として怖れ、あるいは畏れ、そして、時には頼り・すがる存在としてあったのではないでしょうか。

今勉強中の「今昔物語」にも、鬼は再三登場します。それも、様々な場面で登場してきます。
「今昔物語」は仏教の影響を強く受けた説話集ですから、地獄の獄卒や、亡くなった人を閻魔王のもとに連れて行く役人として登場しますが、この世の生活の中に入り込んでくる鬼も数多く登場します。
節分の豆まきでは、「福は内、鬼は外」と邪気を追い払うと説明されますが、一部の地域では、「福は内、鬼も内」と共存を目指している地域もあります。まあ、共存を目指しているのかどうかはよく知らないのですが。
さて、掲題の「鬼の目にも涙」ですが、実に味のある言葉だと思うのです。「残酷無慈悲な鬼であっても、時には、情にうたれて心を動かせるものだ」と受け取りたいのですが、今、私たち世界には、この言葉を思い浮かべて欲しい人が何人が存在しています。
その日の近いことを、切に祈るばかりです。

 

 

 

 

 

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