『 二 条 の 姫 君 』
序の章 懸命に生きた女性からの贈り物
これは、混乱の鎌倉末期を懸命に生きた女性の記録でございます。
物語の中心となる舞台は後深草院の御所であり、絢爛豪華な王朝文化のまっただ中であります。
しかし、時代は混乱の時期にさしかかっておりました。鎌倉幕府といえども、源氏直系の将軍は途絶えて久しく、その実権を握った北条政権も綻びが目立ち始めておりました。
国外からは、元寇の役と呼ばれることになる元の大軍が最初に襲来しましたのは、主人公が十七歳の頃でした。
世情は不安定さを増してゆき、日蓮上人や一遍上人が登場してきましたのもこの頃のことでございます。
主人公である二条の姫君が側近く接した皇室もまた同じでございました。
後嵯峨天皇の母を同じくする皇子であられます後深草・亀山の両天皇は、やがて持明院統と大覚寺統に分かれ、両統迭立の時代へと入っていくです。
この激しい時代に、数奇な運命にもてあそばれながらも、懸命に生きた証として書き残された物語を、姫さまのお気持ちをほんの少しばかり書き加え、時には省かせていただいた部分もありますが、姫さまが残されようとしたものを、可能な限りそのままに伝えさせていただくつもりでございます。
* * *
序の章 懸命に生きた女性からの贈り物
これは、混乱の鎌倉末期を懸命に生きた女性の記録でございます。
物語の中心となる舞台は後深草院の御所であり、絢爛豪華な王朝文化のまっただ中であります。
しかし、時代は混乱の時期にさしかかっておりました。鎌倉幕府といえども、源氏直系の将軍は途絶えて久しく、その実権を握った北条政権も綻びが目立ち始めておりました。
国外からは、元寇の役と呼ばれることになる元の大軍が最初に襲来しましたのは、主人公が十七歳の頃でした。
世情は不安定さを増してゆき、日蓮上人や一遍上人が登場してきましたのもこの頃のことでございます。
主人公である二条の姫君が側近く接した皇室もまた同じでございました。
後嵯峨天皇の母を同じくする皇子であられます後深草・亀山の両天皇は、やがて持明院統と大覚寺統に分かれ、両統迭立の時代へと入っていくです。
この激しい時代に、数奇な運命にもてあそばれながらも、懸命に生きた証として書き残された物語を、姫さまのお気持ちをほんの少しばかり書き加え、時には省かせていただいた部分もありますが、姫さまが残されようとしたものを、可能な限りそのままに伝えさせていただくつもりでございます。
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