春過ぎて 夏来にけらし 白妙の
衣干すてふ 天の香具山
作者 持統天皇御歌
( No.175 巻第三 夏歌 )
はるすぎて なつきにけらし しろたへの
ころもほすてふ あまのかぐやま
* 作者は、第四十一代天皇。( 645-702 )享年五十八歳。
* 歌意は、「 春が過ぎて、もう夏が来たらしい。白い夏衣を干すという 天の香具山に。」といったように、素直に解釈すべき歌と思われる。
この歌の原典は「万葉集」であるが、もとの歌は、「 春過ぎて 夏来(キタ)るらし 白妙の 衣干したり 天の香具山 」となっている。
* 持統天皇は、天智天皇の皇女であり、天武天皇の皇后でもある。
そして、わが国古代史上最大の戦いともいえる、壬申の乱における重要な鍵を握っている人物でもある。
また、大化の改新(乙巳の変)を経て、中大兄皇子(天智天皇)と大海人皇子(天武天皇)との微妙な関係、そして、壬申の乱を経て天武王朝とも表現できそうな飛鳥時代から奈良時代への大和王権の絶頂期を迎えているが、その中心人物といってよいほどの位置を持統天皇は握っていたように思われるのである。私見が強すぎるかもしれないが。
* この歌は、百人一首にも入選しているなど、古来評価の高い歌(和歌。但し、万葉集は長歌が中心。)であり、持統天皇を歌人として評価されることも多いが、古代史を学ぶ中では、最大級の政治家と考える方が正しいように思うのである。
☆ ☆ ☆