昨日はベートーヴェンの「第九」を聞きに、東京芸術劇場に行きました。
小林研一郎指揮、日本フィルハーモニー管弦楽団
ソプラノ 管英三子
アルト 栗林朋子
テノール 錦織健
バリトン 福島明
入場券はA席でしたが、2階の舞台の袖の上の一列の座席RB A列17番
この席は普段はC席のようです。アリャリャ・・・
さて、前半のパイプオルガンの演奏が終わり、まず、合唱団員の入場、女房の友人はソプラノで後列から2番目。合唱団員の数は200名ほど。その後、オーケストラ団員が入場します。
そしてチューニング、あれ!コンサートマスターのバイオリンの音が、ずいぶん明瞭に聞こえて来る。座っている席のためのようです。一緒に行った女房も同じことを感じていました。
小林研一郎(以下コバケン)指揮・日本フィルハーモニーの演奏は、これまでチャイコフスキー4番から6番、ベートーヴェンの第7、新世界、幻想交響曲、我が祖国などを聞いています。
指揮者のコバケンが登場し、拍手の後の静寂・・・、座っている席が指揮者を斜め前から見ることが出来て、しかも近い。この時、私には何か殺気だったような感覚がしました。すごい緊張感が走ります。何回となく第九を聞いていますが、このような体験は初めて。
そして、フルトヴェングラーが「地獄の底から聞こえてくるように」と演奏者に言ったという冒頭、バイオリンの弱い音のトレモロとホルンの音が聞こえてきました。
早くも第九の演奏の中に溶け込むことが出来るようになりました。
小柄なコバケンの指揮はかなりアクションが大きい。しかし、それが自然に感じられるのがとても良い。効果的に間を取り、メリハリの良い音が聞こえてきます。座っている席にもよるのかも知れませんが、特にティンパニーと大太鼓が鋭い音で聞こえてきました。
また、コバケンの左手は時々、親指と人差し指で○を作ります。これは今の演奏は「とても良いよ」のサインだと思うのですが、楽団員が安心して演奏できるようにという気配りでしょう。ただ正面席からでは見えないのではないかと思います。
また、指揮棒を振らず、オケの自由な演奏に委ねるという部分も結構ありました。
第九はベートーヴェンの他の交響曲と異なり、第2楽章がスケルツォ、第3楽章が緩徐楽章となっています。私は第3楽章の田園的な響きが好きなのですが、胸を反らし顔を天井に向けて、悲しそうな?あるいは陶酔的な表情で指揮をしている表情が印象的でした。聞いているというのではなく、’見ている’人にも美しい楽章に思えてきます。
また、第3楽章はピチカート奏法が多用されます。とても良く聞こえてきたので、こんなにも使われていたのかと認識を新たにしました。
第4楽章では、歓喜の歌の主題が初めて演奏される部分があります。コントラバスとチェロの低音による演奏、次にヴィオラと一部の管楽器、バイオリンが加わり全楽合奏と移っていきます。 この部分は音がホール左側から右側に低音→高音とステレオ効果が出て魅力的な演奏となり、そして歓喜の歌への大きな伏線となる部分です。
第九ではいつもこの部分を注目して聞いているのですが、コバケンはこの部分に入る前に、ずいぶんと長い間を取りました。私にはエェッと思えるほどの時間でした。しかし、緊迫感を持つことができて良かったと思います。おそらく、ここでこんなに間を取る指揮者は数少ないのではないかと思います。
この歓喜の歌の主題演奏が終わるころ、そしてバリトンの「オー・フロイデ・・・おお友よ、このような音ではない」で始まる独唱の少し前に、座っていた合唱団がすくっと立ち上がりました。いよいよだなと感じさせるに十分な演出でした。
合唱も良く訓練され、独唱者もそろい、聴き応えのある”歓喜の歌”だったと思います。
特に、合唱の聞き応えのあるところでは、コバケンが観客席に向かって、この声が舞台から観客席に届くようにと右手を大きく回して指さします。歌う人達の気持ちが盛り上がって行くようなアクションでした。
テノール(錦織健)独唱の部分では、ピッコロが大活躍。高音の鋭い音が私の席まで聞こえてきました。ピッコロがこのように鳴るというのは初めて経験しました。私のホームシアターのアンプとスピーカーは、高音は出る方だと思うのですが、ピッコロの音はそれほどではありません。
このピッコロの音にはさすが生演奏と感動しました。女房はフルートの音が良く聞こえてきたといっていました。席が近かったことによるのでしょう。ファゴットの位置は特に席に近く、筒を斜めに持ち、こちら側に向けるのでなおさら、良く聞こえたと思います。ああ、ファゴットの音がここにこう入っているのだというのも斬新に感じられました。
この席で、聞くのは全体のアンサンブルが乱れて聞こえるのではないかと心配しましたが、特に問題はなく、音のセパレーションが素晴らしいと思いました。かえって第九の演奏が楽しめる、”良い席”だったと思います。東京芸術劇場の大ホールは木張りが主体で、椅子も木製なので響きが良いこともあったかも知れません。 最初とアリャリャ思った席は、今回の演奏を聴くのに、かえって良い席になりました。
最後に終わった時のカーテンコール。長い時間をかけて、コバケンが演奏者・出演者に挨拶させるシーンが続きました。しかし、一人として、本当に一人として席を立つ人がいないのには驚きました。”炎の指揮者”コバケン人気ここにありと感じました。
コバケンの年末の口頭による挨拶があり、ホールが明るくなり、やっと解散になりました。
31日のパーボ・ヤルヴィ指揮N響の第九を再び聞いて、聴き納めとしたいと思います。 私は紅白歌合戦を聞かない派なのです。でもNHKは支持。