2021/8/24 NHK BSシネマ
藤沢周平の短編小説を映画化。海坂藩の要職を務める寺井家の一人娘・以登(いと)は
幼い頃から父の手ほどきを受けた剣の達人だった。
以登は、一度だけの試合で剣を合わせて以来、下級武士で藩内一の剣士・江口孫四郎に、
ひそかに思いを寄せていた。
ある日、孫四郎が幕府に対する江戸の使者となった折りに、自害したことを知る。
以登は、許婚片桐才助の手を借りて事件の真相を調べると孫四郎の妻、加世の不倫相手である
藤井勘解由の卑劣な罠にかかって自ら命を絶ったことが分かる。
以登は勘解由を呼び出して詰問しようとしたが、勘解由が口を封じようと刀に手をかけたため、
懐剣で一刺しに返り討ちする。
【原作】藤沢周平
【監督】中西健二
【出演】以登・・・北川景子、
江口孫四郎・・・宮尾俊太郎
片桐才助・・・甲本雅裕
江口孫四郎・・・宮尾俊太郎、
藤井勘解由・・・市川猿之助
【製作】東映、2009
満開の桜の下で、江口孫四郎に声をかけられる以登。
孫四郎に一度手合わせをしたいと申し出られ、以登は同意する。
以登は、藩内一の剣士・江口孫四郎と竹刀での手合わせを父・寺井甚左衛門の立ち会いの下、行う。
敗れはしたが以登は、孫四郎に竹刀を打ち込む中で胸を焦がしている自分がいることに気がつく。
それは紛れもなく初めての恋心であったが、互いに家が定めた許婚がいるため、以登は孫四郎への想いを断ち切る。
剣の手合わせのあと、孫四郎に茶を出す以登。茶道の礼儀・作法をばかりでなく、襖や障子の開け閉めなどの所作も美しい。
これは、登場する女性の多くに言えることで、当時の女性を魅力的に描いている。
月山(鶴岡市・・・日本百名山)をはじめとして、東北地方の桜の季節、新緑の季節、紅葉の季節、冬景色など、
その時々に応じて豊かな自然が描かれているのが魅力的である。
父より孫四郎が江戸で自害したと聞き。悲しみに沈む以登
この知らせの前後で映し出される雪景色。この寂しげな風景は、以登の心象風景か?
藤井勘解由を河原に呼び出し、敵討ちに臨む以登。勘解由の取り巻きを3人すでに切り捨てたが、
この時、右手に怪我を負ってしまっている。
敵討ちのあと、けがを負った以登に応急手当をし、後始末をする許婚の片桐才助。
【感想】一度、剣の手合わせをし魅力を感じるが、お互いに許婚がおり、以登はひそかに熱い思いだけを抱かざる
を得なかった。敵討を果たした後も心は晴れなかったようである。それは、題名の「花のあと」にも出ている・・・
しかし、ラストシーンで語られる50年後、以登はたいへん幸せになっている。
実は夫となった片桐才助はすごい男であった。
北川景子の美貌は凜として爽やか。殺陣も見事だった。全般的に静けさをたたえる映画だが、詩情豊かな名画である。