めいすいの写真日記

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映画「近松物語」・・・巨匠溝口健二監督 4Kデジタル修復版

2021-05-18 | 映画

                                                                             NHK BS4Kプレミアムシネマ

  巨匠・溝口健二監督が、近松門左衛門の浄瑠璃をもとに、不義密通の疑いをかけられた京都の大経師の手代・茂兵衛と主人の妻おさんは、主人の怒りを買い、やむを得ぬ逃避行の中、びわ湖で入水自殺を考える。しかし、二人に真実の愛が芽生えてしまう・・・。封建的な時代のなかで真実の愛を貫こうとする男女を描く傑作である。愛の強さ故に覚悟を決めた終幕の香川京子と長谷川一夫の演技は圧巻。また、おさん(香川京子)の可憐な美しさも魅力。

【監督】溝口健二
【原作】近松門左衛門
【音楽】早坂文雄
【撮影】宮川一夫
【配役】
 茂兵衛   大経師手代  長谷川一夫
 さん    以春の妻         香川京子
 以春    大経師の主人   進藤英太郎
 助右衛門   〃 手代      小沢栄
 玉      〃 女中      南田洋子

【公開】1954年 東宝 1時間44分

  京の四条烏丸に門を構える暦の元締め大経師では、来る丑年の新暦の売り出しに主の以春をはじめ番頭、手代衆達が目まぐるしく働いていた。以春は苗字・帯刀を許されるほどの豪商であった。   

                                                           おさんは茂兵衛に話し、金策を頼みこむ

【前半のあらすじ】
 この日、以春の妻おさんの母が訪ねてきて、実家で物入りが続き、利子の返済に父道順が困っているので、主に内緒で銀5貫調達してくれないかとおさんに泣きつく。

 おさんは、その事情を番頭の茂兵衛に話し、金策を頼み込む。茂兵衛は旦那の印判をつけばすぐに用意できると安請け合いする。茂兵衛はこっそり白紙に印判をつくが、それが番頭の助右衛門にみつかり、盗人の疑いをかけられ、問い詰められる。その窮地に女中の玉が、実は私が頼んだことで、茂兵衛様に罪はないとかばう。

以前から玉に気のあった以春は、さらに立腹し茂兵衛を納屋に閉じ込める。おさんは、玉に礼を言うため玉の寝所を訪れる。 そこで玉から、以春が夜毎夜毎、言い寄って忍んで来ると聞かされ、おさんは懲らしめのために寝所を代わってくれと頼み、夫が忍んで来るのを待ち構える。

 一方、納屋から逃げ出した茂兵衛は自分を助けようとしてくれた玉に礼を言うため、玉の寝所へ忍び入る。そこでおさんと茂兵衛は勘違いしたまま肌と肌を触れ合ってしまう。以春の声に、二人はお互いの過ちに気づき、たちまち不義密通の濡れ衣を着せられ、二人の逃避行が始まる。

逃避行が暫く続くが、追ってが迫ってきて長続きはしない 左おさん、右茂兵衛

 ついに、二人「は死ぬしかない」と琵琶湖に小舟を漕ぎ出し、茂兵衛はおさんの両足を縛る

 茂兵衛がおさんに向かって言う。
 「今際の際なら罰も当たりますまい。この世に心の残らぬよう一言お聞き下さいまし。茂兵衞は今日から、あなた様をお慕たい申し上げております。」「え!私を。」「はい」「おさん様どうなされましたか。お怒りになりましたか?」
「お前の今の一言で死ねんようになった。死ぬのはいやじゃ。生きていたい。茂兵衛」。おさんは茂兵衛に抱きつく。

  手代の茂兵衛と主の妻の愛の告白による大転換の場面。
  主人以春との人間性と30歳という年齢差に初めておさんは茂兵衛との愛に芽生えることになる。

 追っ手が迫ってくるが、噂では捕らえようとしているのは茂兵衛だけで、おさんは見逃す(二人は不義密通ではない)との考えであると知り、一瞬の時を見計らい。茂兵衛はおさんと離れようとする。足を痛めているおさんは、必死で追いかけてやっと追いつく。「大経師は開店させます。どうぞ帰って下さい」「おさん様はよろこんで迎えられます」

 「私を一人にして行ってしまうのか。私がお前なしで生きていけると思っているのか?お前は奉公人ではない。私の夫であり、旦那様だ」「悪うございました。もう傍を離れません。もう離れません」二人は再び抱き合う。

おさんと茂兵衛が「不義密通」をしたと認めたことにより、京都所司代は金は積んだが何の届を出していなかった大経師 以春をお家の取り潰しにする。

 おさんと茂兵衛は不義密通の罪により、市内引き回し、張り付けの刑になる。

「お家(いえ)さんのあんなに明るいお顔を見たことがない、茂兵衛さんも、あんな晴れ晴れとした顔色で、ほんまにこれから死なはるのやろうか」二人を見送る店の人々の声。

【感想】
  溝口健二監督らによる落ち着いたストーリー展開は、二人に追っ手が迫るというスリリングな展開により緊迫感を漂わせている。
   また、封建時代のお家(おいえ)様と手代という乗り越えられない死の柵み(しがらみ)を強い意志で超えて行こうという二人の恋愛感情が真に迫ってくる。濡れ場シーンが少ないのに、とても感動的である。このような恋愛ドラマは最近ではなかなか見られない。
   和楽の三味線、尺八、太鼓、鼓の響きが新鮮で浄瑠璃の世界を彷彿とさせるようで秀逸だった。
 また、宮川一夫の撮影もデジタル修復版となり、美しくなっている。

 香川京子がびわ湖での告白以来、とても若々しく、美しく見えるのは私の思い込みだったのだろうか? 

(了)



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