マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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中ノ川町観音寺初祈祷の牛王版木刷り

2012年04月06日 06時47分22秒 | 奈良市(東部)へ
初祈祷(オコナイとも)が営まれる前に集まってきた当屋の五人衆。

そこは奈良市中ノ川町の観音寺。

氏神座流の人たちがあがる三社神社社務所に兼用されている建物である。

古くから使われている版木を取り出した。

墨を塗っては刷る道具は長年の使用に黒光りする。

それには「牛王 ○○ 観音寺」と彫られている。

○○は梵字であるだけに判読できない。

刷毛で墨を塗っていく。

かつては摺った墨であったが現在は墨汁だ。

量が多ければ滲むので余分な墨汁は刷毛で拭いとる。

半紙をそろりと上から下す。

そうすれば牛王の文字が現れていく。



20枚ほど摺ったお札に朱印を押す。

場所は三か所だという。

向きは決まっているので見本通りの方向に押していく。

牛の蹄(ひづめ)だという朱印押し。



一枚、一枚丁寧に押していく。

そのお札は竹に挿す。

ネソジクと呼ばれている細い竹だ。

ジクンボとかシノブダケと呼ぶ人も居たがその名は聞いたことがないと反論する当屋頭。

行事資料にもそれは書かれていないとTさんはいう。

ネソジクの先を三つに割いて挿す。

先を広げなければ挿せないから二人がかりの作業である。

中ノ川は戸数20。

その数の枚数を作るが、余分にということで27枚。

座(数え15歳以上の男性)に入っている数だという。

その座中名が記されている木札。

年齢順かと思えばそうではなく座入りした順だ。

その並びで当屋の五人衆が決まる。

つまり行事ごとに五人ずつ移動していくのだ。

当屋は御田祭(初祈祷のこと)と秋のマツリの2行事。

それぞれに五人衆の組み合わせがあるが、若干のズレがあるために両行事とも当たることがあるといい、何時の年度にどちらの当屋を担うのか柱にその名が記されている。

尤も上から順の五人は長老とも呼ばれている中ノ川の座中である。



五人衆は初祈祷に供えるモチも作る。

各戸から集めたモチゴメ。

二合枡で計量して集める米は座の人数分。

穢れのあった家は集めないが総量6升にもなるという。

前日に当屋頭(五人衆の年長者)の家で搗いたモチは2種類。

一つは丸いモチ。半紙の上にヒノキの葉を置く。

お皿のようである。

モチは6段の重ねモチ。

初祈祷というだけに、おそらく花餅(けひょう)であろうがゴクサン(ゴコクとも)と呼んでいる。

もう一つはコジュウタ(コージブタ;麹蓋)いっぱいに敷き詰められた四角いモチ。

キリモチと呼ぶモチは取り出して包丁で切っていく。

四十等分に切り分けるキリモチは男しか食べることができないという。

それを6段重ねのモチの上に乗せていく。



かつては神社に供えたキリモチ。

時代を経て供え方が変化したようだ。

(H24. 2.18 EOS40D撮影)