マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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ツアー旅に見る相差の民俗

2021年03月11日 09時24分59秒 | もっと遠くへ(三重編)
クラブツーリズム主催のツアー。

一人1万円の「※豪快!伊勢海老・鮑・栄螺・雲丹 美し国三重の旅館で食する海幸づくしツアー」に美味し食事を味わった。

食後に味わう参拝。女性の神さん、特に海女さんが古来より信仰してきた女性の守り神は石神神社。

そこで見た数々の民俗シーンを撮っていた。

三重県鳥羽市の南の端。

伊勢神宮・内宮から40分。

車で走った地にある相差(おうさつ)は、まさに「海」。

綺麗な渚が広がる海浜地。



そういう地から”大砂津(おうさつ)” あるいは、”大砂洲(おおさす)”と、呼ばれていたのが転化し、相差(おうさつ)になった、と考えられる説がある。

風光明媚な海。

古より御食国(みけつくに)として朝廷に献上していた美食の源泉は、海にあり。

海の恵みを獲ってくる海女と漁師の町に、海の民俗の香りがしてきた。

石神神社に参るには、相差の集落を通るしかない。

初夏とも思える、この日の気温は高い。

歩きで向かう道にツアコンも慣れない。

地図を見間違った先頭にぞろぞろ歩くツアー客。

たまたまビジネスに歩いていた男性が、その道を、と教えてくれた。

おかげでUターンは短距離で済んだ。

ようやく入った相差の集落地。

団体だけに大勢が移動する。

集落内では騒がないように、と指示がでる。

相差の戸数は何軒になるのだろうか。

すべてではないが、いずれのお家もみな玄関にしめ縄をかけている。



じっくり見たお家のしめ縄。

右にヒイラギの木。

左は何であろうか。

中央に寄せた札は「千客万来」だった。

網目の袋にあるモノも気になるが、尋ねる時間はツアー客にない。



続けて拝見した隣家のしめ縄もまた「千客万来」だ。

つくりは同じような類だが、ヒイラギはなさそうだ。

少し歩いた次の家は、伊勢のしめ縄と云えばこれだ、といいたいくらいの「蘇民将来」。



右に「七難即滅」。左が「七福即生」。

大きく書いた「門」に「蘇民将来子孫家」。

毎年の12月16日に、頒布始祭を行い、県内外に頒布している伊勢から志摩方面に多く見られる正月のしめ縄。

門口に飾って一年間。悪疫退散、厄除け開運、家内安全などを守護する護符札である。

ここもヒイラギは見られないが、どの家もあった棘のない葉はなんだろう。

ちなみに、伊勢神宮においても、正月に頒布する伊勢しめ縄にヒイラギを飾っているそうだ。

もう少し歩いたその家に驚く。

まるで欄間職人が仕事の合間に作ったんでは、と思った手彫りの板間。

屋外に見えるように何枚も張っていた板。

よくみれば透かし彫り。

美しい透かし彫りの1枚に、思わず声がもれた。



この文様、鳳凰、それとも手塚先生が描いた火の鳥・・。

趣味に高じた人が彫った板間では、とも思えるが・・。

美しい姿の鳥がまるで空を飛んでいるかのようは飛翔の羽根。

ため息がでるほどに美しい。

寺院にすごく立派な、立体的に表現した透かし彫り彫刻の欄間はあるが、ここは民家。

格式は違うが、見事さに惚れて「火の鳥 降臨」と題した。

そのお家から、また少し離れたところに建っていたお家の壁模様に、シャッターが反応した。

塗ったペンキ剥がれのような気がする。



そういえば、私が子どものころに暮らしたときの住宅に同じような剥がれ文様があったな。

またまた感動するほどの驚き。

古いギター。



それもアコースティックギターにしかけたしめ縄。

伊勢にお馴染みの笑門札もあるくらいだから、飾りではないのだろう。

あとでわかったことだが、ここはライブハウス。

頷ける飾りしめ縄だった。

しめ縄の形態は、家それぞれ。

一律、一様でもないしめ縄のカタチに、1軒、1軒に足を止めて魅入る。

しめ縄は暖簾に隠れ、全身が見えない「現役海女リサちゃんの店 久兵衛」は海の食堂。



若い女性が経営する食堂。

あるブログによれば、相差生まれ。

海女さんになるつもりはなく、一旦は相差を離れた店主。

都会から戻って、立ち上げた食堂経営。

海の恵みを直に仕入れる海女漁をしているそうだ。



その久兵衛に、カートに乗った高齢の女性がやってきた。

その姿、恰好から現役を引退した海女さんかもしれない。

ここら辺りを歩けば、相差漁師の暮らしが伺える姿がある。



干し物は、衣服やウエットスーツの他に野菜類も干す家がある。

「干す」をテーマにいろんな形態を撮らせてもらった。



軒先に干した、にんにく、赤玉ねぎに、一般的な玉ねぎも。

相差に限らず、農村集落にはよく見る光景に見惚れてシャッターを押す。

石神神社は、まだ先だ。

緩い登坂を坦々と登る。

足は重たく、動きはとろい。

息切れはないが、身体全体に勢いがでない。

時間にしてわずか数分の距離。

ようやく到着した石神神社。

ツアー客女性のほとんどが、ご利益をいただきに参拝する石神神社

本社の神明神社の境内社の一つである石神神社。



親しみを込めて、通称石神さんと呼ばれている。

女性の願いを一つ、叶えてくれるありがたい石神さん

鳥居を潜ったすぐそこにある手水舎の水に清めてから参る。

願掛けに並ぶ女性の人たち。



稀に、男性も参拝しているようだ。

この日は、6月20日。



早くも茅の輪くぐりを調えているが、暑い盛りの毎日に、萱も枯れ状態。



参拝を済ませて下った道にあったカフェ&土産物ショップの古民家・海女の家 五差屋



ドーマン・セーマングッズや海をテーマにした商品、「牡蠣醤油」「牡蠣ドレッシング」などが売りもの。

屋外テラスに飾ってあった相差の民俗。



1月5日は、相差獅子舞(※神明神社の獅子舞神事)。

7月14日が鯨まつり(※青峰山正福寺に由来する天王くじら祭り)など、相差の年中行事を紹介する木枠プレートは、版木で刷った陶板焼きのように見える。



なお、プレートは見なかったが、5月7日は、石神さんの春祭りもあるようだ。

相差にあった数々の民俗。

土地の人に伺いたいが、ツアー中はどうにもこうにも・・。

いつかは、また再訪してみたい相差。

最後に見た民俗は暮らし。



家の周りにあったたくさんのサザエの蓋。

単に並べ、置いているだけなのか、謎含みのあり方に後ろ髪が引かれるようだ。

(R1. 6.20 EOS7D撮影)