マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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長滝町・Y家のカラスのモチ

2022年11月25日 08時12分19秒 | 天理市へ
何度も訪れたことがある天理市長滝町。

山間の地にある村落。

数々の年中行事を撮影、記録してきた。

秋祭りの宵宮座分け正月ドーヤカンジョウナワオコナイコンコンサン閏庚申涅槃さんも取材してきた長滝の地。

前方に杖をついて歩くお方は、顔見知り。

行事取材に幾度も世話になった。

その当時は、急な山道も軽々登っていたコンコンサン。



後ろから声をかけたいが、これから目指す目的地は、火の見やぐらがある消防団倉庫から急な坂道を登ったどんつき。

柿の木に吊るしたカラスのモチがみつかった。

昨年末、大晦日の夕暮れにかかった電話の声は、写真家のKさん。

砂モチ調査に伺った天理市の長滝。

取材の目的は砂モチ。

現在はしていない、とわかった。

目的を失ったKさんが、その地にたまたま出会わせた高齢の女性。

話の展開は、どこからどうなったのか不明であるが、その女性が云った言葉。

「カラスのモチなら、今からしてやる」、と云われた。

その女性がいうには「翌年には90歳になる」と、いう高齢者。

おばあさんの心に惹かれて、案内してもらったそこは柿の木があるお家。

山の上にあるお家にたどり着いた。

その場で作ってくれたカラスのモチ。

大晦日のその日は、お家で正月の餅を搗いていたようだ。

その餅のうち、いくつかを藁に詰めこんで、柿の木に吊るした。

野鳥に食べてもらうために吊るした藁詰めの餅はカラスのモチ。

藁ズト(※藁束)のようなものを2本用意する。

二つとも、藁束の中に6個ずつのカラスのモチを詰めて柿の木に吊るす。



まさに、Kさんが伝えた通りの場。

柿の木の枝に吊るしていた。



遠景、近景などから見た初見のカラスのモチ。

想像していた通りの形だった。



シャッターを何枚か、押していた音に気がつかれたのか、89歳のおばあさんが、屋内から出てこられた。

私の顔を見るなり、「あんた、昨日の大晦日も、元日にも来てくれて・・・」と、いわれる。

いやいや、そうではなく、大晦日も昨日も、それはKさん。

Kさんから教えていただき、私は今日が初めてです、とYさんに伝えたが・・・

あんた「林檎3個に大きな写真を持ってきてくれたやろ」、と云われるが、それはKさん。

見た目は違うのだが、土地の人ではないから、みな同じように見えるようだ。

入口前での会話。にぎやかし、していたら屋内から出てこられたから若奥さんが、「寒いから家に入って」、と云ってくれた。

玄関土間に据えている客間にテーブル・椅子のセットがある。

お客さんとの会話はこの場で済ませる。

紹介された、Y家の当主。昭和24年生まれのY区長。

70歳までは奈良市法蓮町にある花屋さんに勤めていいた。

義理の父、母が高齢になり、花屋を定年退職後に家族ともども、妻の実家に転居。

親子どもども長滝に転居し、分家のY家を継いだ。

村のことは、なにも知らなかったが、村に認められて区長に就任(※福住連合区長会の会長も勤める)した。

24軒の長滝を預かった区長役。

地区に暮らす先輩たちの支援を受けて役目を務められるだろう。

さて、カラスのモチである。

おばあさんがいうには、百姓はみなしていた、というカラスのモチである。

柿の木に吊るしているからカラスは来ない。

正月開けたら、少し歩いた山行きに梅の木があり、そこに吊るし替える。

そうしたらカラスがやってきて餅を喰ってしまう、と話してくれる。

カラスのモチは、12月30日に搗く正月の餅の一部。

正月の餅から、12個の餅をいただき、藁ヅトに収める。

柿の木に吊るすのは、例年が31日にしているようだ。

また、旧暦閏年の年のカラスのモチは、13個。

ここも見られた旧暦閏年の13の数。

県内の民俗事例に、多彩、多様な民俗。

あちこちの地域行事に13の数を示す祭具。

多すぎると思えるほど数々の事例が各地に継承されてきた。



今日は、元日。ご厚意により、正月の膳から分けてくださった練り物をよばれた。

南天を皿に敷いたそこに盛った食べ物は、蒲鉾に、さつま揚げ。

毎年同じだけど・・という練り物が美味しい。

特別のお店で買ってきたと、いう練り物は、ほんまに旨い。

席を立とう、としたときに気づいた祭具が目に付いた。



「無病息災 五穀豊穣」を記した矢羽根。

その祭具は、たしか見たことがある。

二ノ正月の2月5日は、長滝の年頭行事である正月ドーヤがある。

平成22年2月5日に取材した正月ドーヤは、九頭神社のケイチン地蔵寺のオコナイカンジョウナワカケからなる一連の行事。

元々は4日、5日の両日に亘って行われる行事であったが、1日にすべてを終えるよう短縮化された村の初祈祷行事である。

Y家の玄関口に見た矢羽根の本体は矢。

マトウチに描かれた鬼を射る弓から放たれた矢である。

マトウチ射手は、座の一老。

続いて矢を打つ二人の本当家と、受け当家の2人に行司。

打った最後。弓の角で、鬼をバラバラにしてしまう。

鬼のとどめをさす行為。

鬼は無残な形。

鬼を退治した、マトウチの儀式によって、村の安全が確保され、五穀豊穣を願った矢は、拾い集めて持ち帰り、無病息災を願う家の守り神となる。

(R3. 1. 2 EOS7D/SB805SH撮影)