午後に参集した三昧田の人たち。
この年は西垣内が担う宮座の座つくり。
大和神社のちゃんちゃん祭におけるお旅所の大字の座で飾られるカザグルマ(風車)作りである。
明治15年に東三昧田と西三昧田が合併した旧村の天理市三昧田(さんまいでん)町は四つの垣内がある。
西、東、南、北垣内である。
それぞれ9戸、18戸、18戸、25戸からなる集落である。
ちゃんちゃん祭を担う垣内は毎年交替する西、東、南、北垣内の回りである。
その年のアタリになった垣内の中から頭屋家が選ばれる。
三昧田の頭屋は2軒。兄頭屋と弟頭屋である。
昨年のちゃんちゃん祭を終えた翌日2日に頭屋受けされた両頭屋。
西垣内は9戸であるゆえ頭屋を担うのは8年ごとになる計算だ。
他の垣内はそれ以上の戸数。頭屋の回りは16年から25年もかかる。
奈良県図書情報館が所蔵する奈良県庁文書がある。
昭和4年に調査された『大和国神宮宮座調査』に記された大和神社の郷中社家はそれぞれの家筋であった。
いわゆる宮座である。
明治維新の頃に改正された三昧田の宮座は23人であった。
明治17年頃に村座に改正された三昧田はすべての垣内住民を対象にした。
戸数がそれぞれ異なる垣内では頭屋家の回りの年数が大きく異なるのである。
三昧田の座つくりは両頭屋だけでなく垣内の人たちも駆けつけて祭具を作る。
作業の場は鎮守社である春日神社の社務所と境内だ。
境内で作業をするのは男性。
門神さんの垣根を作る。
ナタで青竹を割いて一本、一本を削る。
長さは25cmほどである。
先は挿し易いように尖らしておく。
長い青竹は2本。紐で縛って宮入りで授かった御幣を付ける。
それには半紙で包んだセンマイ(洗米)を入れる。
洗えばカビが生えるからと八合の白米にされた。
センマイは「一升」の名をもつが量は八合であると話す。
かつては一升のセンマイであったと思われる御供である。
竹の細工は頭人児が座る座に飾るカザグルマの心棒もある。
1/4辺りからは細くするのである。
大きなカザグルマを取り付ける先端部だ。
頭屋家に飾る注連縄掛けの竹は葉付き。
葉は1/3ぐらいを残して下は伐る。
一方、社務所ではカザグルマを作る婦人たち。
小さいカザグルマは直径18cm。
大きなカザグルマは40cmにもなる。
この作業は長時間を要する。
この場だけでなく予め作っておいた大きなカザグルマはベースの金紙、銀紙。画用紙に張る。
表面は八枚切りの色画用紙。
両方とも糊で貼ってアイロンで伸ばす。
シワシワにならないように注意して作業をしたのは一週間も前からだと話す頭屋の奥さん。
色紙はピンク、赤、水色、青色の4色。
中心部に張った風車止めはコンパスで記して切ったそうだ。
それは両面テープで貼り付けた。
カザグルマの羽根の枚数は6枚。
平成13年、平成24年のお旅所で拝見したカザウルマは4枚羽根であった。
平成20年に頭屋を勤められた東垣内のN氏からいただいたカザグルマも4枚羽根だった。
作業の様子を見に来られたN氏もカザグルマの出来栄えに感服される。
何故に6枚羽根であるのか、今年の弟頭屋のD氏に尋ねた。
作ろうと思えば8枚型でも可能だと云う。
ただ、羽根のすき間から手を入れなければならないから6枚が妥当だと話す。
今年は頭屋であるが西垣内が担うときにはいつもカザグルマを作っている。
手間がかかる作業であるがいつもそうしていると云うD氏。
かつて「6枚の羽根は作られんやろか」と氏子に問われたことがあったそうだ。
発奮された氏は6枚羽根作りに挑戦した。
16年か20年前のことのようだ。
それから6枚羽根になったが他の垣内ではそうしていない。
特に決まりはないと云うカザグルマは「子供のおもちゃ」と話していたのはN氏だ。
葉付きの竹ができあがれば頭屋家の注連飾り。
門屋に梯子を掛けて倒れないように設えた笹竹に注連縄を張る。その後も作業は並行して進められる。
大きなカザグルマは6枚羽根であるが小さいカザグルマは4枚羽根。
ピンク、赤、水色、青色、黄色に緑もある。
羽根を曲げて糊付けする。
先端を直角に曲げた竹に挿す。
大きなカザグルマに挿す心棒も直角に曲げる。
この作業が以外と時間がかかる。
火ばちへ曲げる部分を翳して折れない程度に徐々に火炙り。
炙りが足らなければすぐに戻る。
固定するには時間がかかるのである。
さらに時間を要するのがカザグルマの心棒の花飾り。
色紙は前もって短冊に切っておいた。
それを上から順に下へと巻きつけていく。
ノリシロ部分は糊で貼り付けるのだが時間がかかる。
小さな片に切った両面テープで貼っていく。
これもまた時間がかかる手作業。
かつて頭人児を勤めた息子さんも手伝っている。
真剣な眼差しは手を緩めることなく父親の手伝い。
頼もしくなったものだと喜ぶ。
一本のカザグルマの心棒に巻きつけた花飾りは8枚。
毎数も色柄も決まりがないと云う短冊部を広げて花弁のように調える。
その作業を見守る垣内の人。
細かい作業は専門職人に任せているという。
カザグルマは風車を付けて完成する。
風車を挿す前には止めの黒色ウレタンを挿す。
そして風車だ。
手を内部に入れて崩れないように両端を通す。
風車が外れないように最後はクロマメ(黒豆)だ。
一合のクロマメは予め水に浸けておいて柔らかくした。
昨夜の晩からこの日の朝まで浸けておいた。
クロマメもカザグルマに挿すからドリルで穴を開ける。
ようやく出来あがった大きいカザグルマは台に挿す。
台はオオダイコン。
安定できるように作った大きなオオダイコンは農業を営む友人から貰ったそうだ。
底を半切りにしたオオダイコンにぐぐっと挿して出来あがる。
これを4本。
頭人児を飾るカザグルマは両脇に2本並べる。
18本も作った小さなカザグルマもクロマメを挿してできあがる。
ほっとする瞬間だ。
手伝ってもらった人たちにお礼を述べる兄頭屋のS氏。
両頭屋は再び家に戻って門神さんの飾りつけ。
クヌギの割木土台の上に置いたシバ(芝)に先ほど作った竹の垣根を挿し込む。
それほど尖がりがなかったものだったからトンカチで埋め込む。
御幣を取り付けた竹を挿してできあがる。
兵庫で見られたヤカタは存在しない。
御幣が分霊なのであろう。
宮入りで授かった4枚の紙垂れを注連縄に挟みこんで頭屋家を祀った。
三昧田の座つくりはこうして終えて再び社務所に集まる。
座敷に立てた三昧田の旗竿と御幣。
その前に座るのは二人の頭人児。
前日の23日に大和神社での宮入り儀式を受けた頭人児は白装束姿である。
三昧田ではこの日を神酒の口開けという。
大きなカザグルマに挟まれて手を振る幼児たちは喜びを笑顔で応える。
頭人児の席には大きな鯛がある。
豆腐のすまし汁にパック詰め料理が配膳された席に座中も座る祝いの場である。
兄頭屋の挨拶で始まった座つくりの慰労の場でもあるようだ。
(H25. 3.24 EOS40D撮影)
この年は西垣内が担う宮座の座つくり。
大和神社のちゃんちゃん祭におけるお旅所の大字の座で飾られるカザグルマ(風車)作りである。
明治15年に東三昧田と西三昧田が合併した旧村の天理市三昧田(さんまいでん)町は四つの垣内がある。
西、東、南、北垣内である。
それぞれ9戸、18戸、18戸、25戸からなる集落である。
ちゃんちゃん祭を担う垣内は毎年交替する西、東、南、北垣内の回りである。
その年のアタリになった垣内の中から頭屋家が選ばれる。
三昧田の頭屋は2軒。兄頭屋と弟頭屋である。
昨年のちゃんちゃん祭を終えた翌日2日に頭屋受けされた両頭屋。
西垣内は9戸であるゆえ頭屋を担うのは8年ごとになる計算だ。
他の垣内はそれ以上の戸数。頭屋の回りは16年から25年もかかる。
奈良県図書情報館が所蔵する奈良県庁文書がある。
昭和4年に調査された『大和国神宮宮座調査』に記された大和神社の郷中社家はそれぞれの家筋であった。
いわゆる宮座である。
明治維新の頃に改正された三昧田の宮座は23人であった。
明治17年頃に村座に改正された三昧田はすべての垣内住民を対象にした。
戸数がそれぞれ異なる垣内では頭屋家の回りの年数が大きく異なるのである。
三昧田の座つくりは両頭屋だけでなく垣内の人たちも駆けつけて祭具を作る。
作業の場は鎮守社である春日神社の社務所と境内だ。
境内で作業をするのは男性。
門神さんの垣根を作る。
ナタで青竹を割いて一本、一本を削る。
長さは25cmほどである。
先は挿し易いように尖らしておく。
長い青竹は2本。紐で縛って宮入りで授かった御幣を付ける。
それには半紙で包んだセンマイ(洗米)を入れる。
洗えばカビが生えるからと八合の白米にされた。
センマイは「一升」の名をもつが量は八合であると話す。
かつては一升のセンマイであったと思われる御供である。
竹の細工は頭人児が座る座に飾るカザグルマの心棒もある。
1/4辺りからは細くするのである。
大きなカザグルマを取り付ける先端部だ。
頭屋家に飾る注連縄掛けの竹は葉付き。
葉は1/3ぐらいを残して下は伐る。
一方、社務所ではカザグルマを作る婦人たち。
小さいカザグルマは直径18cm。
大きなカザグルマは40cmにもなる。
この作業は長時間を要する。
この場だけでなく予め作っておいた大きなカザグルマはベースの金紙、銀紙。画用紙に張る。
表面は八枚切りの色画用紙。
両方とも糊で貼ってアイロンで伸ばす。
シワシワにならないように注意して作業をしたのは一週間も前からだと話す頭屋の奥さん。
色紙はピンク、赤、水色、青色の4色。
中心部に張った風車止めはコンパスで記して切ったそうだ。
それは両面テープで貼り付けた。
カザグルマの羽根の枚数は6枚。
平成13年、平成24年のお旅所で拝見したカザウルマは4枚羽根であった。
平成20年に頭屋を勤められた東垣内のN氏からいただいたカザグルマも4枚羽根だった。
作業の様子を見に来られたN氏もカザグルマの出来栄えに感服される。
何故に6枚羽根であるのか、今年の弟頭屋のD氏に尋ねた。
作ろうと思えば8枚型でも可能だと云う。
ただ、羽根のすき間から手を入れなければならないから6枚が妥当だと話す。
今年は頭屋であるが西垣内が担うときにはいつもカザグルマを作っている。
手間がかかる作業であるがいつもそうしていると云うD氏。
かつて「6枚の羽根は作られんやろか」と氏子に問われたことがあったそうだ。
発奮された氏は6枚羽根作りに挑戦した。
16年か20年前のことのようだ。
それから6枚羽根になったが他の垣内ではそうしていない。
特に決まりはないと云うカザグルマは「子供のおもちゃ」と話していたのはN氏だ。
葉付きの竹ができあがれば頭屋家の注連飾り。
門屋に梯子を掛けて倒れないように設えた笹竹に注連縄を張る。その後も作業は並行して進められる。
大きなカザグルマは6枚羽根であるが小さいカザグルマは4枚羽根。
ピンク、赤、水色、青色、黄色に緑もある。
羽根を曲げて糊付けする。
先端を直角に曲げた竹に挿す。
大きなカザグルマに挿す心棒も直角に曲げる。
この作業が以外と時間がかかる。
火ばちへ曲げる部分を翳して折れない程度に徐々に火炙り。
炙りが足らなければすぐに戻る。
固定するには時間がかかるのである。
さらに時間を要するのがカザグルマの心棒の花飾り。
色紙は前もって短冊に切っておいた。
それを上から順に下へと巻きつけていく。
ノリシロ部分は糊で貼り付けるのだが時間がかかる。
小さな片に切った両面テープで貼っていく。
これもまた時間がかかる手作業。
かつて頭人児を勤めた息子さんも手伝っている。
真剣な眼差しは手を緩めることなく父親の手伝い。
頼もしくなったものだと喜ぶ。
一本のカザグルマの心棒に巻きつけた花飾りは8枚。
毎数も色柄も決まりがないと云う短冊部を広げて花弁のように調える。
その作業を見守る垣内の人。
細かい作業は専門職人に任せているという。
カザグルマは風車を付けて完成する。
風車を挿す前には止めの黒色ウレタンを挿す。
そして風車だ。
手を内部に入れて崩れないように両端を通す。
風車が外れないように最後はクロマメ(黒豆)だ。
一合のクロマメは予め水に浸けておいて柔らかくした。
昨夜の晩からこの日の朝まで浸けておいた。
クロマメもカザグルマに挿すからドリルで穴を開ける。
ようやく出来あがった大きいカザグルマは台に挿す。
台はオオダイコン。
安定できるように作った大きなオオダイコンは農業を営む友人から貰ったそうだ。
底を半切りにしたオオダイコンにぐぐっと挿して出来あがる。
これを4本。
頭人児を飾るカザグルマは両脇に2本並べる。
18本も作った小さなカザグルマもクロマメを挿してできあがる。
ほっとする瞬間だ。
手伝ってもらった人たちにお礼を述べる兄頭屋のS氏。
両頭屋は再び家に戻って門神さんの飾りつけ。
クヌギの割木土台の上に置いたシバ(芝)に先ほど作った竹の垣根を挿し込む。
それほど尖がりがなかったものだったからトンカチで埋め込む。
御幣を取り付けた竹を挿してできあがる。
兵庫で見られたヤカタは存在しない。
御幣が分霊なのであろう。
宮入りで授かった4枚の紙垂れを注連縄に挟みこんで頭屋家を祀った。
三昧田の座つくりはこうして終えて再び社務所に集まる。
座敷に立てた三昧田の旗竿と御幣。
その前に座るのは二人の頭人児。
前日の23日に大和神社での宮入り儀式を受けた頭人児は白装束姿である。
三昧田ではこの日を神酒の口開けという。
大きなカザグルマに挟まれて手を振る幼児たちは喜びを笑顔で応える。
頭人児の席には大きな鯛がある。
豆腐のすまし汁にパック詰め料理が配膳された席に座中も座る祝いの場である。
兄頭屋の挨拶で始まった座つくりの慰労の場でもあるようだ。
(H25. 3.24 EOS40D撮影)