女性がオーケストラを指揮するなんて考えられない時代、愛する人も捨て、ただひたすら指揮者への道を歩んだアントニア・ブリコの成功物語。
アントニア・ブリコに触れると1902年6月26日オランダ・ロッテルダム生まれ。カトリック教徒の母とイタリア人ピアニストの父の間に生まれるも生後まもなくウォルティウス夫妻の養子となり、6歳の時にカリフォルニアに移住。
10歳の時にピアノを習い始め音楽家を志す、その後、カリフォルニア大学で音楽を学び、卒業後は音楽教師ジグムント・ストヨフスキに師事。1927年、本格的に指揮者を目指すべく、名指揮者カール・ムックの門を叩き、ベルリン音楽アカデミー(現ベルリン芸術大学)指揮科に入学。
1930年、ベルリン・フィルの指揮台に立ち、指揮者デビュー。1938年、女性として初めてニューヨーク・フィルを指揮し、15,000人の聴衆を熱狂させた。(1989年死去)とネットにある記事。
履歴書向きの淡々とした経歴でしかないが、映画はブリコ役のクリスタン・デ・ブラーンの気が強いがさわやかな印象を持つ役柄にピッタリの女優に目が離せなくなる。
悲しい生い立ちとお金持ちの息子フランク(ベンジャミン・ウェインライト)との成さぬ恋物語。それに色を添えるクラシック音楽、マーラー「交響曲第4番」、ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第32番」 ストラヴィンスキー 「火の鳥」。男装の女性ロビン(スコット・ターナー・スコフィールド)の助力もあって女性のオーケストラを指揮することになる。あろうことかフランクの母親にも嫌がらせを受け窮地に立つ。
そんな時、ルーズベルト大統領の妻、エレノア・ルーズベルトからの「心置きなくおやりなさい」という言質を貰いラジオで発表した。その効果は絶大で観覧の申し込みが殺到した。
心にもなくフランクの求婚を断っていたが、演奏会の前、何年振りかのヨーロッパから帰国挨拶にフランクの屋敷を訪れた。フランクは結婚していて男の子までいる。ぎこちない雰囲気の中で、「今夜の演奏会には来てくれる?」「いや、行かない。妻は行くよ。僕は子供の世話があるから」とフランクは静かにドアを閉めた。
ドアの内側でアントニアを愛する心の感情に呻吟するフランク。フランクは、中国人のお抱え運転手の部屋に入っていった。箸で食事中のこの男が立ち上がった時、箸一本が落ちた。それを見たフランクはその箸を手に取って、かつて演奏会場の男子トイレで箸をタクトに指揮の真似をしていた若きアントニアを思い出した。
ブリコは、エレノア・ルーズベルト夫人を迎え舞台から挨拶してオーケストラに向き合う。ところが楽団員の視線が舞台の下に注がれている。振り向いて見たものは、通路にイスで腰かけているフランクだった。口元に笑みをたたえたアントニア・ブリコは、本物のタクトを静かに振り下ろした。
エンディングロールには、気落ちするような字幕が流れる。「アントニア・ブリコは、名門オーケストラからゲスト・コンダクターとして招かれるが、首席コンダクターの職に就くことは一度もなかった。2017年のグラマフォン誌は、世界トップ50の指揮者を発表、そこには女性は一人も見当たらない」
これは一体どういうことなんだろうと思ってしまう。そこで執拗にネットで女性指揮者を探した。たどり着いたのは、「otomamire」というサイト。女性指揮者ランキングがあって、女人禁制のクラシック音楽界。そんな考えが未だに指揮者の世界では横行しているのが現実ですとある。
そんな中で世界ベスト10を挙げてある。10位に日本人の西本智実50歳。現在はイルミナートフィルハーモニーオーケストラ芸術監督兼首席指揮者。
9位カナダ人のバーバラ・ハンニガン49歳。バーバラ・ハンニガンは元々ソプラノ歌手で、後に指揮も始めた。歌いながら指揮をするという、変わり種指揮者でもある。2018/2019シーズン、スウェーデンのエーテボリ交響楽団の首席客演指揮者。
8位にメキシコ人のアロンドラ・デ・ラ・パーラ40歳。2017年、クイーンズランド交響楽団にオーストラリア初の女性音楽監督。その美貌から各国の多くの女性誌のカヴァーページを飾っているとのこと。
2位にはアメリカ人のカリーナ・カネキラス37歳。現在、オランダ放送フィルハーモニックの首席指揮者。そして何といっても2019年9月からはパリ管弦楽団の首席指揮者に就任だろう。そして、ベルリン放送交響楽団の首席客演指揮者への就任も決まっているという。グラマフォン誌はどうやら偏見を持っているのかも。ここに挙げた人たちは、若くて美人なのだ。こういう記事に興味のある方は、こちらからどうぞ!