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お気に入りの表現(11)ウィリアム・G・タプリー「ケープ・コッドの男」から

2005-03-24 13:12:45 | お気に入りの表現
 弁護士ブレイディ・コインのシリーズ。たまに出る秘書のジュリーも個性的で可愛い。

 “彼女は10時10分過ぎに彼を通した。やっとブザーを鳴らして、ミスター・ホプキンズがお待ちです。もうお会いになれますかと聞いてからだ。「僕は暇だから、親指をくるくる回しているところだよ、ジュリー」と私は彼女にいった。「彼には、そんなプレーはしなくていいんだぜ。クライアントではないんだからね」
 「ミスター・ホプキンズには、時間は30分しかさけませんと念を押しておきます」彼女は部屋の向こうで彼女の言葉に耳を傾けているホスキンズに聞かせるため、こう言った。”
タプリーの比ゆやユーモアは大好きで、新刊を待っているがなかなか出ない。

 海外旅行で頻繁に遭遇するのが、チップを渡す場面だろう。私も経験があるが、札をそのまま手渡すのはあまりスマートといえないし、相手の態度からやはりさりげなさが必要と感じた。そこでこの本が回答を与えてくれる。“10ドル札を四つ折にして手渡した”とあって、おおっぴらにしないのがマナーのようである。ガイド・ブックにはチップに触れているが、どのように渡すかは書いていない。

お気に入りの表現(10)キース・ピータースン「夏の稲妻」から

2005-03-22 12:48:03 | お気に入りの表現
 主人公は、ジョン・ウェルズという中年男の新聞記者、離婚経験あり、しかも娘の自殺という不運を背負う。何気ない文章の中に、人間としての愛が見え隠れするように思われる。

 “二人の救急隊員は死体袋を広げ終えていた。袋を頭の上まで引っ張り上げると、ファスナーを引き上げた。ケンドリックの顔はビニールの袋に隠れて見えなくなった。袋越しに彼の鼻と額の形が見て取れた。気がつくとあんなふうに袋に詰められてケンドリックはどうやって呼吸しているのだろうかと考えた”

 死んだ人間など呼吸するはずがないのに、そのように考えるのは、生きていたとき少しでも関わりがあって、お互い利害を分かち合った中であり、突然の死に哀しみ、人生経験を得た男の情を感じる。

お気に入りの表現(9)ロバート・B・パーカー「暗夜を渉る」早川書房より

2005-03-17 13:02:49 | お気に入りの表現
 この本ほどアメリカ道路地図を必要とし、広大な砂漠の熱と匂いを感じさせる本も少ない。54頁にわたるロスアンジェルスからマサチューセッツまでのドライブの記述には、道路地図がないとどこに向かっているのか皆目分からない。

 また、アメリカ大陸の広大さを少しでも感じることが出来るのは、アリゾナのど真ん中で“ラジオのスイッチを入れてスキャン・ボタンを押した。デジタル・ダイヤルが音もなく点滅して、そこで停まるに足るだけの強い発信をしている局を探したが、なかった。自分が無人地帯にいるのを知る一つの方法だ”日本では、まず経験できないことだろう。

お気に入りの表現(8)ロバート・B・パーカー「スター・ダスト」早川書房から

2005-03-12 13:29:41 | お気に入りの表現

 “私はチェロキーを四輪駆動にし、四輪駆動車に乗っている男しか味わえない尊大な気分で運転していた”

 チェロキーは、クライスラーのジープのこと。四輪駆動車にはフルタイムとパートタイムの2種類がある。フルタイムは常時四輪で駆動している。パートタイムは市街地などの走行は普通の車と同様二輪駆動で、雪やオフロードなどでは四輪駆動にするというもの。このチェロキーは、四輪駆動にしと言っているのでパートタイムである。

 私も10年以上四駆に乗っていた。買ってしばらくは尊大な気分でわざわざ林道に走りに行ったり、関東地方に滅多にない雪が降ったりとなればいそいそと車で乗り出したものだ。10年以上乗っていてトランスファー(四輪駆動にしたり解除したりする装置)を使う機会が数えるほどしかない。結局四駆の必要性はなく、今は2WD車に乗っている。四駆が必要とされるのは、寒冷地や砂漠、荒地の多い地形などになる。

 遊びで乗るのであれば、むしろ2WD車で雪道やオフロードを走破するのが、スリルと満足感が得られる。運転の腕が上がることも付録としてある。もっと若ければ、ボロ車を買って腹をこすろうがボディに傷がつこうがお構いなしに、人や車のこない林道を思いっきり走って、山の端から昇る朝日に、あるいわ沈む落日を熱いコーヒーとともに眺めるのは言い知れぬ喜びである。これこそ男にしか分からない気分だろう。そして尊大な気分も消え去っている。

お気に入りの表現(7)ジェイムズ・クラムリー「友よ、戦いの果てに」早川書房から

2005-03-11 13:50:25 | お気に入りの表現
いままでに読んだ本やいま読みかけの本から、お気に入りの表現を拾い出そうと思っています。

 私立探偵C.W.シュグルーがベトナム戦争の戦友とともに暴力に立ち向かう。ストーリーは特筆するものでもない。数多くのミステリーを読んできて、アメリカ人作家の好きな季節が秋と言う人が多い印象を受ける。この人も例外でなく

 “若い男たちは、春が万物再生の季節だと思うようだが、胃袋にビールを溜め込み、尻が痛くなるような長旅に出る私の歳(中年)の男には、春はやがてしおれてゆく束の間の緑しか約束してくれない。花の咲き乱れる熱っぽい期待の季節はいつまでも続きはしないのだ。よく澄んだ暑い陽射しの秋、松の木の色合いに秘められた、到来する冬の気配…これだけは決して裏切られることのない約束である。冬が運んでくるものが、痛む骨や飢えたエルクや凍える子供たちであっても、とにかくいまはこの澄んだ青空がある。西モンタナの最良の季節だ”

 と言う。しかし、私は躍動感あふれる春が好きだ。

お気に入りの表現(6)レジナルド・ヒル「誰の罪でもなく」ハヤカワミステリから

2005-03-10 14:06:20 | お気に入りの表現
いままでに読んだ本やいま読みかけの本から、お気に入りの表現を拾い出そうと思っています。

 ユーモアで1頁ごとにニヤリとした。黒人探偵シックス・スミスは歌がうまい。しかし、伯母から教育ママのようにいつも注意を受ける。

 “人生は与えられたものの中で幸せに生き、穏やかな喜びを味わうためにあるのだ”

 シックス・スミスは、心底そう思っているのだろうか。私はこの言葉が好きで、高望みや妬みを持たないように努力しているが、人間幾つになっても邪念から逃れられないものだとつくづく思う。

お気に入りの表現(5)マイケル・エバハート「法に背いて」講談社文庫から

2005-03-09 13:42:34 | お気に入りの表現
いままでに読んだ本やいま読みかけの本から、お気に入りの表現を拾い出そうと思っています。

ハワイが舞台のリーガル・サスペンス。ハワイの雨について著者は言う。

 “雨はハワイの最上の風物だというのに、ホノルルでは誰でもが濡れまいと走り回っている。この暖かく、さわやかな雨が降るからこそ、ハワイの生命のすばらしさが再確認できるのだ。近頃ではホノルルは、アメリカの大都会のせかせかした流儀にすっかり染まってしまっている。そのためオアフ島の人々は「骨休め」をするため、マウイ島をはじめとするハワイのほかの島へとわざわざ飛行機でやってきては、この温かな雨が五官にしみわたることを再認識するのだ”

 家族でハワイ旅行をしたとき、雨は夜降って朝には上がるというパターンが多かったように思う。この本では、観光情報もあって今度行ったときに確かめたいと思っている。
 ①ギャベル(バー) ホテルストリートに面し、ホテル・プレイスディルの近く。書記官、警官などで満員になる。
 ②ニックスフィッシュ・マーケット シーフード・レストランの老舗。
 ③ハワイ料理(冠婚葬祭にも出るようだ)
  ◆ポイ(タロイモ料理)
  ◆カルーア・ピッグ
  ◆ロミロ・サーモン(鮭を小さくちぎって刻んだ玉ねぎと岩塩を混ぜ込んだ料理)
 ④カイマナ・ビーチ・ホテル(ワイキキ・ビーチの先?ダイアモンドヘッド・ビーチの先かも日本人が少なく美女が多いとのこと)

お気に入りの表現(4)ローレンス・サンダーズ「青い蝶の刺青」から

2005-03-08 13:16:07 | お気に入りの表現
いままでに読んだ本やいま読みかけの本から、お気に入りの表現を拾い出そうと思っています。

 ローレンス・サンダーズ「青い蝶の刺青」早川書房

 父の経営する法律事務所の秘密調査員として働く息子のアーチボルト・マクナリー。大変なグルメ派で、カクテルをいろいろ試して楽しみ料理にもうるさい男である。アメリカ人だからどうしてもシーザー・サラダが出てくる。サラダにかけるドレッシングのレシピを、この本の解説を書いている作曲家、音楽評論家の吉村浩二さんの奥さんのレシピが紹介されていた。

 “ボールに卵の黄身、アンチョビのみじん切り、おろしにんにく、ウスターソース、レモン・ジュース、塩、コショー、パルメザン・チーズを入れてミックス、そこにオリーブ・オイルを入れて混ぜる。次に、レタスとクルトンにそのドレッシングを合えて、仕上げにもう一度パルメザン・チーズをかけて出来上がり”分量が書いていないが、そこは自分の好みで適当に作る楽しみが残っている。シーザーサラダのドレッシングはいろんな作り方があるようで、このレシピはシンプルで簡単なので試してみた。家族には好評であった。


お気に入りの表現(3)リチャード・ローゼン「ストライク・スリーで殺される」から

2005-03-07 13:18:10 | お気に入りの表現
 いままでに読んだ本やいま読みかけの本から、お気に入りの表現を拾い出そうと思っています。

リチャード・ローゼン「ストライク・スリーで殺される」
 今年も大リーグ開幕を心待ちにしている。日本人選手の新しい顔ぶれも加わり、どういうプレイを見せてくれるか大いに楽しみだ。大リーグは非常に厳しい。野茂投手のいま置かれている状況がハッキリと示している。大リーグには、メジャーリーガーの下にマイナーリーガーがひしめいている。そこでメジャーリーガーとマイナーリーガーの違いはなにか。ここに一つの解答がある。

“マイナーリーグならピッチャーが一球、二球あるいは三球ぐらい失投しても怪我せずにすむかもしれない。しかし、メジャーにいるのは、ピッチャーに失投のつけを払わせることを知っているからこそメジャーに昇格できた選手ばかりだ”

お気に入りの表現(2)ダン・オブライエン「黄金の眠る場所」から

2005-03-05 13:26:20 | お気に入りの表現
いままでに読んだ本やいま読みかけの本から、お気に入りの表現を拾い出そうと思っています。

 ダン・オブライエン「黄金の眠る場所」心を落ち着かせ、幸せな気分にさせる文章で、人と自然の共存の描写は飽くことを知らない。

 “いずれの方角からやってこようと、心の準備をする間もなく、土地の様子は変わる。東へ旅しているものは、ロッキー山脈の数千フィートの高さからはじめて大草原を目にする。岩だらけの山道を迂回してくると、いきなり松の木も、岩も、急流も姿を消してしまうのだ。眼下には、まだ五十マイル先のことだが、これ以上考えられないほど平坦で、穏やかで、樹木のない土地が広がっている。
 西に旅していれば、インディアナ、イリノイ、アイオワの肥沃な黒土になれて、ミズリー川へ着くころは、手入れの行き届いた小さな森に囲まれ、きれいなペンキの塗られた富裕な農場の建物にでもお目にかかれるだろうという気になるが、その期待はことごとく裏切られる。いきなり、秩序が失われ、繁栄は雲散霧消するのだ。そしてどこからでも目につくはずなのに、こっちを眺めている者が一人もいないと感じるとき、北アメリカの大草原に来ているのである”