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映画「パッチ・オブ・フォグ 偽りの友人」劇場未公開作品ながら観て損はない

2019-02-25 18:37:15 | 映画

        
 「一面の霧A Patch of Fog」出版25周年を迎えるベスト・セラー作家サンディ(コンリース・ヒル)は、広い邸宅を持ち愛車がベンツというおカネに困っている人種ではない。

 ところが100円ライターの類を万引きする。発覚すれば地位も名誉もドブに捨てることにもなりかねない。それでもやめられない。どうやら「クレプトマニア(窃盗症、窃盗癖)」のようだ。

 スーパーマーケットの片隅で、監視カメラが送る映像を注意深く眺める男ロバート(スティーブン・グレアム)がいた。今日も小物を漁るサンディ。品物を手に取り、さも携帯電話が鳴ったふりをして品物をコートのポケットに入れる。一歩店から歩道に出たところで、ロバートに呼び止められる。

 一見人当たりの良いロバートではあるが、実に狡猾で自分からはなんの要求や指示を出さない。万引犯の言質を待っている。サンディもその手に掛かった。

 ロバートは、サンディがベストセラー作家だあることを重々承知していながら全く知らないふりをする。「警察に連絡しないといけない。それが私の職務だからね」と言いながら受話器に手をかける。サンディは置かれている立場がガタガタと崩れていくようで、自分の立場と哀願を繰り返す。

 ロバートはタイミングを見て「分かった」と一言。サンディが金を出して「これを受け取ってくれ」と言う。ロバートは、「いや、要らない。その代わり横丁のバーで待っててくれ」

 この接点が二人の友情を温めるふりをしながら、騙し合いのゲームが展開される。実に巧妙なプロットを私たちに投げかけてくる。エンディングのサンディが地位も名誉も捨てる覚悟があったら、命を捨てることもなかった。しかし、万引という窃盗癖は完治した。

 ベストセラー小説「一面の霧A Patch of Fog」のPatchには「つぎはぎ細工」の意もあることから、霧の中で先も見通せないつぎはぎだらけの友情のなれの果てと言える。教訓:交通事故を越したら逃げないで潔く。

 この映画が劇場未公開なのは、三人のベテラン俳優を起用しているが日本での知名度は低いためかもしれない。アマゾン・プライムでぜひ観賞をお勧めする。
  
  
監督
マイケル・レックス出自未詳

キャストス
ティーヴン・グレアム1973年8月イギリス、イングランド、リパプール生まれ。
コンリース・ヒル1964年11月北アイルランド生まれ。
ララ・バルヴァー1980年9月イギリス生まれ。

映画「2重螺旋の恋人」双子の兄弟と交わる女

2019-02-22 16:03:57 | 映画

        
 まるでポルノでゲイを公言する監督フランソワ・オゾンのセクシャル映画。フランス映画は女優を裸にする傾向がある。これもその一つ。

 謎の腹痛に悩むクロエ(マリーヌ・ヴァクト)は、産婦人科女医の腹痛について精神的な問題だろうという。クロエは精神科医を紹介してもらい、訪れたのは螺旋階段をひたすら登るポール・メイエル精神科医(ジェレミー・レニエ)だった。

 寡黙なポールだが予期した通りクロエに一目惚れ。同棲まで漕ぎ着ける。何気なくポールの私物を整理しているとき、古いパスポートが出てきた。その名字が「ドゥロール」となっている。今のポールは「メイエル」、夕食の席で問い詰めると「開業するとき母方の名字になった。メイエルは響きがいい」

 そんなある日、バスの窓から見たある建物の玄関でポールと話す女性。気になってポールに問いただすが否定。クロエの猜疑心は、車窓から見た建物に向かわせる。建物の玄関のプレートには「ルイ・ドゥロール 精神分析医」となっている。

 予約の上訪れたその建物も螺旋階段で登る。精神分析医ルイ・ドゥロールのドアをノックに出てきたのが、ポールそっくりの男(ジェレミー・レニエ)。しかもこの男は傲慢で暴力的な支配者。最初の面談で分かったのは、ポールの双子の兄ということ。二度目には、クロエは犯されていた。

 徐々に現実か妄想かが分かってくる。双子の兄弟がキスをする場面になると妄想が確かとなる。このキスの場面は、どのように撮影したのか見ものだと思う。

 主人公クロエを演じるマリーヌ・ヴァクトは、髪形をボーイッシュにまとめ細面で華奢な感じのする女優で中性的な魅力がある。モデルの経験もあるようで、美術館の監視員の職を得て歩く姿はまるでファッションショーのモデル。そうはいっても、一度も笑わない冷たさを秘めた人物を演じるには適材と言える。

 映画全体のトーンは地味で、裸の男女が絡むセックスシーンが異彩を放つ。分かりにくい映画で、オープニングからして分からない。クロエの長い髪の毛をボーイッシュに整える場面だ。これが何を意味しているのか分からない。ある人は、表情の変化からこれからの展開を読み取れるという。私は読みとれなかった。

 いずれにしても、評価する人もいれば、そうでない人もいる。批評家たちの評価もおおむね肯定的だという。映画を見た後、みんなであれこれと話し合うには格好の題材とは言える。

 この映画は、R18+指定作品で18歳未満の入場・観賞禁止となっており、広告やCMでの宣伝が不可能に等しく、公開する映画館が大幅に減少する。地上波放送は、ほぼ不可能である(ウィキペディアから)

 DVDだったら18歳未満でも観られるんだがねえー、どうする? こういう映画は私は好きではない。皮肉を込めて言わせてもらえれば、精神病患者が観ればすとんと理解するのではないだろうか。2017年制作 劇場公開2018年8月
  
  
  

監督
フランソワ・オゾン1967年11月パリ生まれ。

キャスト
マリーヌ・ヴァクト1991年4月パリ生まれ。
ジェレミー・レニエ1981年1月ベルギー・ブリュッセル生まれ。
ジャクリーン・ビセット1944年9月イギリス、サリー州ウェイブリッジ生まれ。

映画「女神よ、銃を撃て」75歳のカトリーヌ・ドヌーブを見るだけ

2019-02-19 16:48:59 | 映画

         
 陳腐なメロドラマ作品。劇場未公開は納得。クスリ依存症で事故のため右足が悪く杖が放せないわが娘ジュリア(ダイアン・クルーガー)を守るため、ジュリアが誤ってボーイフレンドを殺してしまった後始末も動揺を見せずやってのける母ルイーズ・ケラー(カトリーヌ・ドヌーブ)。

 ジュリアのボーイフレンドの友人と言う男が嗅ぎつけて、警察に密告されたくなければ3万ユーロ(約370万円)用意しろと脅迫してくる。この男もギャングの麻薬を横取りしたのが知れて、ギャングから3万ユーロの弁済を求められていた。

 母ルイーズは、1万5千ユーロをまず渡し、ついで7千ユーロを渡した。その金を受け取るギャングは、金づるがあるとみてその男を追及するが、男は白状しない。

 隙を見て男は逃げ出した。追ってきたギャングの一員を射殺して逃げ込んだのがルイーズの屋敷。ギャングはどこで知ったのか電話をかけてきて「男を引き渡せ」という。ルイーズはそんな男はいないと拒否。夜半、ギャングは車で乗り付けてくる。猟銃で武装したルイーズは、ギャングを追い返す。

 このままことが収まる筈もなく、男は警察宛てに「友人を殺したのは俺だ」という文面を残して屋敷を去っていった。男は海岸で死体となって発見された。

 要するにジュリアの身代わりになったということ。そんなにやすやすと命を投げ出す母娘だったのか? 甘ちょろい演出には驚く。カトリーヌ・ドヌーブの貫録を見せる映画。男優もつけ足しの感じ。2017年制作 劇場未公開
   
監督
ティエリー・クリファ出自未詳

キャスト
カトリーヌ・ドヌーブ1943年10月パリ生まれ。
ダイアン・クルーがー1976年7月ドイツ生まれ。

映画「ザ・ワーズ 盗まれた人生The Words」

2019-02-12 16:19:15 | 映画

        
 この映画のエンディングには悩まされる。そのせいかどうかは知らないが、批評家の評価はよくない。が、私は楽しめた。

 「言葉The Words」の著者クレイ・ハモンド(デニス・クエイド)は、自身の著書紹介の朗読会で一人の男の人生にとってあまりにも重い過ちを語る。

 シャワーからでる水のような雨の降る夜、リムジンに乗り込んだのは「窓辺の涙」でアメリカ文芸奨励賞を受賞して、そのパーティに出席するローリー・ジャンセン(ブラッドリー・クーパー)とその妻ドラ(ゾーイ・サルダナ)だった。

 その二人をアパート入口ドアの陰から見送る初老の男(ジェレミー・アイアンズ)がいた。オープニングからミステリアスな展開。

 クレイ・ハモンドが語る第1部が終わり幕間に謎の美女ダニエラ(オリヴィア・ワイルド)がクレイに近づく。

 新緑のニューヨーク・セントラルパーク。ローリー・ジャンセンがベンチで本を読んでいる。隣りのベンチに座ったのが初老の男。何気ない言葉のやり取りから、「窓辺の涙」のストーリーを語る初老の男が、あの原稿を書いた本人だと知る。最後に彼は核心に触れる。「君は私の人生を盗んだのだ。その真実だけを伝えたかった」と言う。盗作した「窓辺の涙」は、初老の男の哀しいラブ・ストーリーだった。ローリー・ジャンセンにしても最初からこの作品を盗む気持ちはなかった。

 時はさかのぼり、ローリーとドナのフランスへの新婚旅行。パリの骨董店で見つけた古い鞄を買い求めた。若き作家志望のローリーは、著作に苦しみながらも作品を出版社に送るが、表現力はいいが内容が現代に合わないので発刊は出来ないという断りが続く。

 そんなある日、ローリーは自作の原稿をパリで買い求めたカバンにつめようとして古い原稿を見つける。読み始めると止まらない。読了後もその作品が頭から離れない。深夜眠れないまま、その原稿を句読点や綴りの間違いも含めてそっくりパソコンに入力した。

 自分では何故そういうことをしたのか分からない。ただ、言葉を指先から感じたかった。そうすれば自分の作品に命を与えてくれると思っただけかもしれない。

 入力したパソコンを読んだドナは、ローリーの作品に感動した面持ちで息つく暇もないほど言葉が飛び出してくる。彼女の熱気は「盗作になる」という言葉を挟めなくなる。こうして世に出たローリー・ジャンセン。出版を拒否された作品も名前のおかげでつぎつぎと発刊される。

 順風満帆、人生の頂点で初老の男に出会った。それからは眠れない日が続く。妻に真実を打ち明けたら「信じられない」と言って距離をとり始める。出版社の編集長は、「公表するな。おれも破滅だ」。ローリーは、重い過ちを抱えながら人生を歩まなければならない。

 そしてニューヨークの高級アパートメントにあるクレイ・ハモンドの部屋。謎を秘めたダニエラとヴィンテージ・ワインを傾ける。クレイが「ローリー・ジャンセンは、今後どうなると思うか? 当ててみろ」「彼は破滅よ」とダニエラ。ダニエラの蠱惑するまなざしは、男を求めていた。熱いキスも途中でクレイが力をなくす。「私はいいのよ。あなたを求めているから、なぜ?」ダニエラの言葉にクレイは「僕は……」言葉が続かないまま、エンドロールに場面は転換する。

 一体クレイは何者なのだろう。私が思うに、初老の男が別れた女の息子ではないかと。と言うのも初老の男の若い頃、出勤途上のニュージャージーのある駅で、車窓から別れた妻を見た。そこには夫が抱いた男の子が見えた。別れた妻も別れた夫に気がついたらしく凝視している。列車が動き出して思わず片手をあげて挨拶を送った。別れた妻も少し右手をあげて挨拶を返してきた。遠い昔の切ない思い出ではあるが、その時の子供がクレイではないか。

 クレイは詳細に母から聞いている筈だ。クレイは復讐を企てているのだろう。そうなるとダニエラとの関係も深入りは避けねばならない。謎の女に秘密を打ち明けることは出来ない。2012年制作アマゾン・プライムで観る。
  
  
  

監督
ブライアン・クラグマン1975年9月ペンシルヴェニア州生まれとリー・スターンサール1980年ペンシルヴェニア州生まれとの共同監督。

キャスト
ブラッドリー・クーパー1975年1月ペンシルヴェニア州フィラデルフィア生まれ。
ジェレミー・アイアンズ1948年9月イギリス、ワイト島生まれ。1990年「運命の逆転」でアカデミー賞主演男優賞受賞。
デニス・クエイド1954年4月テキサス州ヒューストン生まれ。
オリヴィア・ワイルド1984年3月ニューヨーク州ニューヨーク市生まれ。
ゾーイ・サルダナ1978年6月ニュージャージー州生まれ。

海外テレビドラマ・ミニシリーズ「インジャスティス~法と正義の間で」アマゾン・プライム

2019-02-06 13:37:19 | 海外テレビ・ドラマ

      
 緻密さと切れ味の鋭さがあるドラマ。農家の片隅にある掘立小屋で、男が殺されているのが発見される。このドラマのユニークなところは、この犯人が最初から明らかになることだ。

 この犯人は、かつて殺人事件を扱う敏腕の弁護士ウィリアム・トラヴァース(ジェームズ・ピュアフォイ)だった。なぜ、トラヴァースは、この男を射殺しなければならなかったのか? なぜ、正義の味方が不正を働くのか? 

 事件が起きたのは、イギリス、サフォーク州の州都イプスィッチ近郊の農地だった。このイプスィッチに今は殺人事件を扱わないウィリアム・トラヴァースが、妻ジェーン(デヴラ・カーワン)と住んでいた。ウィリアムもジェーンも現状に満足しているわけではなかった。ジェーンは、夫が元のように殺人事件を扱ってロンドンの法律事務所に戻ってほしいし、自分もロンドンの出版社の誘いを受けたいと思っていた。

 そんなとき、ケンブリッジで共に学んだ友人マーティン・ニューアル(ナサニエル・パーカー)が、殺人容疑で逮捕されその弁護を依頼してきた。

 一方、掘立小屋での殺人事件を捜査する刑事マーク・ウェンボーン(チャーリー・クリード=マイルズ)が徐々トラヴァースに近づいてくる。

 もし「殺人はしていない」という依頼人の言葉を信じて、無罪を勝ち取りその後真犯人が依頼人だったと分かった時の弁護士の気持ちはいかがなものか。裁判で決着がついた事件を警察は当然捜査しない。真実を犯罪人特有の狡猾さで担当弁護士にあざ笑うかのように告げることだ。そう、これがウィリアム・トラヴァースの引き金になった。

 さて、ウィリアム・トラヴァースは逮捕されるのだろうか。意外な展開があって楽しめましたよ。

 別の話題に移ると、トラヴァースが乗る車は、トヨタ・プリウス・ハイブリット、ジェーンは、ホンダCR-V。このテレビドラマに日本メーカーが協賛した痕跡がないので、恐らく生産量も多い大衆車では日本車のシェアが大きいのだろう。

 なお、ウィリアム・トラヴァースを演じたジェームズ・ピュアフォイは、どこかで見た俳優だと思っていたら、このアマゾンでも観られる「ハップとレナード、シリーズ」のハップ役を演じている。2011年制作
  
  
監督
コーム・マッカーシー 1973年2月イギリス、スコットランド生まれ。

脚本
アンソニー・ホロヴィッツ1955年4月イギリス、ロンドン生まれ。

キャスト
ジェームズ・ピュアフォイ1964年6月イギリス、イングランド生まれ。
デヴラ・カーワン1971年8月アイルランド生まれ。
ナサニエル・パーカー1962年5月イギリス、ロンドン生まれ。
チャーリー・クリード=マイルズ1972年3月イギリス、ノッテンガム生まれ。

海外テレビドラマ「ロマノフ家の末裔~それぞれの人生 」アマゾン・プライム・オリジナル 

2019-02-03 15:36:23 | 海外テレビ・ドラマ

         
 1613年、ロシアの有力貴族の推戴によってロマノフ家が誕生した。そしてロマノフ家は世界一の大富豪でもあった。1918年革命軍によってロマノフ家の処刑で断絶した。このドラマでも冒頭に全員射殺され血が床に流れる。

 子孫絶滅かと思いきや、ネットをさまようと去年の2月16日にモナコ公国に本部を置く人道支援組織「アミチエ ソン フロンティエール インターナショナル ジャポン」が開くチャリティ・ガラ・パーティの案内が目にとまった。

 このパーティにロマノフ家の末裔プリンセス・オルガ・ロマノフが招かれていた。このパーティは、ブラック・タイかホワイト・タイ着用のハイソサエティなパーティという。

 そしてオルガ・ロマノフについて、1918年ちょうどロマノフ家の処刑のとき、亡命した一族がいた。オルガは、1950年にイングランドに生まれたという。現在もロンドンに在住、30室あるシャトーで暮らしている。

 このように末裔たちは健在ということで、このドラマが展開される。現代に生き残った末裔たちにも、われわれと寸分違わない皮肉な人生を見ることが出来る。結論から言えば「実に面白い」と言える。8話構成になっていて1話が1時間から1時間30分という長さ。皮肉と風刺が効いたストーリーに飽きることはない。

第1話「ヴァイオレット・アワー The Vioket Hour」
 代々続いたロマノフ家の遺産を叔母が家政婦に贈ると言う暴挙に色めき立つアーロン・エッカートとガールフレンドのルイーズ・ブルゴワン。しかし、皮肉な結末が待つ。

 アーロン・エッカート、カリフォルニア州クパチーノ生まれの50歳。クリント・イーストウッドが監督した2016年の「ハドソン川の奇跡」の副機長は記憶に新しい。

 アーロン・エッカートの叔母役のマルト・ケラーは、1945年スイス生まれの73歳。女優とオペラ演出家として有名。私は初めて見る。

 アーロン・エッカートのガールフレンド役がルイーズ・ブルゴワン。1981年フランス生まれの37歳。2009年セザール賞最優秀主演女優賞にノミネートされるほどの実力がある。

 家政婦役のイネス・メラブは、1993年フランス生まれの25歳であるが、明らかにアラブ系だ。ちなみに「ヴァイオレット」はスミレで、コンクリートの隙間にも生えることから、イネス・メラブのしたたかさの象徴なのかと思える。

第2話「空しい望み The Royal We」
 マイケルとその妻は、中年の危機。ロマノフ家末裔が全員集まるクルーズ船でのパーティが迫る。そんなときにマイケルは陪審員を引き受ける。簡単な殺人事件で、評決は出発時間には間に合うと思っていた。

 ところが陪審員の中にマイケルの心を捉えて離さない美女、ジャネット・モンゴメリーがいた。病的にジャネットを思う心が、全員一致が原則の陪審員の評議でただ一人有罪に反対する。これによってジャネットとのつながりが続いていく。ことはそう簡単ではなかった。皮肉な結末が待っていた。

 ロマノフ家末裔のマイケル・ロマノフを演じるコリー・ストールは、1972年ニューヨーク州ニューヨーク市に生まれた42歳。バイプレイヤーとしてよく見る顔の一人。2013年「ハウス・オブ・カード野望の階段」でアルコール中毒の政治家を演じ好評を得る。

 マイケルの妻を演じるケリー・ビシェは、1984年ニュージーランド生まれの34歳。2012年ベン・アフレック監督・主演の「アルゴ」に出演した。

 陪審員のイギリス女性をジャネット・モンゴメリーが演じる。ジャネット・モンゴメリーは、1985年イギリス、イングランド、ボーンマス生まれの33歳。

 マイケルの妻ケリー・ビシェとクルーズ船で出会う男を、1971年ロサンジェルス生まれのノア・ワイリー47歳が演じる。

第3話「栄華の果てにHouse of Special Purpose」
 演技力が乏しく監督やキャストの相手役男優など、誰とでも寝る有名女優が、ロマノフ家の末裔イザベル・ユペールが監督する“ロマノフ家”に出演。最後の最後にロマノフ家処刑の場面で最高の演技を見せた。しかし、これも周囲の策謀の結果だった。風刺のきいたお話。

 有名女優を演じるクリスティーナ・ヘンドリックスは、1975年テネシー州ノックスビル生まれの43歳。

 本作「ロマノフ家の末裔」を脚本・監督・製作を担当したマシュー・ワイナーが、2007年に製作総指揮・脚本を担当した1960年代の大手広告代理店を舞台にした「マッドメン」で、多くの男を魅了する代理店のオフィス・マネージャー役で脚光を浴びた。

 なお、2008年から3年連続でプライムタイム・エミー賞の作品賞を受賞している作品でもある。

 監督役のイザベル・ユペールは、世界的実力派女優と言ってもいい。私の好きな女優で彼女が出ていれば無条件で観てしまう。1953年パリ生まれの65歳。オーラを感じる女優だ。

第4話「秘密の重み Expectation」
 ジュリア・ウェルズ(アマンダ・ピート)は、娘の出生について堅く口を閉ざしていた。その秘密は、夫エリックの親友ダニエルと浮気したときの子だった。娘の出産を待っているとき、秘密が思い出され、いつ真実を伝えるべきかで心が揺れる。ロマノフ家との接点は、小説家ダニエルの作品「ロマノフ家」にある。

 ジュリア役のアマンダ・ピートは、1972年ニューヨーク生まれの47歳。浮気相手のダニエルを1962年マサチューセッツ州ボストン生まれのジョン・スラッテリー47歳が演じる。

第5話「虚像の調べ Bright and High Circle」
 ロマノフ家から代々伝わる重厚な邸宅の一つに住むキャサン・フォードは、邸宅の庭に面した広いピアノ室で息子が弾く「チャイコフスキー作曲ピアノ協奏曲第1番第1楽章」を惚れ惚れとした気持ちで聴いていた。演奏が終わった後、ゲイのピアノ教師デヴィッドに感謝の言葉をかける。

 近辺の富裕な家庭の子供を教えるデヴィッドは、ユーモアもあり明るい性格の持ち主で広く愛されていた。ところがある日、女性刑事がやってきて「デヴィッドが生徒と不適切な関係を持っている疑いがある。いずれ子供たちに事情聴取することになる」と言う。

 刑事から他言無用と釘を刺されているが、秘密は素早い速度で秘密でなくなるのが世の常。そして疑心暗鬼の空気が広まる。噂話の怖さを暗示しているような風刺が面白い。

 キャサリン・フォード役のダイアン・レインは、1965年ニューヨーク生まれの54歳。2002年の「運命の女」でアカデミー賞主演女優賞にノミネート。

 ゲイの音楽教師デヴィッドを演じるのは、アンドリュー・ラネルズ。1978年ネブラスカ州オマハ生まれの40歳。本人自身もゲイ。ブロードウェイ出身の歌手・俳優である。

第6話「パノラマPanorama」
 舞台はメキシコ。メキシコといえば映画やドラマで麻薬マフィアを強く意識する。このドラマは、まるで観光映画の趣だが、メキシコの別の顔を見せてくれる。

 ラテン圏最大の都市メキシコ・シティのジャーナリスト、エイベルは、富裕層を対象とする末期がん患者の治療を行う病院に疑いを持っていた。女性看護師を丸めこんで自身の採血を白血病の血液と取り替えさせ、患者としてもぐりこんだ。

 そこで出会ったのが白血病の息子を持つ、ロマノフ家の末裔でアメリカ人の母親ヴィクトリアだった。壁画で有名な国立芸術院宮殿、メキシコ・シティ北東約50キロにあるテオティワカンの高さ65㍍の太陽のピラミッドなどを巡ると男と女は徐々に近づいていく。夫に不満を持つ人妻と独身の男。しかし、このドラマでは一線を超えなかった。 が、「息子さんのために、もう一度夫婦関係を立て直してよりよき人生をと思う。あなたを愛しているけれど」という男を振りきれるだろうか。
 もし、続きのストーリーがあれば激しく燃え上がる筈だ。「その後は?」と思わせるドラマだった。

 ヴィクトリアを演じたのは、1973年オーストラリア生まれのラダ・ミッチェル45歳。ジャーナリスト、エイベル役は、1984年東京生まれメキシコ育ちのファン・パブロ・カスタニェーダ34歳。

第7話「終着点End of the Line」
 養子縁組のお話。子供に恵まれないアメリカ人夫婦がウラジオストックにやって来た。妻アンカがロマノフ家の末裔と言われていて、養子はロシアからと言う希望を持っている。

 収容施設で見せられた女の子は、泣かないし一言も発しない。ホテルに戻った夫妻が夫婦喧嘩を始める。「様子がおかしい。脳に問題があるのでは? あの子を受け取りたくない」と妻。「黒人の子はイヤだとかあれこれ選り好みするのは良くないよ」と夫。

 引き取りの断りを施設に言ったところ、なんと色が白く笑顔の可愛い子を手渡された。妻アンカは満面の笑み。夫妻は審査にも通り帰国の途についた。

 このドラマを観ていて、ちょっと嫌な気分になった。これが実態なのかもしれないが、人種を差別しまるで保護された猫や犬を選ぶような感覚に違和感がある。実際このドラマでも、高額の金額を支払っていた。要するに赤ちゃんを買うわけ。

 自分が産んだ子が脳に障害があっても、手足に問題があっても育てていかなければならない。養子縁組は赤ちゃんを選ぶ方が選択条件を、色白で美男美女になる可能性大とか、知能指数が高いという条件をつけるかもしれない。俺もお前も成績が良い方ではなかったから、生まずに養子縁組で頭のいい子を見つけようなんてなりかねない。ドラマではセリフの中に差別や偏見を潜り込ませているが、重い課題を提示されたお話だった。

 アンカを1973年イリノイ州ウェストチェスター生まれのキャスリン・ハーン45歳。夫役を1974年テキサス州ダラス生まれのジェイ・R・ファーガソン44歳。

第8話「すべてを持つ者 The One That Holds Everything」
 これは完全にミステリーだ。一言だけ「鉄道のファーストクラスに隣り合わせに座ったのが運命の分かれ道」
キャスト 
ヘラ・ヒルマー1988年アイスランド生まれ。
ベン・マイルズ1967年イギリス、ロンドン生まれ。
JJ・フィールド1978年コロラド州ボルダー生まれ。
アデル・アンダーソン1952年イギリス生まれ。

2019年1月11日からアマゾンで放映