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三浦和義のロス疑惑再燃!

2008-02-26 12:59:37 | 社会
 サイパンで三浦和義の逮捕を聞いて多くの人が、えっ! と驚いたことだろう。ところがわたしは驚かなかった。アメリカの捜査当局は、当然のことをしたと思った。
 まだ、全容が不明だが、ミステリー小説の世界で仕入れた拙(つたな)い知識によって、重罪に相当する犯罪には時効がないことを知っていたからだ。
 それにしてもこの件を知った日本の元捜査幹部が「まだ、米国は捜査を捨てていなかったのか」と驚いたという。新聞でそれを読んだわたしは、別の意味で驚いた。それは、アメリカの法体系を知らなかったのかということと、事件の被害者をおろそかにしているなということだ。
 実は、いま偶然にマイクル・コナリーの「終決者たち」の42頁まで読んだところであるが、この小説は、ロサンジェルス市警が舞台でボッシュ刑事が復職して未解決事件を追うという話のようだ。
 この中で市警本部長は言う。「忘れられた声が奏でるコーラス。未解決事件のことを思うと、いつもそのことを考えるのだ。まさに恐怖の館だ。
 わが市警最大の恥だ。未解決事件すべてが、被害者の声すべてが、どの事件も湖に投じられた一個の石のようなものだ。あの石で起こった波紋は、時間と人々の間を通り抜けていく。家族や友人や隣人たちのあいだを。
 あまたの波紋が起こり、当市警に忘れ去られた声があまたあるならば、われわれは自らを市の警察と堂々といえるだろうか?」と重大な決意とともにボッシュたちに問いかける。
 この被害者の声が日本の捜査当局には、届いていない気がする。アメリカの捜査機関が科学捜査の進展とともに、未解決事件の解明に、被害者の視点を重く見て取り組んでいるであろうということは推察できる。そして三浦和義の逮捕は、つじつまが合う。事件の行方を注目するとともに、時効という概念を再検討されるときがくるかもしれない。
 2月26日のニュースによれば、1988年5月5日の逮捕状の執行だという。二十年前の逮捕状を使っていることは、新証拠はないと思われる。とにかく逮捕してロサンジェルスに身柄を移したあと、陪審裁判で有罪に持ち込もうという魂胆ではないだろうか。
 素人のわたしにはこの程度の推測しか出来ない。いずれにしても執念深く小説中の本部長のように、未解決事件一掃が行われているのだろう。

振り込め詐欺野郎を一蹴!!

2008-02-22 11:42:41 | 社会
よりによって我が家に振り込め詐欺野郎が電話をかけてきやがった。(汚い言葉で失礼!)
 21日午後一時半ごろ、二階の部屋でミステリーを読んでいた。階下の電話が鳴っているのが聞こえ、妻がとったらしく鳴り止んだ。しばらくして妻が部屋に顔を出して、
「お父さん、去年の年末ごろ市役所からの茶封筒に入った郵便を見なかった?」と訊いた。
「いや、見なかったよ。見たかもしれないけど、記憶にないなあ」
「いま市役所から電話があって医療費の返還金45,000円ほどあるそうなの。手続きが未了なので国民医療支援センターに電話して手続きをしてくださいと言ってきたわ」
「じゃあ、電話すれば……」ということで妻は降りていった。そのときふと市役所がなんで直接手続きをしないのだろうと思った。妻のあとを追いかけた。
 妻は指定された電話番号にかけていた。相手は、こちらの電話番号と生年月日それに取引銀行を聞いて「調べて折り返し電話します」と言った。待つ間、医療費? 去年骨折で通院したことや二年前に妻が急性心膜症で入院したことなどが関係あるのかと話し合っていると電話が鳴った。さっきの相手からだった。五分もたっていない。
 妻が電話に出たが、結構長い通話時間だった。それを聞きながら書類一通送ればいいはずなのにどうしてそんなに時間がかかるのだろうと訝っていると、ATMや携帯電話という単語が聞こえた。直感は怪しいと告げた。妻におかしいよといいながら電話を代わった。
「もしもし、この国民医療支援センターというのはどんな組織なんだ。官庁なのか?」と聞いたが、明確な返事はなかった。あいまいに「そんなものです」と抜かしやがった。
 丁寧な言葉使いのその野郎は「奥様にご説明しましたが、ご理解を得るためにご主人様にもご説明します」その説明によると、お金はお宅の取引銀行の本店にとどまっている。したがって近くのATMに行って口座に振り込む手続きがいる。携帯電話で詳しい指示をするからそのようにして欲しいという。
 それに対し、「当方の支店口座に振り込んでくれればいいではないか」との質問には、詐欺行為が横行しているので、支店の口座を聞くことが出来ない。しかも規則で今日中にしないといけないという。時計を見ると午後二時だった。
「今日は行かない。銀行の本店に問い合わせる」と言うと、「私どもがお金を預かっているのですよ」と語気を荒げたので、「こちらの知ったこちゃない。金は要らん!」と言ってガチャリと切った。くそったれ野郎め! 
 怒りを静めながら、半ば戻ってくるはずの金に未練を残して、念のために当地区の市役所に電話をしてみた。なんと担当者の開口一番「ATMですね」だった。聞くと詐欺そのものだった。
 なんとか詐欺の被害者にならなかったものの、自分の強欲をいやというほど知らされた。詐欺師は人の心を操るプロだということがよく分かった。不安、恐怖、喜びなどの心理状態を利用して巧みに操るわけだ。少々の矛盾にも気がつかない。
 私も人が振り込め詐欺にあったのを、テレビや新聞で見聞きすると、冷静なわたしは嘲笑していたものだ。ところが実際に詐欺行為に遭遇すると半ば操られていたのがはっきりして悔しい思いをしている。
 そこで教訓「人を騙すテクニックはあなた以上に巧みだ。必ず一日時間を置くこと。時間を置くことによって冷静さが戻り不審な点が見えてくる。毅然とした態度で臨み、大喧嘩を避けるな!」と言いたい。
 あとは警察と相談することだ。警視庁のホームページには、ATMでの手口が書かれているのでご参考までに。
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/seian/kanpu/kanpu.htm

読書 デイヴィッド・ハンドラー「殺人小説家」

2008-02-18 11:38:50 | 読書

              
 作家のスチュワート・ホーグのもとに、作家志望の人物から批評やアドヴァイスに加え出版への助力も依頼する手紙とともに、第一章の作品が寄せられる。その文章表現にはきらめく才能とすごい告白小説の萌芽があった。

 “女は小柄――せいぜい五フィート四インチ(約162センチ)ってところ――で痩せている。体重百ポンド(約45キロ)もなさそうだ。
 いかしたブルーの瞳、マジにいかした長いブロンドがきらめいている。歯もいい。前歯の下二本がいくらか出ている歯並びには、昔からそそられた。理由は分からないが、とにかく異様にすきなんだ。
 歳は二十八くらいに見えた。レザーのジャケットを着て、小さなバックパックを背負い、バギージーンズに、いい女の定番になった重くてごっついバイクブーツをはいている。
 あれはどうも理解できない。ほっそりとした足首と足は、女が自分を生かせるもっともセクシーな部分なのに。女はまさしくタフで落ち着いて見えた。ニューヨークでいい女がどこか人前に立っているときの姿そのままだ”そのいかす女は公園で死体となって発見される。

 作品は第二章、第三章と続くがいずれの章にも女が殺される場面があり、実際にその通りの状況で死体が発見される。それを旧知のニューヨーク市警警部補ローメイン・ヴェリーに見せホーグは厭でも事件に巻き込まれていく。
 ホーグは、愛犬ルルとニューヨークの町を歩きタクシーや地下鉄に乗りボストン近郊までジャガーを飛ばす。時にはおんぼろランドローバーに潜んで張り込んだりする。
 元妻の女優のメリリーとはよりが戻り、場所を選ばないメリリーの性的欲望を満たしてやるやさしい男ホーグが最後に意外な真犯人と対峙する。ユーモアと余情に包まれて、眠くなる暇もなく読了してしまった。ニューヨーク市街図があればもっと楽しめたかもしれない。
 著者は、1952年ロサンゼルス生まれ。カリフォルニア大学サンタバーバラ校を卒業。元売れっ子作家のゴーストライター“ホーギー”と愛犬ルルを主人公にした『フィッツジェラルドをめざした男』でMWA賞を受賞。ドラマ作家としても、数度エミー賞に輝いている。

読書 ジョン・J・ナンス「軌道離脱」

2008-02-14 10:50:42 | 読書

              
 製薬会社のセールマン、キップ・ドーソンは宇宙旅行の懸賞募集に当選して、キャプテンのビル・キャンベルとともに宇宙空間に達した。
 狭い宇宙船のコックピットには何人かの同乗者がいる筈だったが、それぞれの事情でコックピット内には二人の人間しかいない。
 それもつかの間で、宇宙の塵が高速で粘着性の防護壁を突き破り、ビルの額を穿ち後方の機械室を破壊する。それによって宇宙船と地球との通信が不可能になる。 さあ、困った! キップは小型のセスナ機の操縦とこのミッション参加で少しシュミレーションをしたに過ぎない未熟な飛行技術しか持ち合わせていない。しかも、五日間の酸素を保有しているだけだった。
 シチュエーションは完璧にスリルとサスペンスに満ち満ちているが、今ひとつ没入できなかった。こういう題材は、映像向きで文章での表現に限界があるのだろうと思ってしまう。
 未熟な飛行経験しかないキップが地球に帰還する場面はいともやすやすと、といった感じでスリルを味わえなかった。読んでいてたびたび眠気に襲われたので印象に残らなかった。
 著者は、テキサス生まれ。空軍のパイロットとしてヴェトナム戦争に従軍、湾岸戦争でもC-141輸送機を操縦した。旅客機の機長も長年務めている。弁護士の資格を持ち、航空安全問題の専門家として新聞・ラジオ、テレビに頻繁に登場している。

読書 リザ・スコットライン「代理弁護」

2008-02-10 12:48:49 | 読書

              
 財産管理弁護士のジャック・ニューリンは、妻を殺したと刑事に自白する。その弁護を担当するメアリー・デナンツィオは、ケヴィン・コスナーに似たジャックとの初対面のとき、その自白の裏に何か隠されたものを感じると同時にジャックに一目惚れする。
 事実はジャックの娘ペイジを助けるための身代わり自白だったが。娘のペイジも実際は母を殺していなかった。それを調べるうちに身の危険に遭遇する。
 「有罪答弁で司法取引したい」というジャックの申し出にはメアリーは頷くことは出来なかった。弁護士は本来有罪事案を軽くするか無罪を勝ち取りたいと思うものだ。その反対の主張をする被告をどのように弁護するのか、読者は固唾を呑んで読み進むことになる。
 不自然な成り行きや唐突な出来事はないかというものだ。ちゃんと伏線を張ってあって違和感はない。適度のユーモアの味付けもあったが、真犯人の出現がやや唐突に思われた。
 著者は、ペンシルヴェニア州フィラデルフィア生まれ。上訴裁判所の主席裁判官アシスタントを務めたあと、作家に転進。1993年『見られている女』でデビュー。

読書 ロバート・B・パーカー「背信」

2008-02-06 13:13:43 | 読書

               
 私立探偵スペンサー・シリーズ31作目。ベージュのパンツスーツに大きな真珠の首飾り、赤味がかったブロンドの長い髪を徹底的にスプレイしてあって、中世の宗教画に見る円光のように顔を囲んでいる。
 唇は心持薄く、目が小さい。美人だ。その女性が「あの野郎は、丸一日ペニスをズボンに納めておくことができないのよ」とスペンサーに語りかける。
 いずれにしてもこの女性マーリ-ンの夫の浮気現場を確認することになる。ところが事はそれで済まない。最高財務責任者の夫が事務室で殺され事態は混迷を深める。
 スペンサーの思考と心と肉体のよりどころスーザン、力のよりどころホーク、ヴィニイほかの面々が、適度に楽しませてくれる読み物だ。
 当然スペンサーが事件を解決する。というわけで、今回は、パーカーが人物の服装や女性をどのように描くかを主に見てみた。
 殺された最高財務責任者の服装は、“タン色のサマー・スーツにピン・カラーの紺色のシャツ、淡い紺のタイを締めている”
 タン色というのは、鈍い黄赤色のこと。それにピン・カラーは、ピン・ホールカラーシャツといってシャツの襟の両方に糸で丁寧にかがられたアイレットが開いていて、そこに安全ピン状のものや棒状のピンを通して引き締めるタイプのシャツ。かなり洒落者の装いだ。それにこの配色は誰にでも合うものでもないだろう。
               
 “スーザンはぴっちり合った白いパンツをはいていて、紺と白の縞模様、襟を広く深くスクープしたトップは、彼女が世界中のいかなる女性より形のいい僧帽筋の持ち主であることを示している”
 僧帽筋Trapezius(muscle)は、人間の背中の一番表層にある筋肉。
               
 登場する女性はみんな美人だった。スペンサーは料理も得意で、今回はナスを省いた「ムサカ」を作っていた。スペンサーはなすが嫌いのようだ。
 「ムサカ」は、バルカン半島と中東の伝統的ななす料理。ギリシャ料理として名が知られており、ギリシャ版はラム肉、スライスしたナス、トマトを何層にも敷き上にホワイトソースをかけてオーブンで焼くというもの。
 それにしても翻訳になじめなかった。まず、「……と思うのだ」とか「……始めたのだ」という会話が、男の登場人物すべてに使われている。スペンサー・シリーズは大体この調子で、気になることではある。それに古風な「接吻」も今に合わないように思う。翻訳者はかなりの高齢なのではと推測している。

読書 マイク・モラスキー「その言葉、異議あり!」

2008-02-02 10:03:05 | 読書

              
 著者のモラスキーさんは、日本滞在十数年という日本を熟知している方で、この十数年というのは延べであって、母国アメリカと行ったり来たりした結果だそうだ。従ってべったりと日本に住み着いたというわけではない。
 日本の時代の変化に加えアメリカでの変化も敏感に捉えて、文化批評も辛口で的確に描写してあるのも頷ける。
 目次を見るとパート1として『まず我を笑おう』とあって、自分自身を笑いの対象にしている。とにかく道を間違えてよく迷うという。
 その中で「アメリカでは、男というのはプライドが高いため、車を運転していてたとえどんなに迷っても絶対に他人には道を聞かない」という記述がある。
 そういう視点から見ると、私なんかは、男失格の烙印を押されかねない。ちょっとおかしいなと思えばすぐに聞きまくっているからだ。それなのに、カーナビが嫌いときているから始末に負えない。
 それから「おフランス」、頭文字の「お」に皮肉が内包されていると著者は思ったそうだ。しかし、言った人は大真面目、それはそうだろう上品ぶって何にでも「お」をつけたがる。敬語の乱用の極みで、昔、銀行利息を「お利息」と聞いたとき仰天した。
 では、アメリカはどうか。“アメリカ人は、「おフランス」という表現の、皮肉のニュアンスなら、すぐに察知できる。何せアメリカには、上品ぶっているような気取り屋を馬鹿にし、引きずり下ろしたくなった際には、何らかの形で「フランス」に結びつければよい、というお決まりのテクニックがあるからだ」という。
 しかし、著者がパリに滞在してその偏見は払拭したようだが、歩道に散らばる犬の糞には閉口したようだ。

 読みどころは幾つもあって、ブッシュ大統領とライス国務長官に触れた記述にはある種感銘を受けた。特にライス長官について。
“アメリカでは、女性が男性と対等の地位に辿りつくのに、二倍の能力と努力が必要だ、とよく言われる。そうだとしたら、南部生まれで黒人の女性という少なくとも二重のハンディを負うコンドリーザ・ライスは、おそらく普通のアメリカの白人男性の四倍の能力と努力が必要だったといえるのではないだろうか。
 どんなに彼女の政治的イデオロギーが嫌いであろうと、その意味では一目おくべきだと思う”

 ところで「バーコード」や「ライブハウス」が和製英語だということ知ってた?その「バーコードについて、友人に説明して教えると、たいていの人は大喜びする。また、「なぜ、われわれ英語圏人はそのような表現を思い浮かばなかったのだろうか」という人もいる”これなど痛快ではないか。
 著者は、セントルイス市生まれ。70年代から述べ十数年にわたって日本に滞在。シカゴ大学大学院東アジア言語文明学科博士課程終了(日本文学で博士号)。現在ミネソタ大学アジア言語文学科准教授。
 また、2007年9月よりい1年間、国際日本文化研究センター(京都)に招聘研究員として在籍し、「日本のジャズ喫茶文化」の研究に専念。「戦後日本のジャズ文化――映画・文学・アングラ」で2006年度サントリー学芸賞(社会・風俗部門)を受賞。ジャズ・ピアニストとして日本のライブハウスにも出演することもある。