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海外テレビドラマ「王室弁護士マーサー・コステロSilk」BBC制作

2021-12-27 13:22:18 | 海外テレビ・ドラマ
 イギリスの弁護士を描く。シーズン1を見始めたが、どうもついて行けない。

 頭に白いウィッグを載せ、黒い法服と白いウィングカラーといういで立ちの弁護士が、一人は有罪に持ち込もうとし、別の一人は、無罪を目指す。そういうことをしながら、同じ法律事務所に戻るのだ。私は混乱した。
 アメリカの法廷ドラマが頭にあるから、検事と弁護士の役割分担が明快だった。そこで調べてみた。

 ウィキペディアからその概要を「イギリスには伝統的に弁護士の分業制度がある。法律事務所の中に事務弁護士と法廷弁護士がいる。依頼人と会って直接仕事をするのは事務弁護士で、依頼人の予算の範囲内で、事件の性質を踏まえて、適任かつ経験のある法廷弁護士に委任する責任を持つとされる。

 法廷弁護士は、審理の1、2日前に事務弁護士から“brief”という摘要書だけを受け取るというのが一般的である。事務弁護士と法廷弁護士の違いは、事務弁護士は法律的に依頼人の代わりに行為することができ(契約への署名など)、裁判所に申立てを行ったり相手方に対する書面を書いたりして訴訟を追行することができる。

 法廷弁護士は法廷で依頼人のために弁論を行うが、それは事務弁護士からその権限を与えられた場合に限られる」が、より困難な事件を扱う勅撰弁護士(Silk)になろうとすれば法廷弁護士が条件となっている。

 このドラマは法廷弁護士マーサー・コステロ(マキシン・ピーク)が勅撰弁護士資格を取得、より困難な事件に挑むさまが心地よく響く。ほかに主な登場人物として、法廷弁護士のクライヴ(ルパート・ペンリー=ジョーンズ)、上級事務弁護士ビリー(ニール・ステューク)という配役。

 ちなみに、法廷弁護士や判事が着用する黒いガウンの起源は、アン女王(queen Anne)の葬儀が行われた1714年ごろにさかのぼるという。また18世紀当時、判事は貴族の出身者で、かつらが身分を表わしていたとされる。

マーサー・コステロ=演じたのはマキシン・ピーク。1974年イギリス、ウェストホートン生まれ。舞台・ラジオ・映画・テレビの女優。

クライヴ=ルパート・ペンリー=ジョーンズは、1970年ロンドン生まれ。

ビリー= ニール・ステュークは、1967年イギリス、ケント生まれ。


読書「司法取引The Racketeer」ジョン・グリシャム著

2021-12-19 20:48:08 | 読書
 カリブ海のアンティグア、うだるような暑いさなかにもかかわらずV・C・バード国際空港で到着が遅れているフライトを待っていても、わたしはイラついた気分になっていない。理由はすぐにわかる。

 サンファン発のシャトル便から弾むような足取りでタラップをおりてくるヴァネッサは、まるでモデルのようだ。つばの広い麦わら帽子、デザイナーズブランドのサングラス、喜ばしいほど丈の短いサマードレス、自分がノックアウト級の美女であることを知っている女ならではの気楽な優雅さを眺めると一瞬暑さを忘れる。

 こんなうらやむ人生を謳歌している男は、マルコム・バニスター43歳。Racketeer(詐欺やゆすりによる金員を得る)で得た金の延べ棒570本、金額にして850万ドル(約9億6千万円)を分配するとはいえ、懐が豊かになり暖かさとみだらな視線をヴァネッサに注ぐ。

 マルコム・バニスターはもともと黒人の弁護士で、罠にはめられ違法なマネーロンダリングに加担したとして10年の刑期を宣告され、5年が経過したとき絶好の機会が訪れる。

 それはある日の朝、メリーランド州フロストバーグ近郊にある連邦収容所のコーヒー室で、手に取ったワシントン・ポスト紙の<ロアノーク近郊で連邦判事殺害される>の記事である。
 現場は地下室。2体の亡骸。1体はレイモンド・フォーセット連邦判事66歳、そしてもう一つの死体は、秘書のネイオミ・クラリー二人の子を持つ離婚した34歳。

 FBIの捜査は、犯人の痕跡がないまま暗礁に乗り上げる。10万ドルの懸賞金も宙に浮く。マルコムは笑みを浮かべる。早速手続きに入る。

 連邦刑事訴訟規則第35条には、一旦確定した懲役刑を軽減するための唯一の手続きが定められている。それは受刑者がほかの犯罪―――それも連邦捜査機関が関心を抱いている犯罪―――を解決できる場合、その受刑者の刑期を短縮することができる、 とある。

 マルコムがFBIのヴィクター・ウェストレイク副長官とスタンリー・マンフリー連邦地区首席検事に伝えた条件とは、わたしはフォーセット連邦判事殺害の真犯人を知っている。それを教える前に「即時釈放と証人保護プログラムの適用、10万ドルの懸賞金の受領」。この条件を伝えるまで長い時間がかかった。そして事態は動き出した。

 マルコムとひと時も離れたくないヴァネッサが主要人物、FBI副長官や連邦地区首席検事がときどき登場。真犯人とされる麻薬密売人クイン・ラッカーの熱演。マルコムとクイン・ラッカーの一芝居が成功の階段を登る。

 読み手としては、ひょっとしてFBIが本気の捜査をしてカラクリを知りマルコム逮捕となるか、あるいはずっと間抜けなFBIで終わるのか。 と思いながら読み進む。やっぱり間抜けなFBIだった。

 カリブ海のアンティグアは、かつてイギリスの植民地だった。そのせいか英語が公用語で、住民はさえずるような音が混じる魅力的な一種のキングズイングリッシュで喋る。
 そして見逃してならないのは、ホンジュラス産のあまり有名ではないハンドメイドの葉巻「ラボス」だ。このラボスを愛好していたのが、フォーセット連邦判事なのだ。
 ネットでラボスを調べたが、ヒットしない。有名でないと断わりがあるから、日本ではないのかもしれない。

 ジョン・グリシャムは、著者あとがきでこのように言っている。「本書は紛れもなく虚構の産物であり、これまでの作品よりもさらに虚構の度合いが高い。数百ページの文章のうち、事実に立脚している部分はほとんどないといってもいい」
 そうでしょう、これを真似されたら困るものね。しかし、映画やテレビドラマには出来るだろう。整形手術後のマルコムをデンゼル・ワシントンがいいと思う。でも66歳か、チョット無理かな。女優は誰だろう。思いつかない。

 マルコムは光り輝く陽光を受けて、カリブ海のうねる波間に漂う。「ハッピーだよ」と。


映画「ファーザー」2020年公開

2021-12-13 20:33:54 | 映画
 認知症の映画である。内閣府が発表する我が国の65歳以上に占める認知症の割合が2025年に20%、5人に一人になり、2060年には33.3%、3人に一人という予測をしている。寿命が延びれば当然認知症患者も増えるということになる。いずれ完治するようになるかもしれないが、当面深刻な状態が続く。

 この映画は認知症を患うアンソニー(アンソニー・ホプキンス)を支える娘アン(オリヴィア・コールマン)とのおかしさと哀しさが描かれる。

 アンソニーは、イギリス特有のフラットとかテラスハウスとかで呼ばれる住宅に住んでいる。その住宅に向かうアンの描写から始まる。まだアンソニーは自分の娘に向かって「あんた誰?」という段階でないにしろ病状は進行する。

 これを演じたアンソニー・ホプキンスは、第93回(2021年)アカデミー賞の主演男優賞を受賞する。アンを演じたオリヴィア・コールマンは、助演女優賞にノミネートされた。

 ほとんどフラットの部屋での展開。こういう舞台劇のような演出には、俳優の力量が試される。83歳のアンソニー・ホプキンスは、「演技というものは絵空事であって、その要素はすべてシナリオの中にある」という持論のもと、シナリオのチェックや暗記は徹底していて役柄になり切った演技を見せる。1991年の「羊たちの沈黙」に次ぐ主演男優賞だった。

 アンを演じたオリヴィア・コールマンは、1974年生まれの47歳。彼女も2018年「女王陛下のお気に入り」で主演女優賞を受賞している。

 私は映画やドラマを観るとき、街のたたずまい、郊外の風景、住宅のデザインや部屋の様子それに使われている音楽に関心が向く。

 アンソニーのフラットも結構広い。4LDKぐらいはありそう。そんなのを観ながら、掃除は誰がする? なんて思ったりする。キッチンも広い。映画の中のキッチンだからすっきりしている。家庭の匂いはしない。ただ、水を使うキッチンには手を拭くタオルが必要で、わたしなんかはシンクの前にある引き出しの取っ手にぶら下げている。この映画はどうかとみれば、やはり取っ手にぶら下がっていた。ニヤリとした。


映画「パリの調香師 しあわせの香りを探して Les Parfums」2020年公開

2021-12-03 15:45:39 | 映画
 妙に印象に残る映画。コメディ映画とされているが、チャラチャラとしたコメディでなくゆっくりと湧き上がる可笑しさに包まれている。わけありの男女が遭遇した人生のひとコマ。

 かつてはディオールの香水「ジャドール」を調合し、フランス、いや欧米中に名を馳せた調香師アンヌ(エマニュエル・ドゥヴォス)。  
 嗅覚を失い現在治療中で舞い込む仕事というのは、皮革のなめし方の不備で不快な臭いを何とかしてほしいというのや、工場の排気の悪臭対策など本来求める香水の調合とは程遠い。それに気難しさも併せ持つ中年女性のアンヌでもある。

 アンヌが仕事に出かけるときには、スーツケースやバッグの数が3、4個になりタクシーを使うことになる。そこにやってきたのがギョーム(グレゴリー・モンテル)。

 この男、離婚していて一人娘のレア(ゼリー・リクソン)を元妻と交互にそれぞれ何週間かをともに過ごす計画を立てていた。社会福祉士からは一部屋ではレアのプライバシーが守られないから転居をするべきだと言われている。

 失業するわけにいかない。交通違反も度重なり雇い主も解雇をほのめかす。ギョームは頼み込んで、アンヌのもとへやってきた。このギョームという男、元日産の会長カルロス・ゴーンを連想する顔立ち。最初は苦々しく思いながら観ていたが、話が進むにつれ気にならなくなった。

 アンヌの気難しさに辟易していたころ、帰着して車のトランクから荷物を降ろしていた時、アンヌが持つバッグをひったくろうとした男がいた。ギョームはそいつにとびかかって追っ払った。ところがアンヌの一言が「飛び掛かるなんてどうかしてる」ひったくりを防いだのに、こんなことを言われれば誰だって頭にくる。
 「あなたは、お願いしますもありがとうもない。命令するばかりだ」とギョームは荷物を置きっぱなしにして去っていった。

 アンヌは過去の栄光を引きずっているのだろうけど、現実を見ていなかったアンヌにもギョームのひと言が影響したのか地方への出張にギョームを同道させた。人間というのは表面的には嫌なヤツと思うが、今回のように列車で移動となれば、座席に座って何かしら言葉を交わすことになる。するとそれぞれの人間性が表れてくる。

 ギョームは家庭の事情を話し「娘の行きたいところへ行っている」と言えば、アンヌは「それもいいけど、あなたの行きたいところへも行けばいい」これも一理あるわけで、ギョームは娘を海岸に連れて行った。波打ち際で戯れる父と娘。絵になる風景ではある。

 私は思うんだが、ラヴロマンスの映画も渚のデートってよくあることで、海というのはロマンティックな雰囲気を醸し出すのは確かなようだ。家族の団欒にもよく使われる。私の家から約40分も走れば九十九里海岸に達し、波打ち際を歩くと映画のシーンを思い出すことになる。

 アンヌがギョームを連れ歩くうち、ギョームの非凡さにも気づき始め「私の仕事を手伝ってくれないか」のセリフとともに、これからの二人の関係を暗示するかのような余情を残して映画は終わる。

 ちなみのディオールの香水「ジャドール」を実際に調合したのはチャリス・ベッカー。アマゾンでこの香水の値段を調べてみると、100ml 約14000円ぐらい。ml当たりにすると50mlや10mlよりも安い。

 出演の エマニュエル・ドゥヴォスは、1964年フランス生まれ。2002年ジャック・オーディアール監督「リード・マイ・リップス」でセザール賞主演女優賞受賞。

グレゴリー・モンテルは、1976年フランス生まれ。