世界3位の化学会社デュポン財閥の相続人ジョン・デュポンの不可解な殺人に至るまでを描く。銃弾3発でコーチのデイヴ・シュルツを射殺した。
動機らしい動機がなく専門家の強迫観念的統合失調症との証言もあったが、軽微な警護の刑務所に収監された。犯罪そのものは平凡で、精神異常者が人を殺しただけ。
ところが犯人が全米の3大財閥といわれるデュポンの巨額財産を相続し、社会に多大の貢献したとなれば映画の題材にと言うことになるのだろう。
巨額財産といえば、デュポン49歳のときの資産は240億円(現在の為替レートで)とある。敷地はどれくらいだというと、800エーカーだそうだ。1エーカーは、約1200坪だからなんとか想像するしかない。とにかく広いことは確かだ。
ジョン・デュポンは「いくつかの本を書いた鳥類学者でもあり、貝類学者、切手蒐集家、スポーツ支援者やコーチとしての顔も持っていた。慈善事業としてデラウェア自然博物館を設立し、いくつもの施設に寄付を行ってもいる。
1980年代に五種競技に興味を抱いたことから、所有するフォックスキャッチャー農場にレスリング施設を建設する。彼はアマチュアスポーツの支援者、アメリカレスリングチームの支援者として有名であった」とウィキペディアにある。
そのジョン・デュポンをコメディアンのスティーヴ・カレルが演じる。レスリングに思い入れのあるデュポンは、ゴールドメダリストのマーク・シュルツ(チャニング・テイタム)にチーム・フォックスキャッチャーに参加するよう働きかける。と同時に兄のデイヴ・シュルツ(マーク・ラファロ)の参加も希望した。
デイヴは今の契約を破棄することは出来ないとして参加しなかった。ジョン・デュポンとマーク・シュルツの仲は、友人とはいいながらまるで兄弟のように親密な関係だった。ところがある日、チーム宿舎に訪ねてきたデュポンがマークに「なぜ誰もジムにいない? 昼近いのに誰もいない」
「午前中は休みで、夜は2セッションです」とマーク。
「誰が決めたんだ?」
「俺ですけど」
「デイヴをうちに欲しい」
「今さら何を?」
「デイヴを入れたいんだ」
「それは無理です。前にも話したでしょ」
しばし間があって、デュポンはマークの横っ面を張り飛ばし「恩知らずのサルめ。お前を選んで失敗だ。デイヴを入れるぞ。金に糸目はつけない」と言って立ち去る。親密な関係が暗転した。
観客にとりついて離れない映画というのがある。これがそうだと思う。ジョン・デュポン役のスティーヴ・カレルの存在感が大いに貢献している。精神異常をさりげなく表現する演技は見ものだ。この演技によってスティーヴ・カレルは、アカデミー主演男優賞にノミネートされた。
チャニング・テイタムも「今までの役で一番難しい役だった」というように、徹底的に役柄を研究したあとが見える。歩き方がその象徴に思うが。
監督
ベネット・ミラー1966年12月ニューヨーク州ニューヨーク生まれ。
キャスト
スティーヴ・カレル1962年8月マサチューセッツ州コンコード生まれ。’05年の「40歳の童貞男」コメディが有名。
チャニング・テイタム1980年4月アラバマ州生まれ。
マーク・ラファロ1967年11月ウィスコンシン州ケノーシャ生まれ。