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奇妙な殺人「フォックスキャッチャー ’14」劇場公開2015年2月

2015-10-31 22:51:47 | 映画

               
 世界3位の化学会社デュポン財閥の相続人ジョン・デュポンの不可解な殺人に至るまでを描く。銃弾3発でコーチのデイヴ・シュルツを射殺した。

 動機らしい動機がなく専門家の強迫観念的統合失調症との証言もあったが、軽微な警護の刑務所に収監された。犯罪そのものは平凡で、精神異常者が人を殺しただけ。

 ところが犯人が全米の3大財閥といわれるデュポンの巨額財産を相続し、社会に多大の貢献したとなれば映画の題材にと言うことになるのだろう。

 巨額財産といえば、デュポン49歳のときの資産は240億円(現在の為替レートで)とある。敷地はどれくらいだというと、800エーカーだそうだ。1エーカーは、約1200坪だからなんとか想像するしかない。とにかく広いことは確かだ。

 ジョン・デュポンは「いくつかの本を書いた鳥類学者でもあり、貝類学者、切手蒐集家、スポーツ支援者やコーチとしての顔も持っていた。慈善事業としてデラウェア自然博物館を設立し、いくつもの施設に寄付を行ってもいる。
 1980年代に五種競技に興味を抱いたことから、所有するフォックスキャッチャー農場にレスリング施設を建設する。彼はアマチュアスポーツの支援者、アメリカレスリングチームの支援者として有名であった」とウィキペディアにある。

 そのジョン・デュポンをコメディアンのスティーヴ・カレルが演じる。レスリングに思い入れのあるデュポンは、ゴールドメダリストのマーク・シュルツ(チャニング・テイタム)にチーム・フォックスキャッチャーに参加するよう働きかける。と同時に兄のデイヴ・シュルツ(マーク・ラファロ)の参加も希望した。

 デイヴは今の契約を破棄することは出来ないとして参加しなかった。ジョン・デュポンとマーク・シュルツの仲は、友人とはいいながらまるで兄弟のように親密な関係だった。ところがある日、チーム宿舎に訪ねてきたデュポンがマークに「なぜ誰もジムにいない? 昼近いのに誰もいない」
「午前中は休みで、夜は2セッションです」とマーク。
「誰が決めたんだ?」
「俺ですけど」
「デイヴをうちに欲しい」
「今さら何を?」
「デイヴを入れたいんだ」
「それは無理です。前にも話したでしょ」
しばし間があって、デュポンはマークの横っ面を張り飛ばし「恩知らずのサルめ。お前を選んで失敗だ。デイヴを入れるぞ。金に糸目はつけない」と言って立ち去る。親密な関係が暗転した。

 観客にとりついて離れない映画というのがある。これがそうだと思う。ジョン・デュポン役のスティーヴ・カレルの存在感が大いに貢献している。精神異常をさりげなく表現する演技は見ものだ。この演技によってスティーヴ・カレルは、アカデミー主演男優賞にノミネートされた。

 チャニング・テイタムも「今までの役で一番難しい役だった」というように、徹底的に役柄を研究したあとが見える。歩き方がその象徴に思うが。
  
        
        
        

監督
ベネット・ミラー1966年12月ニューヨーク州ニューヨーク生まれ。

キャスト
スティーヴ・カレル1962年8月マサチューセッツ州コンコード生まれ。’05年の「40歳の童貞男」コメディが有名。
チャニング・テイタム1980年4月アラバマ州生まれ。
マーク・ラファロ1967年11月ウィスコンシン州ケノーシャ生まれ。

爽やかな音楽映画「はじまりのうた ’13」劇場公開2015年2月

2015-10-27 17:34:33 | 映画

               
 公私とも落ち目の音楽プロデューサー、ダン(マーク・ラファロ)はある夜、とあるライヴ・バーで酔った耳にギターを片手の女性シンガーソングライター、グレタ(キーラ・ナイトレイ)の歌声に酔いも醒める思いにかられる。音楽プロデューサーの本能が動き出し、無人のドラムやピアノ、ベースが頭の中でリズムを刻む。

 そしてグレタに声をかける。グレタから、ホームレスみたいねとの揶揄も馬耳東風。ニューヨークの路地やビルの屋上で、めぼしいミュージシャンを集めてレコーディングと相成る。

 二人にはそれぞれ事情があり、グレタは恋人のディヴ(アダム・レヴィーン)が他の女とLAに行ってしまったし、ダンは離婚していて妻ミリアム(キャサリン・キーナー)と娘バイオレット(ヘイリー・スタンフェルド)とは別居中。かつての栄光を誇った所属会社をクビになり失業中というありさま。

 グレタによって錆付いたダンのプロデューサーの感覚も取り戻し意欲的にレコーディングを進める。この場面結構いいんだよなあ。挿入歌もいい。楽しくなる。それに娘バイオレットのギターの腕も瞠目すべきものだった。

 出来上がったのを元の会社に売り込む。会社は乗り気でダンも復帰した。グレタは考える。どうやらダンも元の鞘に納まるらしい。尋ねてきたグレタが言う。「契約はしない」ダンは「いいよ」という。

 グレタの提案は、インターネットのfacebookで売り込むことだった。これなら売価10ドルの取り分が1ドルというさもしいことに甘んじなくてもいい。アルバムを1ドルで売る。世界中のフォロワーが相手。すでに1万になった。そしてダンは再びクビになった。

 音楽のプレイリストでその人の性格が分かるとダンが言う。じゃお互いに披露しようということで、イヤホーンをつけて選曲していく。ダンはフランク・シナトラの「Luck be a Lady」を選びニューヨークの街にぴったりの雰囲気で気分が乗る。そしてグレタのプレイリストの最後は、ドーリー・ウィルソンの「As Time Goes By」。「名曲ね」とグレタ。そう、ニューヨークにはシナトラだよなあ! つくづく思う。

 そしてダンは、「音楽は魔法だ。平凡な風景が意味のあるものに変わる。陳腐でつまらない景色が、美しく光り輝く真珠になる」と言う。そう、なんでもない見慣れた我が家もビル・エヴァンスのピアノ・ジャズを流すと俄然輝くような気がする。
          
          
          
          
          

 なお、劇中歌の「Lost Stars」は2014年第87回アカデミー賞の歌曲賞にノミネートされた。その曲をキーラ・ナイトレイでどうぞ!あまりうまいとは思わないけど……

監督
ジョン・カーニー1972年アイルランド、ダブリン生まれ。

キャスト
キーラ・ナイトレイ1985年3月イギリス、ミドルセックス生まれ。
マーク・ラファロ1967年11月ウィスコンシン州ケノーシャ生まれ。
アダム・レヴィーン1979年3月ロサンジェルス生まれ。バンド「マルーン5」のメンバー。
ヘイリー・スタンフェルド1996年12月ロサンジェルス生まれ。
キャサリン・キーナー1959年3月マイアミ生まれ。

アマゾン・プライムで観たミステリー「ファーゴ」

2015-10-22 11:50:18 | 映画

               
 レンタルは10月2日から始まっているが、アマゾン・プライム会員なら無料で視聴できる。で、それを利用しない手はない。

 これは2006年に起きた実話である。ミネソタ州ペミジー市がその舞台。ミネソタ州はカナダと国境を接していて極寒の地と言ってもいい。このペミジー市もカナダに近く、映画も全編雪の積もった風景で寒々しく残酷な殺人事件をより冷え冷えとしたものにしている。

 人口約4万4千人の町で保険会社に勤めるレスター・ナイガード(マーティ・フリーマン)は、妻からレスターの弟の家では新しい洗濯機を買ったとか、オーディオ装置を新しくしたとか嫌みったらしく言われる。レスターの家の洗濯機はガタガタと音がする代物で、またもや妻の「弟ならすぐに修理するわよ」の言葉。

 心にもやもやを抱えながら出勤するレスター。街角でかつての高校時代の悪ガキだった男にぱったり出会う。大男で馬鹿息子二人を従えていた。成人して分別もあるはずがこの男はまるでガキと同じ。レスターはいびりまくられ鼻に打撲を負う。

 病院の待合室の椅子に座っていたレスターに横に座る男が声をかける。このチョットした出会いがやがてレスターの妻殺しやこの男ロン・マルヴォ(ビリー・ボブ・ソーントン)の冷酷な連続殺人へとつながる。事件を追うのは、無能な署長に苦労しながらのモリー・シルヴァーソン(アリソン・トルマン)だった。

 得体の知れない怪しげで気味の悪いロン・マルヴォを演じたビリー・ボブ・ソーントンが白眉だ。小心で虫をも殺せないようなレスターが、妻を金槌で殴り殺しその嫌疑が徐々に他に移っていくのに気をよくし何かにつけて姦計をめぐらすようになる。まじめ人間でも犯罪に手を染めると、一時の動揺から立ち直ると見事な犯罪者への道を歩むと言っているようだ。

 小さな田舎町の保安官を演じるアリソン・トルマン、州警察官のコリン・ハンクス(トム・ハンクスの息子)も雰囲気をうまく出していた。アマゾンのレヴューでは、高評価がずらりと並ぶ。ただし、アマゾンのプライム会員になると年会費3,900円が必要。
  
キャスト
マーティ・フリーマン1971年9月イングランド生まれ。
ビリー・ボブ・ソーントン1955年8月アーカンソー州ホットスプリングス生まれ。
アリソン・トルマン1981年11月テキサス州ヒューストン生まれ。
コリン・ハンクス1977年11月カリフォルニア州サクラメント生まれ。

渋い映像は観終わって心地よい雰囲気に浸れる「ボッシュ シーズン1」Amazon Studios制作

2015-10-18 17:05:11 | 映画

              
 LAPD(ロサンジェルス市警)殺人課刑事ハリー・ボッシュ(タイタス・ウェリヴァー)の時としてルールに外れる捜査、会社の波止場で魚を釣るなという不文律を犯すパトロール警官ジュリア(アニー・ワーシング)とのラブアフェアが立場を不安定にする。

 売春婦の母親が殺され、少年院で育ったボッシュの過去も陰影を添える。元FBIのプロファイラーだった妻エレノア(サラ・クラーク)とは別れているが、何かと助言を求めている。二人の間に娘マデリン(マディソン・リンツ)が生まれ、今では父親のことをハリーと呼ぶ。ボッシュはその話をして複雑な表情を見せる。パパと言われていた頃が懐かしいのかもしれない。

 森で20年前の少年の骨が発見される。その謎を追うボシュ。原作者のマイクル・コナリーが製作総指揮を務め出来の良い刑事物に仕上げている。

 ボッシュが好むジャズも、眺望のいい部屋に流れると断然雰囲気が良くなる。マデリンがはじめて来た時に流れていたのは、アート・ペッパーの「パトリシア」。

 こういう曲は、眼下に光の草原を思わせるLAの夜の風景にはぴったり。こういう気持ちよくさせるところは、さすがにマイクル・コナリーだ。

 ついでにマイクル・コナリーの作品に出てくるレストラン、ビルの名前、地域は実在する。本を読みながら一つ一つ確かめたから間違いない。LAでそれらをめぐる旅が目下の願望だ。さて、シーズン2が楽しみではある。
   
それでは、LAの夜景をバックにアート・ペッパーの「パトリシア」をどうぞ!
   
      

「ラブストーリーズ コナーの涙とラブストーリーズ エリナーの愛情 ’13」劇場公開2015年2月

2015-10-16 17:27:38 | 映画

               
 一つの物語を二つに分割して夫婦の危機を描くと言ってもいい映画。夫コナー(ジェームズ・マカヴォイ)と妻エリナー(ジェシカ・チャンスティン)の別離と再生というわけ。

 それをコナーの視点とエリナーの視点を独立して描いてある。試作という意味があるのだろうか。二つに分割する意味がまったく分からない。それぞれの立場を丁寧に描こうとしたかもしれないが、冗長に取って代わったという感じだ。

 コナーの涙編では、レストランで無銭飲食をゲーム感覚で成功させ、逃げてきた公園で人生を謳歌しているコナーとエリナー。まだ若く重い病気や家族の心配事とは無縁な二人。

 ところが突然エリナーが家を出て行く。二人の間に諍いもなかったし、他の女性関係もない。途方にくれるコナー。エリナーを探してニューヨークの街をさ迷う。やっと見つけたエリナーだが、よりを戻すのには程遠い。

 身が入らないコナーに、経営する酒場も客足が遠のき閉店へと追い込まれる。幸いコナーの父が経営するレストランを引き継ぐ。そしてそのラスト。夜の帳の街を家路に急ぐコナー。信号を渡って小さな公園の中へ。ある地点でコナーは立ち止まる。じっと一点を凝視する。恐らくここが何らかの理由で子供を亡くしたところなのだろう。

 公園の外へ歩み去るコナーを追いかけるように、エリナーのコート姿が追いかける。やがてエリナーも闇に溶け込む。これがコナーの涙の終わり方だ。

 そしてこの場面をそっくりエリナーの愛情編の終わり方に引き継がれる。ラブストーリーズ エリナーの愛情編は、いきなりエリナーの欄干からの投身自殺から始まる。救助されるが情緒不安定なエリナーの日常が描かれる。

 ノーベル賞受賞の父ジュリアン・リグビー(ウィリアム・ハート)と母メアリー(イザベル・ユペール)、妹ケイティ(ジェス・ワイクスラー)の住む実家に身を寄せているエリナー。

 父の紹介でフリードマン教授(ヴィオラ・デイヴィス)と昵懇になったり、父の紹介の精神科医を拒絶したり、妹ケイティと夜のクラブで泥酔したりと安定と不安定の入り混じった状態がつづく。

 そして母メアリーの故国フランスに留学することになる。その旅立ちの日、父から告げられたのは意外な事実だった。「2歳のお前を抱きながら、渚の水中を歩いた。お前は泳ぎたがった。突然、海の様子が変わり大波が襲ってきた。お前は私の首にしがみついた。次の瞬間、波にのまれた。急いで海面に出ると、お前の姿がなかった。あんな気持ちは二度と味わいたくない。あの2秒間は苦しかった。海はまだ泡立っていたが奇跡が起きた。足元にお前がいた。ママにも黙っていたし誰にも話してない。最悪にして最高の瞬間だった」

 エリナーは、しばらくこのことについて考えをめぐらす。やがて意を決したように、クローゼットの棚の奥に母メアリーがしまっておいた額に入れた自分と自分の子供とコナーが写っている写真を取り出した。それを壁の元の位置に戻した。

 エリナーは亡くした子供のことを忘れようとしていた。エリナーのことを誰にも言わず、父は自分の胸にしまっておいた。父の深い愛情を感じた。エリナーは、亡き子供への愛が足りなかったことを恥じた。

 そして、帳の下りた街をコナーを追っていく。公園に入ったところで声をかける。「ねえ」振る向くコナー。フェードアウトで終わり。編集次第で1本の映画にまとめ、見応えのあるものに仕上げることが出来るのではないか。 というのが私の感想だった。
         
         
         

監督
ネッド・ベンソン1977年4月ニューヨーク市生まれ。

キャスト
ジェームズ・マカヴォイ1979年4月スコットランド、グラスゴー生まれ。
ジェシカ・チャンスティン1977年3月カリフォルニア州生まれ。
ヴィオラ・デイヴィス1965年8月サウスカロライナ州生まれ。
イザベル・ユペール1953年3月パリ生まれ。
ウィリアム・ハート1950年3月ワシントンDC生まれ。
ジェス・ワイクスラー1981年6月ケンタッキー州ルイヴィル生まれ。

AmazonがTVドラマを制作,公開中「BOSCHボッシュ シーズン1」

2015-10-14 17:28:04 | 映画

               
 アメリカン・ミステリーがお好きな方には、タイトルだけで想像がつくでしょう。そうなんです。マイクル・コナリーの人気シリーズの主人公ロサンジェルス市警殺人課刑事のハリー・ボッシュ(タイタス・ウェリヴァー)のお話。

 コナリーの原作ではお色気が乏しいが、この作品では新人パトロール警官ジュリア・ブレイシャー(アニー・ワーシング)と第2話で早々とベッドインする。このジュリア、弁護士もしていたが殺人課刑事に憧れて警官になったという異色の魅力的な女性。

 ロサンジェルスが舞台になるコナリーの作品に登場するレストランや地域や場所は必ず実在する。ロサンジェルスのボッシュの住まいは高台にあってロサンジェルスの夜景がすばらしい。ジュリアの褒め言葉にボッシュが説明する。

 ジュリアにしてみれば、警察の安月給でどうして? という思いがあるのだろう。その辺も聞きどころだろう。原作を読んでいたときに想像したボッシュは野暮ったい男に思えたが、タイタス・ウェリヴァーの引き締まった中年男は格好いい。この俳優ははじめて見るがテレビ出演が多い。なかなかいい味を出している。

 一方、アニー・ワーシングも初めて。こちらもいい。第3話からじっくりと楽しみたい。海外ドラマも結構いいのがあるから、これからも楽しみ。

タイタス・ウェリヴァー1961年3月コネチカット州ニューヘヴン生まれ。
                
アニー・ワーシング1977年3月セントルイス生まれ。
                

作家一家のドタバタ・ドラマ「ハッピーエンドが書けるまで ’12」劇場公開2015年6月

2015-10-11 17:55:27 | 映画

               
 文学賞受賞の父ビル(グレッグ・キニア)、姉サマンサ(リリー・コリンズ)、弟ラスティ(ナット・ウルフ)の一家。父親に似てサマンサもラスティも作家志望だ。父子家庭の背景にはちょっと複雑な事情もある。

 母エリカ(ジェニファー・コネリー)は、家を出てマーティと言う男と暮らしているのが影を落としている。サマンサは、母エリカを憎んでいる。ビルを捨てて他の男に走った時のエリカの言葉が許せない。

 それはパーティの日、サマンサは屋根に上っていた。マーティと母エリカが出てきた。マーティが“ビルに見られるぞって”って、母さんが答えた。「どうでもいい」
 そんな憎しみを抱えながら父から真実を聞かされて家族が元に鞘に納まるというお話だが、私には納得のいかないところもある。

 導入部にサマンサのこんなセリフがある。「わたしは何も楽しめていない。いつも次を求めっている。みんなそうでしょ。人生は早送り。本分をなすために日常を慌しく駆け抜ける。でも、時々はっと目が覚めるの。立ち止まって気づく“日常こそが人生なんだって。いつか自分も墓に行き着く。楽しまなきゃ だからヤリましょ(fuck)」びっくりする相手の男。いくらなんでも10代の少女に言わせるセリフとは思えない。10代で墓場までのことを考えているのだろうか。むしろ目標に向かって真剣な年頃だ。

 さらにビルとエリカの別居の理由が、ビルの浮気が発覚したときエリカはビルの戻るのを我慢強く待った。今回はエリカの浮気。ビルは待っている。こういう話はないとは言わないが、釈然としない。夫婦の生活がメイン・ストーリーだとすれば、浮気はサイド・ストーリーか。

 もっと驚くことは、父ビルとサマンサが家の前の浜辺に面したベンチで雑誌を読んでいて遠くからランニングでこちらに向かう女性を見たサマンサ。「関係は知ってるよ。彼女とヤッてる」
 翻訳が悪いのかもしれないが、父親にこんな言葉を言うんだろうか。貧民街の人間じゃないから、もう少し品位があってもよさそう。

 この映画の監督は、36歳で脚本も書いている。36歳ののりで書いただけで熟考しない。そんな印象だ。せっかく俳優陣が粒揃いで可愛いリリ・コリンズも出ているのに惜しい。
           
           
           
           

 付け加えれば、サマンサが聴くボーイフレンドの好きな曲にエリオット・スミスの「Between The Bars」があった。悪くはないが何度も聴きたいとは思わない。時代の差だろう。
 こういう曲が現代の若者が高齢になったときのオールディズになるのだろう。私のようにフランク・シナトラやウィリー・ネルソン、ペリー・コモ、エンゲルベルト・フンパーディンク、それにピアノ・ジャズのビル・エヴァンスなどとは色合いが違うなあと思わせられる。当然と言えば当然。まあ、一度は聴いてみてもいい。その曲をどうぞ!
      
監督
ジョシュ・ブーン1979年4月ヴァージニア州生まれ。

キャスト
グレッグ・キニア1963年6月インディアナ州生まれ。
ジェニファー・コネリー1970年12月ニューヨーク州生まれ。
リリー・コリンズ1989年3月イギリス生まれ。
ナット・ウルフ1994年12月ロサンジェルス生まれ。
リアナ・リベラト1995年8月テキサス州生まれ。
声の出演スティーヴン・キング

画面に映るのは男とBMWと高速道路の風景のみ「オン・ザ・ハイウェイその夜86分 ’13」

2015-10-09 16:11:48 | 映画

              
 イギリス、バーミンガムにある巨大工事現場。現場監督のアイヴァン・ロック(トム・ハーディ)は、仕事を終えて愛車BMWのSUV(スポーツ・ユーティリティ・ヴィークル)に乗り込み、左折のウィンカーを出して信号待ちをしていた。ロックは何かを考えている表情をたたえている。信号が青になっても動かない。後ろに止まったトラックのクラクションが轟く。ロックは意を決したかのようにウィンカーを右折にして発進する。信号を左折すると自宅方面。右折はロンドン方面だった。

 夜の高速道路を2時間近くをかけてロンドンへ。運転席に座るロックと高速道路の車の流れの画面が続く。そして徐々に事情が明らかになっていく。

 こういう手法は、成否は半々だろう。下手な制作者によると目も当てられない退屈なものになるだろう。この映画は退屈を感じなかったから、それなりに格好はついている。

 今夜は自宅でサッカーの試合を見る家族との約束があった。特に息子が楽しみにしている。さらに翌日には大規模なコンクリート打ち込みの作業もある。どんな理由であれ現場監督の不在は建設工事ではあってはならないことだった。ロックはすべて手筈は整えたと言うが、シカゴの本社は納得しない。やがてクビを宣告される。家族との約束を破り、唯一の収入源をすら失うほどの事情とは……。

 7ヶ月前ロンドン出張時、同行のベッサン(声の出演オリヴィア・コールマン)とワインを飲んだ末、お互いの寂しさを紛らわせるためベッドをともした。その結果、早産を知らされ逡巡したがロンドンへ駆けつけるのが今のロック。

 家庭もあるのになぜ行くのか。そこにはロックの子供の頃の孤独な時期が反映されている。父はロックを見放した。一時の浮気にしても孤独な女をロックは見捨てられなかった。父のやったようなことは絶対にしない。孤独な女と孤独な子供にはしたくない。

 だが矛盾はしている。ロンドンへ走るということは、今まで築き上げた家庭を孤独にするということにほかならない。それは男の身勝手で一途な思い。

 脚本は巧妙なタッチで描いていく。ロンドンへの所要時間と同じ時間を費やして描かれる異色の、しかもレベルの高い映画だ。監督のスティーヴン・ナイトは、第16回英国インデペンデント映画賞の脚本賞を受賞。トム・ハーディは、第40回ロサンゼルス映画批評家協会賞主演男優賞を受賞。劇場公開2015年6月
        
        
        
        

監督
スティーヴン・ナイト1959年イギリス生まれ。

キャスト
トム・ハーディ1977年9月イギリス生まれ。

暗号機エニグマの解読をした変人数学者アラン・チューリングを描く「イミテーション・ゲーム’14」

2015-10-07 15:51:42 | 映画

              
 アラン・チューリング1912.6.23~1954.6.7 41歳の夭折。研究分野は、数学、暗号解読、計算機科学とウィキペディアにある。この人が、今われわれが使っているコンピューターの礎を築いた。大変ありがたい人なのだ。

 天才といわれる人はおおむね変わっている人が多い。変人だ。この映画でも孤独で他と交わろうとしない。そんな彼を助言して支えるのがジョーン・クラーク(キーラ・ナイトレイ)。

 彼女もクロスワード・パズルの天才だった。エニグマの解読を成し遂げた業績もさることながら、この二人のドラマも感動を呼ぶ。一度は婚約した二人だったが、アランから同性愛者を理由に婚約解消をしている。仕事は今まで通りアランを助けて暗号解読に貢献する。

 次のセリフは、脚本のグレアム・ムーアの思いが込められているようだ。「君は、すべて手に入れたね。仕事も夫も、普通の暮らしも」とアラン。

 しばらく考え込んだジョーンは「普通の人には出来ないわ。今朝、私は消滅したかもしれない街の電車に乗った。あなたが救った街よ。死んでいたかもしれない男から切符を買った。あなたが救った人よ。仕事に必要な科学研究の資料を読んだわ。あなたがその基礎を築いたのよ。あなたが普通を望んでも私は絶対お断り。あなたが普通じゃないから世界はこんなにすばらしい」

アラン「本当にそう思う?」

「私はこう思う。時として誰も想像しないような人物が、想像できない偉業を成し遂げる」と言うジョーンは、アランと過ごしたかったのだろう。この二人が結婚していたら、どんな子供が生まれたのだろう。天才と天才で狂人にならないか? まあ、そんなことはどうでもいい。

 アカデミー脚本賞受賞のグレアム・ムーアは受賞スピーチでこんなことを言っているようだ。fc2のナドレックのブログから引用しよう。

 「アラン・チューリングは、このような舞台で皆さんの前に立つことができませんでした。でも、わたしは立っています。これは不公平です。16歳の時、わたしは自殺未遂をしました。自分は変わった人間だと、周りに馴染めないと感じたからです。でも、いまここに立っています。この映画を、そういう子どもたちに捧げたい。自分は変わっている、どこにも馴染めないと思っている人たちへ。君には居場所があります。変わったままで良いのです。そして、いつか君がここに立つときが来ます。だからあなたがここに立ったときには、君が次の世代に、このメッセージを伝えてください。ありがとう」

 冒頭からミステリアスに展開する物語は、作り手の確かな技もあって単なる成功物語でなく人間ドラマに仕上がっている。エンドロールに重ねるナレーションは、「1年間の強制的なホルモン投与の後、アラン・チューリングは1954.6.7自殺した。1885年から1967年までに英国法により約4万9000人の同性愛の男性がわいせつ罪で有罪となった。2013年エリザベス女王はチューリングに“死後恩赦”を与え、前例のない彼の偉業をたたえた」余情のあるいい映画だった。劇場公開2015年3月
          
          
          
          

監督
モルテン・ティルドゥム1967年ノルウェー生まれ。
脚本グレアム・ムーア1981年シカゴ生まれ。

キャスト
ベネディクト・カンバーバッチ1976年7月ロンドン生まれ。
キーラ・ナイトレイ1985年3月イギリス、ミドルセックス生まれ。

ハワイ名物「スパムおにぎり」を作ってみた。

2015-10-05 17:17:28 | 料理
   
               
 以前から知る人ぞ知るという食べ物のようだ。私が知ったのは、マイクル・クライトンの遺作「マイクロワールド」早川書房刊の中でだった。マイクル・クライトンは「ジュラシック・パーク」が有名だろう。

 「マイクロワールド」は、ハワイ諸島オアフ島がその舞台となっている。陰謀に巻き込まれた昆虫学や植物学、生物毒などの大学院の研究者7人が、ある装置で100分の1に縮小される。2センチにも満たない7人がオアフ島の密林から脱出を試みるというお話。

 その中でこの食べ物のくだりがある。「ダン・ワタナベ警部補は、ダウンタウン・ホノルルの軽食堂、(デラックス・プレート)のテーブル席につき、スパム・スシを指でつまんで食べようとしていた。
 このスシは、チャーハンを球形に丸め、海苔でくるんだもので、真ん中にスパムの塊が入れてある。ひとくちかじった。海苔にチャーハン、そして塩味の強いポークのランチョンミートとが、口の中で渾然一体となった。ハワイ名物の独特の味わいを堪能しながら、ゆっくりと味わう。兵隊の食料としてハワイに大量にスパムが送り届けられたのは、第二次世界大戦中のことである」

 このスパム・スシをネットで検索すると言葉通りの料理はヒットしなかったが、スパムおにぎりとして多くヒットした。写真を見ると白いご飯に乗せたスパムを海苔で巻いてあるのが多い。チャーハンのスパムおにぎりは見なかった。白いご飯のスパムおにぎりを食べた人の多くは、美味しいと絶賛する。これを発案したのが日系人という。

 さて、作る前に市販されているのか調べてみた。スーパーのイオン、コンビニのセブンイレブン、ローソンのいずれも見なかった。

 自家製でしか味わえないとなると貴重な食べ物と言うことになる。そして作ったのは、味ご飯に乗せたものと白いご飯のスパムおにぎり。ポークの匂いが漂いかなり美味しい。ただし、毎日は飽きがくる。

 白いご飯ばかりでなく、味付けを工夫すればさまざまなアレンジを楽しめる。本にあるようなチャーハンやスシ飯にも試してみたい。そして今度ハワイへ行くときは、12月にホノルルがライト・アップで輝くホノルル・シティ・ライツ期間に行きたいとは思う。
         
         
そのホノルル・シティ・ライツを歌った「Honolulu City Lights」をKeola and Kapono Beamerでどうぞ!