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読書「破獄」吉村昭

2011-10-28 15:38:53 | 小説

              
 北海道旅行計画の参考に観光協会のサイトをぶらついていて、網走刑務所の観光案内があった。その中で長期刑囚の独居房から脱獄した白鳥由栄(しらとり よしえ)という男がいたことを知った。

 1933年26歳の時、仲間と共に強盗殺人を犯し収容されていた青森刑務所を1936年(29歳)脱獄、1942年(35歳)秋田刑務所脱獄、1944年(37歳)網走刑務所脱獄、1947年(40歳)札幌刑務所脱獄。

 特に脱獄不可能と言われていた網走刑務所を脱獄したこともあって「昭和の脱獄王」とまで言われたらしい。となると、どういう人物なのか興味が湧くのも人情だろう。

 この小説では佐久間清太郎とネーミングされた白鳥由栄の生い立ちや性格、家庭環境など人物描写に関心があったが、それは裏切られた。ノンフィクション形式をとって刑務所側から見た小説となっている。

 時代背景も書き込まれていて、私たちが知らなかった側面も教えてくれる。二・ニ六事件から太平洋戦争と戦後にかけての諸相は激動の時代だった。
 冬の網走刑務所の氷点下の監視任務は囚人以上に困窮していたし、食糧事情の悪化で囚人には規定どおりの食料を与えていたが、看守や一般の国民は充分な食べ物はなかった。囚人を空腹のままにしておけば、暴動や脱走の引き金になると危惧してのことだった。

 戦後の食糧事情は、おそらく今の家畜以下の水準だっただろう。私にもひもじい記憶がある。そんなことを嫌というほど思い出させてくれた小説だった。

 ちなみに、白鳥由栄は、1907年7月生まれ1979年2月71歳で病没。仮釈放後行った故郷からは白眼視され元の妻は一切係わりたくないと無視された寂しい人生だった。
 考えてみれば、今時なら手記でも書けば金を稼げたかもしれない。それにしても、頭脳明晰で胆力も備わっていた白鳥由栄が、別の方面に人生の舵を切っていればどうなっていたんだろう? とも思う。

映画「Mr.ブルックス Mr. Brooks ’07」劇場公開2008年5月

2011-10-24 16:44:00 | 映画

              
 誰にでもある二面性。極端な形で出てくる殺人依存症の男。人間誰しも悪魔の部分を抱えている。でないと、犯罪映画や小説が作られ多くの人が好んで観たり読むという事象の説明がつかない。

 事業に成功して富と地位を確立したMr.ブルックス(ケビン・コスナー)の別の顔がシリアルキラーだった。殺人によるエクスタシーから逃れるには自身の抹殺しかないと思うブルックスではあるが、内なる声マーシャル(ウィリアム・ハート)〕が画面に現れ殺人をけしかけてくる。

 そして、事件を追うトレーシー刑事(デミ・ムーア)。少し物足りない印象だった。実業家のMr.ブルックスは、ケビン・コスナーにぴったりだが、シリアルキラーには無理がある。

 シリアルキラーの殺人場面は、控え目な表現でいまひとつ殺人者の内面が出ていなかったように思う。一方刑事のデミ・ムーアもやつれた感じで、犯人を挙げる刑事にしては迫力に欠ける。

 これを劇場で観ていれば、料金が高いと感じたかもしれない。テーマは面白いと思うから、描き方によってはスリルとサスペンスのあるバイオレンスになっただろう。
          
          
          
          
          
監督
ブルース・A・エヴァンス1946年9月カリフォルニア州ロングビーチ生まれ。’86「スタンド・バイ・ミー」の脚本を書き、本作は二度目の監督作品。

キャスト
ケビン・コスナー1955年1月カリフォルニア州リンウッド生まれ。’90「ダンス・ウィズ・ウルブズ」でアカデミー作品・監督賞を受賞。しかし、俳優としての受賞はない。デミ・ムーア1962年11月ニューメキシコ州ロズウェル生まれ。
ウィリアム・ハート1950年3月ワシントンDC生まれ。

懐かしのポップス「第三の男The Third Manのテーマ」

2011-10-20 06:33:40 | 音楽

              
 1949年の映画「第三の男」のテーマ曲で、オープニングはアントン・カラスが演奏するツィター(オーストリアの民族楽器)の弦が震える大写しから始まる。

 第二次大戦直後のウィーンを舞台にしたサスペンスで、モノクロの与える陰影が素晴らしい作品だった。

監督
キャロル・リード(1906.12.30~1976.4.25)

キャスト
ジョセフ・コットン(1905.5.15~1994.2.6)
オーソン・ウェルズ(1915.5.6~1985.10.10)
アリダ・ヴァリ(1921.5.31~2006.4.22)

 すべて故人になってしまったが、当時の映画ファンには映像が刷り込まれている筈のラスト・シーンも印象的だった。私の青春時代の忘れられない映画の一つとともにこの曲も追憶の旋律と言える。
アントン・カラスで「第三の男のテーマ」をどうぞ


読書「珈琲一杯の薬理学」岡希太郎

2011-10-15 20:51:41 | 読書

              
 朝、出勤前に飲むコーヒー。会社に着いて気になる女の子と気の利いた冗談を言いながら飲むコーヒー。ビジネスでお得意先と飲む味気ないコーヒー。もっと味気ないのは上司と飲むコーヒー。

 そして、一番美味しいのは週末に彼女を自宅に招いて、フランス料理もどきの手料理とワインでもてなし、デザートに飲む飛び切り心を込めたコーヒーだろう。コーヒーの後の展開に期待を込めて。

 楽しんだりお義理だったりのコーヒーが、肝臓がんや慢性肝炎、パーキンソン病に高血圧、さらには高脂血症や糖尿病など、生活習慣病やメタボリックシンドロームを予防する効用があるという。それを聞くと俄然コーヒーの香りが薬臭くなってくるが、そんなことは気にしなくていい。

 この本の記述の根拠は、国際医学誌に掲載された学術論文の疫学調査とまだ少ないが確かな実験証拠に基づいていると著者が序章で述べている。例えば肝臓がんについて、厚生労働省の研究班は1990年から約10年間にわたって、40歳から69歳の男女約9万人を追跡調査。この期間中に男性が250人、女性84人計334人が「肝細胞ガン」になったと診断された。

 これをコーヒーに関連してみると、コーヒーを毎日飲まない人の肝細胞ガン発症率を1・0とした場合。コーヒーを毎日1~2杯飲む人の発症率は0・52、毎日3~4杯飲む人は0・48と発症率は半減。毎日5杯以上飲む人は0・24と言う結果でほぼ4分の1になった。

 じゃあ、10杯飲めば発症率はゼロになるのかといえばそうはならないだろう。飲みすぎると今度は弊害も心配しなくてはならない。コーヒーが万能ではない。基本的には、食生活や運動が作用する部分も多いのだろう。私たちは永遠に生きることは出来ない。ほとんどの人は何らかの病気でこの世を去っていく。

 要するに健康な時間を出来るだけ長く保ちたい一心が健康志向を高め、中には詐欺商法まがいの商品に手を出して何の効果もないということにもなる。健康維持やダイエットは簡単ではない。毎日地道な努力しか方法はない。バランスのとれた食生活を腹八分目。それにウォーキングなどの運動を続けるしかない。さあ、今日も珈琲の香りの向こうに思いを馳せながら健康であることを祈りましょう。

映画「カントリー・ストロングCountry Strong‘10」劇場未公開

2011-10-11 16:10:25 | 映画

              
 カントリー・シンガーのお話だから、興味のある向きは少ないかもしれない。グラミー賞を何度もとったカントリー界のスーパー・スター、ケリー・カンター(グウィネス・パルトロー)は、シカゴでのコンサートでは、泥酔状態で舞台から転げ落ち流産してしまう。

 その失意を施設で癒しながら再起を図っているが、夫でありマネージャーのジェームズ(ティム・マッグロウ)とは、冷ややかな関係だった。そんな状態は、施設の職員ボー(ギャレット・ヘドランド)と深い仲へと押しやった。

 ボーも地元の酒場で歌うシンガー・ソング・ライターだった。同じ酒場で女性歌手として飛躍を目指すチャールズ・スタントン(レイトン・ミースター)を冷やかしながらも手を差し伸べることもある。うつ病を抱えたスーパー・スター・ケリーと次代のスター・ボー、歌唱ばかりでなく作詞にも才能の片鱗を見せるチャールズにジョージを交えた哀切な人間模様である。が、どういうわけかあまり印象に残らなかった。

 考えてみると物語が単調だったせいだ。カーブも起伏もない一本の道を淡々と走っているという感じだった。実際の日常はこういうものだろうが、これは映画だから要所に強いエピソードが欲しかった。

 私は、カントリー・ミュージックが好きだから,田舎の酒場や錆の浮いたピックアップ・トラックや誰も走っていない道路を見ると何故か嬉しくなる。あの纏わりつくような甘いカントリーの味わいは堪能した。

 それにいつも思うのは、西部劇の代名詞のようなテンガロン・ハットが似合うのは、やっぱり白人のアメリカ人だなあ。ということを思い知らされる。この映画でも、ボーを演じたギャレット・ヘドランドにしても、ワイルド・カントリーの雰囲気が感じとれる。西部の男の喋り方とか、がっちりとした体つきとか、眼の色や形、物腰など他民族ではこの雰囲気が出せない。
           
           
           
           
           
           
 ただ、日本では馴染みの少ない分野なので劇場未公開となっているのかもしれない。アメリカではヒットしているけど。それに、出演俳優はすべて自ら歌っているらしい。みんな歌がうまい。特にグウィネス・パルトローは、レコード会社と契約したと聞く。
最後のステージでケリーが歌う映画と同名の「Country Strong」をどうぞ

それに、ギャレット・ヘドランド、レイトン・ミースターの歌唱もどうぞ

I know you see me
Like some wide-eyed dreamer
That just rolled in off a dusty mid-west bus
Yeah, on the outside I look fragile
But on the inside I’m something you can’t crush
Cause I’m country strong
Hard to break
Like the ground I grew up on
You may fall me and I’ll fall
But I won’t stay down long
Cause I’m country strong


Cause I’m country strong
Hard to break
Like the ground I grew up on
You may fool me and I’ll fall
But I won’t stay down long
Cause I’m country strong

Yeah, I’m country strong
Yeah, I’m country strong
I’m country strong
I’m country strong
I’m country strong
I’m country strong

監督
シャナ・フェステ1976年8月ロサンジェルス生まれ。女性でプロデューサー、脚本家、監督の経歴。本作は、初監督作。
              
キャスト
グウィネス・パルトロー1972年9月ロサンジェルス生まれ。‘98「恋に落ちたシェイクスピア」でアカデミー賞主演女優賞受賞。
ティム・マッグロウ1967年5月ルイジアナ州生まれ。3回のグラミー賞受賞のカントリー・ミュージック界のスーパー・スター。
ギャレット・ヘドランド1984年9月ミネソタ州生まれ。
レイトン・ミースター1986年4月テキサス州フォートワース生まれ。

懐かしのポップス 番外編「トニー・ベネット デュエッツⅡ」

2011-10-07 12:37:58 | 音楽

               
 今年85歳のトニー・ベネットが、デュエット曲19曲を精力的にレコーディングしてなかなかの評判になっているらしい。好意的な評価が多い。

 ソニー・ミュージックのホームページを覗いてみると、中にレディ・ガガとのデュエットがYouTubeにアップされていた。これは年齢差といい、また音楽シーンの違いから見て異色の顔合わせではないだろうか。
           
 デュエット曲は、「The Lady is a Tramp」で、この曲は1957年の映画「夜の豹Pal Joey」の中でフランク・シナトラが歌ったものだ。スィングするこの曲をレディ・ガガが難なくこなし彼女の歌唱力を改めて認識させられた。勿論、2011年初めに出した「Born This Way」を聴くと納得するが。
「The Lady is a Tramp」と「Born This Way」をどうぞ



読書「アソシエイトThe Associate」ジョン・グリシャム

2011-10-05 14:28:16 | 読書

               
 ‘91年発表の「法律事務所」を連想させる。全米で有数のイェール大学ロースクールトップクラスの学生カイル・マカヴォイは、FBI捜査官と名乗る男からあるパーティでのビデオを見せられる。それは乱交パーティで、その中の一女子学生からレイプされたという告訴から起訴状が出ているという。レイプは州法で裁かれるため州検察官へのバトンタッチが行われる。

 要するに罠を仕掛けるには強面のFBIが必要だったというだけあり、しかも偽のFBIであり偽の検察官だった。脅迫を受けるカイルにしてみれば、前途を約束された地位が待っていて、たかが小さなレイプごときに、―しかも関与していない事件―無駄に捨てるわけに行かない。

 初年度で最低20万ドル(1500万円)、やがて訪れるであろうフルエクイティ・パートナーとしての待遇は、41歳で年収130万ドル(ほぼ1億円に近い)。とは言ってもメジャリーグ級ではない。それでもこの未来を捨てる気にはとてもなれない。取引条件に出されたのが、軍需産業同士の醜い訴訟合戦の秘密情報の漏洩だった。つまり、スパイとして大手法律事務所に潜り込むことだった。

 その大手法律事務所も中に入れば、受付や秘書の女性は美人でセクシー、事務所の調度は一流品がずらりと並ぶが、新人アソシエイトは狭苦しい部屋に押し込められ時間報酬をせっせと稼がされるラットになった気分を味わうことになる。それに人間らしい生活は、金を稼いで50歳ぐらいからの引退生活を待たねばならない。もっと重要なのはお金で買えないもの、つまり暖かい人間性を保つことを喪失することだ。

 カイルは父親の地域に貢献する弁護活動にあらためて敬意を感じた。そして、FBI出身の弁護士に相談した。このカイルの行動は、どうやら著者ジョン・グリシャムの心情を映し出しているようにも思われる。この作品が、一級のリーガルサスペンスとまでは言えないことを思えば、一人の人間のキャパシティの限界を感じざるを得ない。

懐かしのポップス「ルート66 Route 66」

2011-10-01 14:33:45 | 音楽

               
 アメリカイリノイ州シカゴからカリフォルニア州サンタモニカに至る全長3,755kmのかつての国道。現在は、旧国道66号線(Historic Route 66)として、国指定の景観街道(National Scenic Byway)に指定されている。

 1946年ナット・キング・コールの歌唱でヒット。1960年から64年まで、この曲がテーマ曲のアメリカCBSテレビのシリーズ「ルート66」が人気になる。私もこのシリーズの愛好者だった。
 日本では国民車として1961年トヨタ・パブリカが発売された。あのぺらぺらの車。それがアメリカのテレビではシボレー・コルベットのコンヴァーティブルが、二人の若者ジョージ・マハリスとマーティン・ルミナーが、大陸横断を敢行していた。

 行く先々で事件や揉め事、ラブロマンスに遭遇。それでも若者らしく爽やかに走り続ける姿に憧れを抱いたものだ。いつかは、ルート66を走りたいと。まだ、車のタイヤも買えない身なのに……。それほど魅力的だった。そして、この曲が頭から離れなくなった。

「Route 66」をジョージ・マハリスでどうぞ
  
Well if you ever plan to motor west
Travel my way, take the highway that's the best
Get your kicks on Route 66

Well it winds from Chicago to LA
More than two thousand miles all the way
Get your kicks on Route 66

Well it goes to St. Louis, down to Missouri
Oklahoma City looks oh, so pretty
You'll see Amarillo, Gallup, New Mexico
Flagstaff, Arizona, don't forget Wynonna
Kingman, Barstow, San Bernardino

If you get hip to this kind of trip
I think I'll take that California trip