映画俳優のショーン・コネリー、ダニエル・クレイグ、ジョージ・レーゼンビー、ティモシー・ダルトン、ピアース・ブロスナン、ロジャー・ムーアの面をかぶった男六人が金庫室に侵入した。近頃は貸金庫のサービスのある銀行が少ない。男たちが侵入したのは、人材派遣会社が所有する施設だ。
何かを盗み出すのではなく、ティモシー・ダルトンの面をかぶった男の死体を置くためだった。読み手はハナから????の状態。一方、国家安全対策庁の重大犯罪分析課部長刑事ワシントン・ポーと分析官のテイリー・ブラッドショーの二人は、保安局MI5として知られている国内治安維持を担当する情報機関が指揮する殺人事件補佐する役割でカンブリア州まで出向いた。出向いたというよりMI5の出来の悪い男に連れてこられたというのが実際かもしれない。
カンブリア州のカーライルで死体で見つかったのは、クリストファー・ビーアマン。よりにもよって古びた袋小路に建つ棟割り住宅だった。クリストファー・ビーアーマンは、ヘリコプターの会社を経営していて、この地方で近々首脳会談開催の予定があり、参加者の空港から送迎を受け持っていた。そんな背景もありMI5が主導することとなっている。当然おかんむりなのが地元カンブリア警察。どこにでもある省庁間の縄張り意識。
そんな些細なことには馬耳東風のポーとティリーのコンビは、この二つの殺人事件を追う。まるで絡み合った糸くずをほぐすように、複雑なこのシリーズ「ストーンサークルの殺人」「ブラックサマーの殺人」「キューレーターの殺人」に続くこの四作目も堪能した。
著者のマイク・W・クレイヴンは、イギリス・カンブリア州出身の作家。軍隊、保護観察官を経て2015年に作家デビュー。2018年の「ストーンサークルの殺人」で英国推理作家協会賞最優秀長編賞ゴールドダガーを受賞した。
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