この邦題はちょっと大げさな感じがする。アメリカの懐の深さはよく言われるところであるが、経済が停滞し失業率も思ったより改善しない状況下不法入国者が絶えない。多民族国家が抱える苦悩の一端が描出される。
ICE(移民税関捜査局)の捜査官マックス(ハリソン・フォード)は、ある工場の手入れの時、メキシコからの不法入国者ミレアの「小さな子供がいる。どうか見逃して欲しい」という必死の嘆願の目が忘れられなくなる。その子供を探し当てメキシコの祖父母の元へ届けるが、強制送還されたミレアは再び国境を越えたという。
これを縦糸にグリーン・カードの判定官コール(レイ・リオッタ)のオーストラリアからの女優の卵を交換条件に体を求めたり、韓国人クリーニング店の息子の暴走があったり、マックスの同僚ハミードの妹が殺されたり、少女タズリマの9.11テロについて教室での発言が、その主張を支持するように受け取られて強制送還になったりの横糸が絡む群像劇になったいる。
不法入国者となれば、麻薬や売春が往々にして出てくるが、それらは描いていない。大上段に振りかぶったような正義を声高に主張しているわけでもない。そこには生まれた国や環境によって、悲しいほどの人間の辛さや苦しみが伝わってくる。マックスを演じたハリソン・フォードも抑えた演技で初老の人間味を出していた。
監督
ウェイン・クラマー1965年南アフリカ生まれ。
キャスト
ハリソン・フォード1942年7月イリノイ州シカゴ生まれ。目の出ない俳優生活を送っていたが、'77「スターウォーズ」が大ブレイク。インディ・ジョーンズ役でスターの地位を確立。
レイ・リオッタ1955年12月 ニュージャージ州ニューアーク生まれ。長い経歴で助演者としてかなりの本数に出ているが、私は悪役の記憶しかない。
アシュレイ・ジャッド1968年4月カリフォルニア州生まれ。