自閉症でサヴァン症候群を患う外科研修医ショーン・マーフィー(フレディ・ハイモア)の卓越した見識眼で困難な治療をチームとともに成し遂げる。
社会性発達の質的障害、コミュニケーションの質的障害、興味や活動の偏りという3っを持つ先天的な脳の機能障害が自閉症。さらに知的障害や発達障害などのある者のうち、ごく特定分野に優れた能力を発揮する者の症状をサヴァン症候群という。従って、愛や思いやり、置かれる立場を理解するなど一般的な事象に無理解であるが、特定の分野、例えば航空写真を見ただけで、細部に至るまで描き起こすことが出来るという映像記憶の卓越した能力を持っている。要するに幼稚な子供の部分も併せ持っているということだろう。
このドラマでは、この映像記憶を存分に描いてある。ショーンが子供のころから温かい目で見つめてきた聖ボナベントウラ病院の院長アーロン・グラスマン(リチャード・シフ)は、ショーンを外科研修医として採用したいと思っている。しかし、院長の席を狙う外科部長のマーカス・アンドリュース(ヒル・ハーパー)が「自閉症を持っている人間を患者の命にかかわる仕事にはムリだ」と猛反対する。
議論は紛糾するが、グラスマンの「一定の試用期間に問題があればショーンを解雇する。その時は私も辞職する」という条件を示し決着を見た。
それに先立ち院内会議に呼ばれたショーンに対し、理事のアレグラ・アオキ(タムリン・トミタ)が「なぜ外科医になりたいか。聞かせて」と言った。
長い沈黙のあと「雨がアイスクリームの匂いだった日、ウサギは天国に行った。僕の目の前で。鋼管が焦げた食べ物の匂いだった日、弟は天国に行った。僕の目の前で。救えなかった。悲しい。彼らは大人になれなかった。大人にならせてあげたかった。そうすれば、彼らも子供を持って愛情を注げた。他の人たちにはそうさせてあげたい。お金も稼いでテレビも買いたい」会議に参加した人たちはみんな笑顔になりショーンを受け入れた。
人のために役立ちたいの一言で済ませられるが、ショーンならこういう言いかたをするであろうというセリフにしたのだろう。このドラマが進むうちに「愛は必要ない」という意味のセリフをショーンが言うが、「愛情を注げた」との矛盾に脚本家の少し混乱気味と言えるだろう。
ショーンは外科医のニール・メレンデス(ニコラス・ゴンザレス)をチーフとするチームに参加した。このチームには、女性研修医クレア・ブラウン(アントニア・トーマス)、同じく研修医のジャレット・カルー(チュク・モデュー)からなる。このチームの人種構成は、黒人系が3人、白人はショーン一人。医師も看護師も患者もなぜか黒人系が目立つ。何か意図するものがあるのだろうか。
このドラマは、2013年に韓国でヒットしたもので、2017年にアメリカのリメイク版をABCテレビが放送。2018年にはフジテレビがリメイク版を放送した。私は韓国版も日本版も観ていないので、このアメリカ版だけの感想文になる。
私としては、シーズン2が待ち遠しいとは思わない。なにせ出演のショーン役フレディ・ヘイモア以外魅力的な俳優がいない。なにも顔かたちばかりでなく、人間の雰囲気といったオーラのようなものと言えばいいか、それがない。
医療ものの元祖「ER緊急救命室」やこのドラマの企画を担当しているデヴィッド・ショアの「Dr Houseドクター・ハウス」などの見せる力がないといえる。連続ドラマには、毎日あの俳優がみたいと思わせる必要がある。ヒットしている作品にはそれがある。
企画
デヴィッド・ショア1959年7月カナダ生まれ。2004年から2012年まで続いたヒット作「Dr House~ドクター・ハウス」を送り出した。
キャスト
フレディ・ハイモア1992年2月イギリス、ロンドン生まれ。2004年「ネバーランド」2005年「チャーリーとチョコレート工場」で放送映画批評家協会賞の若手男優賞を受賞。
ニコラス・ゴンザレス1976年1月テキサス州サンアントニオ生まれ。メキシコ系
アントニア・トーマス1986年11月イギリス、ロンドン生まれ。母ジャマイカ系 父イギリス系
チュク・モデュー1990年6月イギリス、ロンドン生まれ。ナイジェリア系
ボー・ガレット1982年12月カリフォルニア州ビバリーヒルズ生まれ。
ヒル・ハーパー1966年5月アイオワ州生まれ。アフリカ系
リチャード・シフ1955年5月メリーランド州ベセスダ生まれ。
タムリン・トミタ1966年1月沖縄生まれ。父 日系アメリカ人 母 日系フィリッピン人