フロリダ州フロリダキーズの真っ白な砂浜を持つリゾートホテルを経営するのはロバート(サム・シェパード)とサリー(シシー・スペイセク)夫妻のレイバーン家。創業以来45年を迎え記念パーティーの日、問題児の長男ダニー(ベン・メンデルソーン)が帰ってくる。
地元では名家と知られるレイバーン家には、地元警察の刑事次男ジョン(カイル・チャンドラー)、大型ボートメンテナンス業を営む三男ケヴィン(ノーバート・レオ・バッツ)、弁護士のメグ(リンダ・カーデリーニ)がいる。
定職も持たず実家から出て何をしているか分からないダニー。父ロバートはメグに命じて遺産相続からダニーを外している。まだ先のことと思われていた父ロバートの死。
これを機にダニーは、家族を支配し始める。不肖の息子ほど可愛いといわれるが、その母サリーはダニーの意見に微笑みながら承諾していく。それを快く思わないジョンをはじめとした兄妹たちとダニーの間に不穏な空気が漂う。
人の気配の少ない海岸でダニーとジョンが話し合う。話し合いはエスカレート、波打ち際の殴り合いに発展する。ダニーより一回り大きいジョンの力が勝りダニーを水中に押し付けて溺死させる。呆然とするジョンではあるが、ケヴィンとメグを呼び死体の処理を相談する。
この事件をきっかけにレイバーン家の秘密が明らかになり没落が始まる。ちょっとくどいなと思わせるが、ドラマとしては飽きさせず観て損はないだろう。
企画したのは、異色の女優グレン・クローズが好演した2007年「ダメージ」、1999年「ザ・ソプラノス哀愁のマフィア」を制作した脚本家・プロデューサーのトッド・A・ケスラー。ニューヨーク生まれのデトロイト育ち。加えてグレン・ケスラー、ダニエル・ぜルマンも参画。
キャスト
カイル・チャンドラー1965年9月ニューヨーク州バッファロー生まれ。
ベン・メンデルソーン1969年4月オーストラリア、メルボルン生まれ。
リンダ・カーデリーニ1975年6月カリフォルニア州レッドウッド生まれ。
ノーバート・レオ・バッツ1967年1月ミズーリ州セントルイス生まれ。
サム・シェパード1943年11月イリノイ州フォート・シェリダン生まれ。2017年没。
シシー・スペイセク1949年12月テキサス州生まれ。
結婚ってホント面倒くさいなあと、あらためて思わせる映画だ。「人の話をよく聞くし、相手を気遣う心がある。片付けや皿洗いは苦手。でも、息子の髪や俺の髪も切ってくれる。意外と俺に対して自由にさせてくれる。贈り物のセンスがいいし、息子と暇さえあれば遊んでいる。
それにすごい力持ち。俺が開けられない瓶のフタもいとも簡単に開ける。そして乗る車は、マニュアル車。母親と姉とも仲良し。まだまだいいところがあるけど、これが舞台監督をやっている俺チャーリー(アダム・ドライヴァー)の妻で女優のニコール(スカーレット・ヨハンソン)だ」
次にニコールの独白。「チャーリーの好きなところは、意志の強さ。他人に何を言われようがしたいことをする。家事が得意なのは、非常に助かる。ほつれも縫うし、料理もアイロンも自分でする。几帳面で節約家、部屋の電気を人がいても消す。負けず嫌いで子煩悩。服のセンスが良く恥ずかしくない。ほかにもあるけど、これがチャーリー」
この二人に別れ話があって、息子の親権をめぐる争いが待っている。男と女、お互いの長所と短所を補い合える理想的な夫婦に見えるが。相手に完璧を求めても成り立たないのが世の中。弁護士を中に入れるととんでもない駆け引きをする。過去は掘り返され憎悪を植え付けるかのように。
ニコールにはノラ(ローラ・ダーン)、チャーリーにはジェイ(レイ・リオッタ)という弁護士がつく。
ノラからの電話は「親権はあなたに55%、チャーリー45%よ」
ニコール「そういうのは望んでなかった。50:50と」。
かくして今日も息子を迎えに来たチャーリー。もう、元へ戻ることはできない。舞台監督のチャーリーは、仲間と食事。そのレストランで歌う。
誰かが君をきつく抱きしめ
誰かが君を深く傷つける
誰かが君の椅子に座り
君の眠りを妨げる
誰かに過剰に必要とされ
知られすぎている
急に引き上げられたと思ったら
地獄に落とされる
生きてる 生きてる 生きてる
チャーリーの意志の強さとニコールの気遣いの歯車が噛み合わなくなったとき、「親が憎けりゃ子まで憎い」という心境まで達したのかもしれない。一筋縄ではいかないのが結婚生活。
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監督
ノア・バームバック1969年9月ニューヨーク市ブルックリン生まれ。本作は2019年第92回アカデミー賞で脚本賞にノミネート。
キャスト
スカーレット・ヨハンソン1984年11月ニューヨーク市ニューヨーク生まれ。
アダム・ドライヴァー1983年11月カリフォルニア州サンディエゴ生まれ。
ローラ・ダーン1967年2月カリフォルニア州ロサンゼルス生まれ。
レイ・リオッタ1955年12月ニュージャージー州ニューアーク生まれ。
認知症の母ルース(ブライス・ダナー)を巡る家族の葛藤は他人事ではない。私も運転免許証の更新には、認知症検査を受けなければならない。認知症検査を経て高齢者講習へと進み、その修了書を持って免許証更新が終わる。認知症検査はすごく簡単ではあるが、あれに苦労するようでは相当認知症が進んでいるとしか思えない。
このルースも「私の娘ね」「私の息子だわ」と言うが、娘の名前ブジットや息子の名前ニックという単語は出てこない。
このニック(マイケル・シャノン)が「お袋が俺の膝に手を置いて色目を使ってきたよ」と深刻な表情で言う。それを聞いたブリジット(ヒラリー・スワンク)が大笑いする。実際笑ってる場合じゃないんだけどな。 が、私も観ていて大笑いした。
息子のニックは、母親を施設に入れたがっているが、父バート(ロバート・フォスター)は頑として反対する。ニックは独身でバーのオーナー。自慢のカクテルは「マンハッタン」。
ブリジットの夫婦仲は微妙ですきま風がそよそよと吹いている。しかも娘エマ(タイッサ・ファーミガ)の大学進学に神経をとがらせている。ブリジットは高校卒の学歴者、夫エディ(ジョシュ・ルーカス)は高学歴者。食卓を囲んでいた時、エマの大学入学手続きが順調なのを聞きエディは「グッド」と一言。なんの感情も含まれない事務的な言葉。その一言で食卓の空気はしんと静まり返る。
ブリジットは夫婦であっても肩身の狭い思いをしてきた。娘に何としても大学卒を与えたい。親の心子知らず。エマはそれを疎ましく思っている。こういう風景は、どこにでもある家庭事情なのだ。
悪いことに心臓に問題を抱えるバートが急逝する。ルースは、「完璧なタイミングだった。もう少し遅ければ、彼を忘れ去っていた。もっと早ければ、恋しすぎた。今がちょうどいい。今はそれが分かる」そのルースはニックの進言通り施設に入る。
ブリジットとの別れも涙もなし。施設のだれかれとなく陽気に話しかけ、見送るブリジットに振り返りもしない。ブリジットの心中でどういう思いが去来しているのだろうか。
ブリジットの夫エディを演じたのはジョシュ・ルーカスで、中堅俳優の彼がこんな2~3シーンの出演に意外に思った。この作品の評価は高い。
監督
エリザベス・チョムコ出自未詳
キャスト
ヒラリー・スワンク1974年7月ネブラスカ州生まれ。
マイケル・シャノン1974年8月ケンタッキー州レキシントン生まれ。
ブライス・ダナー1943年2月ペンシルベニア州フィラデルフィア生まれ。娘にグウィネス・パルトローがいる。
ロバート・フォスター1941年7月ニューヨーク市ロチェスター生まれ。2019年10月没。
タイッサ・ファーミガ1994年8月ニュージャージー州生まれ。姉ヴェラ・ファーミガがいる。
ジョシュ・ルーカス1971年6月アーカンソー州リトルロック生まれ。
ハーラン・コーベン1962年1月ニュージャージー州生まれ。
リチャード・アーミティッジ1971年8月イギリス、イングランド生まれ。