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映画「トゥルー・ストーリー」2015年

2020-02-28 16:12:52 | 映画と音楽と
 記事を捏造したとしてニューヨーク・タイムズを解雇された敏腕記者マイケル・フィンケル(ジョナ・ヒル)の実話物語。

 新聞記者の命ともいえる真実の記事を捏造したとあれば、新聞界や出版界からすべて敬遠される。希望の持てない日々を雪深い故郷で送っているとき、地方紙の記者から電話で問い合わせが来る。

 「クリスチャン・ロンゴの件で、あなたに話を聞きたい」突然の話で戸惑いながら、ネットで調べてみると家族4人を殺した殺人犯だと分かる。しかも、逮捕時には自分の名前ニューヨーク・タイムズのマイケル・フィンケルと名乗っていたという。

 興味を持ったマイケルは、クリスチャン・ロンゴに手紙を書き、郡刑務所で面会する。クリスは模範囚として扱われ態度も穏やかで説得力のある話し方をする。
 クリスは「テレビ局や新聞社からオファーがあるが、すべて君に託すよ。君の文章のファンだから。文章の書きかたも教えてくれ」

 クリスはザラ紙に自身の物語を書き上げていく。面会室で文章についてのアドヴァイス。「23頁、”妻は僕がわざとクビになったと言うがやりたくなくはなかった”とあるが、これは二重否定だ。これでは弱い。”やりたかった仕事だ”と書いたほうがいい」

 この二重否定というのは「~ないない」の連続のことで、特にビジネス文章では避けたほうがいい。一例として「締め切りに間に合わないこともない」を「締め切りに間に合う」とすべきとある。

 「二重否定」というこの言葉が、のちの裁判所でクリスの口から発せられマイケルにショックを与える。無罪を信じていたマイケルにとって、クリスが司法取引で有罪を認めたことが、クリスの説明が曖昧なものだったと証明したからだ。

 クリスの文章をもとにマイケルは原稿を練り上げる。曲がりなりにもクリスチャン・ロンゴについての出版は完結した。書店でのセールス・トークの後、読者との交流で「あなたは出版という果実を得たが、失ったものは何ですか?」という趣旨の質問があった。マイケルは凍りつき呆然とたたずむ。

 マイケルの失ったものは、矜持とか尊厳ではないだろうか。記事の捏造はまさにプライドを傷つけることだし、家族四人を殺した殺人犯の伝記を書くという三流の物書きになり下がったわけだ。

 頭の切れる殺人犯だが、演じるジェームズ・フランコがよくやっているが、切れ味鋭いナイフのようなシャープさがなかった。こういうワルについては、イギリスのドラマ「ライン・オブ・デューティ」で見せた悪徳警部役のキーリー・ホーズを今は思い出す。観ていて腹が立つくらい憎々しい演技だった。




監督
ルパート・グールド1972年イギリス、ロンドン生まれ

キャスト
ジョナ・ヒル1983年12月カリフォルニア州ロサンゼルス生まれ。2011年と2013年にアカデミー賞助演男優賞にノミネートされた。

ジェームズ・フランコ1978年4月カリフォルニア州生まれ。2010年「127時間」でアカデミー賞主演男優賞にノミネート。

フェリシティ・ジョーンズ1983年10月イギリス、イングランド、バーミンガム生まれ。2014年「博士と彼女のセオリー」でアカデミー賞主演女優賞にノミネート。

海外テレビドラマ「SAFE埋もれた秘密」2018年Netflix

2020-02-25 20:53:36 | 映画
 イギリス制作のドラマに観るべきものが多いが、これもその一つ。企画したのはハーラン・コーベン。

 この人の作品は、2020年「ザ・ストレンジャー」を先に観て、「ストレンジャー」の運命の悪戯、主人公の父が残した謎の女「ストレンジャー」が異母妹にあたるという皮肉を描いた。「SAFE」も運命の悪戯という要素が取り入れてある。

 門番と鉄の扉にガードされた高級住宅地。SAFE安全な場所であるはずが、外科医のトム(マイケル・C・ホール)の娘ジェニー(エイミー・ジェームズ=ケリー)が行方不明になる。トムは妻を亡くしていて警部のソフィア(アマンダ・アビトン)と恋人関係。ソフィアは警察に任せろというが、トムは必至で探し回る。人が殺されて謎が深まる。

 行方不明事件には、過去の秘密が関わっていて意外な結末が待っているし、運命の悪戯も用意してある。


企画
ハーラン・コーベン1962年1月ニュージャージー州ニューアーク生まれ。

キャスト
マイケル・C・ホール1971年2月ノースカロライナ州生まれ。2001年から2005年にかけてドラマ「シックス・フィート・アンダー」で葬儀社一家のお話が印象に残る。

アマンダ・アビントン1974年2月イギリス生まれ。

エイミー・ジェームズ・ケリー出自未詳

ハンナ・アータートン1989年1月ロンドン生まれ。


海外テレビドラマ「ブラッドライン シーズン1~3」2015年~17年Netflix

2020-02-21 20:41:39 | 海外テレビ・ドラマ

 フロリダ州フロリダキーズの真っ白な砂浜を持つリゾートホテルを経営するのはロバート(サム・シェパード)とサリー(シシー・スペイセク)夫妻のレイバーン家。創業以来45年を迎え記念パーティーの日、問題児の長男ダニー(ベン・メンデルソーン)が帰ってくる。

 地元では名家と知られるレイバーン家には、地元警察の刑事次男ジョン(カイル・チャンドラー)、大型ボートメンテナンス業を営む三男ケヴィン(ノーバート・レオ・バッツ)、弁護士のメグ(リンダ・カーデリーニ)がいる。

 定職も持たず実家から出て何をしているか分からないダニー。父ロバートはメグに命じて遺産相続からダニーを外している。まだ先のことと思われていた父ロバートの死。

 これを機にダニーは、家族を支配し始める。不肖の息子ほど可愛いといわれるが、その母サリーはダニーの意見に微笑みながら承諾していく。それを快く思わないジョンをはじめとした兄妹たちとダニーの間に不穏な空気が漂う。

 人の気配の少ない海岸でダニーとジョンが話し合う。話し合いはエスカレート、波打ち際の殴り合いに発展する。ダニーより一回り大きいジョンの力が勝りダニーを水中に押し付けて溺死させる。呆然とするジョンではあるが、ケヴィンとメグを呼び死体の処理を相談する。

 この事件をきっかけにレイバーン家の秘密が明らかになり没落が始まる。ちょっとくどいなと思わせるが、ドラマとしては飽きさせず観て損はないだろう。

 企画したのは、異色の女優グレン・クローズが好演した2007年「ダメージ」、1999年「ザ・ソプラノス哀愁のマフィア」を制作した脚本家・プロデューサーのトッド・A・ケスラー。ニューヨーク生まれのデトロイト育ち。加えてグレン・ケスラー、ダニエル・ぜルマンも参画。



キャスト
カイル・チャンドラー1965年9月ニューヨーク州バッファロー生まれ。

ベン・メンデルソーン1969年4月オーストラリア、メルボルン生まれ。

リンダ・カーデリーニ1975年6月カリフォルニア州レッドウッド生まれ。

ノーバート・レオ・バッツ1967年1月ミズーリ州セントルイス生まれ。

サム・シェパード1943年11月イリノイ州フォート・シェリダン生まれ。2017年没。

シシー・スペイセク1949年12月テキサス州生まれ。

 


映画「マリッジ・ストーリー」2019年Netflix

2020-02-18 16:40:02 | 映画

 結婚ってホント面倒くさいなあと、あらためて思わせる映画だ。「人の話をよく聞くし、相手を気遣う心がある。片付けや皿洗いは苦手。でも、息子の髪や俺の髪も切ってくれる。意外と俺に対して自由にさせてくれる。贈り物のセンスがいいし、息子と暇さえあれば遊んでいる。
 それにすごい力持ち。俺が開けられない瓶のフタもいとも簡単に開ける。そして乗る車は、マニュアル車。母親と姉とも仲良し。まだまだいいところがあるけど、これが舞台監督をやっている俺チャーリー(アダム・ドライヴァー)の妻で女優のニコール(スカーレット・ヨハンソン)だ」

 次にニコールの独白。「チャーリーの好きなところは、意志の強さ。他人に何を言われようがしたいことをする。家事が得意なのは、非常に助かる。ほつれも縫うし、料理もアイロンも自分でする。几帳面で節約家、部屋の電気を人がいても消す。負けず嫌いで子煩悩。服のセンスが良く恥ずかしくない。ほかにもあるけど、これがチャーリー」

 この二人に別れ話があって、息子の親権をめぐる争いが待っている。男と女、お互いの長所と短所を補い合える理想的な夫婦に見えるが。相手に完璧を求めても成り立たないのが世の中。弁護士を中に入れるととんでもない駆け引きをする。過去は掘り返され憎悪を植え付けるかのように。

 ニコールにはノラ(ローラ・ダーン)、チャーリーにはジェイ(レイ・リオッタ)という弁護士がつく。
ノラからの電話は「親権はあなたに
55%、チャーリー45%よ」
ニコール「そういうのは望んでなかった。50:50と」。

 かくして今日も息子を迎えに来たチャーリー。もう、元へ戻ることはできない。舞台監督のチャーリーは、仲間と食事。そのレストランで歌う。

誰かが君をきつく抱きしめ

誰かが君を深く傷つける

誰かが君の椅子に座り

君の眠りを妨げる

誰かに過剰に必要とされ

知られすぎている

急に引き上げられたと思ったら

地獄に落とされる

生きてる 生きてる 生きてる

 チャーリーの意志の強さとニコールの気遣いの歯車が噛み合わなくなったとき、「親が憎けりゃ子まで憎い」という心境まで達したのかもしれない。一筋縄ではいかないのが結婚生活。



YouTubeでアダム・ドライヴァーの歌を!

監督
ノア・バームバック1969年9月ニューヨーク市ブルックリン生まれ。本作は2019年第92回アカデミー賞で脚本賞にノミネート。

キャスト
スカーレット・ヨハンソン1984年11月ニューヨーク市ニューヨーク生まれ。

アダム・ドライヴァー1983年11月カリフォルニア州サンディエゴ生まれ。

ローラ・ダーン1967年2月カリフォルニア州ロサンゼルス生まれ。

レイ・リオッタ1955年12月ニュージャージー州ニューアーク生まれ。



映画「ディア・ファミリー~あなたを忘れない WHAT THEY HAD」2018年劇場未公開

2020-02-14 13:30:04 | 映画

 認知症の母ルース(ブライス・ダナー)を巡る家族の葛藤は他人事ではない。私も運転免許証の更新には、認知症検査を受けなければならない。認知症検査を経て高齢者講習へと進み、その修了書を持って免許証更新が終わる。認知症検査はすごく簡単ではあるが、あれに苦労するようでは相当認知症が進んでいるとしか思えない。

 このルースも「私の娘ね」「私の息子だわ」と言うが、娘の名前ブジットや息子の名前ニックという単語は出てこない。

 このニック(マイケル・シャノン)が「お袋が俺の膝に手を置いて色目を使ってきたよ」と深刻な表情で言う。それを聞いたブリジット(ヒラリー・スワンク)が大笑いする。実際笑ってる場合じゃないんだけどな。 が、私も観ていて大笑いした。

 息子のニックは、母親を施設に入れたがっているが、父バート(ロバート・フォスター)は頑として反対する。ニックは独身でバーのオーナー。自慢のカクテルは「マンハッタン」。

 ブリジットの夫婦仲は微妙ですきま風がそよそよと吹いている。しかも娘エマ(タイッサ・ファーミガ)の大学進学に神経をとがらせている。ブリジットは高校卒の学歴者、夫エディ(ジョシュ・ルーカス)は高学歴者。食卓を囲んでいた時、エマの大学入学手続きが順調なのを聞きエディは「グッド」と一言。なんの感情も含まれない事務的な言葉。その一言で食卓の空気はしんと静まり返る。

 ブリジットは夫婦であっても肩身の狭い思いをしてきた。娘に何としても大学卒を与えたい。親の心子知らず。エマはそれを疎ましく思っている。こういう風景は、どこにでもある家庭事情なのだ。

 悪いことに心臓に問題を抱えるバートが急逝する。ルースは、「完璧なタイミングだった。もう少し遅ければ、彼を忘れ去っていた。もっと早ければ、恋しすぎた。今がちょうどいい。今はそれが分かる」そのルースはニックの進言通り施設に入る。

 ブリジットとの別れも涙もなし。施設のだれかれとなく陽気に話しかけ、見送るブリジットに振り返りもしない。ブリジットの心中でどういう思いが去来しているのだろうか。

 ブリジットの夫エディを演じたのはジョシュ・ルーカスで、中堅俳優の彼がこんな2~3シーンの出演に意外に思った。この作品の評価は高い。




監督
エリザベス・チョムコ出自未詳

キャスト
ヒラリー・スワンク1974年7月ネブラスカ州生まれ。

マイケル・シャノン1974年8月ケンタッキー州レキシントン生まれ。

ブライス・ダナー1943年2月ペンシルベニア州フィラデルフィア生まれ。娘にグウィネス・パルトローがいる。

ロバート・フォスター1941年7月ニューヨーク市ロチェスター生まれ。2019年10月没。

タイッサ・ファーミガ1994年8月ニュージャージー州生まれ。姉ヴェラ・ファーミガがいる。

ジョシュ・ルーカス1971年6月アーカンソー州リトルロック生まれ。

 


海外テレビドラマ「ザ・ストレンジャー 」2020年Netflix

2020-02-04 15:57:09 | 海外テレビ・ドラマ
 Stranger、見知らぬ人。郊外の高級住宅地に住む弁護士のアダム・プライス(リチャード・アーミティッジ)は、サッカー場のカフェで見知らぬ女(ハナ・ジョン=カーメン)から告げられる。
 
「あなたの妻のコリンヌの妊娠はうそ。ノベルティ・ファジーという会社の請求を見るのね」
 
 調べてみると確かに妻への疑惑が深まる。妻コリンヌ(デボラ・カーワン)に問いただすと、もちろん否定するが、「しばらく時間が欲しい。複雑な事情が絡んでるから。人は誰でも一つは秘密があるわ」と謎めく。その後コリンヌは、「冷却期間を置きたいから」と言って行き先を告げずに家を出る。
 
 スマホに電話しても通じない。必死に手掛かりを求めるアダム。なぜ妻は偽装妊娠までしたのか。そうアダムにも過去に浮気の秘密を抱えている。コリンヌがそれを知って偽装妊娠でセックス拒否という挙動にでたのか。
 
 刑事のジョアンナ(シヴォーン・フィネラン)、もう一人の刑事ジョン・カッツ(ポール・ケイ)、引退した元刑事、アダムの子供たちとその友人など、それぞれの秘密が汚れた窓を拭くように明らかになる。
 
 隣人のダグ・トリップ(ショーン・ドゥーリー)が言う「こういう住宅地に住むと、みんなはいつも最上を求める。家族を養うとなると誰もが堕落する。借金地獄だ」これが意外と物語に暗示を与える。
 
 私の住む千葉県にも高級住宅地がある。JR外房線の「土気駅」から奥まったところにワンハンドレッド・ヒルズ(別名チバリーヒルズ)がある。
 
 バブルの時にアメリカン・スタイルで開発されたようで、当時は5億円から10億円の物件、今では8千万から1億円の中古住宅がある。5LDKから7LDKとはいっても各部屋が広い、キッチンはアイランド型。
 
 ドラマに登場するこのイギリスの住宅も3階建てで部屋も広い。勿論キッチンはアイランド型。こういう住宅は維持管理が大変、奥さんが一人ですべて出来るわけがない。アダムのところにはお手伝いさんがいなかったが。
 
 イギリスの国情を反映しているのか出演俳優も黒人系やインド系、特に黒人系が目を引く。アジア系はいない。ということはNetflixには、中国資本が入っていないということなんだろうか。
 
 このNetflixのドラマは一時も目を離すことができない。Netflixにはオリジナル作品「アイリッシュマン」があって今年のアカデミー賞にノミネートされ有力候補という。本作もオリジナル作品で、レベルの高いミステリーだ。
 
 なお、このドラマの原作者ハーラン・コーベンは、いくつかのドラマを書いているが、娘が失踪するという「SAFE~埋もれた秘密」(2018年)をNetflixで観られる。

 
    
 
    
 
 
原作
ハーラン・コーベン1962年1月ニュージャージー州生まれ。
 
キャスト
リチャード・アーミティッジ1971年8月イギリス、イングランド生まれ。
 
シヴォーン・フィネラン1967年イギリス、イングランド生まれ。
 
ショーン・ドゥーリー1974年イギリス、イングランド生まれ。
 
ポール・ケイ1965年イギリス、ロンドン生まれ。
 
ハナ・ジョン=カーメン1989年9月イギリス、イングランド生まれ。
 
デボラ・カーワン1971年10月アイルランド、ダブリン生まれ。