この映画が2009年度アカデミー賞の作品賞、監督賞、脚本賞、音響賞、編集賞などを受賞しているのが不思議な気がしてならない。観終わって感動の涙が流れることもないし、へえ、ヤツはバカみたいに、家庭を捨てて戦場に戻るんだ! というのが一言で言う感想だった。
映画のタイトルにかぶさって、「戦争は麻薬だ」と誰かが言うのが聞こえる。そうか、一度やったらやめられないっていうのか。戦争は何度も繰り返す。そういえば、アメリカは、ベトナム戦争以来旧来型の戦争は経験していないなあ。ベトコン相手にジャングルで苦しみ、イラクでは自爆テロの脅威にさらされて来た。
この映画は、爆弾処理班の三人の兵士を描く。実直なJ・T・サンボーン軍曹(アンソニー・マッキー)それにまだ戦場経験の少ないオーウェン・エルドリッジ技術兵、新しく加わった爆弾処理800個以上のウィリアム・ジェームズ二等軍曹(ジェレミー・レナー)たちの行動を淡々と追っている。
治安の悪いイラクの街中、いつテロに襲われるは分からない恐怖。自爆テロなんて始末に終えない。小さな戦闘や、車に仕掛けられた爆弾処理。テロリストに時限爆弾をくくりつけられた男の救出失敗など緊張感のある場面展開だが、私にはなぜか感情移入できないというか、画面にぴりぴりとした緊張感が見えない。ほとんど昼間のことで、画面が白っぽくて陰影に乏しいせいかもしれない。男っぽい演出のキャスリン・ビグローだがいま一つ冴えない。作品賞、監督賞ほかの受賞は、初のオスカー受賞女性監督という話題と戦意高揚のご褒美と見るのは皮肉すぎるだろうか。
監督キャスリン・ビグロー1951年11月カリフォルニア州サンカルロス生まれ。‘90「ブルースチィール」では、ジェイミー・リー・カーティスの持ち味を引き出したように女性らしかぬ骨太の演出を見せる。ご本人もグラマーで美人だ。
キャスト
ジェレミー・レナー(ウィリアム・ジェームズ二等軍曹) 1971年1月カリフォルニア州モデスト生まれ。どこかで見たなあと思っていたが、「ジェシー・ジェームズの暗殺」に出ていた。本作で、全米批評家協会賞主演男優賞受賞。アカデミー賞主演男優賞にノミネートされる。
アンソニー・マッキー(j・T・サンボーン軍曹)1979年9月ルイジアナ州ニューオーリンズ生まれ。
ブライアン・ジェラティ(オーウェン・エルドリッジ技術兵)1974年5月ニュージャージー生まれ。