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映画 「ハート・ロッカー=THE HURT LOCKER(‘08)」本邦劇郷公開2010年3月

2010-09-03 17:20:34 | 映画(DVD)

            
 この映画が2009年度アカデミー賞の作品賞、監督賞、脚本賞、音響賞、編集賞などを受賞しているのが不思議な気がしてならない。観終わって感動の涙が流れることもないし、へえ、ヤツはバカみたいに、家庭を捨てて戦場に戻るんだ! というのが一言で言う感想だった。

 映画のタイトルにかぶさって、「戦争は麻薬だ」と誰かが言うのが聞こえる。そうか、一度やったらやめられないっていうのか。戦争は何度も繰り返す。そういえば、アメリカは、ベトナム戦争以来旧来型の戦争は経験していないなあ。ベトコン相手にジャングルで苦しみ、イラクでは自爆テロの脅威にさらされて来た。

 この映画は、爆弾処理班の三人の兵士を描く。実直なJ・T・サンボーン軍曹(アンソニー・マッキー)それにまだ戦場経験の少ないオーウェン・エルドリッジ技術兵、新しく加わった爆弾処理800個以上のウィリアム・ジェームズ二等軍曹(ジェレミー・レナー)たちの行動を淡々と追っている。

 治安の悪いイラクの街中、いつテロに襲われるは分からない恐怖。自爆テロなんて始末に終えない。小さな戦闘や、車に仕掛けられた爆弾処理。テロリストに時限爆弾をくくりつけられた男の救出失敗など緊張感のある場面展開だが、私にはなぜか感情移入できないというか、画面にぴりぴりとした緊張感が見えない。ほとんど昼間のことで、画面が白っぽくて陰影に乏しいせいかもしれない。男っぽい演出のキャスリン・ビグローだがいま一つ冴えない。作品賞、監督賞ほかの受賞は、初のオスカー受賞女性監督という話題と戦意高揚のご褒美と見るのは皮肉すぎるだろうか。
             
             
             
監督キャスリン・ビグロー1951年11月カリフォルニア州サンカルロス生まれ。‘90「ブルースチィール」では、ジェイミー・リー・カーティスの持ち味を引き出したように女性らしかぬ骨太の演出を見せる。ご本人もグラマーで美人だ。


キャスト 
ジェレミー・レナー(ウィリアム・ジェームズ二等軍曹) 1971年1月カリフォルニア州モデスト生まれ。どこかで見たなあと思っていたが、「ジェシー・ジェームズの暗殺」に出ていた。本作で、全米批評家協会賞主演男優賞受賞。アカデミー賞主演男優賞にノミネートされる。
アンソニー・マッキー(j・T・サンボーン軍曹)1979年9月ルイジアナ州ニューオーリンズ生まれ。
ブライアン・ジェラティ(オーウェン・エルドリッジ技術兵)1974年5月ニュージャージー生まれ。

映画 「マイレージ、マイライフ(‘09)」本邦劇場公開2010,3月

2010-08-31 14:36:02 | 映画(DVD)
 
          
 解雇告知人とでも言うべき首切り屋として派遣されるライアン・ピンガム(ジョージ・クルーニ)のモットーは、バックパックに収まるほどの人生でいい。つまりアメリカン・ドリームのような家庭を築く意志も目的もない。空港は楽しい我が家とばかり1000万マイルを溜めるのが唯一の目標としている男だった。そして企業から依頼された解雇通告をクールにこなしていく。

 そんなある夜、ホテルのバーでキャリア・ウーマンのアレックス・ゴーラン(ヴェラ・ファーミガ)と出会い、意気投合ベッドを共にする。腰にネクタイを巻いたヴェラのお尻をちょっとだけ見られる。

 このDVDには、監督の解説による特典映像があるが、それによると、初対面の男女がいきなりベッドインと言うのも不自然だし、そこまでに行く流れを二人の俳優に課したという。だからセリフはアドリブだったという。
ジョージが言う。「腕をぐるぐる巻きにしてトイレへ。彼女は手伝うと言うことで一緒にトイレに入る。そしてセックス。あれは大変だぞ。経験ある?」
ヴェラ「あるわ」
ジョージ「本当?」
ヴェラ「ええ」
ジョージ「経験が?」
ヴェラ「あるわ」
ジョージ「大西洋線で?」
ヴェラ「いいえ、国内線だけど」
ジョージ「夜の便?」
ヴェラ「昼間よ」
ジョージ「何? どうやって?」
ヴェラ「体が柔らかいの」
これで下地が出来たようで、二人は部屋に入った。

 ライアンは帰社命令を受けて出社すると、そこには大学を出たばかりのナタリー・キーナー(アナ・ケンドリック)がいて、解雇告知を出張と言う経費のかかる方法から、インターネットを経由した方法に変えるという。異論を唱えるライアンに、妥協案としてナタリーの教育のため同行して現場を見せろと社長命令が告げられる。如実に現われるのは世代間の違い。
            
 例えば、夫に求める条件、携帯のメールでボーイフレンドから別れの宣告をされて泣き崩れたナタリーは言う。「予定では23歳までに結婚して、子供も生んでキャリアも積み、夜は遊んで車はチェロキー。彼はポイントも高かった」そのポイントと言うのは「ホワイトカラー、大学卒、犬と映画好き、背が高くて優しい目、仕事は金融、週末はアウトドア派」なんだか私と共通するのは、アウトドア派しかない気がする。

 それに引き換えアレックスは「34歳にもなると容姿は気にしない。背は自分より高いといいけど、ダメ男じゃなくて一緒にいて楽しい人。若いころと違う。あと子供好きで、子供を欲しがる人。子供と遊ぶ体力がある人。収入も私より多くないと、あなたもいずれ分かるわ。逆だと悲惨よ。髪もあるほうがいい。でも大問題じゃないわ。あとは優しい笑顔。優しい笑顔さえあれば……」なんだかどこの国も同じような望みや悩みが見えて面白い。映画のこの場面、ジョージ・クルーニー、ヴェラ・ファーミガ、アナ・ケンドリック三人のショットで見ごたえ充分だった。可憐さを見せるアン、成熟した女の色香を漂わせるヴェラ。横で頷いているジョージの自然な表情も画面を引き締めていた。

 ライアンは妹の結婚式にアレックスを連れて行ったのはいいが、なにやら里心がついて、会社でのスピーチを途中で逃げだしてアレックスの住まいを訪ねる。そこで見たものは、子供が駆け回り夫と思しき声も聞こえる。のちにアレックスが言う。「日常の息抜きよ」 

 ライアンは再び明かりに包まれた夕餉の部屋から、ひときわ輝く航空機のライトの中に戻ることになる。いい脚本に恵まれた映画だと思う。恋をしている人にとっては、恋人にキスをしたくなるし、恋に破れた人は……さてどんな反応なのだろう? 女優二人、ヴェラ・ファーミガはものすごい美人でもないが、年相応のお色気もありいいお尻をしていた。一方若手のアナ・ケンドリックは、フレッシュでキュート。

そういえば、面白い会話があった。
スチュワーデス「ガンはいかが」Do you want the cancer?
ジョージ「なに?」The what?
スチュワーデス「ガンはいかが?」Do you want the cancer?
ジョージ「ガン?」The cancer?
スチュワーデスは、350mlの缶を見せながら「カンです」The can, sir?

監督ジェイソン・ライトマン 1977年10月カナダ・モントリオール生まれ。‘06「サンキュー・スモーキング」インデペンデント・スピリット賞の脚本賞受賞で注目される。この作品でも脚本を書いている。
キャスト ジョージ・クルーニー 1961年5月ケンタッキー州レキシントン生まれ。‘05「グッドナイト&グッドラック」「シリアナ」で監督賞、脚本賞、助演男優賞3部門にノミネート、助演男優賞を受賞。
            
ヴェラ・ファーミガ 1973年8月ニュージャージ州バサイク生まれ。本作でアカデミー賞助演女優賞にノミネート。
             
アナ・ケンドリック 1985年8月メイン州ポートランド生まれ。本作でアカデミー賞助演女優賞にノミネート。