Wind Socks

気軽に発信します。

読書「リンカーン弁護士Lincoln Lawyer」マイクル・コナリー

2012-03-31 13:11:54 | 読書

                 
 
 アメリカの自動車メーカーフォード・モーター社の高級車、アブラハム・リンカーンから名づけたリンカーン・タウン・カーの後部座席を事務所代わりにしている刑事弁護士マイクル(ミッキー)・ハラー。
二度の離婚経験者。ではあるが元妻のローナ・テイラーはハラーの秘書として手伝っている。もう一人のマーガレット・マクファースンは、検察官でハラーとの間に出来た娘ヘイリーと住んでいる。

 顧客といえば麻薬の売人やけちな犯罪者たちが多い。ハラーは次のように自己弁護をする。「社会の多くの人間が私を悪魔と考えているが、彼らは間違っている。私は油で汚れた天使なのだ。私こそまさに真のロード・セイント(市井の聖人)だ。私は必要とされ、望まれている。両方の側に。私は機械の中のオイルなのだ。私はエンジンをかけ、回転させるギアを作動させる。システム(司法制度)のエンジンを動かし続けるのに手を貸している」とはいっても、丘陵地帯にある自宅のデッキからロサンジェルスの光輝く夜景を眺めることや娘のヘイリーをディズニー・ランドへ連れて行くにも金が要るし、家のローンも抱えている。
 
 ちまちました弁護料で満足しているわけではない。ビバリーヒルズの金持ちやセレブを依頼人に持ちたいという願望は捨てきれない。
 ルイス・ロス・ルーレイ。白人、年齢30代前半、身長180センチ、体重80キロ、目の色は淡いブルー、しかもビバリーヒルズに在住し母と高級不動産業を営む。
 ルーレイは加重暴行容疑で逮捕されていた。これが保釈保証人バレンズエラがもたらしたフランチャイズ訴訟だった。平たく言えば高額な弁護報酬が期待できるという案件だった。
 いやでも口元がほころぶが、ルーレイという男徐々に狡猾な側面を見せ始める。というわけで、読み始めたら止まらないということになる。ストーリー・テリングに長けたコナリーを堪能することが出来る。

映画「猿の惑星創世記(ジェネシス)Rise of planet of the apes ’11」劇場公開2011年10月

2012-03-28 10:36:12 | 映画

                
 人間は地球上で一番頭が良くて他の種の頂点に存在するものと思い込んでいる。しばらく前までは自然をもたやすくコントロールできるものとも考えていた。そういう態度を自然がしっぺ返ししてきたのが東日本大震災だった。傲慢な思考を裏付ける「想定外」という言葉。この想定外がチンパンジーによってもたらされるというのがこの映画。

 ジェネシスという製薬会社の研究員ウィル・ロドマン(ジェームズ・フランコ)は、チンパンジーを使ってアルツハイマー病の治験薬を開発していた。その中の一匹がすばらしい知能を発揮する。
 ところがこのチンパンジーが突然研究所内を暴走する。止めに入った警備員によって射殺される。このチンパンジーはメスで、しかも妊娠していた。一人の研究員が内密にその子供を取り出していた。研究所に置いておくわけにいかないというわけで、ウィルが自宅へ持ち帰った。そしてシーザーと名づけた。
 ウィルは、痴呆症の父親チャールズ(ジョン・リスゴー)と同居していてシーザーを見たチャールズに笑みが浮かんだ。シーザーは家族の一員となった。チャールズが隣人から罵倒されているのを見たシーザーは怒りが爆発して大暴れ、結局施設送りになる。
 実験用に収容されているチンパンジーやオランウータン、ゴリラがいた。意地悪な飼育員にいじめられ続ける。しかも、心から慕っているウィルのあの部屋へも帰れないし、迎えにも来ない。

 シーザーは、徐々に人間不信に陥っていく。そして、群れのリーダーとしての地位を確立して檻からの脱走を敢行する。武器を持たない猿たちに人間は無力だった。屋根に登るのに梯子は要らないし、3メートルぐらいの間隔は飛び越えるし、走ればすばしっこく捕まえるのは至難のわざとなる。
 人間はヘリコプターやパトカーや騎馬警官も役に立たない。考えてみれば、人間は脳みそだけが多めなだけだ。身体能力は断然猿に劣る。

 さて、人間がこの地球上からいなくなれば、何か困ることがあるのだろうか? 全くない。猿は人間を必要としていない。森や川があれば生きていける。
 私は時折、人類のいない地球を思い浮かべることがある。そこには千年前に日本のど真ん中銀座という町があった。
 今は高層建築ビルは一つもない。風化してすべて砂になった。雑草やいろんな木々が鬱蒼と繁っていた。猿たちはのんびりと木の枝になるびわを食べていた。幸せそうだ。

 それにしてもVFX映像というらしいが、要するに視覚効果が抜群にいい。特にシーザーの目の動きは感情が表現されていて観る者に感動を与える。シーザーの動きは、パフォーマンス・キャプチャー演技の第一人者アンディ・サーキスという人がやっているそうだ。
           
           
           
           
           
           
           
           

監督
ルパート・ワイアット1972年10月イングランド生まれ。

キャスト
ジェームズ・フランコ1978年4月カリフォルニア生まれ。’10「127時間」が評判。
フリーダ・ピント1984年10月インド、ムンバイ生まれ。
ジョン・リスゴー1945年10月ニューヨーク州ロチェスター生まれ。
アンディ・サーキス1964年4月ロンドン生まれ。’01「ロード・オブ・ザ・リング」のゴラムや’05「キング・コング」などで高い評価を受けたパフォーマンス・キャプチャー演技の第一人者。

映画「マネーボール MONEYBALL ’11」劇場公開2011年11月

2012-03-25 11:32:51 | 映画

               
 大リーグのGM、ゼネラル・マネージャーが主人公は珍しい。実話ということだから監督とGM、スカウトたちとGMの関係や会議でのやり取りに裏話的な興味が湧く。
 あの緑の芝生に覆われたフィールドの裏に隠された人間臭いドラマは、フェア・プレイとかスポーツマン・シップとは程遠い別世界だ。

 2002年のオークランド・アスレティックスは、前半勝てずに最下位に沈んでいた。というのもジョニー・デイモンやジェイソン・ジアンビという大物がFAでチームを去った。
 特にジアンビは、2001年には打率,342 本塁打38本 128打点の結果だったから抜けた穴は大きかった。

 GMのビリー・ビーン(ブラッド・ビット)は、クリーブランド・インディアンスへ飛びそこのGM部屋でスカウトたちに囲まれながらトレード交渉を行った。成功しなかったが、スカウトに耳打ちする若い男に気がついた。
 事務所でビア樽のような体型の男に質問攻めにした。その男はピーター・ブランド(ジョナ・ヒル)と言い統計的手法で選手を分析しているのは当然として、例えばジョニー・デイモンについてこう言った。「彼はヒットも打つし守備も出来るが、得点の方法を知らない」
 つまり今までの大リーグ野球のいけいけどんどん風の大味な野球だと言う。すぐさまビーンは、ピーターをスカウトしてオークランドに連れてきた。

 金持ち球団ヤンキースの年間予算よりも遥かに低い金額で選手をかき集めて後半戦に備えた。ビーンの興味は、ワールドシリーズで優勝してチャンピオン・リングを指にはめることではなくチームが勝つことだけだった。出塁を最重要視してシンプルな野球に徹した。
 期待は裏切らず20連勝のリーグ新記録まで作った。ヤンキースなら当たり前と言われるかもしれないが、低予算のチームが達成したのが意味がある。

 この映画は、野球好きには楽しめるがそうでないとラブ・ロマンスやサスペンスがないので期待に沿わないかもしれない。
 野球の話のついでに、今シーズンの大リーグについて私の興味を書いてみたい。三人の選手に注目したい。まず、イチロー。今シーズン三番を任されてどんな結果を出すのだろう。
 次にヤンキースに移った黒田投手だ。ヤンキースの強力打線の援護で何勝あげられるのか。それに、ダルビッシュだ。
 騒がれてテキサス・レンジャーズに入ったが、野茂英雄がノモ・マニア現象を作り出したように、ダル・マニアが生まれるだろうか。目が離せないシーズンになりそうだ。
           
            アスレティックスのホーム球場
           
           
           
           
監督
ベネット・ミラー1966年12月ニューヨーク生まれ。’05「カポーティ」で作品賞にノミネート。

キャスト
ブラッド・ビット1963年12月オクラホマ州シャウニー生まれ。
ジョナ・ヒル1983年12月ロサンゼルス生まれ。’05「40歳の童貞男」などに出ているが、この映画でアカデミー助演男優賞にノミネートとされた。
フィリップ・シーモア・ホフマン1967年7月ニューヨーク州フェアポート生まれ。’05「カーポティ」でアカデミー主演男優賞受賞。この映画では、腹の出たアスレティックス監督アート・ハウを演じている。

映画「コンテイジョンContagion’11」劇場公開2011年11月

2012-03-21 12:57:03 | 映画

               
 Contagion 接触感染。それは香港に出張していたベス・エムホフ(グウィネス・バルトロー)の発症から物語りは始まる。ミネソタの自宅でベスは死亡する。
 東京、中国広東省、九龍、ベスの浮気相手ニールもシカゴの自宅で倒れて救急搬送される。病原菌は特定されない。新種のインフルエンザだ。拡散が続く。

 ワクチンが製造されるまで外出禁止令やあの薬が効くという風説でドラッグストアや大型ショッピングモールに人が殺到混乱を極める。医療現場では、ドクターレオノーラ・オランテズ(マリオン・コティヤール)、エリス・チーヴァー博士(ローレンス・フィッシュバーン)、ドクターエリン・ミヤーズ(ケイト・ウィンスレット)、ドクターアリー・ヘクストール(ジェニファー・イーリー)たちがCDCやWHOの機関で調査や原因を究明していた。

 ドキュメンタリータッチで淡々と描写していくが、混乱の度合いがいま一つ迫力に欠けるので、実際に現実化する可能性を秘めているのに不満が残る。それに、これだけの俳優をそろえているがグウィネス・バルトローはすぐ死んでしまうし、ケイト・ウィンスレットも病原菌にやられる。ベスの夫役のマット・デイモンも免疫を持った男を演じるが、彼でないといけないのか。 という疑問も起こる。
 なんだか地味な映画だから、せめて俳優のネームヴァリューに寄りかかりたかったのかもしれない。だまされた気分になるのは私だけかな?
            
            
            
            
            
            

監督
スティーヴン・ソダーバーグ1963年1月ジョージア州アトランタ生まれ。’00「エリン・ブロコビッチ」と「トラフィック」でアカデミー監督賞をダブル・ノミネートされる。

キャスト
マリオン・コティヤール1975年9月フランス、パリ生まれ。’07「エディット・ピアフ~愛の賛歌~」でアカデミー主演女優賞を受賞。
マット・デイモン1970年10月マサチューセッツ州ケンブリッジ生まれ。
ローレンス・フィッシュバーン1961年12月ジョージア州オーガスタ生まれ。
ジュード・ロウ1972年12月ロンドン生まれ。
グウィネス・バルトロー1972年9月ロサンジェルス生まれ。’98「恋に落ちたシェイクスピア」でアカデミー主演女優賞受賞。
ケイト・ウィンスレット1975年10月イギリス、イングランド バークシャーレディング生まれ。
ジェニファー・イーリー1969年12月ノースカロライナ州ウィンストンせーラム生まれ。

映画「アンノウン Unknown ’11」劇場公開2011年5月

2012-03-18 11:22:53 | 映画

               
 マーティン・ハリス博士(リーアム・ニーソン)と妻のエリザベス(ジャニュアリー・ジョーンズ)は、ベルリン・テーゲル国際空港の係官に告げた。
「バイオテクノロジーの学会で発表を行う」係官は冷たい表情で「ハリス夫妻、ようこそベルリンへ」空港からホテルへ。

 タクシーから取り出した荷物が一つ足りない。エリザベスがチェックイン手続き中にマーティンはタクシーで空港へ引き返す。ところが運命はいたずら好き。乗ったタクシーが前を走るトラックの荷台から落ちてきたものを避けようとして川に転落する。
 ドライバーの女性は窓ガラスを割って脱出。マーティンは落下のショックで頭を打って失神。それを見たドライバーはリアウィンドウを破り助け出すが、そのドライバーは救急隊の到着を待って密かに姿を消す。

 その女性は不法移民でアルバイトにタクシー・ドライバーをしていた。名前は、ジーナ(ダイアン・クルーガー)という。後にマーティンと協力して壮絶なカーチェイスを演じる。病院に収容されたマーティンは記憶が失われていた。「私は誰だ!」この謎解きがサスペンスとスリルを呼び込んで、驚愕のラストへとなだれ込む。かなり肉厚で噛み応えがあることは確かだ。たまにはこういうのもいい。
           
           
           
           
           
           

監督
ジャウマ・コレット=セラ1974年3月スペイン、バルセロナ生まれ。

キャスト
リーアム・ニーソン1952年6月イギリス、北アイルランド生まれ。’93「シンドラーのリスト」でアカデミー主演男優賞のノミネート。
ダイアン・クルーガー1976年7月ドイツ生まれ。
ジャニュアリー・ジョーンズ1978年1月サウスダコタ生まれ。

映画「復讐捜査線Edge of darkness’10」劇場公開2011年7月

2012-03-12 10:55:05 | 映画

               
 久しぶりのメル・ギブソンに驚いた。印象は老けたなあ! だった。しかし、年齢は56歳でまだ老けるには早い。ただ、顔に皺が浮き出ていて老けた印象が強くなった。

 マサチューセッツ工科大学の学生の娘エマ(ボヤナ・ノヴァコヴィッチ)が久しぶりに帰郷した。ところが、嘔吐を繰り返ししまいにはぶっ倒れてしまう。病院へ連れて行くために玄関のドアを開けたとたん何者かに射殺される。

 父親で刑事のトーマス(メル・ギブソン)は、傷心を抱えながらも自身に思い当たる節がないために娘の周辺を洗っていくと、なんと巨大な核施設の陰謀に突き当たる。
 娘の告発DVDを手に入れた。それには「ノースモア社で調査研究助手をしている。この話をするのは会社の規則違反で犯罪だと分かっている。でも正当な法的手段では告発が不可能だから正義のためにはこうして話すしかない。ノースモア社は法律を破り核兵器を製造していてアメリカ製の兵器にならないよう外国の材料を使った外国の兵器としてその兵器を使われたとしても使ったのがアメリカだとバレない。
 書類や画像や青写真は入手したけれど兵器が存在する証拠が必要。そこで証拠撮影チームに侵入ルートを教えた。これを撮っているのは怖いから、私は監視下にある。電話は盗聴され尾行されている。パパがこれを見るとき、私は死んでいるかも。愛してる パパ」

 苦渋の表情と怒りが交錯するトーマス。娘の仇を討つ殺人マシーンと化したトーマス。いくら刑事と言えども法を逸脱した行為は許されない。がトーマスは自身放射能を浴びせられ死を覚悟して果敢に仇を討つ。
 関わったすべての人間がこの世から去るという無難な対応で終わる。娘を殺された肉親の深奥にうごめく氷のような憎悪を思うと、トーマスに限らず犯人を抹殺したい衝動を抑えるのに苦労するはず。現実はなお厳しい。
          
          
監督
マーティン・キャンベル1940年10月ニュージランド生まれ。’06「007/カジノ・ロワイヤル」ほか。

キャスト
メル・ギブソン1956年1月ニューヨーク生まれ。’95「ブレイブハート」でアカデミー作品・監督賞受賞。
ボヤナ・ノヴァコヴィッチ1981年セルビア生まれ。

読書「エコー・パーク」マイクル・コナリー講談社文庫2010年4月刊

2012-03-08 09:41:07 | 読書

               
 ハリー・ボッシュ・シリーズの第12作目。ロサンジェルス市警未解決事件班に所属し13年前のマリー・ゲスト失踪事件を再び洗い出していた。

 1993年ロサンジェルスのハイ・タワー・アパートメントの車庫でマリー・ゲストのホンダ・アコードが発見された。車内は乱れたところが無く衣類もきっちりと畳まれていた。ボッシュは、その時からマリー・ゲストを見つけられないという悪い予感を抱いていた。
          
           ハイ・タワー・アパートメント
 そして13年後の今、マリー・ゲストを殺して埋めたという男が現れた。それは、夜遅くパトカーの警官が不審な車を職務質問して、車の中に遺体をくるんだビニール袋を発見、逮捕されたレイナード・ウェイツという男だった。
 レイナード立会いの上、急峻な崖の下で死体遺棄場所を特定したあとちょっとした隙にレイナードに銃を奪われしかも警官二人を射殺され、ボッシュのパートナーキズ・ライダーも頚動脈貫通の重傷を負う。レイナードは逃走した。
 ボッシュは、親密な関係にあるFBI捜査官でプロファイリングも出来るレイチェル・ウォリングの協力でレイナードの行方を追う。

 テンポの速い展開は読む楽しさを味あわせてくれる。ボッシュには、レイナードが脱走する直前に言った言葉が妙に気がかりだった。それは、「てめえのいんちき取引がこのざまだ!」レイナードを追い詰めて射殺したあともさらにこの言葉が気がかりだった。その謎が解き明かされるエンディングは、エコー・パークでその幕を閉じる。良質の刑事ドラマを観たような気にさせてくれる。

 マイクル・コナリーは、作品に実際にある場所や物を描写するからロサンジェルスの市街地図を買って読むのも楽しいかもしれない。ボッシュやレイチェルが行くレストランや店も実在という。
 それにコナリーはジャズに目がない。この本でも1957年カーネギー・ホールでのジョン・コルトレーンとセロニアス・モンクの共演が紹介されている。そのテープはなんの表示も無い箱に入れられて50年近く放置されていたという。それを図書館の職員が偶然発見したという曰くつきのものらしい。
    
アマゾンでも「Thelonious Monk with John Coltrane at Carnegie」のCDが買える。ここではYouTubeで「Evidence(証拠)」をどうぞ!

それにもう一つ、マイクル・コナリーのホームページが充実しているらしい。ここからどうぞ!
 気が向けがぶらつくのも悪くない。

映画「ゴーストライター The Ghost writer ’10」劇場公開2011年8月

2012-03-05 09:21:00 | 映画

               
 上質のミステリーを読んだあとのように満足感を与えてくれる。ことさら観客を怖がらせたり、わざとらしいものもなくごく自然な流れの中にきらりと光るサスペンスが観るものを放さない。

 英国の首相アダム・ラング(ピアース・ブロスナン)の自叙伝の執筆を助けていたゴーストライターがフェリーに車を残して行方不明となり、海岸で溺死体として発見される。
 出版社は次なるゴーストライターとの契約を急がなくてはならない。そこで現れたのがゴースト(ユアン・マクレガーが演じているが、最後まで名前はゴーストでそれ自体がミステリアス)だった。空港のテレビでは「ラング首相は、英国特殊部隊を勝手に動かし、アルカイダの容疑者4名を捕獲、CIAに引渡したと見られます。そして、拷問された模様」

 飛行機内の新聞の見出しは「ラング 誘拐を指示」と言う記事が踊っていた。ゴーストは気の進まぬままラング邸に向かう。仕事を進めながら首相と妻のルース(オリヴィア・ウィリアムズ)とがうまく行っていないことや前任のゴーストの死が不自然であることも分かり始める。ゆっくりと核心に迫っていく流れがサスペンスを盛り上げる。
 ラングのスキャンダルの顛末もルースの秘密も明らかになり、そして意外な結末を迎える。面白いのはカーナビがゴーストに前任者の足取りを教えることになる。つまり、前任者はよくこの車を使っていてカーナビに行き先を記憶させていた。ゴーストが気づきその指示に従って行ったのがサスペンスの発端となった。
          
          
          
          
          
          

監督
ロマン・ポランスキー1933年8月パリ生まれ。’68「ローズマリーの赤ちゃん」が大ヒット。’02「戦場のピアニスト」でアカデミー監督賞受賞。

キャスト
ユアン・マクレガー1971年3月スコットランド生まれ。
ピアース・ブロスナン1953年5月アイルランド生まれ。
キム・キャトラル1956年8月イギリス、リヴァプール生まれ。
オリヴィア・ウィリアムズ1968年7月ロンドン生まれ。