「源氏物語」を書いた紫式部の内奥に迫るエッセイである。つまり、したい、されたい、して欲しいという欲望の裏づけがこの物語にはあるという。
なるほど、「連れ去られたい」「ブスを笑いたい」「嫉妬したい」「プロデュースされたい」「頭がいいと思われたい」「見られたい」「娘に幸せになって欲しい」「モテ男を不幸にしたい」「専業主婦になりたい」「都会に住みたい」「待っていて欲しい」「乱暴に迫られたい」「秘密をばらしたい」「選択したい」「笑われたくない」「けじめをつけたい」「いじめたい」「正妻に復讐したい」「失脚させたい」「出家したい」という項目を詳しく論述してある。
どれもなるほどと思うものばかり。誰でも持っている感情だ。例えば、嫉妬に狂ってライバルを破滅させたいと思っても、現実には思うように行かない。
ところが、小説という手法を借りればいくらでもアイデアが浮かんで、破滅の淵に追い落とすことも出来る。自己満足の世界ではあるが、ある人によってはストレス解消の妙薬になるのかもしれない。
一度、恋物語を書いてみればいい。自身の体験を基にすれば、一つは書けるだろう。書いていくうちにストーリーが膨らんできて理想の彼氏や彼女に力が入る筈。なかなか面白い体験で、この本の言わんとするところがよく分かると思う。
それにしてもこの源氏物語、長大なレイプ物語と言ったらひんしゅくを買うだろうか。70年余りの出来事を登場人物500人で彩り、ほぼ100万文字、400字詰原稿用紙にして約2,400枚と言う大作。
それにしても女さえ見れば年齢には関係なく迫って関係を持つ光源氏という男、一体どこに絶大な精力があるのだろう? と思ってしまう。自然食品にその秘密があるのかもしれない。光源氏には羨望と妬みが交錯する。
作者の紫式部の生没年がハッキリしないらしい。諸説あって970年(元禄元年)~978年(天元元年)生まれ。1014年(長和2年)~1031年(長元4年)没と幅広い。40代後半から50代の中ごろまでの生涯であっただろうと推測される。どんな思いでこの小説を書いたのか? 読んだ人がそれなりに推理するのも、また別の楽しみではある。