原題は、conspirator共謀者でどうして「声をかくす人」となるのかよく分からない。1865年4月14日金曜日午後10時頃に起きたリンカーン大統領暗殺事件の共謀者として軍事裁判にかけられたメアリー・サラットは、アメリカ史上最初の死刑を執行された女性となった。
首謀者は、ジョン・ウィルクス・ブースで同志にサミュエル・アーノルド、ジョージ・アツェロット、デイヴィッド・ヘロルド、マイケル・オロフレン、ルイス・パウエル、ジョン・サラットらだった。
同志が集まった頃ジョン・サラットの母、メアリー・サラットはメリーランド州サラッツヴィルにあった下宿屋を引き払ってワシントンに居を移していた。ワシントンのサラットの家をブースが足しげく訪れたことから、メアリー・サラットがブースのアジトを提供するためにワシントンに移ったと見られ一味の逮捕と共に共謀者の疑いをかけられる。
ロバート・レッドフォードは、地味な映像ながら史実を忠実に再現させ、歴史の暗部を正しく認識するための姿勢を見せる。ロビン・ライト演じるメアリー・サラットを弁護するフレデリック・エイキン(ジェームズ・マカヴォイ)を通じて当時の現実を描写する。
民間人でありながら軍事法廷で裁き、しかも南北戦争終焉直後の北軍と南部連合の感情の対立が解けない時期とも重なり、メアリーが無罪と信じたエイキンが提出した人身保護法の申請も無視され、リンカーンの後任のアンドリュー・ジョンソン大統領命によりサラット、パウエル、へロルド、アツェロットの絞首刑が執行された。
憎しみの感情が支配する軍事法廷で公正な裁判は望むべくもない。後世の人間から見ると正義のない後味の悪さが残るだけだった。メアリーはその犠牲者となった。
ちなみに1865年の日本は、江戸時代末期、慶応元年にあたり西郷隆盛が39歳で結婚したり、坂本竜馬が生きていた時代になる。劇場公開2012年10月
監督
ロバート・レッドフォード1936年8月カリフォルニア州サンタモニカ生まれ。’80「普通の人々」でアカデミー監督賞を受賞。
キャスト
ジェームズ・マカヴォイ1979年4月イギリス、スコットランド、グラスゴー生まれ。
ロビン・ライト1966年4月テキサス州ダラス生まれ。
ケヴィン・クライン1947年10月ミズリー州セントルイス生まれ。
エヴァン・レイチェル・ウッド1987年9月ノースカロライナ州生まれ。