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映画「ザリガニの鳴くところWhere the Crawdads Sing」コロンビア・ピクチャー制作2022年公開

2023-07-04 11:29:25 | お酒
 1969年10月30日ノースカロライナ州バークリー・コーヴの湿地に点在する沼の一つで、町の人気者チェイスが遺体で発見される。この事件の背景に、一人の女性の過酷な運命が隠されている。保安官事務所が容疑者として捕えているのは、湿地に一人で住むキャサリン・クラーク、カイヤと呼ばれる(ディジー・エドガー=ジョーンズ)。

 カイヤはもともと、父・母、姉二人、兄と住んでいた。絶えず暴力を振るう父親に嫌気がさして、母がいなくなる、そして姉二人も、兄も続く。父とカイヤの生活がしばらく続く、それも父親が去ってカイヤ一人残される。この設定が私にはどうしても理解できなくて、もやもやとした気持ちを持ちながらの鑑賞となった。

 子供を見捨てる母親と父親。こんな環境で育った子供は、どんな人間になるのだろうか。この映画は一つの回答を示している。沼で採れるムール貝を買い取ってくれた黒人夫婦の存在が、生き延びる術(すべ)を与えた。そういう生い立ちを語るカイヤの弁護を務めるのは、引退したトム・ミルトン(デヴィッド・ストラザーン)。

 成人したカイヤにもロマンスが訪れる。カイヤの兄の友人だったテイト・ウォーカー(テイラー・ジョン・スミス)との出会い。学校へ行っていないカイヤには、テイトからの読み書き、計算、読書の楽しさを教わり湿地の生物や植物の記録を始める。このころの二人は、恋人関係にあった。大学進学を決めたテイトは、必ず戻ってくると言ってカイアと別れを告げる。その時、書き留めた生物や植物の記録を出版社に送るといいと言って出版社のリストを書き残していた。

 音信不通状態が続くテイトとの関係の隙間に忍び込んだのがチェイス(ハリス・ディキンソン)。この男、婚約者が有りながらカイヤを口説こうとしている。町で偶然チェイスと婚約者に出会って、その事情を知るカイア。カイアは距離をおこうとするが、それでも付きまとうチェイス。

 遺体発見現場がやぐらの下ということで、落下したと推定された。鑑識による死亡推定時刻は、午前0時から2時の間。しかも赤い毛糸の糸くずが付着していた。遺族の話では、いつもしていた貝殻の素朴なネックレスがなくなっていたという。

 赤い毛糸の帽子が、カイアの家から発見されている。素朴な貝殻のネックレスは、かつてカイアがチェイスにプレゼントしたものだった。その事情は保安官事務所は、把握していない。検察官の主張は、証拠の赤い帽子と事件当夜、町で出版社の編集長と仕事の打ち合わせをしていたというが、バスの時刻表からみてバスで湿地に帰り事件を起こして引き返せるので犯人はカイアであると言う。
 形勢不利と見て取った弁護士のミルトンは、証言台にカイアを立たせようとするが、湿地の娘と嘲りの感情を持つ町民に前ではイヤだと明言。そこでミルトンは、最終弁論で「出された事実だけをもとに判断してほしい」と陪審員団に告げる。結果は無罪。

 映画はこれで終わらないのである。大学を卒業して戻ってきたテイトと結婚し、沼の生物・植物の図鑑も順調に発刊され、穏やかな人生が過ぎていく。やがてカイアが死を迎える。老いたテイトがカイアの遺品を懐かしむ。その時出てきたのが素朴な貝殻のネックレスだった。

 沼地でたった一人で生き抜いた女にとって、生きるとはどういうことかをよく知っている。この沼に生息するワニや毒蛇や鳥たちと同じように、災厄は逃げるのでなく叩き潰すことなのだ。冒頭に字幕が流れる。「沼は死を熟知している。死を悲劇にしないし罪にもしない」

 この映画を見た多くの人々の評価が高い。ただ、専門家と言われる批評家の評価は低い。「カイア役のデイジー・エドガー=ジョーンズは持てる力の全てを捧げている。しかし、結局のところ、『ザリガニの鳴くところ』は原作小説を再構成して、雰囲気に不自然なところがないドラマを作り上げることができなかった」

 この作品の製作に加わっているのが女優のリース・ウィザスプーンであり、劇中歌「Carolina」を歌っているのがテイラー・スウィフト。そして2023.4.16付けアメリカの最大スポーツ雑誌、スポーツ・イラストレイテッドから発表されたのは「人気ポップ歌手テイラー·スウィフトが次にデートしそうな男性のリストに大谷翔平が含まれました。テイラー·スウィフトの次の恋愛のオッズに関するプレスリリースを受け取りました。予想される名前に、Shohei Ohtaniも含まれています。現役MLBプレイヤーがこの様なものに含まれてからどのくらい経ちましたか、野球は再びクールになりましか?」という記事があった。

 ジョークにしてもテイラー・スウィフトのお相手が大谷翔平とは? 15年のうちお相手を16人も変えた女性スウィフトとなれば、翔平は知らん顔だろうけど。それにしてもエンタメ業界にも波及するとは、大谷翔平は世界の恋人にもなったのだろうか。余談はさて置いてテイラー・スウィフトの「Carolina」を聴きましょう。



キャスト
カイヤ役のデイジー・エドガー=ジョーンズ。1998年生まれのイギリスの女優。2020年のアイルランドのテレビドラマ「ふつうの人々」で主演。英国アカデミー賞テレビ部門賞にノミネートされた。
引退した弁護士トム・ミルトン役を演じたデヴィッド・ストラザーン。1949年生まれのサンフランシスコ出身。2005年公開の「グッドナイト&グッドラック」でジャーナリスト役を演じヴェネツィア国際映画祭男優賞受賞とアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた。

読書「あなたを愛してからSince we fell」デニス・ルヘイン著ハヤカワ・ミステリ2018年刊

2023-05-24 08:39:49 | お酒
 デニス・ルヘインの "あなたを愛してからSince We Fell "は、最初から最後まで読者をハラハラドキドキさせる雰囲気のあるスリラーです。サスペンスの名手であり、複雑なキャラクターで知られるルヘインは、この心理的陰謀の説得力のある物語でまたもや成功を収めました。

 元ジャーナリストのレイチェル・チャイルズは、公私ともに破綻し、不安と孤独に苦しんでいる。自分探しの旅に出た彼女は、欺瞞と危険の網に絡め取られ、自分の最も深い恐怖に直面することになる。

 ルヘインの文章は素晴らしく、鮮やかな描写と細部へのこだわりで読者をレイチェルの世界に引き込みます。ストーリーはひねりに満ちており、あらゆる場面で読者に推測と二の足を踏ませる。ペース配分は容赦なく、読者は本に潜む謎を解き明かそうと必死になり、本を手放すことができなくなるのです。

 この『あなたを愛してからSince We Fell』を際立たせているのは、登場人物の複雑な心理を掘り下げるルヘインの能力である。レイチェルは欠点が多く、説得力のある主人公であり、ルヘインは彼女の弱点と内なる悪魔を深みと繊細さをもって描き出している。脇役も同様によく描かれており、物語全体に複雑さと陰謀の層を加えている。

 アイデンティティ、信頼、そして自分の選択の結果というテーマは、物語全体に巧みに織り込まれ、スリリングなプロットに深みと実質を与えている。ルヘインはこれらのテーマに知性とニュアンスをもって取り組み、"あなたを愛してからSince We Fell "を脈打つようなエンターテインメントに加え、示唆に富んだ読物にしている。

 全体として、"あなたを愛してからSince We Fell "はデニス・ルヘインの卓越したストーリーテリング能力を示す、見事な心理スリラーである。サスペンスと感情のジェットコースターのような展開で、息をのみ、自分が知っていると思っていたことをすべて疑いたくなるような作品です。これまでの作品のファンであれ、初めて彼の作品を読む人であれ、この小説は人を魅了し、印象に残ること間違いなしです。
www.DeepL.com/Translator(無料版)で翻訳しました。
以上は今話題の「chatGPT」に依頼した読書感想文である。瞬時にこれが出てきたので驚いた。 がすべてを網羅しているが、個性がないという印象だ。AIだから仕方がないか。

 主人公は二人。レイチェル・チャイルズと二人目の夫ブライアン・ドラクロワ。ジャーナリスト レイチェルはハイチ地震取材で、現地の悲惨な状況、強奪、窃盗、暴力、レイプ、住むところと食料がない。子供や女の弱者が悲惨な目にあう状況からパニック発作を患う。帰国後、引きこもりがちになる。前夫のプロデューサーもレイチェルと距離を置き始め、結局離婚となる。

 その後に現れたのがブライアン・ドラクロワなのだ。この男、レイチェルがパニック発作を患っているのを知っていて求婚する。結婚してからもレイチェルの病気からの克服に力を貸して、徐々に快方に向かう。幸せな時間は瞬く間に過ぎ去り、ブライアンが出張した日、路地でブライアンによく似た男を見かける。腑に落ちないままブライアンの車を追いかけて行動を監視する。やがて不倫を疑い問い詰めると、なんと「俺は詐欺師だ」と言うではないか。7千万ドル(100億円近い金額)を持ち逃げしようとして、殺し屋に狙われているとも。こうしてこの二人は殺し屋と対峙する。ラヴロマンスとバイオレンスの小説とでも言えばいいかも。私も大いに楽しめた。

 著者のデニス・ルヘインは1965年ボストン生まれ。1994年「スコッチに涙を託して」で作家デビュー。本作はアメリカ私立探偵作家クラブの新人賞を受賞している。シリーズ物以外で映画化もされている。2003年クリント・イーストウッド監督で「ミスティック・リバー」。2010年マーティン・スコセッシ監督で「シャッター・アイランド」がある。

新聞記事から「カクテル・マティーニについて」

2015-11-13 21:52:55 | お酒

               
 先日の読売新聞夕刊に作家の藤原智美さんのコラムが載った。冒頭を引用すると「バブル期、ホテルのバーである女性とデートした。私は初めてマティーニを注文。アルコールの強さに舌がしびれたが何とか飲み干し、グラスに残るオリーブを口にした。小さな種を口からグラスにもどしたとき、彼女はあきらかに不快な表情をした。
 そして唐突に上司の話をし始めた。その男はおしゃれで酒も強い。マティーニが出てくると、スティックに刺さったオリーブをグラスから取り出し、カウンターの上に置く。それから初めて口をつける。同じように3杯、4杯と飲み干すと、手元にオリーブのスティックが扇状に並ぶ。男はそれを残したまま席を立つ。「それがかっこいいのよ」と彼女。私はキザで下品な男に思え、彼のことをうっとりと語る彼女が、たちまち嫌いになった」

 彼女の言葉は、藤原さんの行為をやんわりと批判しているようで嫌いになった気持ちもわかるし、その男に嫉妬しているようでもある。

 まあ、ちょっと洒落心のある男なら、女性を口説く場所は心得ているだろう。ホテルのバーなんかは、最高にいい場所に思える。そこでビールを注文して無粋にならないような配慮も必要。ミステリ好きな彼女ならギムレットもいいかも。

 さて、私はそのマティーニをバーやホテルで飲んだことがない。自宅で作って飲んだだけ。なんとも無粋でお話にならない。マティーニの作り方は、サントリーのホームページがいいかも。その口上に「マティーニほど数々の逸話に彩られたカクテルはほかにない。カクテル中のカクテルとして「カクテルの帝王」といわれる。映画「7年目の浮気」ではマリリン・モンローが、007ではジェームス・ボンドが好んだ」とあり、最近ではフランス映画「間奏曲はパリで」のレストラン・シーンでもマティーニが登場した。年齢的には中年の男女というのが定番のようだ。

 ビーフィーター・ジン48ml、チンザノエクストラ・ドライ12mlを混ぜてカクテル・グラスに注ぎ、デコレーションのオリーブをグラスのふちに刺すか、カクテルピンにオリーブを刺してグラスにさし渡して完成。これでアルコール度25度以上になる。

 カクテルピンのオリーブは、食べるか食べないかはお好みでと言いたいが、あれの食べ方を考えると躊躇する。藤原さんの文でも、口から直接グラスに戻したのを見た彼女が皮肉を言ったのだろう。確かに後始末を考えないと汚さが残る気がする。デコレーションということなら、食べないほうが無難かも。

 ちなみにギムレットは、レイモンド・チャンドラーの小説「長いお別れ」で「ギムレットには早すぎる」という名セリフで一躍有名になったという逸話がある。マティーニは辛口であるが、ビーフィーター・ジンとライムのギムレットは、中甘辛口ということで飲みすぎには注意が必要。泥酔して彼女と文字通り長いお別れなんて洒落にもならない。