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読書「ルート66Shark Music」キャロル・オコンネル著

2022-04-29 10:35:15 | 読書
 乳白色の肌、猫を思わせるグリーンの目、赤い爪、ブルージーンズをはいた長い脚、そしてすごい美人、さらにもっとすごいのは、ショルダーホルスターから覗く大型拳銃スミス&ウェッソン257口径の銃把。

 彼女の名前はキャシー・マロリー、ニューヨーク市警ソーホー署巡査部長刑事。キャシー・マロリーの性格は複雑だ。独善的で排他的、しかも数学的頭脳は外科医のメスのように鋭い。

 彼女の行動に理解不能といえるものがある。一例として、州間高速道路で、ある車の横にピタリと並走するが、マロリーの目は相手のドライバーからそらすことはない。前方を見ずに何キロも走行する。
 仮に容疑者がこれをやられたら、ギブアップするしかない。誰だって気持ち悪くなって恐怖も覚える。

 そのマロリーが運転する車は、フォルクスワーゲン・ビートル。この車をなめてはいけない。エンジンをポルシェ911ツインターボに変えてある。マロリーがぶっ飛ばすスピードは、210マイル、キロにして時速約330キロ。どんなに性能のいいパトカーでも追いつくことはできない。

 物語はマロリーが住むアパートメントの部屋で、サヴァンナ・サイラスという女性の遺体が発見されたところから始まる。マロリーが殺したのか。そんな疑問を抱きながら先を急ぐことになる。
 マロリーは相棒のライカー刑事にも無断で姿を見せない。それをクレジットカード使用の痕跡を追うライカー刑事。ただ、クレジットカードを使っているという点で無実の証左となるので心配はいらないが「あのチビが殺しをすることはないが、どこをほっつき歩いているんだ」と文句を垂れる。

 ライカーがマロリーを「チビ」というには訳がある。マロリーには生みの親と育ての親がある。育ての親が故人のルイ・マーコヴィッツという刑事だった。マーコヴィッツと一緒に働いていたのがライカーで、マロリーはまだ小さかった。だから今でもライカーは、マロリーのことをチビと呼ぶ。

 暴風雨が去った真夜中、マロリーはシカゴ美術館の前に車を停めて、二頭の緑のライオンを眺めた。大事にしている古い手紙の冒頭を思い浮かべた。「この商業と美術と緑のライオンの交差点を、マザー・ロード(ルート66のこと)の出発点とみなす旅行者もいる。もともとの出発点は、別のところにあるんだけどね。昔から絶えず変化してきたハイウェイ。いまそれは、八つの州のあちこちに散らばる舗装路のつぎはぎと化し、消滅しつつある。旅と車のよきロマンスの名残りすべてが」今は亡き生みの親ペイトン・ヘイルからの手紙なのだ。

 ペイトン・ヘイルがかつて旅したルート66、その道を娘マロリーが追憶の旅に出た。しかもポリス・スキャナー(警察無線受信機)をフォルクスワーゲン・ビートルに搭載してあるから、いやでも事件発生を傍受できる。ポリス・スキャナーはマロリーの習性を刺激し、事件現場へと向かわせる。

 手紙には天候とルートに関するメモ、それぞれの道でかける音楽の指示まである。マロリーは忠実に従う。イリノイ州シカゴからカリフォルニア州サンタモニカまで約3755キロ。
 ナット・キング・コールが歌う「ネイチャー・ボーイ」を出発前のしばしのひと時を楽しむ。道中、娘を殺されたキャラバンに遭遇したり、シリアルキラーとも対決、そいつを自らも重傷を負いながら抹殺したりと旅のついでの犯罪捜査という趣。

 私は犯罪捜査にはあまり興味を持てなかったが、ルート66と音楽には興味を募らせた。
 地平線から太陽が白色に包まれながら昇ってくるのを、疾走するビートルで聴くのはヨハン・セバスティアン・バッハ作曲「ブランデンブルグ協奏曲第3番」弦楽器の奏でる雅な調べが生き生きとして、喜びに満ち溢れていると解説にある。これを聴きながら想像すると、かなりいい雰囲気は確かなようだ。

 ライカー刑事の贈り物でお前のテーマソングだという「デスペラード(ならず者)」も、マロリーは何回も聴いた曲だ。
レッド・ツェッペリン「天国への階段」、ママス&パパス「夢のカリフォルニア」、ザ・フー「もう二度とだまされない」、ボブ・ディラン「時代は変わるThe times they are a-changin'」、イーグルス「Take it easy」と豊富。

 さらに道中の見どころにも触れる。「ミッドポイント・カフェ」テキサス州エイドリアンにあり、ルート66のほぼ中間点。
「クラインズ・コーナーズ」ニューメキシコ州のロードサイドの休憩所、「エルランチョ・ホテル」ニューメキシコ州ギャラップにあるホテル。映画製作の拠点としてこのホテルを建てたらしく、ハリウッドの俳優が滞在した。ロナルド・レーガン、ジョン・ウエインなどという懐かしい名前も。

「ペインテッド砂漠」アリゾナ州北東部にある化石の森国立公園の北地区にある。まさに描画をしたような地層が見える。
「ブラックキャット・バー」アリゾナ州セリグマンにある。
まるで西部劇に出てくるようなバー。

 ジョン・スタインベックは1939年の著作「怒りの葡萄」で、1933年からほぼ二年間、テキサスからカナダ国境に至る大平原に猛烈な砂嵐が吹き荒れた。それはすべての耕地を一夜にして砂丘に変えた。この天災と進む機械化の波に追われて、オクラホマの貧農ジョードとその家族が代々の土地を捨てカルフォルニアへと向かった道がこのルート66だった。

 スタインベックはルート66を「赤い土地と灰色の土地を越え、山脈へとよじ登り、分水嶺をよぎって、陽の照りつける恐るべき砂漠に下り、さらに砂漠を越えて。ふたたび山脈に入り、そして豊饒なカリフォルニアの渓谷へと入っていく。ルート66は逃亡する人たちの道である」著者キャロル・オコンネルは、犯罪の道にしてしまった。1947年生まれでニューヨーク出身。趣味の小説を書くことが成功した。
          
      
          

          
          
          
 上記の音楽リストの中で、わたしが好きなのが「デスペラード(ならず者)」。これは1973年イーグルスがリリース、多くのアーティストがカバーしているが、しみじみと聴くには現役のダイアナ・クラールがいいでしょう。では、どうぞ!

読書「ネヴァー・ゲームThe Never Game」ジェフリー・ディーヴァー著

2022-04-14 15:42:04 | 読書
 人生は短い。誰かにこんにちはって言うチャンスを逃してはいけない。さよならを言うチャンスも……そう言ったのはプロゲーマーのマディー・プール。赤毛の柔らかい髪、しなやかな体の持ち主。コルター・ショウがカフェで会った女性。

 ジェフリー・ディーヴァーの新しいキャラクター、コルター・ショウの登場なのである。コルター・ショウを紹介しておこう。
 身長180センチ、肩幅広く筋肉質、額に小さな傷痕、首筋にも傷痕。ロッククライミングを愛好、大学時代はレスリングの選手、武器に関しては、リボルバー、セミオートマチック拳銃、セミオートマティックライフル、ボルトアクションライフル、ショットガン、弓と矢、狩猟用のゴム銃の扱いに精通している。ルックスはハンサムの部類に入る。

 全国を仕事のフィールドにしているため、愛用しているのはキャンピング・カーのウィネベーゴ。これは大きな車で小回りが利かないので、うしろにヤマハのオフロードバイクYZ450FXを積んでいる。RV(Recreational Vehicle)パークを拠点にバイクで走り回るというわけ。ちなみに最新のこのバイクは、価格が約100万円、重量115kg。

 そのコルター・ショウが生業としているのは、いわゆる「懸賞金ハンター」である。平たく言えば「賞金稼ぎ」だ。例えば、行方不明の子供を探すのに懸賞金をつけて一般大衆に呼びかける。それに応じてその子を発見すれば懸賞金を取得する。これには二通りのアプローチがある。西部開拓時代の「生死を問わず」式のものと賞金も一度でなく分割払いも受けるという良心的と言えるのもある。コルター・ショウは、良心的な部類に入る。

 行方不明の女性を探すのは、大変な労力がいる。いろんな情報から最後に立ち寄ったカフェを特定し、そのカフェで聞き込みを始めるということもある。マディー・プールと知り合ったのは、「クイック・バイト・カフェ」だった。彼女は任天堂などが発売するゲームに精通していて、行方不明だった女子大学生のソフィー・マリナーの救出にも力を貸した。

 ところが彼女の行動や言質から、ショウは容疑者の一人に加える。そしてマディーの留守中に証拠探しを実行した。しかも、前夜には情熱的な二人の夜を過ごしたというのに。人は間違いを犯す、マディーが犯人などではなかった。証拠探しの最中に、マディーの詰問を受け二人の関係は雲散霧消した。

 いくら有能なショウでも警察権にはかなわない。警察から見る懸賞金ハンターは、うさん臭く感じるだろう。捜査に悪影響も否定できない。幸いショウには、重大犯罪合同対策チームの刑事ラドンナ・スタンディッシュと良好な関係を維持している。

 ラドンナ・スタンディッシュは、黒人でレズビアン、白人のカレンと結婚している。
昇進の早かったスタンディッシュに、男たちからの風当たりはきつい。黒人でレズビアンとなるとまだまだ保守的と言える。

 ショウとスタンディッシュのコンビはピューマと遭遇したり、遊漁船に閉じ込められたエリザベス・チャペルの救出に向かったりと獅子奮迅の活躍ぶり。スタンディッシュが重傷を負うというアクシデントもあったが、ショウが体温が35度以下になる低体温症の危険を冒して、海中からエリザベス・チャペルを救出する成果もあった。

 もう一つ、ショウは大きな事件を解決した。実は、この本の核を占めているのがビデオゲームだ。私は一度も経験がない。アクション/アドベンチャー30%、シューティング22%、スポーツ14%、ソーシャル10%というジャンル別人気度なのだ。

 この中で「ソーシャル」ってどんなゲームなのか知りたくてネットで調べてみた。雪合戦ができるゲーム、蜘蛛恐怖症克服ゲーム、カジノ・シュミレーションそれに体を動かせるトレーニング・ゲームなどなど。しかも記事によると、例えばカジノ・シュミレーションなどはギャンブル依存症が治ったという報告もあるという。

 多彩なゲームを悪用する輩がいる。ナイト・タイムというゲーム会社の創業者トニー・ナイトとゲーム開拓者ジミー・フォイルが、自社配信のゲームを利用してフェイクニュースを流し。そこから金銭的な利益を得ていた。

 手口はロビイストや政治家、政治行動委員会、企業のCEOに接触し、望み通りのニュース――――噂、誹謗中傷、捏造したニュース―――を配信すると持ち掛ける。ゲーマーはゲームを始める前に必ずこれらのニュースを観ることになる。当然法に触れるし、もっとこまるのは政治情勢が一変することだ。

 例えば、アメリカ上院の数は、民主党と共和党が拮抗している。議長が民主党だから現在は有利な位置にいる。フェクニュースによって民主党議員辞職を誘発し、それよって共和党議員が位置を占めれば勢力図が変わってしまう。そんなアコギな人物を葬り去ったのがショウなのだ。

 行方不明者や銃弾を受けた刑事を助け悪徳を社会から排除したが、自らの失策とはいえマディーという女性を失ったことが残念なのだ。

 ショウがバイクでキャンピングカーに戻ってきたとき、自分の車のフロントフェンダーにもたれてビールを飲んでいたマディー。そのマディーが言った。「今夜あなたから電話をもらっていなかったとしても、会いに来るつもりだった。私なりの人生訓があるの。人生は短い。誰かにこんにちはっていうチャンスを逃してはいけない。さよならを言うチャンスも……」二人は短いハグを交わした。マディーの車は尻を振りながら遠ざかっていった。

 これからもこのシリーズが続くだろう。別の女性との短いロマンスも語られるのではないだろうか。そういう余情とともに聴くのは、ショウの愛聴リストにもあるアコースティック・ギターの名手トミー・エマニュエルの演奏だ。

 著者のジェフリー・ディーヴァーは、1950年イリノイ州シカゴ郊外生まれ。ウォールストリートの大手法律事務所勤務の傍ら小説を書き始め、40歳で作家人生に転換する。

 それではショウが好んでいるトミー・エマニュエルの演奏でビートルズの「イマジン」をどうぞ!
こういう演奏はキャンプで焚き火を前にして聴くのもいい。

読書「狙われた楽園Camino Winds」ジョン・グリシャム著

2022-04-10 12:31:01 | 読書
 ノエルは白いリネンのパンツスーツの裾を膝まで巻き上げ、うっとりするほど美しかった。ブルース・ケーブルは20年前から変わらず彼女を敬愛している。美しく、優雅で、おおらかで、上品で、知的な彼女を。

 この二人はお互いに他の相手と寝ることを受け入れるオープン・マリッジを実践していて、ここにきてようやく身を固める結婚式を浜辺で行うことになった。形式ばることもなく牧師でも裸足だった。

 結婚式を行う背景としてノエルのフランス人の恋人がガンで余命いくばくもないこととブルースも45歳に到達、プレイボーイの年貢の納め時もあるのだろう。
 フロリダ州沖にある架空のリゾート地カミーノ・アイランドをハリケーン「レオ」が襲った。壊滅的な打撃を受けたが、復興途上の街の活気を取り戻す意味を含めて結婚式に踏み切った。

 このハリケーンは、ブルースに身近な悲劇を置き土産にした。ハリケーンが去ったあと、ブルースとブルースの書店でアルバイトとして働く大学生のニック・サットンとチェーンソーで木々の枝を剪定していた。巡回中の警官から知らされたのは、ブルースの友人で作家のネルソン・カーが亡くなって身元確認のため現場に来てくれというものだった。

 裏のパティオでネルソンは横たわっていた。検死官の派遣が必要だとして担当の警部は「この現場で留守番していてくれ」と言って去っていった。多くの犯罪小説を熟読しているニックが、ネルソンの頭部の損傷、部屋の様子を調べて「これは事故ではない。殺されたかもしれない」と言う。

 これが端緒となってメディケア(高齢者向け医療保険制度)とメディケイド(低所得者向け医療費補助制度)を悪用する悪徳老人ホーム経営者の恐ろしい実態が暴かれる。認知症で寝たきりの老人に心臓だけが動く薬を飲ませて、死ぬまで政府から金を巻き上げるというもの。

 ハリケーンの後遺症で連邦機関や州、地元も機能するのが遅い。ブルースたちは素人探偵よろしく動くが限界がある。そこで頼ったのが調査会社。この調査会社は、2020年刊「グレート・ギャツビーを追えCamino Island」でも一翼を担った。

 最終的には、FBIの活躍で花を添える。ただ、FBIの部分はトントンと進んでなんの感興もそそられなかった。悪徳老人ホームの問題は、日本にも存在する話だから他人事のようには思えない。

この作品からはいろいろと学ばせてもらった。
①ケイジャン料理「ブラケッド・レッドフィッシュ」この料理は聞いたこともないし食べたこともない。まず、ケイジャン、祖先が北米東部大西洋岸メイン州東部とカナダノバスコシア州に相当する古名アカディア地方に入植したフランス系住民で、最終的にはルイジアナ州南部に永住した。

 その人たちの料理がケイジャン料理。玉ねぎ・セロリ、ピーマンなどを炒めたものが基本となる。主食にコメを多用する。よく知られているのが「ジャンバラヤ」。これは私も自宅で作ることもある。スパイスで美味しい。

 「ブラケッド・レッドフィッシュ」詳細はネットで調べていただくとして、魚の切り身にスパイスをふりかけてフライパンで焼き上げるという料理。

②「FEMAのトレラーハウス」 災害時用の一時的な住宅。日本では仮設住宅を建てるが、アメリカではキャンピングカーの運転席を除いたうしろ部分だけのハウス。これが公園や空き地にずらりと並ぶ。このトレラーハウス、日本でもキャンプ場に設置してアウトドア・ライフに利用されているようだ。

③「オープン・マリッジ」1973年アメリカの社会学者ニーナとジョージのオニール夫妻が「オープン・マリッジ:新しい結婚生活」を発刊、所有欲、独占欲、嫉妬心に妨げられず、自由に恋人を作れる社会的、性的に独立した個を認め合う結婚のスタイルを提唱した。とは言っても、ある調査によれば成人男女のオープン・マリッジの認知度は10%程度とのこと。とてもじゃないが、わたしはついて行けない。

④「チック・リット女性小説」英語のChickは雛鳥を意味し、転じてスラングで若い女性を意味する。Litは、literature(文学)の短縮形。直訳的には「若い女性の文学」といえる。

⑤ここで日米の相続税の違いを知ることができる。アメリカでの相続税は、州と連邦の控除額1千万ドル、現在の為替相場120円として12億円。そして日本、3000万円+(600万円✖相続人の数)なのだ。日米の対比においては、日本はなんかちまちましてるね。重税国と言われても仕方がないかな。

⑥余談になるけれど、作中に登場する女性がすべて美人なのだ。特に男性作家にこの傾向が強い。人のことは言えないけれど、男ってこんなものなのだ。
とにかくどんな本でも、知識の宝庫と言える

ジョン・グリシャムは、まだ67歳。1年に1作のペースで書き続けているから、これからも楽しめる作家ではある。


映画「底知れぬ愛の闇Deep Water」2022年公開アマゾンプライム

2022-04-07 15:31:23 | 映画
 「なんだこの女、いい加減にしろよ!」「おいおい、しっかりしろよ。男だろ!」この映画を鑑賞中絶え間なくこんな言葉を頭の中でつぶやいていた。それは私たちが常識をわきまえているからなのだ。

 この非常識な夫婦にとっては何の問題もない。非常識というより狂った夫婦といえばいいかも。家族は三人。夫ヴィック(ベン・アフレック)。妻メリンダ(アナ・デ・アルマス)娘一人。

 ヴィックはメリンダに「愛しているよ」と言いながら、メリンダがほかの男といちゃついているのを無表情に眺めている。メリンダもそれは承知で大いに羽目を外す。しかし、裏で相手の男に「メリンダがだれだれを殺したんだ。これは確かなことだよ」という。こんなことを聞いて今まで通りメリンダと付き合えないのは確かなことだ。その男は仕事でブラジルに旅立った。

 メリンダがプールで自身のピアノ教師とヴィックの目の前で戯れる。さすがにヴィックの表情が険しくなる。急な雷雨で部屋に引き上げた後、プールに浮かぶピアノ教師。間違いなくヴィックの仕業。いつまでこんなゲームを続けるのだろう。疑問がわいてくる。

 観る人によって感想は大いに違ったものになるだろう。夫婦の寝室は別々。ヴィックが性的不能でメリンダが浮気するのか。あるいは殺人が快感を呼ぶのか。この映画はこれ以上書かないほうがいい。

 一つ言えることは、いつもは眠気に襲われるが、これには全くなかった。ちょっとイライラした気分で観ていた。そして一つだけヒント、夫婦は似るもののようだ。「官能的なミステリー」と謳うキャッチコピー。

ベン・アフレック、1972年カリフォルニア州バークレー生まれ。友人のマット・デイモンと共同で脚本を書いた「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」(1997年)でアカデミー脚本賞受賞、

アナ・デ・アルマス、1988年キューバ生まれ。


読書「大鴉の啼く冬Raven Black」アン・クリーヴス著

2022-04-04 16:03:03 | 読書
 シェトランドでは風が吹いていないと、人々はぎょっとする。ロンドンから北へ960キロのシェトランド島は、風がしょっちゅう吹いていて曇りの日も多い。気温は低いが真夏でも最高気温14~15度、真冬が寒いかといえば最低気温が1.5度から1.8度で関東地方とあまり変わらない。

 人口2万2千人というから、よそ者が行くと馴染むのに非常に時間がかかる。好奇心でgoogleマップのストリートビューを開いてみた。中心の街はラーウィックで、交差点にも信号機がない。風景はイギリスのドラマで見るような丘陵地帯で大きな山がない。樹木は住宅の庭に植える低木を見るだけ。

 架空の村レイヴンズウィックで発生する二つの殺人事件。いずれも若い女性の被害者で、発見者は画家のフラン・ハンター、シングルマザー。

 1月5日は一人娘キャシーの新学期。学校に送り届けたあと自宅近くで海を眺めたとき、早朝のさんさんと降り注ぐ陽光の中で、目の前の光景はくっきりと色鮮やかだった。この風景をキャンバスに、画家の心が動く。ゆっくりと野原を横切っていくと、鮮やかな赤と漆黒の黒が目に入った。やがてそれは真っ赤なマフラーと艶のある黒髪であることが分かった。しかもカラスが目を突いていた。それは、近所のキャサリン・ロスであることがはっきりと分かった。
 別の日、8年前に行方不明になり、泥炭に埋もれていたカトリオナ・ブルースの発見者にもなる。

 捜査は本土インヴァネス暑警部ロイ・テイラーと現場検査官ジェーン・メルサム、加えて地元シェトランド警察署のジミー・ペレス警部と二人の巡査で行われる。ロイ・テイラーが所属する警察暑とジミー・ペレスの警察暑とは、あきらかに格が違いロイ・テイラーが指揮することになる。内心面白くないペレスではあるが、大人げない態度をとることはなかった。

 シェトランドの名物、ヴァイキングの火祭り(アップ・ヘリー・アー)をクライマックスに事件が解決される。多彩な人物の登場によって小さな島の人間関係が浮き彫りになり、思わぬ目撃者の存在を見抜いた島の警部補ジミー・ペレスと本土からのロイ・テイラーがより良き友人関係の構築という微笑ましい結末にも好感が持てる。

 二つ気が付いたことがある。一つは、シングルマザーのフラン・ハンターの元夫が北海油田に係る儲けで富豪となり、来る者は拒まずというフリー・パーティを開いていた。
 多分この設定は、“偶然の機会“を嫌う作家心理からの舞台設定だと思われる。自然な流れの中で犯人が浮上するという一つの機会としてのフリー・パーティ。

 そしてこれがF・スコット・フィッツジェラルドの「グレート・ギャツビー」からのヒントではないかと勝手に思っている。つまりギャツビーは、フリーのパーティを開くことによって、対岸に住む人の妻で元恋人がふらりとやってくるのを期待した。それは報われなかったが。

 もう一つ、シングルマザーのフランがベビーシッターのサリーが来たとき「ワインのボトルがあるわ」と言う場面がある。サリーはまだ高校生、年は18歳だったかな。高校生にワインを勧める? と思ったがふと気が付いて、日本でも今年の4月1日から18歳から成人になるのを思い出した。欧米諸国は1970年代から既に18歳が成人となっている。ワインを勧めてもおかしくはない。日本では20歳までは、アルコールはダメなのだ。

著者アン・クリーヴスは、1954年イギリス、イングランド西部ヘレホードシャー、ヘレホードに生まれる。1986年にデビュー、2006年の本作で英国推理作家協会のCWA賞(The Crime Writers Association)の最優秀長編賞を受賞。著作多数。