言うなればコメディ・タッチの犯罪小説だろう。ジョレイン・ラックス35歳、黒人で魅力的な動物病院の助手は、ロトくじで二千八百万ドル(約三十億円)を射止めた。しかし、当選者はもう一人いた。したがって十五億円を手にすることになる。
ところがもう一人の当選者というのが白人優越論者でトチ狂った野郎のボード・ギャザーだった。この野郎は身長が低いのを三センチ底上げした靴でごまかし、相棒とともにジョレインのくじを強奪する。二人の貧乏白人は、ジャンクフードばかり食べるぶよぶよ男だった。
当選者の取材に訪れていた新聞記者のトム・クロームは、ジョレインに協力して、強奪犯を追う。こういう展開になれば、結末は容易に想像できる。案の定ジョレインは、くじをとり戻す。文庫本とはいえ、上・下八百ページはちと長すぎる。
貧乏白人の一人チャブは、全員巨乳のウェイトレスで有名な「フーターズ」のアンバーに一目惚れして、途中で仲間に加えたコンビニ店員のシャイナーに誘拐させて、フロリダ半島沖の無人島につれてこさせたり、怪しげな聖像に観光客が群がったり、トムの上司がその聖像とカメに癒されたりおまけにシャイナーの母親までもがのめりこむ。
そのほかにもあるが、錯綜しすぎてこの辺でやめよう。ただ、ジョレインの賞金の使い道が野生生物保護のための土地を購入することだった。これは著者の明確なメッセージと受け取って間違いないだろう。
また、通勤電車や出張のときの読み物としては好著といえる。それに「フーターズ」の事を調べていけば、なおニヤニヤ笑いを浮かべることが出来るだろう。
そのフーターズ(Hooters)をウィキペディアから引用すると“ジョージア州アトランタのフーターズ・オブ・アメリカ・インクとフロリダ州クリアウォーターのフーターズ・インクの2社のトレードマークで、アメリカ国内で429店舗、アメリカ国外で19店舗のレストランを運営している。
フーターズは、店舗で働くウェイトレス(フーターズ・ガール)のコスチューム(白地にフーターズのロゴをあしらったタンクトップとオレンジ色のホットパンツ)が有名で、店内で男性客がフクロウのように目をキョロキョロさせることから、この名前がついている(フクロウの「ホー、ホー」という鳴き声を英語で「フート、フート」と表記するためであるが、「フーターズ」には「女性の胸」という意味もある)。
人気メニューは、バッファロー・ウィングとハンバーガー。2006年、ラスベガスでフーターズ・カジノをオープン。カジノ&ホテル業にも進出した”
著者は、1953年フロリダ州マイアミ生まれ。マイアミ・ヘラルドの記者を経て作家になる。