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読書 ガブリエル・ガルシア・マルケス「コレラの時代の愛」

2010-01-29 12:52:14 | 読書

         
 ノーベル賞授与理由に「現実的なものと幻想的なものを結び合わせて、一つの大陸の生と葛藤の実相を反映する、豊かな想像の世界」を創り出したことにあった。という作家の作品。
 恋人に振られてから51年9ケ月と4日も待って、ようやく彼女を手にする。そんな純粋な精神と感情が内包する男を描く。あの若々しかった女性もすでに72歳、あらゆるところに皺が刻まれているが愛していることに変わりはない。
 待ち続けた男フロレンティーノ・アリーサの身辺に女気が一切なかったとは言えない。コロンビアの西部を南から北に流れるマグダレナ川の船旅で、船室に連れ込まれて童貞を奪われてから、あちらの未亡人こちらの未亡人あるいは若い娘とねんごろによろしくやっていた。
 おまけに、年老いたかつての恋人フェルミーナ・ダーサと裸でベッドに横たわっているとき「あの町では本当かどうか分からないことさえ噂になって広まるというのに、あなたの周りには女性の影も見えないと言われているけど、あれはどういうことなの?」という問いに「君のために童貞を守り通したんだよ」とぬけぬけと言い放った。
 彼のくれたラブ・レターは、意味内容ではなく、言葉で人の心を幻惑するような文章で綴られていて、彼の言葉を信じなかったにしてもその心根が嬉しかった。と、フェルミーナ・ダーサに言わせている。
 70歳を過ぎた人生経験豊富な男女にとって、些細な嘘の裏側に潜む真実を洞察する知恵を持ち合わせていた。私のように俗物的関心で読むノーベル賞作家の作品でも女性をどのように描写するのかも関心の一つだ。
 『薄いスリップ一枚でカンバス地のベッドに横たわったリンチ嬢は息をのむほど美しかった。身体全体の造りが大きくて、圧倒的な存在感が備わっていた。セイレーンのような太腿、じっくり時間をかけて焼き上げた肌、ドキッとするほど豊かな胸、透明な歯茎の上に並んでいる美しい歯、全身から立ち上る健康な人間特有の香り』作家の理想や願望がこの中に包含されているのだろう。男性作家は押しなべて作品のどこかに女性を崇めるように描写する。
 海外の作家は、女性を詳細に描写する人が多い。私の読んだ範囲での日本人作家の女性描写は、まるで和食のように淡白な人が多い。正に元来の食生活を反映しているようだ。
 表現と言えば、セックスの描き方だ。人間を描く上でやはりセックスは外せないと思う私にとって重要な関心事だ。マルケスもそういう立場なのだろうか、リアリティを持たせるためか老いたアリーサとダーサの愛の営みを描写している。
 『暗闇の中で彼女が手を伸ばしてきて、彼の腹部や脇腹、毛のほとんどない恥部のあたりを愛撫しはじめたのだ。《まるで赤ん坊みたいな肌ね》と彼女が言った。そのあと、最後の一歩を踏み出した。つまり萎えしぼんだ彼の一物をまさぐったのだ。彼女は別に期待していなかったが、さぐりあてたものはやはりぐんにゃりしていた。「言うことをきかないんだ」と彼は言った』
 おそらく六十代以下の人たちは、想像の域だろう。ところが、同年代となると俄然現実でありほっと安心する部分でもある。安心する部分と言うのは、読み進むうちに70代の男女が愛を確かめる描写を期待していた。期待に応えるかのようにそれはあった。その描写が活力十分で若者のように悶えるというのであればこちらが落ち込んでしまいかねない。そうでなかったので安心だという意味だ。
 この作品が書かれたのは、1985年で著者の57歳の時になる。著者は、「この世で愛ほど難しいものはない」と言う。男女の愛を語る時、どうしても外せないのがセックスだろう。(絶対とは言わないが)70歳を過ぎた男女のセックスをわざわざ描いてあるのはその証左と言える。
 セックスを随所に描いてあるにもかかわらず、下品さもなく会話の少ない記述ながら飽きさせない豊かな想像力に敬意を表したくなる。
 なおこの作品は、‘03『モナリザ・スマイル』’05『ハリーポッターと炎のコブレット』のマイク・ニューウェル監督、‘07『ノーカントリ』で特異な犯罪者を演じたハビエル・バルデムで映画化されている。
 著者は、1928年3月6日コロンビア生まれ。1982年にノーべル文学賞を受賞。ウィリアム・フォクナーを崇拝し、「ある朝、グレゴリール・ザムザが何か気がかりな夢から目を覚ますと、自分が寝床の中で一匹の巨大な毒虫に変わっているのを発見した」という出だしのカフカの『変身』、『お花を買ってくるわ』という出だしのヴァージニア・ウルフの『ダロウェイ夫人』にかなり影響されたという。息子のロドリゴ・ガルシアはハリウッドで映画監督をしている。最近の作品は、アン・ハサウェイの『パッセンジャー』がある。
         
         57歳ごろのガブリエル・ガルシア・マルケス


映画「チェンジリング(‘08)」

2010-01-25 11:08:15 | 映画

 この映画の背景となる1920年代のアメリカは、第一次世界大戦の特需にアメリカは大いに沸いた。アメリカ経済は空前の大繁栄をとげ、戦前の債務国から世界最大の債権国に発展した。
 世界経済の中心はロンドンからニューヨークのウォール街に移った。大衆の生活は大量生産・大量消費の生活様式が確立する。一般には「黄金の20年代」と呼ばれ自家用車やラジオ、洗濯機、冷蔵庫等の家電製品が普及した。
 1920年には女性への参政権が与えられるようになった。ベーブルースによる野球人気やチャップリンの映画、黒人音楽のジャズなどのアメリカ的な文化が開花した。一方で1919年に制定された禁酒法によってアル・カポネなどのギャングが夜の帝王として街を支配するようになった。(以上ウィキペディアから引用)
 そんな中、ゴードン・ノースコット事件いわゆる連続少年拉致殺人事件、別名ワインヴィル養鶏場連続殺人事件が起こり、それを題材にクリント・イーストウッドがアンジェリーナ・ジョリーを起用して映画化した。
 このチェンジリング(取替え子)は、1928年の春電話局のオペレーター主任クリスティン・コリンズ(アンジェリーナ・ジョリー)の9歳の息子ウォルターが突然姿を消すところから始まる。
 捜査の結果ウォルターを見つけた警察は、新聞記者を集め大げさな母と息子の対面場面を演出した。しかし、列車から降りてきた子供はウォルターではなかった。動揺するクリスティンにJ・J・ジョーンズ警部(ジェフリー・ドンヴァン)は、「動揺するのももっともだ。落ち着けば自分の子供と分かるだろう」と言って強引に母と息子のツーショットを撮らせる。
 当時のロサンジェルス市警は、暴力、虐待、殺人、買収、汚職、たかりや脅しなどで腐敗のどん底に陥っていた。市警は威信回復のために成果を急いだ。
 自分の子供でないことの一つに柱に刻まれた背の高さのしるしがある。渡された子供は、そのしるしより遥かに低い。それを言っても警部は聞く耳を持たず、言動に常軌を逸しているとして精神病院に強制収容する。
 ロサンジェルス市警の腐敗を糾弾しているブリーグレブ牧師(ジョン・マルコヴィッチ)が救援に乗り出す。そしてゴードン・ノースコット事件が発覚、ウォルターの死が確実になった。しかし、その後同じ行方不明の家族のもとに息子が帰ってきた。その息子の証言は、ウォルターを含めた三人が夜中脱走した。そして散り散りになった。
 クリスティンは、それならどこかで恐怖におびえながら息を潜めて生きているという希望を持った。クリスティンはその希望を抱きながら生涯を送った。
 かなり重い映画だった。画面も陰影をつけてあって時代を表現しているのだろう。それにしても女性の真の強さを見せられた思いだ。男は簡単に「母は強し」と言うが、虚勢を張っている男に真の強さが分かるのか。
 かなり昔に私は鼻茸の摘出をしてもらったが、鼻茸をむしりとるわけでかなりの出血がある。そのときの女医が言った。「男の人は、血に弱いのよ。すぐ青い顔になる」
 1920年代を色濃く描くこの映画のアンジェリーナ・ジョリーは、セクシー女優と一線を画した出来栄えだった。ブラッド・ビッドと共演の「Mr&Mrsスミス」がつまらなかったので期待はしていなかった。イーストウッドがうまく彼女を引き出したようだ。
 精神病院の場面は、言い知れぬ恐怖に襲われる。まともな人間が入れられるという恐怖と、どんなに弁じてもことごとく曲解される言葉の恐怖が「クリスティンを早く助けて!」と叫ばせる。
 もう一つ恐ろしい場面。子供を誘拐して殺した犯人(ジェイソン・バトラー・ハーナー)の絞首刑の処刑場面である。それをまともに映像として捉えてあると思わせる。首に巻いた縄が伸びきり地上数センチの空間に脚が苦しみに飛び跳ねやがて治まっていく。
 一方でイーストウッドは面白い演出をしていた。年代を表す小道具にラジオ放送を使う手だ。ベーブルースが53本目のホームランを打ったということとアカデミー賞授賞式の実況で「ある夜の出来事」が作品賞に選ばれたということ。
 ベーブルースは、1928年でこの年54本のホームランを打った。「ある夜の出来事」は1934年で、事件から5年が経っていた。そして、黄金の20年代の繁栄を画面の隅々に取り入れてあった。
 この映画を見始めて終わったのが夜中になっていた。この重い映画は、なかなか寝付けない作用までしてくれた。
 監督・音楽クリント・イーストウッド。音楽は、息子のカイル・イーストウッドが編曲を担当。ピアノの旋律が心地よい。
 アンジェリーナ・ジョリー1975年ロサンジェルス生まれ。父に「真夜中のカウボーイ」のジョン・ヴォイドを持つ。‘99「17歳のカルテ」でアカデミー助演女優賞を受賞。
 ジョン・マルコヴィッチ1953年イリノイ州クリストファー生まれ。
 ジェフリー・ドンヴァン1968年マサチューセッツ生まれ。
 ジェイソン・バトラー・ハーナー1970年生まれ。
        
        
        アンジェリーナ・ジョリー
        
        
        ジェフリー・ドンヴァン
        
        ジェイソン・バトラー・ハーナー



映画「レイチェルの結婚(‘08)」

2010-01-21 11:11:28 | 映画

 今、ノーベル賞作家ガブリエル・ガルシア・マルケスの「コレラの時代の愛」を読んでいてその中に「この世で愛ほど難しいものはない」というくだりがあるが、正に至言だと思う。 この映画も家族の愛をきれいごとでなく正面から見つめて私たちに語りかけてくる。愛とは何か? 理想的な家族なんで一切ないし、殆どの家族も苦しみの中でなんとか生きながらえようと日々を送っている。
 麻薬矯正施設に入っているキム(アン・ハサウェイ)は、姉レイチェルの結婚式に参列のため一時帰宅を許される。家族はキムの言動に不安を覚えていてぴりぴりとした雰囲気が漂う。そして、レイチェルやキムの悩みが赤裸々に語られていく。
 ‘04「ブロークバック・マウンテン」でアン・ハサウェイを見て印象に残り、’06「プラダを着た悪魔」での秘書役でもっと注目した。アン・ハサウェイ目当てで借りたDVDは裏切らなかった。
 結婚式前夜のパーティで、キムのスピーチの場面。席についている人々が、一瞬シーンとなりキムをはらはらと見ている。キムは喋りながら涙ぐむが、すぐ立ち直っていきキムのスピーチが終わったときほっとした雰囲気が流れた。それまでの賑わいの場面から、緊張した場面へとつながりそして解放された安堵感が漂う場面がドキュメンタリータッチで描かれる。
 それにしてもアン・ハサウェイの涙声から立ち直る台詞回しは彼女の実力を示している。この台詞回しは、アン・ハサウェイに限らない。姉役のローズマリー・デウィットも同様の実力者と見受ける。
 ほかに注目したのは、レイチェルの夫が黒人であること。しかも、レイチェルの父の再婚相手も黒人という按配。この頃、映画の中で白人と黒人の恋人や夫婦という組み合わせをよく見かける。アメリカ社会がそういう流れの中なのだろうか。私にはよく分からないが、いずれ白とか黒とかいう時代は過去のものになるのだろう。
 何十年先にせよ、やがて日本も単一民族国家からの脱却が実現するかもしれない。映画を観ていてこんなことを考えていた。
 なお、この映画で‘08アカデミー主演女優賞に、アン・ハサウェイがノミネートされた。この脚本は、シドニー・ルメットを父に持つジェイミー・ルメット。

監督ジョナサン・デミ1944年ニューヨーク州ロングアイランド生まれ。‘91「羊たちの沈黙」で世界的大ヒットを記録。’93「フィラデルフィア」で社会派作品に挑んだ。
脚本ジェニー・ルメット1967年ニューヨーク生まれ。父シドニー・ルメットは、1924年フィラデルフィア生まれ。‘57「十二人の怒れる男」が大ヒット。最近では、’07「その土曜日、7時58分」の評判がいい。
アン・ハサウェイ1982年ニューヨーク市ブルックリン生まれ。‘04「ブロークバック・マウンテン」’06「プラダを着た悪魔」
ローズマリー・デウィット1974年ニューヨーク市クイーンズ生まれ。
デブラ・ウィンガー1955年オハイオ州クリーブランド生まれ。‘82「愛と青春の旅立ち」’83「愛と追憶の日々」それぞれでアカデミー主演女優賞にノミネートされた。
        
        アン・ハサウェイ
        
        左端 アン・ハサウェイ 中央 ローズマリー・デウィット

映画「3時10分、決断のとき(‘07)」

2010-01-18 11:49:56 | 映画

 久々に骨太の西部劇を観た。大体西部劇というのは、男くさい映画でひげ面で汚れていて、景色も干からびて乾いた砂の匂いがする。ここで描かれるのは、男の存在価値であって、女性は添え物に過ぎない。この辺も女性が敬遠する理由であり、この映画も女性好みの映画ではない。と、あるサイトで書いたところ、コメントを戴いたのは女性だった。私は男の思い上がりを、痛く反省した。
 小牧場主のダン(クリスチャン・ベイル)は、借金に苦しんでいて、貧乏な生活に妻や息子たちからも蔑みの目で見られていた。妻は借金は済んでいると思っているが、実は一部の返済に過ぎない。牛の餌や水、それに末っ子マークの薬代が必要だった。納屋を焼かれ牛も失いこの土地が抵当流れの危機に直面していた。
 駅馬車襲撃の現場に遭遇して早撃ちガンマン、ベン・ウェイド(ラッセル・クロウ)と出会い、おまけに酒場で逮捕されたベンを200ドル欲しさにユマ行きの列車に乗せるために護送することになる。この護送と列車の発車時刻3時10分前の駅舎でのダンとベンのやり取りがベンの琴線に触れるクライマックスとなる。
 ダンは北軍の元狙撃兵で脚に負傷している。ベンが問いただしても口を開かなかったが、駅舎で首を絞められながら言うダンの言葉。「誇るものが何もない。この脚だって退却のとき味方に撃たれた。事実を話したら息子たちはどう思う?」ベンの手が緩められた。男は誰だって、誰にも言えない負い目を抱えひたすら男であることを忘れまいとしている。
 この悪党だって心の奥に何を抱えているのか知る由もない。「ワルには非常さと瞬時の決断が必要だ。俺は殺人を躊躇しない」と言うベンという男。そのくせ聖書を精読していて、おまけに拳銃の銃把には、キリストの磔刑が彫られてある。
 列車が構内に入ってきて、囚人用貨車にベンを乗り込ませた。「よくやった!」ベンの言葉が終わらないうちに、ベンの子分チャーリー(ベン・フォスター)の銃弾がダンを倒していた。車外に出たベンに拳銃が渡された。銃把の磔刑を見たベンは、いきなりチャーリーと子分たちを撃ち殺す。おそらく心の中で、キリストの名に於いてと叫びながら引き金を引いたのだろう。まさに男の挽歌である。
 父を追っていた息子ウィリアムが駆け寄って瀕死の父に「尊敬するよ」。ダンは微笑んだ。正しいことを命をかけて子供に教えること、身をもって示したことに満足したのだろう。ベンは囚人用貨車に戻り、拳銃を渡した。列車は雪原の彼方に消えようとしていて、車内のベンが口笛を吹いた。瞬間に愛馬が列車を追っていった。
 さて、私はベンがすんなりとユマの刑務所に行ったのか、あるいは愛馬に乗り姿を消したのか図りかねている。むしろ愛馬とともにいずこともなく姿を消し、再び悪党の首領として暴力の美学を貫いて欲しい気もする。おそらく、これは観客に委ねられたエンディングなのだろう。クールな悪党ラッセル・クロウは、凄みにチョット欠けるが精一杯演じている。
 ダンの息子ウィリアム役のローガン・ラーマンの印象は、今後伸びる予兆を見た。老いたピーター・フォンダも好演していた。「ワイルド・バンチ」のヴァイオレンス、「ハイ・ヌーン」の孤独を連想させて、余情の残る映画だった。(残念ながら、わたしは古い映画の引用しか出来ない)

 監督ジェームズ・マンゴールド1964年ニューヨーク生まれ。‘05年「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」で、主演のリース・ウィザースプーンがアカデミー主演女優賞を受賞。
         
         右からラッセル・クロウ クリスチャン・ベイル 
         
         右からラッセル・クロウ ベン・フォスター
         
         右からクリスチャン・ベイル ローガン・ラーマン

ラッセル・クロウ1964年ニュージーランド、ウェリントン生まれ。
 クリスチャン・ベイル1974年イギリス、ウェスト・ウェールズ生まれ。
 ローガン・ラーマン1992年生まれ。
 ベン・フォスター1980年ボストン生まれ。
 ピーター・フォンダ1939年ニューヨーク生まれ。「イージー・ライダー」が印象的。父にヘンリー・フォンダ、姉ジェーン・フォンダ、娘ブリジッド・フォンダ。

映画 「扉をたたく人(‘07)」

2010-01-14 11:38:02 | 映画

 この映画も「退屈しなかった」。コネチカット州の大学で教鞭をとるウォルター(リチャード・ジェンキンズ)は、妻を亡くしてから覇気をなくしていて、いつもの内容、いつもの話し方、いつもの手順でいつもの時間に終わる講義を繰り返していた。
 ところが気の進まない論文の発表のため、ニューヨークの自宅アパートに戻ってみると、そこには賃貸アパート詐欺(こんな犯罪があるのだろうか)にかかった見知らぬ二人がいた。シリア出身のタレク(ハーズ・スレイマン)とセネガル出身のゼイナブ(ダナイ・グリラ)の不法滞在者だった。
        
 二人は荷物をまとめて出ていくが、見かねたウォルターは引き留める。次第にお互いを理解しあいジャンベ(アフリカン・ドラム)奏者のタレクが、叩き方を教えていく。ある日二人は地下鉄駅で無札入場を咎められ、9.11以降のアラブ系への監視を強めていた警察は、タリクを逮捕、拘留した。
 毎日のように拘置所を訪れるウォルター。そこへ息子を探して母モーナ(ヒアム・アッバス)が偶然訊ねてくる。(映画の中ではまさに偶然で、不自然な気がする)タレクの恋人ゼイナブに会わせたり、「オペラ座の怪人」を鑑賞したりしてウォルターとモーナの心にほのかに燃えるものが芽生える。
        
 しかし、タレクは強制送還されてしまう。母モーナも息子のいるシリアに戻る決意をする。空港での別離のシーンは、淡々としていて涙がぼろぼろと流れる大げさなものではなかった。ゲートに向かうモーナが、振り返ってウォルターを見つめるのもごく自然で、観る者の心を揺さぶる。
        
 タレクもモーナもいなくなったが、地下鉄駅構内でジャンベを一心に叩くウォルターの姿は、閉ざしていた心の扉がようやく開かれたことを示していた。なお、この映画でリチャード・ジェンキンズは、アカデミー主演男優賞にノミネートされた。
 
監督トム・マッカーシー1969年ニュージャージー州生まれ。俳優としての出演が多くこれが監督二作目。
リチャード・ジェンキンズ1947年イリノイ州生まれ。本作でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされる。
ヒアム・アッバス1960年イスラエル生まれ。
ハーズ・スレイマン、レバノン生まれ。
ダナイ・グリラ、アイオワ州生まれ。

簡単燻製作りに挑戦!

2010-01-09 14:01:41 | 料理

 ダンボール燻製器でベーコン作りに挑戦したが、甘味のあるベーコンに不満があって簡単お手軽燻製作りをインターネットで検索、早速挑戦してみた。
 今回は値段の安い鳥の手羽とスーパーの安いベーコンを再燻製をする。(この再燻製は、人から教えてもらったもの) 
 手羽は塩(目方の4~5%)と砂糖(塩の1/3)それにブランデーをどぼどぼと振りかける。それを24時間冷蔵庫で寝かせる。24時間後、水洗いして塩味を見る。塩辛ければ塩出し。そして24時間乾燥。(わたしはダンボール燻製器に吊るした)
 そしていよいよ燻製。今回は、中華鍋を使用。アルミ箔二枚を重ね、そこにサクラのチップとヒッコリーのチップを一掴みずつ混ぜ合わせ、その上に100円ショップで買った24センチの丸網をのせる。屋外に置いたカセットコンロで3分ほど強火で燻し、後は火を小さくして1時間の燻製を行った。
 手羽が終わった後市販のベーコンを何の手も加えずに30分燻した。さて問題の味、手羽は乾燥しすぎて皮が硬い。肉は程よい塩味とブランデーと燻煙の風味で、お酒(ウィスキーなどの強いもの)のおつまみに最適。ベーコンの再燻製もおいしくできた。
 簡単燻製作りは、ひとまず成功だった。手羽の乾燥を半分の時間でもう一度挑戦の予定。それに、とり胸肉をおいしく食べたいので、これも燻製にしたい。今日スーパーで見たが、胸肉は2キロ500円ぐらいだった。
        
        風除けのダンボールを囲い乾燥した手羽を網に置く
        
        蓋をして一時間ほど待つ
          
          出来上がりの手羽




映画 「消されたヘッドライン(‘09)」

2010-01-08 17:16:17 | 映画

 私の映画を評価する基準に、「退屈したか、しなかったか」があってこの映画は「しなかった」だった。二つの殺人事件が交わるとき、巨大な陰謀に加担していた親友を告発することになるとは。
         
         ベン・アフレック(左)とラッセル・クロウ
 ワシントン・グローブ紙の敏腕記者カル(ラッセル・クロウ)とウェブ版担当だったデラ(レイチェル・マクアダムス)が事件を追う。
         
         左からヘレン・ミレン レイチェル・マクアダムス ラッセル・クロウ
 カルの親友コリンズ議員(ベン・アフレック)は、自身の調査員だった女性が地下鉄構内で事故死する。しかも愛人関係にあったことが判明する。ショックを受ける妻アン(ロビン・ライト・ペン)。
         
         ラッセル・クロウとロビン・ライト・ペン
 しかし、カルとアンはかつて不倫関係にもあったという複雑な様相を見せる。
 しかも事故死が殺人事件の様相も見せ始める。ベテランの俳優を揃えてあって、期待を裏切ることはない。この映画は、イギリス、BBC製作のTVシリーズ「ステート・オブ・プレイ~陰謀の構図」を劇場版にリメイクしたものだという。テンポのいい展開は、観る者を飽きさせない。ロビン・ライト・ペンは、好きなタイプの女優だ。

監督ケヴィン・マクソナルド1967年スコットランド、グラスゴー生まれ。

ラッセル・クロウ1964年ニュージランド、ウェリントン生まれ。‘00「グラディエーター」でアカデミー主演男優賞受賞。’01「ビューティフル・マインド」でもノミネートされた。

ベン・アフレック1972年カリフォルニア、バークレイ生まれ。‘97「グッドウィル・ハンティング/旅立ち」でブレイク。

レイチェル・マクアダムス1976年カナダ、オンタリオ生まれ。

ヘレン・ミレン1945年ロンドン生まれ。’06「クイーン」でアカデミー主演女優賞受賞。

ロビン・ライト・ペン1966年テキサス、ダラス生まれ。‘94「フォレスト・ガンプ/一期一会」で注目される。

ベーコン作り(2)

2010-01-04 13:24:02 | 料理

 昨日(1月3日)、ダンボールの燻製器で燻製に取り掛かる。午前9時ごろから始めて、午後1時まで約四時間途中で温度を70度以下に保つため、その調節に目が離せない。調節といっても上蓋を開け閉めするだけ。風は冷たいが、好天に恵まれて順調に作業が進んだ。
         
         ダンボールに吊るしたところ、S字フックは家庭用で間に合わせた。
            
         七輪の上にアルミホイールを二・三枚重ねてもいいらしいが、
         わたしは、古いガスレンジ・カバーを使用。サクラとヒッコリーの
         チップをミックス、上からブランデーと水を少々振りかけた(マニュアルどおり)
               
          みかん箱二個を積み上げテープで固定。一番下に空気取り入れ口を作る。
          天辺をダンボールで蓋をする。

          
          出来上がったベーコンは、少し甘い。これは一週間漬け込んだ液に100gの
          砂糖を入れたため。全体としてまずまずの出来か。
          次回は、もう少しベーコンらしく仕上げてみたい。
          
          ハラスも油がかなり残っていて、乾燥不足と思う。これも次回の課題となった。
          味は悪くない。色がもう少し黒っぽいのがいいかもしれない。

ベーコン作りの挑戦!

2010-01-02 13:15:11 | 料理

 前月26日(土)豚ばら肉1キロを買って、すでに買ってあった岩塩の塊を金槌で砕いた50gと粒ホワイトペッパーを挽き、さらにニンニクふた欠けをすり込んだものに、ぴっクル液につけて一週間冷蔵庫で保管。
 そして今日それを塩出しして、バットに並べて冷蔵庫で24時間乾燥。ベーコンだけでは物足りないと、スーパーでスモークサーモン・ハラスも買う。こちらは、目方の3gほどの岩塩と1gの砂糖、それにローズマリーとこしょうをすり込んでラップをして24時間冷蔵庫でなじませる。ということで明日燻製作りに取り掛かることになる。
         
          ピックル液に漬けてあったもの
         
          水洗いのあとボールに水を張って塩出し中。
          10分から20分ののち、少し切ってフライパンで焼いて塩味と確かめた。
          薄いくらいがいいそうだ。  
         
          キッチンペーパーでよく拭いてラップをしないで冷蔵庫で乾燥。
          冷蔵庫で乾燥させるのがいいのかどうか定かでない。扇風機で乾燥とも書いてある。
         
         スモークサーモンのハラス、ラップをして冷蔵庫で寝かす