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「マクマフィアMcMafia」アマゾンビデオ

2018-02-19 20:56:12 | 海外テレビ・ドラマ

         
 BBC one(英国放送協会)、AMC(アメリカの衛星テレビ、ケーブルテレビのチャンネル)、Cuba Pictures共同制作で、ロシアマフィアの一家を描く。

 父ディミトリ・ゴッドマン(アレクセイ・セレブリャコフ)は、15年前に引退したロシアマフィアの大物だった。その息子アレックス(ジェームズ・ノートン)は、家業を嫌いまともなゴッドマン・キャピタルという投資銀行をロンドンで運営している。

 「ゴッドマン・キャピタルは、ロシアと取引」「投資会社が制裁対象国と取引、FCA(金融行動監視機構)が調査」ネット上でフェイク・ニュースが飛び交う。顧客が離れる兆し。

 調査の結果、このニュース源はなんと父の弟ボリス(デヴィッド・デンシック)だった。抗議のため屋敷を訪れた時、叔父のボリスはロシアからの訪問者に首を切られて殺害される。それを目の当たりにしたアレックスは、全力で逃げる。叔父がなぜ殺されたのか。KGB出身のマフィア、ヴァディム・カリャーギン(メラーブ・ニニッゼ)をムンバイで爆死を企てたからだ。一命を取り留めたヴァディムの復讐だった。

 好むと好まざるとにかかわらず、アレックスはギャングの抗争に巻き込まれていく。イスラエル人の海運業とナイトクラブ経営のセミヨン・クレイマン(デヴィッド・ストラザーン)やハーバードの同級生と名乗る男の出現。また、ロシアの官僚機構もまるでギャングといってもいい。ヴァディムとの手打ち。しかし、これは表向きでヴァディムの真意はアレックス抹殺だった。アレックスの婚約者レベッカ(ジュリエット・ライランス)は、アレックスの変化につて行けず距離を置き始める。

 8話まである物語の随所に山があって、最終的にはアレックスがヴァディムを射殺する。バンカーのギャングが出現する。レベッカからの着信を無視するアレックス。この続きがありそうな気がする。

 要するにギャング映画ではあるが、家族の苦悶も描出され、家族のドラマとも言える。地味なネクタイにスーツのバンカーが行うクライムシーンを堪能した。どこにでもいる普通の男の非情さが鮮烈。

 「マクマフィア」の題名が面白い。McはマクドナルドのMc。マックを凌駕するにはどうすればいいか。経済学的考察からギャングの勢力拡大策に触れているから見てのお楽しみ。
  
キャスト
ジェームズ・ノートン1985年7月イギリス生まれ。
デヴィッド・ストラザーン1949年1月カリフォルニア州サンフランシスコ生まれ。2005年「グッドナイト&グッドラック」でアカデミー主演男優賞にノミネート。
アレクセイ・セレブリャコフ1964年6月ソ連、モスクワ生まれ。
デヴィッド・デンシック1974年10月スウェーデン生まれ。
メラーブ・ニニッゼ1965年11月ジョージア生まれ。
ジュリエット・ライランス1979年7月イギリス生まれ。

海外テレビドラマ「SUITSスーツ シーズン6」ニューヨークの大手法律事務所に起こる悲喜劇

2018-02-17 16:33:59 | 海外テレビ・ドラマ

      
 シーズン5でマイク・ロス(パトリック・J・アダムス)が無資格での弁護士活動の罪で刑務所に入るところで終わった。その影響でニューヨークにあるピアソン・スペクター・リッツ法律事務所は、アソシエイトたちが離れて行って重大な局面を迎える。

 マイク・ロスの無資格も非難されるべきだが、それを知りながら採用したハーヴィー・スペクター(ガブリエル・マクト)も同罪で弁護士資格はく奪は免れないという現実をマイク・ロス入獄の犠牲で難を逃れているのが実情だった。ハーヴィーをなんとか陥れようとするのが検事補のアニタ・ギブス(レスリー・ホープ)。

 それでもハーヴィーは、マイクを助け出そうと奔走する。妨害や嫌がらせの難関を切り抜けようやくマイクを出所させる。そして、この事務所のコンサルタントとして働けという。マイクはいちから出直して人助けをしたいから別の道を歩むと言って断る。

 しかし、世の中甘くない。前科が何かにつけて纏わりつく。地区の教会の牧師のすすめで不良少年の高校生に教える教師をするが、父兄から前科があることで抗議の声が起こりその教師の職も諦めざるを得ない。何十という面接も前科が大きな壁となる。

 そんなある日、法律相談所からの誘いを受けた。法律相談所は、庶民の民事を主に扱う。アパートの入居者が大家がするべきことをしないので、家賃を払わないで訴えるなどの案件を善導して解決するなどがある。そんな仕事でも弁護士資格のないマイクでは法廷に立てない。

 法律相談所には、所長以外にオリヴァー(ジョーダン・ジョンソン・ハインド)が弁護士資格を持つ。ただこのオリヴァー、経験が浅くしかもあがり症で法廷では役に立たない。しかし、調査や資料:訴状作成には長けている。

 そのオリヴァーが持ってきたのがヴェロシティ社が採掘事業の健康被害案件だった。集団訴訟に格好の案件。このヴェロシティ社は、ピアソン・ハーヴィー・リッツ法律事務所が狙う案件でもあった。ハーヴィーはマイクからの話を受け「叩きつぶそう」と共同戦線を張る。ついでにマイクの弁護士資格審査も通そうとする。これは別の手を使って。

 ピアソン・ハーヴィー・リッツ法律事務所にも変化が起きていた。もともと事務所を開設したジェシカ・ピアソン(ジーナ・トーレス)は、パートナーを降りて恋人の検事とシカゴに行ってしまった。今はハーヴィーとルイス・リット(リック・ホフマン)の二人のパートナーしかいない。

 全員一致が原則の資格審査員に仇敵とも言える検事補のギブスが立ちはだかる。マイクの無資格をハーヴィーが知っていたかが問われる。マイクが否定すれば自らの詐称となり、弁護士資格は永遠にとれない。岐路に立たされたマイクとハーヴィー。

 その審問の時、「私が知っていた」と発言したのがジェシカ・ピアソンだった。ジェシカはすでにシカゴ在住、弁護士資格剥奪の対象ではない。別の手と言うのは、密かにハーヴィーはジェシカを呼んでいた。これが奥の手。これでマイクは晴れて弁護士となる。

 ヴェロシティ社の案件も法律相談所と共同で対処することになり、マイクはハーヴィーの部屋を譲り受けることになる。いよいよハーヴィーとマイクの強力なタッグが法廷で切りまくるだろう。すでにシーズン7・8も完成。

 マイクの婚約者レイチェル(メーガン・マークル)とハーヴィーの秘書ドナ(サラ・ラファティ)の存在も大きい。ドナの的確なアドヴァイスは、しばしば正常な軌道に乗せる。マイクを温かく見守るレイチェル役のメーガン・マークルは、英国ハリー王子との婚約で話題をさらった。結婚式は2018年5月17日、ウィンザー城にある聖ジョージ礼拝堂で行われる予定。2017年5月16日から2017年8月29日までWOWOWで放映。
   
キャスト
ガブリエル・マクト1972年1月ニューヨーク市ブロンクス生まれ。
パトリック・J・アダムス1981年8月カナダ、トロント生まれ。
リック・ホフマン1970年6月ニューヨーク市生まれ。
メーガン・マークル1981年8月ロサンジェルス生まれ。
サラ・ラファティ1972年12月コネチカット州生まれ。
ジーナ・トーレス1969年4月ニューヨーク市生まれ。
レスリー・ホープ1965年5月カナダ生まれ。
ジョーダン・ジョンソン・ハインド1989年11月カナダ、トロント生まれ。

「未来よ こんにちは」ある女性の50代後半の断片を静かに描写 2016年制作 劇場公開2017年3月

2018-02-15 16:22:04 | 映画

       
 主演のイザベル・ユペールがしょっちゅう動きまわる画面の連続。高校で哲学を教えているナタリー(イザベル・ユペール)は、50代後半子どもたちはすでに独立している。夫も哲学の教師。その夫からいい人が出来たからその人と暮らすと告げられる。

 戸惑いながらも認知症の母の世話や本の出版について健気に振る舞う。そして、まったくの自由を手にしたことを悟る。人生のある断面を切り取って日常の中の生きる情景を穏やかに描きだす。

 これと言う変化のない画面がつづくがイザベル・ユペールのさりげない演技で退屈はしない。エンディングに近づくとBGMは、Oh, My Love, MY Darlingで始まる「UNCHAINED MELODY」が流れる。

 フランス映画といえども時折アメリカのオールディズが流れることもしばしば。この映画でも途中、ウッディ・ガスリーの曲を口ずさむ。

 「Unchained Melody」は1955年の刑務所映画「アンチェインド」の主題歌として作曲された。したがってunchainedを鎖に繋がれずに解放されるという意味になる。この映画の場合は、離婚はされたけど、解き放たれたと重ねられる。それではライチャス・ブラザースでどうぞ!
   
unchained melody lyrics the righteous brothers

監督
ミア・ハンセン=ラヴ1981年2月パリ生まれ。本作で2016年ベルリン国際映画祭で銀熊賞(監督賞)受賞。

キャスト
イザベル・ユペール1953年3月パリ生まれ。2016年「エルELLE」でアカデミー賞主演女優賞にノミネート。
アンドレ・マルコン1948年7月生まれ。
ロマン・コリンカ1986年9月パリ生まれ。

「光をくれた人」ひっそりと灯台守に身を潜めていたが 2016年制作 劇場公開2017年5月

2018-02-13 20:24:54 | 映画

         
 第一次世界大戦に従軍し辛酸をなめ生きる希望をなくしたトム・シェアボーン(マイケル・ファスベンダー)は、孤島の灯台守を望んだ。「独身では寂しさに耐えられるか」と危惧されたが、前任者の病状が回復するまでの期限付きで務めることになる。

 果てしなく広がる大海原に対峙するかのように灯台は白く輝いていた。何の遮るもののない灯台は、強い風が吹き荒れ大きな波が眼下で叩きつけられる。穏やかな日は数えるほどしかない。数週間後、本土で聞かされたのは「前任者が自殺した」ことだった。長期の灯台守に決まった。

 うまいことに高校教師の娘イザベル(アリシア・ヴィカンダー)と恋に落ち結婚。外は荒れていても、このスイートホームで二人は幸せだった。ところが二度の流産という不幸に見舞われる。

 そんなある日、海岸にボートが漂着する。男が一人と赤ん坊だった。男は死んでいたが、赤ん坊は生きていた。事情を連絡しようとするトムにイザベルは、私が育てたいから報告しないでくれと懇願する。赤ん坊は女の子でルーシーと名付けられ、どんどん成長してますます可愛くなる。二人ともメロメロ。しかし、トムの中では良心の呵責が悩ましい。

 やがて生みの親が誰かが分かる。地元の裕福な家庭のアナ(レイチェル・ワイズ)だった。生みの親と育ても親のそれぞれの葛藤。一方が喜べば、片方は悲しむ。しかし、正当な権利を持つアナに渡すしかない。

 月日は流れひょっこりと訪ねてきたのは、成長して子供までもうけたルーシーだった。またの来訪を約束して帰って行ったルーシーをイザベルに見せたかったが、すでに他界していた。暮れなずむ夕日を眺めながらトムは何を思う。
 「生きる希望の光をくれたイザベル、さらにルーシー、俺の人生もまんざら悪くなかったんだ。またルーシーが来るのを楽しみにしよう」ラスト数分は涙が流れるかもしれない。

 本作は、第73回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門で上映された。製作費2千万ドル。興行収入約3700万ドル。
  
監督
デレク・シアンフランス1974年1月コロラド州生まれ。

キャスト
マイケル・ファスベンダー1977年4月ドイツ、ハイデルベルク生まれ。
アリシア・ヴィカンダー1988年10月スウェーデン生まれ。2015年「リリーのすべて」でアカデミー賞助演女優賞受賞。
レイチェル・ワイズ1970年3月ロンドン生まれ。2005年「ナイロビの蜂」でアカデミー賞助演女優賞受賞。

「殺意の誓約」娘を愛するあまり殺人まで犯したが……アイスランド2016年制作 

2018-02-11 15:53:15 | 映画

          
 アイスランド映画を観るのは初めてだ。北欧のテレビドラマや映画を観て寒々として曇っていたりするから、この映画の一面雪の画像にも「やっぱり寒そう」というだけだった。北極圏に近いから文字通り凍える国なんだろう。しかし、2月の最低気温がマイナス3度というからそれほど寒くない。北海道あたりと思えばいいかも。

 北海道と四国を合わせた程度の広さで軍隊を持たない希少な国家であり捕鯨賛成国でもある。そしてオーロラ観光の適地。その冷えびえとした風景の中に親子の情がホット。

 優秀な外科医フィンヌル(バルタザール・コルマウクル)にとって娘アンナ(ヘラ・ヒルマー)が悩みの種。悩みの種ぐらいならまだしも彼氏と言うのがオットー( ギスリ・オルン・ガルザルソン)という男でしかも麻薬の売人。警察に密告したせいで家族の安全を脅かす脅迫を受け殺人を決意する。殺し方は医者らしく薬物によるものだった。

 鎮静薬のミタゾラムとジアゼパムを混ぜて点滴の袋に入れると「意識は徐々に失われる。数日後には血行不良で神経機能が低下痛みは消える。やがて床ずれがやってくる。体の重みが皮膚を裂けるまで切迫するようになり痛みが戻ってくる。耐え難い痛みだ。俺は痛みのあまりモルヒネを懇願する患者を見てきた。抗生剤は効かず傷口が感染し、お前は生きたまま腐り始める。やがて皮膚が腐っていく臭いとともにハエやウジ虫が皮膚を食い破って侵入してくるだろう」

 日常的に使われているこの薬が、混ぜればこんな状態になるのだろうか。フィンヌルの脅し文句なのだろう。それに恐怖を抱いたオットーの狼狽と逃れる術を探すのが緊迫。

 犯罪と言うのは小さなほころびが真実を明かす。アンナを取り戻そうとしたが、真実を見抜かれ娘は去っていく。皮肉な運命の悪戯。ワールド・エクストリーム・シネマ2017で上映
  
監督
バルタザール・コルマウクル1966年2月アイスランド生まれ。アクションやミステリーでハリウッドでも手掛ける。2013年「2ガンズ」、2015年「エバレスト3D」など。脚本も担当。

キャスト
バルタザール・コルマウクル 
ヘラ・ヒルマー1988年12月アイスランド生まれ。
ギスリ・オルン・ガルザルソン1973年12月アイスランド生まれ。

「ビリー・リンの永遠の一日」英雄と称えられる兵士のキーワードはI LOVE YOU。

2018-02-07 16:31:21 | 映画

        
 イラクのディヤラ州、土壁から出て応戦していたブリーム軍曹(ヴィン・ディーゼル)を襲った敵二人。その様子を見ていた、はじめて戦闘に参加した19歳のビリー・リン特技兵(ジョー・アルウィン)はとっさに飛び出して敵二人を倒し、車の陰から撃ってくる敵を拳銃で倒す。それでも別の敵からの銃弾が舞う。味方が撃った強力な武器で、敵一人はピンクのしぶきとなって消える。

 ブリーム軍曹を土管に避難させ止血。その時、敵が襲ってきた。ナイフでの格闘は、敵の心臓を貫き大量の血が広がる。しかし、残念なことに再びブリーム軍曹の声を聞くことがない。

 この一件は大きく報道されビリーは銀星章を受勲、所属するブラボー隊ともども一時帰国して全国ツアーに参加、2004年の感謝祭にテキサス州ダラスで行われるフットボールの木曜日の試合でハーフタイム・ショーに参加がツアーの最終日となる。

 参加するための移動や時間待ちや記者会見の様子とともに、ビリーが時折過去の記憶をたどる場面の挿入で、ビリーの家族や入隊の動機が明かされ、戦争そのものを理解していない人々との乖離を浮き彫りにする。

 そもそも兵士たちには、いかなる出自があるのだろうか。決して裕福な家庭の生まれではない。ビリーの両親と姉キャスリン(クリスティン・スチュワート)は、交通事故にあい父は重症で車いすの生活、姉も重傷で何度かの手術。収入の道を断たれた一家が救いの道を求めたのがビリー入隊だった。軍隊では保険が完備しているのも救いになった。

 多くの兵士は、アルバイトだけでは生活がやっとということで志願するのも多い。最前線はこういう兵士によって支えられている。一方、高学歴に恵まれウォール街あたりで高収入を得、ワインや美女にうつつを抜かす輩には戦争なんて知ったこっちゃない。俺は税金を払っているんだからとうそぶく。

 高学歴者の今ある立場も努力の結果だとしても、国を守るという点では不公平感はぬぐえない。この映画を観ているとそれがひしひしと伝わってくる。英雄の誕生はプロパガンダには格好の獲物と言える。

 映画出演の話を映画製作者(クリス・タッカー)が出演料一人10万ドルとうそぶいていたが、5500ドルにまで下がったことを受けビリーがオーグルビー(スティーヴ・マーティン)に言う。
「あなたは間違っている。我々の戦いは物語や理想ではなく我々の人生だ。あなたはなにも分からず別のものにしようとしている。ケチらず金を出しても契約は断る。戦地の敵の方があなたよりましだ」

 姉キャスリンは、戦地に戻らなくても回避する道があるとビリーを説得する。キャスリンの意を受けた精神科医までも電話をかけてくる。迷った挙句やはり戦地に戻る決意をする。

 ハーフタイム・ショーのスタジアムまでやって来たキャスリン。多くの人が言う「誇りに思う」を一言も言わなかったキャスリンは、「I Love You」と言ってビリーを抱きしめる。

 ダイム軍曹(ギャレット・ヘドランド)以下兵士が黒塗りのリムジンで待っていた。乗り込んだビリーに「I Love You」と口々に投げかけてくる。

 戦死したブリーム軍曹も最前線で応戦直前に「I Love Youビリー」と一人ひとり名前を呼んで声をかけていた。星条旗と国歌に敬礼をしながら涙を浮かべたビリー。ブラボー隊は唯一のよりどころであり、愛する仲間がいるところだ。たとえチヤガールのフェイゾン(マッケンジー・レイ)との恋があるにしても。

 ビリー役のジョー・アルウィンは、新進気鋭の若手で好感度は高い。それにダイム軍曹を演じたギャレット・ヘドランドにも注目したい。この映画の劇場未公開が腑に落ちない。2016年制作 劇場未公開
   
監督
アン・リー1954年10月台湾生まれ。2005年「ブロークバック・マウンテン」、2012年「ライフ・オブ・バイ/トラと漂流した227日」でアカデミー賞監督賞を受賞。

キャスト
ジョー・アルウィン1991年2月イギリス、ロンドン生まれ。
クリステン・スチュワート1990年4月ロサンジェルス生まれ。
クリス・タッカー1972年8月ジョージア州アトランタ生まれ。
ギャレット・ヘドランド1984年9月ミネソタ州生まれ。
ヴィン・ディーゼル1967年7月ニューヨーク州ニューヨーク生まれ。
スティーヴ・マーティン1945年8月テキサス生まれ。
マッケンジー・レイ1990年8月テキサス州ダラス生まれ。

「甘き人生」母の死を乗り越えられない男が恋によって覚醒する物語 

2018-02-04 18:08:27 | 映画

         
 原題は、イタリア語のFAI BEI SOGNI(美しい夢がある)なのだが、「よい夢を」に訳されている。いずれにせよ「甘き人生」のイメージとは乖離しているように思える。「甘き人生」は、男と女の激しい恋の末、どちらかが傷をつくという悲劇を連想したが、まったくもって裏切られた。

 母に対する美しい夢を持ち続け、恋によって新しい人生の夢に目覚めるというお話だった。恋という万能薬に人生の希望と夢を与えられたか、多くの人の実体験が物語るところだろう。例えば70歳を過ぎても25歳の年齢差がある女性と恋愛関係になったら、人生が一変することは容易に想像できる。それほど恋の妙薬の効き目は絶大だ。

 マッシモ(ヴァレリオ・マスタンドレア)にとって、人生の節目の恋までは長い道のりを歩んだ。マッシモ9歳のころ母(バルバラ・ロンキ)が死んだ。夜中マッシモの額に「よい夢を見なさい」と言ってキスをした。明け方大声で目が覚める。父は無言で外へ出る。それからは親せきの夫婦がマッシモの世話をする。

 やがて母の死が伝えられ、一緒に踊ったりテレビを観たりした母の美しい顔を二度と見ることはない。成長して新聞記者となったマッシモはサラエボで取材中、銃撃で殺され庭で血の海に横たわる若い母親、その小さな息子は部屋でゲームに熱中している。報道カメラマンは、椅子に座る子供を死んだ母親と重ねる位置に置き撮影する。その様子をデジカメで撮るマッシモ。

 カメラがすべて真実を伝えることはなく見る人に媚を売っていると言いたげでもあり、マッシモの母の死の真実が隠されているという暗喩と見ることもできる。

 サラエボから帰国したマッシモに体の異変が起きる。胸苦しく息も出来ないで死の恐怖が襲いかかる。病院へ電話して担当医の「鏡を見て深呼吸を繰り返しなさい」の指示で平静になる。診察のために病院を訪れる。担当医はエリーザ(ベレニス・ベジョ)という精神科医だった。この二人は恋に落ちるが、その描写はたった4場面にすぎない。

 比重はマッシモの母を思う時間に置かれている。40歳近くまで独身を続けたマッシモは、美しい母に恋をしていたのではないかと思ってしまう。母の死の真実を叔母から聞いたあと、エリーザが「もう行かせてあげなさい」と囁く。これは印象的だった。なお、この映画は実話を元にしている。2016年制作 劇場公開2017年7月
  
監督
マルコ・ベロッキオ1939年11月イタリア、ピアチェンツア生まれ。

キャスト
ヴァレリオ・マスタンドレア1972年2月イタリア・ローマ生まれ。
ベレニス・ベジョ1976年7月アルゼンチン、ブエノスアイレス生まれ。
バルバラ・ロンキ出自未詳。
エマニュエル・ドゥヴォス1964年5月フランス生まれ。
ニコロ・カブラス出自未詳

「ありがとう トニ・エルドマン」父親が娘を心配する奇妙なコメディ

2018-02-01 10:44:16 | 映画

         
 この映画、フェミニスト映画といってもいいかもしれない。ちょっと猥褻かもしれないが、こんな場面。

 イネス(ザンドラ・ヒュラー)は、ルーマニアのブカレストでコンサルタント会社に勤める独身のキャリア・ウーマン。年齢はイネス役のザンドラ・ヒュラーが撮影当時38歳だから、そのまんまの年齢でいいだろう。

 部下の若い男とセックスに耽る。ところが男に挿入を許さない。「オナニーしてあの緑のケーキまで飛ばせ」と言う。イネスは、男のオナニーをワインを飲みながらしらっとして見ている。終わって精液まじりのケーキを食べる。なんでこんな場面が必要なんだろうと思ったが、この映画の女性監督はフェミニストだからではないかと思う。セックスを支配する女と奴隷のように従う男。あまりいい気分の場面ではなかった。

 この若い男を演じた俳優の出るシーンはたった三つ。一番長いシーンがこのオナニー・シーン。あらためて気の毒になった。

 女性解放の意味があるのだろうか、こんなシーン。イネスは自宅アパートで自身の誕生パーティを開いた。きちきちのワンピースの背中のジッパーを締めるのに一苦労。ワイングラスやワインのボトルを配して、今度はハイヒールを履こうとするが、ワンピースがきちきち過ぎてしゃがむことも出来ない。何を思ったのか脱ぎ捨てようとするが、上にも下にも脱げない。

 玄関でピンポーンと鳴った。次に何を着るかなんて考えない。無理やりワンピースを脱いでパンティだけでドアを開ける。同僚の女性が驚いた顔をする。「今日はヌーディストパーティよ」と言ってパンティまでも脱ぐ。

 その女性と他愛にない会話をしていると、またピンポーン。完璧な裸でドアを開けると、そこには上司の男が立っていた。もちろん驚く。「ヌーディストパーティなの。心を開けるでしょ」「そう、分かった」上司は言ってどこかへ。

 同僚の女性は、「私は同調できない」と言って帰っていく。ピンポーン、今度はセックスフレンドの若い男。もちろん驚くが何故か理解できない風情。お祝いの品を手渡して彼も去って行った。引き留めないイネス。この男、夜のクラブで酔っぱらって裸になって踊りたがる。それなのにヌードを嫌うとは、よく分からない。

 イネスの秘書の女の子がやって来た。しかもヌードで。続いて上司の男もヌードで。いったいどこを歩いてきたのだろう。ドアの向こうは屋外の廊下だ。この男途中でパンツを穿いている。

 もう来る人はいないと思っているとピンポーン。ドアを開けた。そこには、ブルガリアの奇祭クケリを着けた人が立っていた。巨大な頭に顔も体にも毛がふさふさしていて誰だか分からない。イネスは誰かなと眺める。クケリを着た人は一言も発しないまま退去する。

 後をつけるイネス。近くの公園で父親だと悟ったイネスは、「パパ」と言って抱きつく。娘を心配するあまりヴィンフリート(ペーター・ジモニシェック)は、もともと悪ふざけの好きな男がドイツ大使トニ・エルドマンと名乗って娘の職場や取引先まで出没する。

 イネスはあまりにも父親の悪ふざけが過ぎるのでとうとう堪忍袋の緒が切れる。そして迎えたイネスの誕生日。クケリと言うのは、冬の寒さや悪霊を追い出し春を迎える行事らしい。

 大きくなってからの父と娘のハグはあまりなかった。よそよそしい雰囲気だった。それが悪ふざけでつけまわして喧嘩をするうちに距離が縮まり始める。「クケリの衣装がヴィンフリートを変えた。それでほんの一瞬、イネスにとって彼は子供の頃知っていた、大きくてよたよた歩く、心温かい父親に見え、彼女はかつてそうだった少女になれるのです」と監督のマーレン・アデ。

 そして知り合った人の家で父のピアノ伴奏で歌う、ホイットニー・ヒューストンのこの世で一番の愛はとっても近くにあるの、という人生で最大の愛を歌う1986年「Greatest Love of All」。

 イネスにも転機が訪れる。コンサルタント会社が行うのは、契約会社の人減らしを請け負うことだった。非情にならなければ出来ない仕事。それを永年やって来たイネス。自分を見失っていたことに気づき、忘れていた愛を今クケリを纏った父に見出す。

 コンサルタント会社からの転職も実現。セックスやヌードもブラックジョークだったのだ。第69回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で上映され、映画文化の推進と発展及び職業的利益の保護のための組織FIPRESCI(フィプレシ)賞(国際映画批評家連盟)を獲得。女性の映画監督作品の受賞は史上初めてとされる。

 なお、本作のリメイク版としてアメリカでジャック・ニコルソンとクリスティン・ウィグ共演で製作される。父親が娘に対する気持ちは万国共通で、この映画はブラックジョークを駆使して描写したと言える。ただ。あのオナニー場面は不快感を伴うことを思えばやり過ぎではないだろうか。2016年制作 劇場公開2017年6月 ドイツ/オーストリア
   
監督
マーレン・アデ1976年12月ドイツ生まれ。
       
キャスト
ペーター・ジモニシェック1946年8月オーストリア生まれ。本作でヨーロッパ映画賞男優賞受賞。

ザンドラ・ヒュラー1978年4月ドイツ生まれ。2006年「レクイエム~ミカエラの肖像」でベルリン国際映画祭で銀熊賞(女優賞)受賞。本作でヨーロッパ映画賞女優賞受賞。