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映画「ダーティ・ガイズ パリ風俗街潜入捜査線」2018年フランス/ベルギー

2022-07-28 12:46:28 | 映画
 「フランスの有名な風俗街を撲滅しようと、潜入捜査を命じられた刑事ふたり。荒っぽくイケイケな中年刑事マルタンと、真面目で神経質なイケメン刑事ジョルジュはそれぞれ偽名を使い、ポルノ業界へ潜入捜査を開始すると、そこは男たちにとってのパラダイスだった!!

 ホシは業界のドン、モーリス・ヴォジェル。ある日ふたりが経営するポルノクラブが何者かの襲撃を受ける。そんな時、手を差し伸べたのがモーリス・ヴォジェルだった。イカれた世界ではあるが、映画製作の夢を語るモーリスに惹かれて、ついに映画製作に乗り出すふたり。監督や撮影クルーたちと毎日お祭り騒ぎのような日々を送り、どっぷりとポルノ業界の魅力にハマったふたり。そんなふたりに、衝撃の命令が下される!!」

 これはアマゾン・プライム・ビデオのキャッチ・コピーをコピペしたもの。イケメン刑事ジョルジュにギョーム・カネ。中年のマルタンをジル・ルルーシュが演じ、ポルノ業界に新しく入ってくる新人にヴァージニ(カミーユ・ラザ)というキャスト。

 この映画の評価はよくない。そりゃそうだろう、女優の裸ばかりだから。そんな中でイケメン刑事のジョルジュとヴァージニのラブロマンスは、清涼剤と言えるだろう。愛し合った後、ヴァージニが言う「私がポルノシーンに出るの気になる?」ジョルジュが言う「気にならないよ」しかし、ヴァージニの表情はちょっと寂しそうで「気になると言ってほしかった」と書いてあった。

 ヴァージニを演じたカミーユ・ラザが美形だ。今後注目していい女優に見える。そして上層部の命令が業界のドン、モーリスの逮捕はもとより、映画の関係者も逮捕せよなのだ。怒った二人の刑事は、反旗を翻す。 という他愛ないストーリーなのだ。でも私は楽しめた。


読書「たとえ天が墜ちようともThe Heavens May Fall」アレン・エスケンス著2020年9月刊

2022-07-22 15:27:24 | 読書
 「犯罪の現場でさえ、よその街より上等なわけ」と言うのはミネアポリス市警刑事ニキ・ヴァン。同僚の先輩刑事マックス・ルパートの「これ以上に清潔な路地は過去に見たことないな」を受けての感想。

 ミネソタ州ミネアポリス・ケンウッド地区の路地で女性の遺体が発見された。被害者は刑事専門弁護士ベン・プルイットの妻ジェネヴイエヴ。捜査を担当するマックスは、当然のように夫ベン・プルイットを第一容疑者とする。容疑者と言うよりも犯人と決めつけている。

 このミネソタ州ミネアポリス・ケンウッド地区、例によって    googleマップで検索してみた。映画やドラマで見る中流階級以上の住宅地なのだ。千葉県で同じようなところを探すとすれば、外房線土気駅からのワンハンドレッドヒルズだろうか。

 ベン・ブルイットも凄腕の刑事弁護士で、この地区で住居を構えることができる。しかし、容疑者とされた以上弁護士を依頼しなくてはならない。そこで頼ったのが友人の地元ロースクール教授で弁護士のボーディ・サンデンだった。

 最初ボーディ・サンデンは、刑事のマックスとも親友の間柄のため逡巡していた。しかし、ベンとの家族ぐるみの付き合いでは断ることも難しかった。いずれ法廷で証人尋問のとき、マックスを追い詰めることになり、友人関係の瓦解は火を見るよりも明らかだった。

 検察側と被告側の応酬は、法律を使った戦いと言ってもいい。検察側はすべての証拠を開示しなければならない。弁護側は、その証拠に合理的な疑いを持たせればいいい。あとは陪審がどう判断するかという問題だ。

 ベン・ブルイットの場合、妻が殺された日シカゴにいたと言う。しかし、マックスは、ベンの住まいの前の家の女性から「ベンの家の道路に夜中、赤い車が止まりベンらしい男が家に向かっているのを見た」と証言した。しかし法廷では、「ベンだと断定はできない」と言った。弁護側は小躍りしたが陪審員の評決は、ベン・ブルイットが動機と機会のある唯一の人間として「有罪」にした。

 ここで物語が終わるわけでもない。25年間刑事弁護士として働いてきた著者アレン・エスケンスの法の迷路に誘い込まれ、最後には倫理規定が重要な役割を演じる。殺人事件を巧妙に利用したベン・ブルイット。平気で噓をつき独りよがりですぐに激昂するのベン・ブルイットを彼はソシオパス(反社会性パーソナリティ障害)だと断定したボーディ・サンデン。こういう緻密な法廷論争も面白い。

 著者のアレン・エスケンスは、ミズーリ州出身。ミネソタ大学でジャーナリズムの学位を、ハムライン大学で法学の学位を取り、ミネソタ州立大学で創作を学んだ後、25年間刑事専門弁護士として働く。現在は引退している。


読書「評決の代償The Holdout」グレアム・ムーア著2021年7月刊

2022-07-07 08:44:24 | 読書
 人生の転機を、ある殺人事件の陪審員を務めたことで手にした女性の物語。彼女の名前は、マヤ・シール、白人。今は小説を書いていて民主党支持者。

 2009年、ロサンジェルスのユダヤ系の大富豪ルー・シルバーの娘ジェシカ・シルバー15歳が行方不明になる。やがてジェシカが通う高校の教師黒人男性のボビー・ノックが逮捕される。

 その裁判の陪審員選びのとき隣に座った黒人の大学院生リック・レナードとマヤが親密な関係を築く。これはルール違反で発覚すれば、陪審員から除外される。二人は慎重に行動した。

 4か月にも及ぶ裁判、ホテルに缶詰めにされた陪審員の評議が始まる。最初の投票結果は、有罪11票、無罪1票。全員一致を求められる陪審員からすれば残念。無罪を投票したのは、マヤ・シールだった。これはかの有名な映画「12人の怒れる男」とそっくりな展開。

 検察側の証拠開示は完璧で、世間は100%有罪を期待していた。車の中のDNA.トランクに付着していた血液、指紋すべてジェシカを指していた。さらにこの二人の親密度を表すメールの文面。かな
り卑猥で「プッシーが濡れているの」とジェシカが送ったりする。

 しかし、遺体の発見がないうえマヤの視点「私たちは事実が何を意味するかを議論しているんじゃない。何が事実なのかを議論しているの。メールのメッセージは一つの事実だとみんなは言う。そうじゃないと私は言う。みんなは血痕は事実だと言う。私はわからないと言う」

 人は過去に見聞きした経験から類推する。有罪投票の多い中、マヤの努力によって最終的な評決が「無罪」となった。世間からは期待を裏切ったとバッシングの嵐し。

 しかも、恋人のリックが本まで出版してマヤを批判した。一旦は無罪に同意したにもかかわらず。こんな男には愛想をつかしてもいいのに、10年後リックはボビー・ノックの犯行である証拠を持っていると言って、かつての陪審員があのホテルに集まるから来ないかという誘い。対立はしたが愛おしさが残るマヤは参加した。

 10年ぶりに会ってみると男30代後半、以前にも増してハンサムで落ち着きと聡明さが窺える。マヤも陪審員という法の世界を体験して刑事弁護士になった。昔なじみの気安さで、リックをマヤの部屋に招き入れた。

 話題はあの裁判。口喧嘩になり「もう帰って!」というマヤ。帰るそぶりを見せないリックに業を煮やし部屋から飛び出すマヤ。ホテル周辺を歩き回って感情のたかぶりを納めて部屋に戻る。そこには頭から血を流して倒れているリックを見る。

 警察は当然第1容疑者としてマヤ・シールを挙げる。マヤは、所属する法律事務所の凄腕黒人弁護士クレイグ・ロジャースに助けを求める。マヤは窮地を脱するために正しい事実が欲しかった。調査の結果、マヤの主張が正しかったと同時に自身の窮地を脱するための大芝居を画策するのだった。彼女はやっぱり凄腕の刑事弁護士だった。

 すべてが終わった後、マヤはリックに手紙を書いた。家の裏のパティオに座り、言う機会のなかったさよならの言葉を書き留めた。彼女を公の場で非難したことなどリックのすべてを許した。チャンスがあったら彼を愛していると伝えたいと書いた。彼も彼女のことを愛していたと思っていた。マヤは手紙を折りたたむと火をつけた。灰が宙を舞い、秋の風に運ばれていくのを見守った。

 そしてこの作品が、映画「12人の怒れる男」をオマージュしているのも確かなことだ。この小説を創作したグレアム・ムーアは、1981年シカゴ生まれの作家・脚本家。2014年の映画「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」で、アカデミー賞脚本賞を受賞している。