ロンドンに住む若き女性ケイト・プリディーは、幼少の頃に不安障害 空想傾向障害とセラピストに言われたことがある。成人した今でもその傾向は治らない。飛行機や船も怖いし人込みも苦手、彼女は常につぎの瞬間、悲劇の瞬間を生きている。
何かにつけてマイナス思考をすという困った性癖ながら5年前、嫉妬深い恋人ジョージ・ダニエルズにクローゼットに閉じ込められた上、ジョージが自殺するという恐怖の体験もあったが、今ボストンの高級住宅街ビーコン・ヒルにあるヴェネチアの宮殿をモデルにした三階建ての華麗なアパートメントに到着した。やや自信を取り戻した気分にはなる。この豪華なアパートメントに来たのは、一度も会ったことがないまたいとこ(又従兄)のコービン・デルがロンドン転勤を機にケイトの部屋と交換した結果なのだ。広くて豪華な住居は、コービンが父親の遺産を受け継いだものだった。
ケイトが到着した日、隣に住む女性オードリー・マーシャルを訪ねてきた女性が、オードリーと連絡がつかないと騒いでいた。 本を読んでいて寝込んでしまったケイトはドアのノックに起こされた。訪問者はロバータ・ジェイムスという女性刑事だった。その刑事から知らされたのが、オードリー・マーシャルが殺されたということだった。
この事件が又従兄のコービンを巻き込んで、意外な展開を見せる。ダークな殺人者がケイトに迫る。私の好みの作品ではなかった。しかし、解説は最上級の賛辞を送っているようなのだ。例によってgoogleマップのストリートヴューで、ビーコン・ヒル周辺を散策した。中にいい雰囲気のバーがあった。そのバーは、1927年創業らしい。その中に若き私自身がいて、透き通るような肌とブルーの瞳を持つ女性とワインかマーティーニを楽しむのを想像した。