英文名は The Universal Laws of Growth, Innovation, Sustainability, and the Pace of Life in Organisms, Cities, Economies, and Companies で内容はこれに尽きる。
簡単に言うと、両方対数のグラフでの増え方の分析で、スケーリング曲線(直線だが)で比例関係を分析している。この曲線の傾きがリニア(線形:1対1)なもの、サブ(未満)・リニア(1以下で伸びがだんだん低下するもの)、スーパー(超)・リニア(1以上で伸びがさらに成長するもの)に分けている。
訳は山形らだが、原文が訳しにくいのか、訳も良く分からないところが多い。グラフの中の記述や文中の数値も間違いが多い。
多様な見解で、フローはなく、各章が独立しているような内容だ。興味が多方面にわたり吉阪隆正の本みたいだ。知見は:(役立つ部分のみ太字に)
・生物の代謝率のべき乗則(の傾きの数値)は3/4であり、大きくなると規模の経済が働く、「クライバーの法則」(大きさが2倍になっても代謝は1.5倍とお得)
・1/4の整数倍となるスケーリング(べき乗則の傾きの数値)は生物のほか、企業、都市にも転用可能、生命体は成長率、ゲノム率、寿命などで倍数がある、但し生涯心拍数は同じため、代謝率の高い大きな動物は心拍数が低く、長命になる。体積充填フラクタル・ネットワーク(くしゃくしゃにした紙を充填)した場合の容積とくしゃくしゃの面積の関係からも実証(この論理の説明は良く分からない)
・血管の断面は分岐前後で同じ、後続は1/√2になる、但し毛細血管の血流は遅い(粘性のため→論理矛盾がある)、大型の動物は欠陥が太いため効率が良く、心拍数が小さい、なお血圧はほぼ同じ
・都市は1.15のスケーリングで都市活動・犯罪が増大、インフラは0.85で規模の経済が働く、企業は0.9(規模の経済)
・寿命は代謝が3/4のスケーリングとなり、修復が追い付かなくなったとき
・「ダンバーの法則」:知合い、親友・血族5、親密な友人・大家族15~20、仲間・血族45~50、知人・部族150と階層に分かれる
・「ジップの法則」:都市順位は人口に反比例、1番目は2番目の2倍、N番目のN倍
・「パレートの法則」:企業規模と頻度はマイナスのリニア→80:20の法則
・事象が相関する場合、独立事象のベル・カーブにならない、ファット・テールになる→ブラック・スワンが生まれまくる経済崩壊
・都市の集積は5/4の社会経済力上昇、インフラは3/4の効率上昇はネットワーク効果、但し、犯罪も増える
・人口の二乗で出会いは増える→nC2だから当たり前、コロナの感染も同じか
・人口当たりのイノヴェーションなどはスケーリングから逸脱→クラスターの特性が出るため当たり前、大きくても街がないのと、小さくても優秀な人材が集まるという量より質の特性がある
・都市は規模の経済が働き拡大を無限に続け、生物は大きさの規模の経済はあるが、時間軸で不経済となり有限→都市については無限の可能性があるとしたら都市化で受け入れ人口が増えるだけ、人口の頭打ちもあり、100%都市になったら有限になるという論理矛盾がある
・企業の死は突然、イノヴェーションを乗換え生き延びる→当たり前
・イノヴェーションのログ・グラフ(図81)は項目の取り方によると思われる。直立歩行と口頭言語が、ラジオとコンピュータの差と同じ訳がない
面白いが一種のトンデモ本に近い、役に立つ知見もあるが論理破綻が多く、専門家以外は取り合わない方が良い