
読んだはずの大半が蒸発している。
思い出そうとしても思い出せない。
世界は書物の中にあったのに
あったはずのものが消えている。
薪や石炭のように
燃えてしまえば残るのは灰ばかり。
灰の中から灰だらけの顔をあげる。
読書人とはこの種の灰だらけの男 女のことなのだ。
焚書したのではない。
そんな手間をかけなくていい。
文字は頭の内側で燃えて
灰だけが残された。
頭の中だけでなく
腰や背中や足の裏 いたるところ灰だらけ。
日常という名の風が吹いて その灰を吹き飛ばしていく。
やあ風のおかげで すっかり書物が蒸発し
すがすがしい天気になりましたな。
おや 今朝はどちらへお出かけです?
※申し添えておけば、写真と詩との直接的な関係はありません。