二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

朔太郎からの伝言 2021-004 (7月15日)

2021年07月25日 | 俳句・短歌・詩集

   妄想のはらわたに火薬をつめこみ
   さびしい野原に古ぼけた大砲をひきずりだして
   どおぼん どおぼんとうってゐようよ 
       萩原朔太郎「大砲を撃つ」より


朔太郎にそそのかされて
こんな野原までやってきた。
地はみどりだが空は銀色
右が利根川。 
ほらほらきみのこころからあらわれた 色鮮やかな笹船がいったりきたり
この銀色の空の下を。

パリではなくここは前橋
ニューヨークでもないしヴェネツィアでもない。
きみが目覚め際に通過した古めかしい町。
甘いあまい あの前橋なのだ
デコレーションケーキみたいな あるいは
おばあさんが好きだった砂糖菓子みたいな。

日本中にこんな町がいくつあるか知らないけれど
変人・朔太郎を生んだのは
ここ前橋だけなのだ。
空が晴れていると雲の切れ間から
朔太郎さんの着物の裾やマンドリンが見える。
詩人の中の詩人

「詩人」とはほかならぬ朔太郎のこと。
αであり ωである不可解な世界の作り手だった。
きみはこれから朔太郎のωを知らねばならない。
デコレーションケーキや砂糖菓子とは違った
苦い食べもの。
ωを食べた人は口が曲がっているんだってね。

きみは昨日 だれかさんをまねて
利根川のほとりに錆びついた大砲をひきずりだし
どおぼん どおぼんぶっぱなした。
妄想のはらわたがきみのまぶたの内側ではじけ飛ぶ。
それがωであり
朔太郎からの伝言。




  (マンドリンと手品で使うシルクハット)


  (愛用の机と椅子)

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