二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

村上春樹の旅行記を読んでみた( -ω-)

2021年08月18日 | ドキュメンタリー・ルポルタージュ・旅行記
1.「辺境・近境」新潮文庫 2000年刊

二つのインタビュー集「みみずくは黄昏に飛び立つ」「夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです」の2冊と「村上春樹、河合隼雄に会いにいく」という対談を読んだあと、旅行記も2冊読み終えたので、インタビュー・対談は別として、自分のためにメモ的な感想を書いておこう。

村上春樹の本がずいぶんそろってきたが、ほとんどすべて積んでおくだけ。
数ページは読んでみるが、そこからさきが読み続けられない。長編小説はとくに、そういう傾向に陥る。
村上春樹さんは、タネも仕掛けもある世界を、翻訳調の文体を用いて描いている。登場人物はありそうもない渾名のような名前をつけられている。“約束事”のある、とても奇妙な、非現実的なストーリーが展開していく。

参考にするつもりで、キーワード村上春樹を放り込んで、YouTubeの動画をほぼすべて見た。
その結果「よしよし。遅ればせながら村上さんを読んでみよう」という気分にさせられた・・・というわけである(;^ω^)
英語圏の国々ではもちろん、中国やロシアでもよく読まれているそうである。村上さんの文学は、いまや“世界文学”なのである。

だけど、長編はわたしにとってはあいかわらずハードルが高い。なぜかということをかんがえてみたが、まず彼が設定する“約束事”を承認してかからないと、そのさきに広がる世界には入っていけないからだ。
・・・というわけで、長編は先延ばしにし、旅行記(紀行文)を読むことにした。

本書「辺境・近境」には7編の旅行記が収録されてある。念のため目次を掲げておくと、
・イースト・ハンプトン 作家たちの静かな聖地
・無人島・からす島の秘密
・メキシコ大旅行
  プエルト・バヤルタからオアハカまで
  共同の夢を見る人びと
・讃岐・超ディープうどん紀行
・ノモンハンの鉄の墓場
  大連からハイラルへ
  ハイラルからノモンハンまで
  ウランバートルからハルハ河まで
・アメリカ大陸を横断しよう
  病としての旅行、牛の値段、退屈なモーテル
  ウェルカムという名の町、西部のチャイナタウン、ユタの人々
・神戸まで歩く

この7編。
どれも面白さ抜群で、はらはらドキドキ、ときに大笑いしながら読み終えた。
村上さんのユーモアは読者を飽きさせない。
「メキシコ大旅行」のなかの前半「プエルト・バヤルタからオアハカまで」は絶品であろう。本を読んでいて、腹の皮がよじれるほど大笑いしたのは久しぶり(^O^)

胸に沁みたのは、つぶやきでも書いた「ノモンハンの鉄の墓場」であった。村上さんは率直なのである。変な理屈はこねないし、虚栄心に振り回されることもない。翻訳調も影をひそめている。
ドキュメンタリー、ノンフィクションなので、“約束事”を踏まえないとそこからさきへすすめない・・・ということもない。

村上さんも若いころから旅行記が好きでずいぶん読んできたといっているが、わたしもノンフィクションとしての旅行記、紀行文のファン。
しばしば実際の旅行より愉しかったりするともおっしゃっているが、わたしも同感♪
「讃岐・超ディープうどん紀行」には笑った。さらりと何気なく書いている・・・と思わせるところに、村上さんの手腕がある。

旅行嫌いの人にもおすすめできる旅行記として、5点満点を付しておく。
ちなみに、新潮文庫には「辺境・近境」の写真篇があり、写真好きとしては見逃すことができない。
松村映三さんのスナップ、こちらも堪能させていただきました。




評価:☆☆☆☆☆





2.「ラオスにいったい何があるというんですか?」文藝春秋社 2015年刊




「辺境・近境」はすばらしかったので、こちらもつづけて読んだ。
結論だけいえば、「ラオスにいったい何があるというんですか?」はごく普通の旅行記。
つまらなくはないのだが、村上節がひかえめなのは物足りない。

ひと口にいって、村上春樹さんのノンフィクション、旅行記はユニークな味わいを備えている、と思う。
アイスランド篇、ラオス篇はワクワクするような、活きのいい文章である。少々誇張していえば、村上さんといっしょに旅をする・・・ような気分をたっぷり味わえる^ωヽ*



評価:☆☆☆

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