二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

昨日なくした夢 2021-11(8月16日)

2021年08月17日 | 俳句・短歌・詩集
眼の赤い鷺が夜のこちら側で鳴いている。
大事なものをなくしてしまった
と鳴いているのだ。
それが何かをきみはかんがえている。

根っこを洪水にさらわれた大木が
つぎからつぎへ倒れていく。
倒れていく地響きを聞いている。
耳をふさぐんじゃない

それらをちゃんと 最後まで聞くのだ。
それはつとめであり
願望であり
悲しみである。

きみもさっきなくした昨日の夢のなかで
眼の赤い鷺のように鳴いていた。
きみを迎えにくる人はいない。
うしろには大木が黒々と何本も倒れている。

あれは父であり祖父であり
そのさきの先祖たちなのだ。
やがては倒れる 何もかも。
昨日の夢を思い出そう。

なるべく正確に思い出し
あちこちに散らばった紙片を拾いあげて
途切れていることばのあとに
何行かを付け加える。

それがさしずめ きみやきみたちの役目なのだ。

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