二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

日本の歴史を読み直す ~「太平記の時代」

2019年09月28日 | 歴史・民俗・人類学
■新田一郎「太平記の時代」(講談社 日本の歴史11巻 2001年刊)

このシリーズは、現在講談社学術文庫に収録され、全巻で25冊におよぶ大部なシリーズで、執筆陣には当然一流の専門家・研究者が、ずらりと顔をつらねている。
よくいく近所のBOOK OFFにバラ本があったので、わたしはそれを少しずつ買ってきては、気ままに読んでいるというわけだ(=_=)

日本古代史と日本中世史。
そのあたりに的をしぼってあるが、近世史(江戸時代)に関する巻も、何冊かそろってきた。
本書は巻末の索引までふくめ、352ページ。単行本なので、けっこう持ち重りのするシリーズで、寝ころがって長時間読書にふけっていると、手首に負担がかかる。

新田一郎さんは東大の先生で、日本法制史・中世史専攻、余技に相撲史の研究もしていらっしゃるそうだo・_・oタハハ
大所高所から、鳥瞰図的に時代を見下ろすまなざしを持っているようで、序章『歴史』としての『太平記』」は単発のエッセイとして愉しめる仕上がりになっている。

しかし、本書を最後まで通読するには、普通にいって、多少の忍耐を必要とするのではないか? 少なくともわたしは、斜め読みしてしまった部分があるというのが正直なところ。
目次を掲げておくと、序章以下、
第一章 動乱前夜
第二章 帝王後醍醐
第三章 将軍足利尊氏
第四章 「太平記」の世界
第五章 社会統合の転換
第六章 北山殿源道義
終  章 南朝の行方

・・・となる。
じっくりと腰を据えて読める本である。
だからいま一つおもしろくないのが、われながらちょっと不可思議。

《後醍醐の践祚、廃位、配流、そして建武政権樹立。足利氏との角逐、二つに分裂した皇統。十四世紀は動乱と変革の時代であった。後醍醐の「王権」復活の夢はついえ、武家の権能は拡大し、日本社会は構造的な大きな変化を遂げた。南北朝とはどのような時代であったのか。また、鮮烈な個性たちはどのように生きたのか。その時代相を斬り取り解析する。》(BOOKデータベースの記事を引用)

おそらく“通史”であるからおもしろさが半減しているのだろうし、読者としてのわたしが、この時代に対する関心がいくらか薄いから、つい距離を開けて眺めてしまうのだろう。
後醍醐と足利尊氏は、問題意識をそこに集中させたら、まことに興味深い人間像があぶり出されてくるに違いない。

《ある種「公共的」な性格を持った場が、「太平記」の叙述において成立し、それが人々の世界に枠組を提供する。何らかの物語を共有する人々によってこそ、世界は安定して共有されるのであり、人々の行動の前提に置かれることによって、物語が現実の解釈・評価を規定し、兵藤裕己氏の言葉を借りれば「物語が現実を作り出す」ことになるのである。》(本書15ページ)

こういうセンテンスを読んでワクワクしない歴史ファンがいるだろうか!?
新田さんは歴史家であり、理論家なのである。この一節はこれ以上展開されることはなく、理論にとどまってしまったが。
物語が現実を作り出す・・・とは究極の一語であろう。左翼には左翼の、右翼には右翼の、そして歴史家には歴史家の“物語”存在する。

経済史より、人物論。
その方が、絶対におもしろい(^^)/
読者としてのわたしの趣味・嗜好がそちらに偏っている。歴史と文学の接点がそこにあるのだから。


評価:☆☆☆☆


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