二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

明日も あさっても(ポエムNO.2-88)

2017年01月15日 | 俳句・短歌・詩集
ぼくとは結局のところ何者だろう と
そんな意味もない質問をよく発した。
体の大部分は水でできている
そして少しのたんぱく質 カルシウム 塩。
耳が一つしかないトラ猫が
路地の奥へチェロキーのように走っていく。
少年が数人 それを追って走り出す。

ぼくは記憶に
(遠い日の記憶に) 年中溺れている。
抜き手を切ってあっという間にとおりすぎてきた夏のいまが
女の酔っぱらいのようになにか喚く。
地図 のない国
に地図を つ
くろうとしてこれまで何度失敗したことだろう。

かすかな音・・・
かすかな櫓をこぐ音 琵琶を爪弾く音のほうへ
小男だった李白と杜甫がつれだって歩いていくのを
粗末なベッドの端っこから落ちそうになりながら
ぼくは夕べ見送ったばかりだが
目覚めると むろんだれもいなかった。
見渡すかぎりの葦原を 一陣の風となって渡っていく

あの人の心 この人の心が
深い迷いの霧の中で
黄色い点滅信号のようにピカピカ光る。
よく知られた陶淵明の漢詩が
さびたシャベルのように畑の隅にころがっている。
昨日もそれに躓いた
きっと明日も あさっても。

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