二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

ことばの世界に暮らす小人たち(ポエムNO.2-44)

2014年08月10日 | 俳句・短歌・詩集
ある日財布の中から見慣れない皺くちゃの紙幣が出てくる。
クロアチアのものか セルビアのものかわからないけれど
なんとはなしに東欧のにおいがする紙幣。
その皺くちゃの陰に顎ひげを生やした老人がうずくまっている。
親指くらいの大きさで
不自由な片足をひきずりながら
ゆっくりと財布の奥の暗がりへと立ち去っていく。

きみの財布にも そんなあやしい人物がひそんでいるのではないか?
あるいはクローゼットの扉の向こう。
もっていることを忘れたTシャツのあいだに。
あるいはデスクの二番目の抽斗。
ホッチキスやハサミ 爪切りなどをしまった容器の横。
顔をちらっとのぞかせ ケケケッと 笑っている。
ポケットモンキーのように・・・笑っている。

きみのそばでも
きっといるはず 奇妙な葉っぱのような存在。
見える人には見える小人たち。
ほらほら 赤や黄色の三角帽子が走っていく。
ゴキブリよりすばやく 走って
冷蔵庫の裏側に身をかくす。
そうなるともう だれにも見つからない。

ありそうなことと
ありそうもないことが
二本の矢印となって
小人たちの在処を指し示す。
ぼくの厭世的な暮らしのはずれに住んでいるアリスの友達。
「あたしたちの住処 知っている?」「知らない」
「じゃ教えるけど・・・ことばの中なのさ」

紙幣という名の小人
抽斗という名の小人 その他大勢の。
そいつらはきみの頭の中に
自由に出入りしている。
戦後思想なんていう気むずかしげな小人もいる
知っている人はほんのわずかだろうけれど。
ことばの世界に暮らす小人たちよ。

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