ドイツ在住の医師でジャーナリスト、村中璃子氏が緊急寄稿
2023年の日本のドル建ての国内総生産(GDP)がドイツに抜かれて4位に転落したことは大きな話題になった。「ドイツ経済の強さの秘密」を特集するメディアもあったが、ドイツ在住の医師でジャーナリスト、村中璃子氏は「庶民には実感がない」と指摘する。物価高がのしかかるドイツ経済の現状をリポートする。
2月15日、筆者の暮らすドイツが日本を抜き、世界第3の経済大国となったことが明らかになった。だが、このニュースに対するドイツ人の反応は冷たい。その理由はあくまでも「日本経済の縮小」にあり、庶民には「ドイツ経済が良くなった」という実感がまるで持てないからだ。
まず、ドイツでは物価は高止まりしている。食用油やトイレットペーパーなどユーロ建てで見れば一時期より下がったものもあるが、特に外食が高い。飲み物とパスタで10ユーロも出せば食べられたランチが、今やパスタだけで13ユーロ(約2080円)はする。1食3・5ユーロだった学食も5~6ユーロ(約800~960円)だ。5年前には3~4ユーロだったドイツの国民食「ケバブ」も今は7~8ユーロ(約1120~1280円)が相場で、2月3日の国会でも「このままではケバブが10ユーロを超えてしまう」として議題に上がったほどだ。