8時半、起床。晴れているが、風は冷たい。ベーコンとチーズを挟んだ塩バターパン、スコーン、紅茶の朝食。
ディスカウントチケット店で購入した山種美術館「生誕百年 高山辰雄・奥田元宋―文展から日展ヘ―」の使用期限が今日(展覧会自体はあと一週間やっている)。午後から行こうと思っていたら、今朝の『日曜美術館』で紹介されている。これは午後は混むなと思い、早めに家を出る。
山手線の車内広告にこんなものがあった。全国森林組合主催の就職ガイダンス。考えてみると、日本の国土の7割は森林である。林業は文字通り地に足の就いた仕事、リアリティのある仕事だ。流動化する労働市場で浮遊する若い労働力の向かう先として第一次産業が見直されているというのはわからないでもない。たぶん「おおかみこどもの雨と雪」の影響もある・・・ということはないよね。
山種美術館は恵比寿駅から駒沢通りを10分ほど歩いたところにある。美術館が九段にあった頃に何度か行ったことがあるが、この場所に移ってからは初めての訪問である。
日本画の展覧会にときどき行くけれど、いつもその静謐さに心が落ち着く。もちろん洋画にも静謐な作品はあるし(たとえばシャルダンの静物画)、日本画にもダイナミックな作品はある(たとえば大観の「生々流転」)。しかし、洋画における静物画の静謐さは対象に内在する属性であるように思う。これに対して日本画の静謐さは対象を観るまなざしの属性であるように思う。端的に言えば、一方は「静謐な対象」を描き、他方は対象を「静謐に描く」のである。大観の「生々流転」にしても、万物が生々流転していくプロセスはダイナミックだけれども、絵巻の最後でそのダイナミズムは無時間的な静謐な空間の中に吸収されていく。日本画を見て心が落ち着くのは、その静謐なまなざしが自分の中に入ってきて、一時的にではあれ、私自身が世界を静謐なまなざしで観るようになるためである。世界を静謐なまなざしで観るとは、世界をあるがままに受容するということである。
展覧会を観終えて、館内のカフェ「椿」で一服する。今回の展覧会のために青山の「菊家」に特注したオリジナルの5種類の和菓子の中から「春待ち」を注文(ドリンクとセットで1000円)。これが実に味わい深い一品だった。元宋の作品「春を聴く」をモチーフにして、春を待つつがいの鳩とその巣を淡い色合いのきんとんで表現し、大島餡を包んでいる。上品で、可愛らしい。食べるのがもったいないが、食べました。お、美味しい・・・。他の4種類、「奥入瀬」、「舞妓」、「葉かげ」、「滝しぶき」も食べてみたかったが、大人の男なので我慢する。
当初は、スイーツとお茶だけのつもりだったが、メニューを見たら、食事も出来ることがわかったので、「季節のにゅう麺」(1200円)を注文する。これがまた味わい深い一品だった。三輪素麺に湯葉、白胡麻、桜の花びらを模した麩、桜の花の塩漬けがのっていて、別に梅干、茎若布の佃煮、とろろ昆布が添えられいた。いずれも透明で上品な汁によく合う。小さな三色団子が付いてくるが、これも「菊家」のものである。会期はあと一週間だが、食事のためだけにまた「椿」に来てもいいと思った。
美術館を出て、恵比寿駅へと向かうが、まだ空腹感が残っている。なにしろ山種美術館のカフェである、女性、それも少しお年をめした女性を念頭においたメニューのように思われる。味だけでなく、分量もとても上品なのだ。美術館の近くに「パパスカフェ」がある。来るとき、展覧会の帰りにここで食事をとろうと思っていたのである。さすがに普通のランチメニューは無理だが、コーヒーにスイーツという気分でもない。外の黒板に書かれたメニューをながめていて、スープランチ(1000円)があることに気づく。スープは野菜と海老のクリームスープとある。そうだ、これがいい。クリームスープというのがいまの気分にピッタリだ。パンも、サラダも、コーヒーも美味しかった。寛いだ気分で1時間ほど滞在した。
帰宅したのは4時を少し過ぎた頃。ジムへ行くこともチラリと考えたが、連日になるので、やめておいた。
風呂に入る前に、『シェアハウスの恋人』の初回(録画)を観る。『泣くな、はらちゃん』同様、パッとしない生活を送っている女性(水川あさみ)が主人公。鏡を見て、口角を上げて、笑顔を作る練習をするところまで同じだ。『泣くな、はらちゃん』では漫画の中の登場人物が漫画の世界から抜け出して彼女を助けに来るのだが、『シェアハウスの恋人』では彼女を助けるのは中年の宇宙人(大泉洋)である。もちろん宇宙人というのは自称で、本当にそうなのかは定かではない。たぶん違うんじゃないかな。彼は記憶喪失者というのが私の予想なのだが、もし当ったら褒めてください。
夕食の後、『dinner』の2回目をリアルタイムで観る。今日のところはいい展開。新しい料理長(江口洋介)とたたき上げの副料理長(松重豊)が新しいメニューの開発で意気投合し、他のスタッフもそんな二人を好意的なまなざしでみつめる。それにしても副料理長がどうしても『孤独のグルメ』の井之頭五郎に見えてしまう。局が違うから無理な注文だろうが、料理の味見をして、「いいじゃないか」と井之頭五郎の口調で言ってみてくれないかな。