8時半、起床。
トースト、サラダ(ハム)、牛乳、紅茶の朝食。
11時に家を出て、神楽坂の「SKIPA」へ。今日は隔月開催の「いろは句会」の日である。
本日の参加者は8名。主宰の紀本さん以下、蚕豆さん、恵美子さん、明子さん、あゆみさん、低郎さん、本日が初参加の真由子さん、そして私(たかじ)である。他に出席はしていないが投句で参加の東子さん(一句のみ)。
選考タイム。各自が投句した3句×8名+一句(東子さん)=25句の中から各自が3句を選ぶ。(今回の兼題は「三」)
私は以下の三句を選んだ。
天 飾り買ふ何も無き日の十二月
名句である。さりげなく、味わい深く、そして品がある。「十二月の何も無き日」が本来の語順だが、それを倒置して、「何も無き日の十二月」としたところに技巧の冴えがある。十二月(師走)はいろいろと気忙しいものだが、その中にポッカリと「何も無い日」がある。喧騒の中の静寂。その静かだが、どこか寂しい心持ちの日に、その寂しさを埋めるように、飾りを買ったのである。飾りはクリスマスや正月の飾りと解釈するのが普通だろうが、ここでは女性本人が身につけるアクセサリーと解釈したい。
地 一年の重み蜜柑の甘さ知る
これも佳句である。「一年の重み」と「蜜柑の甘さ」が対比され、不思議なバランスを産み出している(句マタギの技法がそのバランスに貢献している)。さながら「一年の重み」が「蜜柑」をプレスして甘い果汁を搾り出しているようなイメージである。濃縮された「甘さ」であるが、おそらく蜜柑の皮の苦味も混じっているのであろう。いろいろなことがあった人の作った句である。
人 骨を接ぎどこまで行こう冬の旅
軽妙な句である。「冬の旅」というフレーズは私も使ってみたかったが(バックにはシューベルトの曲が流れている)、ややもすると、というか、どうしても、抒情に流れてしまうところがあるため(短歌ならそれもよいが俳句ではよろしくない)、使うのを断念したのであるが、この句は自身の骨折体験を読み込んで、かといって満身創痍的な悲壮感はなく、「なんとかなるさ」のお気楽さがある。たとえていえば、高倉健の冬の旅でなく、渥美清の冬の旅である。
全員の選考が終わり、各自の選句を「天」は5点、「地」は3点、「人」は1点で集計する。結果は以下の通り。その句を選んだ人を中心に感想を述べた後、作者が誰であるかが明らかにされる。
14点 飾り買う何も無き日の十二月 あゆみ
今回の特選である。私と恵美子さんが天、明子さんが地、低郎さんが人を付けた。感想はすべに述べたが、作者はあゆみさんであったか。これまでの彼女の作風と少し感じが違う。ちょっと大人の女になった感じである(笑)。
11点 一年の重み蜜柑の甘さ知る 明子
私と蚕豆さんと真由子さんが地、恵美子さんとあゆみさんが人を付けた。これも感想はすでに述べたが、作者は明子さんであったか。苦労の多い一年だったんですね。年末年始はどうぞ心身をゆっくり休めてください。
10点 湯豆腐や残すところの日を数ふ たかじ
私の句。蚕豆さんが天、低郎さんが地、明子さんと真由子さんが人を付けた。「湯豆腐」といえば、久保田万太郎の「湯豆腐やいのちのはてのうすあかり」という一世一代の名句がある。その名句へのオマージュとして作った。「残すところの日」とは大晦日までの残り時間と、人生の残り時間の二つの意味をかけたわけだが、感想を聞いていると、鍋の中にまだ湯豆腐が何切れが残っているというイメージも感じ取られたようである。私は全部食べますけどね。
10点 団栗の地面に挨拶二つ三つ 蚕豆
明子さんと低郎さんが天を付けた。兼題の「三」を読み込んだ作品で、かわいらしい句である。作者は女性だと思い込んでいたので、蚕豆さんと知って意外だった。挨拶するのは団栗、挨拶されるのは地面というのが(文法的に)普通の解釈だと思うが、私は団栗の木が木の下を通りかかった人に、挨拶代りに(木はしゃべれないので)、実を二つ三つ落としたと解釈したい。その方がよりファンタジックだと思う。
8点 七五三あめとはかまの丈くらべ 東子
真由子さんが天、紀本さんが地を付けた。東子さんは今回は欠席だったが、兼題「三」は東子さんの出題だったので、この一句だけを投句されてきたのである。「はかま」からこのお子さんは男の子であることがわかるが、「丈くらべ」という語も男の子を連想させるものである(♪柱の傷はおととしの五月五日の背くらべ~)。七五三は3歳は男女、5歳は男の子、7歳は女の子を祝う。この男の子は3歳か5歳ということになるが、袴の丈が飴の入った袋の長さといい勝負ということだから、たぶん3歳であろう。
6点 三人で密談進む秋の夜 明子
恵美子さんとあゆみさんが地を付けた。この三人は男性というのが作者の説明および選者の解釈であったが、私はこの句に漂う雰囲気から女性三人だと思っていた。桐野夏生の小説『OUT』の女たちのように夫を殺してバラバラして生ごみとして捨てる相談をしているのだと思った。女性は怖いものだが、作者も選者も自身の内部に潜むその怖さに無自覚であることが不思議であった。いや、ただ気づかないふりをしているだけでしょうね。
5点 肩凝りと革ジャンバーのとがりたる 恵美子
紀本さんが天を付けた。男性の作品だと思っていたら、恵美子さんの作品だった。ロックな雰囲気の句であるから、言われてみれば不思議ではない。「とんがった」生き方の句である。
5点 誰そ彼時悪魔と口付け流行り風邪 恵美子
あゆみさんが天をつけた。これも恵美子さんの作品。さきほどの句は「とんがって」いたが、こちらの句は「ごつごつ」している。見かけがである(漢字が多用されているので)。彼女は最近インフルエンザに罹ったのだが、それをモチーフいしている。転んでも只では起きない人である。
1点 骨を接ぎどこまで行こう冬の旅 蚕豆
1点 七三の大将が焼く秋秋刀魚 恵美子
1点 落ち葉とは優しい休符の使い方 蚕豆
特選に輝いたあゆみさん。愛用の歳時記には敬愛する夏井いつき先生のサインがある。
私とあゆみさんはNHKの全国俳句コンクールに応募しているのだが、結果の通知はまだない。優秀作に選ばれて、1月22日のNHKホールでの授賞式に出ようと約束している。私は今回初応募だが、彼女は去年、佳作で入選しているので、ありえない話ではない。
選考を終えて、食事会。
2時過ぎに散会。
次回は1月15日(日)。兼題は「風」。ちなみにこれNHKの全国俳句大会の兼題と同じである。あゆみさんのノリを感じますね。
そのあゆみさん、夫のポテトさんが娘さんを連れてやってきた。育児のバトンタッチで、ポテトさんはこれからフットサルに出かける。
神楽坂は今日も何かのイベントをやっている。
「梅花亭」が出店をやっていたので、団子と栗おこわを買って帰る。
蒲田に戻り、「有隣堂」で雑誌と本を購入。
『神吉拓郎傑作選』1・2(国書刊行会)
年末年始の読書の楽しみはこれで決まりだ。昔読んだ彼の短篇「洋食セーヌ軒」、あれはよかったなあ(ちゃんと今回の傑作選にも収められれいる)。
落ち葉とは優しい休符の使い方 蚕豆
帰宅して「梅花亭」で買ってきた団子(あんことみたらし)と栗おこわを妻と食べる。
妻が日曜大工で居間に飾り棚を作った。
夕食はもつ鍋。
もつ鍋や残すところの日を数ふ たかじ *いくらでも類似品が作れるが、やっぱり「湯豆腐」が一番。
デザートは「あるす」でいただいた柿。
一年の重み柿の甘さ知る たかじ *蜜柑より渋さが増す。